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日ソ戦争とは、1945年8月8日から9月上旬まで満洲・朝鮮半島・南樺太・千島列島で行われた第2次世界大戦最後の全面戦争である。短期間ながら両軍の参加兵力は200万人を超え、玉音放送後に戦闘が始まる地域もあり、戦後を見据えた戦争だった。これまでソ連の中立条約破棄、非人道的な戦闘など断片的には知られてきたが、本書は新史料を駆使し、米国のソ連への参戦要請から各地での戦闘の実態、終戦までの全貌を描く。
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Posted by ブクログ
近現代史に纏わる話題を取上げた一冊に出会うと、「未だ知るべきこと、考えるべきことが多い」という感を抱く場合が在る。本書はそういう場合の典型例ということになるのかもしれない。或る事柄に関して知り、考えるというのを、多分「学ぶ」と呼ぶのだと思う。 1945年8月から同年9月という長くはない期間だが、多く...続きを読むの犠牲も生じ、色々な禍根のようなモノを遺していると見受けられる、「帝国」と称していた日本の「最後の軍事行動」が本書で言う「日ソ戦争」である。 古くから、1945年8月の出来事について「太平洋戦争にソ連軍が参戦」という言い方をしていたと思う。遠い記憶を辿るが、小学生の頃に初めて教科書やその他の本等で歴史に触れたような頃には、「太平洋戦争にソ連軍が参戦」というような言い方をしていた。ソ連と日本との戦いそのものを「〇〇事件」、「〇〇事変」、「〇〇戦争」というような、軍事行動が入る出来事として特定する呼び方を余りしていない。 そういうことなので、1945年8月から同年9月の出来事を「日ソ戦争」と呼ぶことにするというような話題の提起から本書は起こっている。最初から「大いに気付かされた」という感じだ。 本書では「日ソ戦争」という局面に至る迄、所謂「参戦」への経過や背景と、「日ソ戦争」そのものの推移、収束ということに関して、判り易く纏められている。細か過ぎない程に各種の挿話を引きながら、大局が掴み易いように、巧く纏まっている。 「日ソ戦争」そのものについては、満州や朝鮮半島北部等での展開が在り、千島列島や南樺太での展開が在る。戦後の占領というようなことを巡るソ連と米国との駆け引きが在って、色々な事柄が現在のような形になって行く契機となった出来事も発生している。 個人的な見聞だが、サハリンのユジノサハリンスク(嘗ての樺太の豊原)に戦争の歴史を紹介するような展示施設が在り、占守島の戦いのことや、ソ連軍の南樺太進撃のこと等が紹介されているのを見た記憶が在る。とりあえず、如何いう形であれ、ロシアでは「ソ日戦争」という経過を伝えようとしている。対して、日本国内では如何であろうか?そんなことも思い出しながら本書を読んだ。 本書は、或る程度の「定型的な観方」を離れて、もう少し自由にこの「日ソ戦争」に纏わる時日の紹介と考察を展開しようとしている。実に興味深い。 ロシアではこの「日ソ戦争」(または「ソ日戦争」)に纏わる「9月3日」を「政治利用」というような動きも見受けられる。日本の側で似たようなことをする必然性も無かろうが、日本も関わっている出来事に関して、何を如何論じているのかは考えるべきで、考える材料も集めておくべきであると思う。そうした意味で、本書は非常に好いように思う。 実は「学ぶべき余地」が大きな時期の歴史について、こういう判り易く纏めて解くという本は重要だと思う。広く御薦めしたい。
久しぶりにとんでもない良書に出会えた充実感があった。日ソ戦争という、太平洋戦争のサブの文脈として捉えられがちな陰惨な戦争を本気で解読した一冊であると思う。シベリア抑留、満洲残児、ラストエンペラー溥儀というような独り歩きしている単語の裏にある歴史的背景とソ連という国の持つ恐ろしい性格をこれほど素人にも...続きを読むわかりやすく示している一冊はあまりなく、単なる事実の羅列ではなく、将兵や政治家の人物像や心理が伝わって来た。今自分が普通にぬくぬくと生活をしていることに心から感謝し、歴史の証人たちに敬意を表したくなる一冊だった。
本年はちょうど終戦から80年。だからというわけではないが、第28回司馬遼太郎賞を受賞するなど評価が高い本作を読んでみた。本作は表題のとおり、第2次世界大戦末期に行われた「日ソ戦争」について描いた作品である。原爆投下後ソヴィエト聯邦が大日本帝国に対して参戦して、「ポツダム宣言」受諾後も戦争が継続された...続きを読むことはもちろん歴史の授業でも習うため智識として知ってはいたが、本作ではじめて知るような内容も多かった。たとえば、日本がソ聯と開戦するまさにその直前まで、聯合国との媾和の仲介をソ聯に依頼していたとは知らなかった。たしかに「日ソ中立条約」を結んでいたとはいえ、おなじ枢軸国であるドイツと大激戦を繰り広げたソ聯相手に対して、あまりにも楽観的すぎる見通しではないか。また、満洲や南樺太における戦いも、教科書などでは時系列を追って細かく学ぶことはないため、なかなか興味深い内容も多かった。とくに、軍人の家族がいち早く脱出したという話は、あまりにも胸糞が悪いが、自分がおなじ立場だったらどうしていたか胸を手に当てて考えてみると、なかなか糺弾一辺倒というわけにもいかない気がする。いっぽうでソ聯の側にも胸糞悪い内容が含まれていて、現地の民間人相手に相当あくどい行為を繰り返していたという記述を読むに、現在も続くウクライナ戦争でのロシア軍による暴虐非道との共通点が見いだされ、ロシア軍のDNAのようなものを感じずにはいられない。このように読後感がよくない箇所も多くはあったが、とはいえ戦争について学ぶことはこれからも不断の努力をもって継続してゆきたい。
日本とソ連の戦争の概要を述べた本。研究書という堅苦しさがなくすっと読める。起こったことがていねいに紹介されているが、深みは感じられない。 戦争というものが多くの民間人を犠牲にするものだということははっきりと分かる。
日本史では終戦記念日は1945年8月15日と習う。今も政府はこの日に戦没者追悼式を開く。だが満州・朝鮮半島・南樺太・千島列島では8月8日から9月上旬までソ連との戦闘が続いていた。停戦命令が出ているのに侵略してくる敵国があり、この自衛に迫られる日本軍、そして巻き込まれどころが甚大な被害を受けた民間人。...続きを読むこれらは断片的には聞いていたが戦後80年を前に体系的にまとめて読みたいと思い手に取ってみた。期待以上によい本だった。 この本では、かつて習ったシベリア抑留や朝鮮半島の分断、ソ連が北海道の分割統治を提案した話などの背景が新資料を通じてわかる。と同時に、ソ連(ロシア)という国のありようを戦争を通じて浮かび上がらせる。彼らに国際法、戦争犯罪という概念は無力だ。 スターリンらソ連の指導部からすれば40年前の日露戦争の復讐という面もある。だが独ソ戦で疲弊した国内では厭戦ムードもあり、著者がいうように戦争の名義なく自国軍の兵は消耗した。それでも物量では日本を圧倒し、停戦交渉になるとのらりくらり。非戦闘員の殺害も抑留もやりたい放題。現在のロシアとウクライナの戦争にもつながる。 ソ連の対日参戦はアメリカのローズヴェルト、トルーマンが描いたストーリーであり、実際に幾度も働きかけた。アメリカは自国兵士の消耗を避けながら日本を無条件降伏させるため、開発中の原爆とソ連の対日参戦を天秤にかけ、最終的にはどちらも使った。ソ連軍を北海道に上陸させない代わりに、北方領土の領有は曖昧にして事実上黙認した。演出家はアメリカだ。 日本は日本で本土決戦を避けるためにソ連に仲介を委ねるという政府方針があるがために、満州などで対峙するソ連軍は攻めてこないという根拠薄弱な楽観論が蔓延した。いざ戦闘となると、北千島の占守島などのように兵士は奮闘する。よくいう「日本軍は兵士は優秀だが、将校は最悪」という言葉を思い出した。 日米ソのせめぎ合いで見ると、スターリンの優秀さが際立つ。独ソ戦のマイクロマネジメントの反省から大方針を決めて後は現場の将校に判断を委ね、外交ではアメリカをたぶらかし、中国国民党を利用しつつ、戦後は日本から得た領土、抑留民、資産を活用し、中国共産党を介して勢力圏を拡大した。教訓は多い。 来年は戦後80年。ラジオで半藤一利氏が79年までは現代史だが、80年は歴史になるとうようなことを語っていた。「後期日中戦争」(広中一成著)と並び、日本史でほとんど学ばないこういう話もしっかり受け継がれるべきだと強く感じた。
大概この手の本は読み難かったりするが、こちらはとても読みやすかった。 興味がなくて手にした方や、細切れに読んでもちゃんと理解できるだろう。 この本を読む直前まで、シベリア抑留1450日を読んでいた、その後だった影響はすごく感じながら読んだ。 まず誤解していたのが、日本は第二次世界大戦に「負けました...続きを読む」とやったのかと思ったら、ロシアに交和の仲介を依頼して最後の最後まで返事を待っていたと言うことがビックリだった。 ロシアからの返事を諦めかけた頃長崎が被爆、そして頼りにしていたロシアがまさかの参戦。 樺太や千島列島の行方、この本と出会わなければ知らなかったとこがたくさんあった。 特に、同じ樺太にいた民族でも、アイヌだけは日本として扱われたと。 これまた直前に読んでいた、熱源と重なることが多く、私にとっては大変深い部分に刺さるものだった。
<紹介文> 日ソ戦争とは、1945年8月8日から9月上旬まで満洲・朝鮮半島・南樺太・千島列島で行われた第2次世界大戦最後の全面戦争である。短期間ながら両軍の参加兵力は200万人を超え、玉音放送後にソ連軍が侵攻してくるなど、戦後を見据えた戦争でもあった。これまでソ連による中立条約破棄、非人道的な戦闘な...続きを読むど断片的には知られてきたが、本書は新史料を駆使し、米国によるソ連への参戦要請から、満洲など各所での戦闘の実態、終戦までの全貌を描く。 <感想> ・改めて旧ソ連の非道を認識 ・北方領土は不法占拠ということも改めて認識 ・満州はある程度認識されているが、樺太、千島列島住民の悲惨さは沖縄レベル
空白の歴史、現在の日本とロシアの関係にもつながる、終戦前後の混乱期の満州、樺太、千島での戦争を俯瞰的に捉えた好作品。 アメリカとの戦いは多くの著作があるが、終戦前後の混乱期、日ソの戦いの著述は極めて少ない。数少ない両国の資料を元に再現する本書。中公新書たがらこそ味わえる歴史のダイナミズム。
1945年8月8日から9月上旬まで満州、朝鮮半島、南樺太、千島列島で行われた第二次世界大戦、最後の全面戦争。 玉院放送後に先頭が始まる地域もあり、戦後の状況を見据えた戦争だった。ソ連の中立条約破棄、非人道的な戦闘などその1部については以前から知っていたが、米国とソ連の関係、ソ連と中国国民党、中国共産...続きを読む党との関連、ソ連の戦争の文化、現在のウクライナにも続いている。領土拡張への思惑など、新たに目を開かせられることも多かった。 北方領土問題がなぜ進まないのか?沖縄小笠原など、アメリカの占領地とソ連の占領地の違い、スターリンの地図上に描いていた北北海道、留萌と釧路を結ぶ直線には改めて驚かされた。
日本のポツダム宣言受諾直前のソ連の対日戦争参戦から8月15日以降も続けられたソ連との戦いを丹念にまとめた労作。もっとこうだったら失われなかった命や領土もあったのかもしれないといった思いを持つところも多いが、今の世界はこの現実から繋がっている。 (省略)スターリンと書簡を交わし、千島列島を占領する道...続きを読むを自ら閉したのはトルーマンだ。そもそも、ヤルタ秘密協定に署名したのはローズヴェルト大統領である。アメリカが千島列島の「喪失」の責任者を問うなら、彼ら大統領だろう。現在も北方領土問題にアメリカが消極的なのは、こうした過去と無関係ではない。(p 234)
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