作品一覧

  • 近代日本と軍部 1868-1945
    4.0
    1巻1,375円 (税込)
    「近代理性の象徴」のはずであった組織はなぜ暴走したのか? 明治維新から太平洋戦争敗戦による崩壊まで、一人で描ききった超力作! 戦前日本の歴史とはある意味において、相次ぐ戦争の歴史でした。といって、日本が明治維新以来一貫して軍国主義路線を取っていたわけではありません。しかし結果として、後世の目から見るとそうみなさざるを得ないような「事実」の積み重なりがあることも、やはり否定することはできないでしょう。 では、このような「意図」と「結果」との大きな乖離は一体なぜ起こったのでしょうか。 明治憲法体制とは、極論すれば大急ぎで近代国家の体裁だけをこしらえた、「仮普請」にすぎませんでした。そのことは伊藤博文をはじめとする元勲たちもよくわきまえており、伊藤などは折を見て、より現状に即した形での憲法改正にも取り組むつもりでした。 著者によれば、明治憲法体制の改正が唯一可能だったのは、その起草者である伊藤が憲法改革に取り組もうとし、また軍部自体もその必要性を認めていた日清戦争後の時期しかなかったということです。しかし日露戦争での奇跡的な勝利により、この改革への機運は急速にしぼんでしまいました。またその後、桂太郎、児玉源太郎、宇垣一成、永田鉄山といった近代軍の「国家理性」を体現したリーダーたちがあるいは早世し、あるいは失脚し、暗殺されるという不運もありました。そしてついには軍が政治を呑み込み「国家」自体となるまでにいたります。東条英機が首相のまま複数の大臣を兼任し、さらには陸軍相、参謀総長を兼任するまでに至ったことは、まさにその象徴と言うことができるでしょう。 「仮普請」でしかなかったはずの明治憲法体制が、政治リーダーの世代交代を重ねるに従って「デフォルト」となり、次第に硬直化してゆく。当初、政治の軍事への介入を阻止するために設定されたはずの「統帥権」が逆に軍が政治をコントロールする道具になってしまったことなどは、それを象徴する事例でしょう。組織としての宿命とはいえ、改革の機を逸した代償はあまりにも大きかったとやはり言わざるを得ません。 本書では、歴史を後付けではなく、極力「リアルタイム」で見ることを目指し、近代日本最大のパラドクスである「軍部」の存在の謎に迫ります。
  • 山県有朋 明治国家と権力
    4.8
    1巻1,056円 (税込)
    明治国家で圧倒的な政治権力を振るった山県有朋。陸軍卿・内相として徴兵制・地方自治制を導入し、体制安定に尽力。首相として民党と対峙し、時に提携し、日清戦争では第一軍司令官として、日露戦争では参謀総長として陸軍を指揮した。その間に、枢密院議長を務め、長州閥陸軍や山県系官僚閥を背景に、最有力の元老として長期にわたり日本政治を動かした。本書は、山県の生涯を通して、興隆する近代日本の光と影を描く。

ユーザーレビュー

  • 山県有朋 明治国家と権力

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    山縣有朋の強権的なイメージとは違った景色が見れる。あまり偏った思想を持たず、中和的な政治を行う人とは知らなかった。晩年には保守的な思想も垣間見えるが、あくまで尊皇を貫き通した人物であるとの見方をすれば良いのかな。軍人らしからぬ政治にも一定の能力を持つのは、明治期の特徴だと感じる。

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    2025年06月10日
  • 山県有朋 明治国家と権力

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    小林道彦「山県有朋 明治国家と権力」中公新書
    山県有朋という矛盾に満ちた政治家の評伝。軍人政治家として徴兵制などに尽力したが、地方自治などの設計にも関与し、内務官僚と縁が深まった。帝国大学を卒業して官僚として奉職した人達が政党政治家の猟官・政治任用を嫌って山県に頼るようになったというのは人間心理として理解できる。彼は日清戦争では自ら出征、日露戦争では元老として振る舞う。ただし日露戦後は子飼いのはずの児玉源太郎や桂太郎らが山県の棚上げに走るなど権力基盤は空洞化していた。大正時代に入ると国際情勢の現実と彼の認識の齟齬は隠せなくなってきた。最終的に、裕仁親王、後の昭和天皇の婚姻への干渉で事実上失脚し

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    2024年10月12日
  • 山県有朋 明治国家と権力

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    山県有朋
    明治国家と権力
    著:小林道彦
    中公新書 2777

    おもしろかった、明治期の日本は、今日のような米国の核の傘に守ってもらっているような日本ではない
    まさに、明治維新によって、独立したばかりの小国である日本は、ロシアという超大国の脅威にさらされていた。

    明治という時代は、仮想敵国であるロシアからの防衛戦争を行うための時代であった。
    それを可能としたのは、明治天皇のカリスマ性、伊藤博文の内政的手腕、そして、山県有朋の陸軍創設とその拡張性であった

    山県有朋の構想した防衛計画とは、主権線という日本領内のラインとともに、利益線という日本国土を防衛するためのバッファとして設けられるラインを設

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    2024年09月20日
  • 山県有朋 明治国家と権力

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    坂の上の雲が正岡子規と秋山兄弟で明治の上り坂を描いたのだとしたら、昭和の下り坂への入り口までを追える人物は山県有朋なのであろう。小説の主人公にはなりにくい人物だが、新書の形式での評価評論はなじみが良い

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    2024年02月23日
  • 山県有朋 明治国家と権力

    Posted by ブクログ

    巻末に付いている山縣有朋の伝記のほぼを読んでいるが、伊藤之雄『山県有朋』(2009年)から山県評がどうも民主派によりすぎになってきている気がする…。昔は元老の中でも最右派、なんなら太平洋戦争の遠因などと言われたものだが。右からは左、左からは右と言われる、という人は意外に多くいるものだが、まさか山縣有朋がそういうポジションにおさまる日がこようとは。
    新書なのでより深い内容は引用元(『山縣公のおもかげ』からの引用が妙に多い気がするが、この著者は入江貫一という山県の秘書なので、この本からの引用が多くなされるほど山県って実はいい人だよね、と思わされる罠がある…と個人的には思う)の本を読んだ方が良い。最

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    2024年04月29日

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