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1917年11月に勃発したロシア革命。共産主義勢力の拡大に対して翌年8月、反革命軍救出を名目に、日本は極東ロシアへ派兵、シベリア中部のバイカル湖畔まで占領する。だがロシア人の傀儡政権は機能せず、パルチザンや赤軍に敗退を重ねる。日本人虐殺事件の代償を求め、北サハリンを占領するなど、単独で出兵を続行するが……。本書は、増派と撤兵に揺れる内政、酷寒の地での7年間にわたる戦争の全貌を描く。
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Posted by ブクログ
知らなかった歴史を知ることができ、興味深く読みました。 尼港事件については本書で初めてその内容を知り、言葉を失いました。 情報の取り扱い、意思決定のルート、様々な立場の人たちの思惑がからんだ先に起きてくる様々な事象に、これは過去のことと割り切ってしまってはいけないと、身が引き締まる思いでした。 ...続きを読むまた、戦争を終わらせることの困難さが、意思決定に携わる要人たち各々の人柄とともに伝わってきました。死者が増えてゆくほど引き返せなくなってゆく、その場にいる人にしかわからない苦しさ。「どうやって終わらせるのか」の判断の厳しさも思いました。 歴史に疎い私にもイメージが浮かぶほど、わかりやすく書かれており、シベリア出兵について初めて手に取ったのが本書でよかったです。
歴史においてあまりクローズアップされないシベリア出兵ですが、実は後の第二次世界大戦にもつながっていく非常に重要な出来事でありました。 共産主義のソヴィエトを警戒する意図だけではなく、欧米諸国からの圧力、そして第一次世界大戦の分け前を得るために欧米諸国にアピールしなければならなかった背景など、この本を...続きを読む読んでいると知らなかった意外な発見に驚くことが多々あります。 シベリア出兵は日本の歴史を考える上で実は大きな意味を持った事件だったということをこの本では感じさせられました。
シベリア出兵についてあまり書かれていないとあとがきでは述べられていたが、その後結構書かれていると思われる。朝日新聞で紹介されていた本である。 歴史というよりも日本のシベリア出兵における政治史であるというのは、原敬日記をもとにしているのからかもしれない。 歴史の教科書に書かれていない詳細な記述であ...続きを読むった。
[七年の逡巡]日本史の教科書でもちょこっとしか取り上げられないシベリア出兵。七年に及んだこの出兵の背景を分析するとともに,それが国際政治に与えた少なくない影響について考察した作品です。著者は,1980年生まれの新進気鋭の日中露関係史研究者である麻田雅文。 目の付け所だけですでに満点を叩き出したく...続きを読むなる一冊なんですが,その内容の濃密さ故に大絶賛を惜しみなく与えたくなる作品でした。読み進めるほどに「え,こんなことがあったのか」と驚かされる事実を次から次へと紹介してくれており,日本近代史に興味のある方はもちろん,国際政治に興味を持つ方にも強くオススメしたい一冊です。 〜開戦の決断は華やかで,勇ましい。その結果が戦勝であればまだしも,得ることもなく戦争を終わらせる責任を負うのは,その何倍も難しいことをシベリア出兵は教えている。〜 高評価続出の理由がよくわかりました☆5つ
我々日本人にも印象が薄い「シベリア出兵」を体系的に理解できる一冊。かくいう私もシベリアというとWW2後のシベリア抑留のイメージが殆どであり、本件については学生時代に知った程度であった。 WW1やロシア革命との関係や共同出兵した連合国との軋轢などは興味深かったし、以後の日中戦争、太平洋戦争へと突き進...続きを読むむ素地がこの時にできていたように思う。 最近新書の中では中公新書を選択する確率が高くなってきている。それだけ好奇心をそそられる本が多い。
これは読んでよかった。 教科書で触れたシベリア出兵、正直なんでこんなことをしたんだろうと思っていた。第一次世界大戦が起こって、同盟の関係で大陸に行って、でも撤退したのが遅くて批判…てくらいしか触れてなくて、全然意味が分からない。 分からないのは、知らないから。この本を読んで、全部納得した。外交の...続きを読む怖さ、このころからもう、次の戦争、日中戦争や大東亜戦争の足音は聞こえていたのだ。 シベリア出兵が次の日中戦争の教訓になっていないという悲劇、という一文も絶句した。 前回読んだ本に「人類の歴史は教訓が生かされない」とあって、これが戦略のロジック…と思い絶句した。 となれば、またこの国は…なんて空を仰いでしまう。その時私たちは冷静に物を見ることができるのだろうか(できないだろうな)
ロシア革命の混乱の中、第一次世界大戦の終結への諸外国と人々の思惑によってシベリアの地に出兵された、その7年間について分かりやすく書かれています。出兵に意味はなかったと言われていて日本も多くを失ったのですが、では誰が出兵させたのか、なぜ幕引きが出来なかったのか。一人の人間が単純に決めたことではない舞台...続きを読む裏を見るにつけ、あれ、と既視感を覚える場面も、読後感にも、あります。何かを始めることは簡単でも、それを収めることの難しさ。今でも共通して見られるのではないでしょうか。とりあえずやって見たらいい、ダメだったらやめたら良い。ということは会社で働いていると当たり前のように聞きますが、それはとても無責任な発言だと気づかされました。現代の会社で働いていると、それは金銭的な損失でしょうが、ひいてはシベリア出兵のように人命にまで発展する可能性があるということ。何よりも責任の所在が曖昧になってしまうということ。重く考えなければならないと思わされました。
ロシア革命による混乱に乗じて各国が利権を得ようと介入したシベリア出兵。自分が生まれる前に他界した父方の祖父(富山)はこのシベリア出兵に従軍していた。朝鮮の光州でも商売やっていたので、大陸に何か思うところがあったのだろうか……。早稲田大学教授の本野英一先生のお祖父さん(本野一郎)登場(当然だが)。うち...続きを読むの祖父は単なる兵隊さんだが、こちらは時の外務大臣。ロシア通として知られ、シベリア出兵に積極的であった(ただし、1918年に57歳の若さで胃癌で亡くなった。寺内正毅も途中で死亡。原敬も死亡。山県有朋も死亡。加藤友三郎も死亡*。是清は生き残ったが、責任者が次々と死んだことも出兵が長引いた一因か。*加藤友三郎は1923年に死亡なので完全撤退までは生きられなかった)。 北サハリンからの撤兵も含めて7年間にもわたる海外での軍事行動で失われた将兵の数が3,333人(軍属のみの戦病死者)というのは意外に少ない気がした。もちろん、内戦で死んだロシア人の数(8万人という推計は過大かという著者の指摘)に比しての話だが。また尼港事件などでの民間人犠牲者は含まれていない。 ともかく他国の内戦に干渉するという、今も繰り返される軍事介入の典型。利害関係者が非常に多岐にわたるにもかかわらず、そして新書という限られたスペースにもかかわらず、大変わかりやすく書かれており、オススメ。当時の国内での動きもシベリア出兵というファクターを1枚噛ませると見えてくることも多々あり、勉強になった。 余談だが今年は大和和紀「ハイカラさんが通る」の劇場版アニメも公開されるとか。あれもシベリア出兵が時代背景……というか、まさにそれがなければわけわからない物語。今の若い人もこの本を読んで、「ハイカラさんが通る」を観に行かれることを強くオススメしたい(違)。
「“用語”が何となく知られている他方で、内容が然程詳しく知られているでもない」というような史上の事案は多々在る。そういうモノに関して「手際よく説く」というのが、“新書”の「望ましい役目」だと思うが、本書はそういう役目を確り果たしてくれる一冊だ。 「シベリア出兵」だが…これは大正時代の第一次大戦の終わ...続きを読むるような時期、色々と混迷した当時の世相等が語られる文脈で「さらり」と用語が登場する…そういうような、「軽い扱い」である印象を免れ得ない。が、実際には「7年間」もの長きに亘って、国外で軍事作戦が展開され、出て行った将兵や現地の人達の中に大きな犠牲が生じていた事案で、もっと注目されて然るべきなのであろう… こういうようなことを踏まえて本書は登場したようだ。事態が発生したのが1918年ということで、間も無く“100年”ということにもなる…2014年頃、発生から“100年”ということで「第一次世界大戦」にスポットライトが当たった経過が在ったが、著者はそういう事柄も意識して本書に取組んだようだ。 価値ある一冊で、多くの方に薦めたい。
日本でもあまり知られていないシベリア出兵について解説を入れて、時系列に何があったかが記載されている。日本の中ににも出兵の機運や、領土的野心があったことは確かで、しかしさまざまな意見があるなかで強行的なものが採用されたということなのだろう。現代の日本からは信じられないが、沿海州に親日国家を作るという構...続きを読む想もあり、しかし、これが戦略的には通常なのだとも気づく。翻って、この動きが米国の警戒感を引き起こしたことも述べられている。今考えれば、この時、こうしていればと思いを巡らせてしまうが、その時々にはベストと思われる判断(もしくはそれに近い判断)だったのだろうと思う。知らなかったことを知ることができるという意味だけでも、本書は有意義と思う。
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シベリア出兵 近代日本の忘れられた七年戦争
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麻田雅文
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