突然、読書のモチベーションが雲散霧消してしまった。
それを救ってくれたのが、「文學界10月号」に掲載されていた吉川先生の「見出された『失われた時を求めて』初稿」だった。
最初、ちくま文庫の井上究一郎訳を読んでいた僕は、第5巻で頓挫してしまっていた。
その時出会ったのが、立教大学の公開セミナー「新訳
...続きを読むでプルーストを読破する」であり、吉川先生の訳だった。
お陰様で、僕もなんとかプルーストを読破することができた。
僕は、まさに吉川先生によってプルーストに招き入れられたのだ。
だが、文學界の文章を読んで、さらに本書を読み終えた今、自分が一つの無限ループに入り込んでしまっているのを見出す。
本書を読めば、必ずやまたプルーストが読みたくなる。
読みかけの高遠弘美訳、井上訳もあれば、鈴木道彦訳もある。
長い迷路のような回廊のなかへ再び迷い込まずにはいられないだろう。
側から見れば、それはまるでシーシュポスに課された罰のようにも見えるだろうが、僕にとっては、かけがえのない喜びなのだ。