ミャンマーの状況を見てるうちに国と軍の関係ってどうなのか…つまり軍って国の中では圧倒的に力を持っているはずでどこの国でも簡単に軍に支配されてしまうのではと思い…言わばリファレンスとして我が国の軍の成り立ちと政治との関係を知りたいと思ったので手に取ってみた。しかしこれは労作。明治維新で日本軍ができてか
...続きを読むら太平洋戦争敗戦で解体されるまでの政治と軍との関係を丹念に書き切っている。ほぼ一年毎に何があったかを書いてあるような形式なので正直ちょっと退屈になる部分や小説ではないので盛り上がりに欠ける部分はあるのだが近代日本の政治中央がどのように発展したのか、が分かる形になっている。元々は維新の勝利者である薩長の武士団を中心とした日本軍が徴兵によるあまねく国民が参加する軍へと変貌を遂げる経緯、名高い長州の奇兵隊が暴力的に解体されたことも知らなかったし、それ故に地元の武士団との柵が薄まった長州出身者が軍の中枢を担っていった、ということが意外だった。そして何より評価が変わったのは言わば藩閥政治の権化で権力を悪どく握っていたと個人的に理解していた山縣有朋が、軍を政治から分離させることに心を砕いていた、ということかな。一般的には日露戦争で慢心した帝国陸軍が日本を戦争に巻き込んだ挙句、破滅に導いた、と説明されることが多いように思うのだけど実態はかなり乖離していてそもそも清国にめちゃくちゃな要求を突きつけて国際的な孤立を招いた大元は世論とそれに乗っかったポピュリストの大隈であったとか、元々陸軍は大陸への派兵に消極的であったとか知らなかったことが多く参考になった。植民地とそこに駐留する軍は必ずおかしなことになるので、という元々の陸軍の懸念が結果的に満洲国と関東軍という形で的中してしまうところがなんとも皮肉。諸々大変参考になりかつ興味深い作品でした。