あらすじ
日ソ戦争とは、1945年8月8日から9月上旬まで満洲・朝鮮半島・南樺太・千島列島で行われた第2次世界大戦最後の全面戦争である。短期間ながら両軍の参加兵力は200万人を超え、玉音放送後に戦闘が始まる地域もあり、戦後を見据えた戦争だった。これまでソ連の中立条約破棄、非人道的な戦闘など断片的には知られてきたが、本書は新史料を駆使し、米国のソ連への参戦要請から各地での戦闘の実態、終戦までの全貌を描く。
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Posted by ブクログ
1945年8月15日、日本はポツダム宣言を受諾し、敗戦を認め、日本の戦争は終わった。という、常識は正確ではない。日本はまだ戦争中だった。なぜなら、ソ連が8月8日に日本へ宣戦布告し、満州や北方では日ソ戦争が続いていたからだ。戦争は半月で終わったとはいえ、これはこれで間違いなく戦争だ。しかも、その結果として日本は多くの国民をシベリアで抑留され、北方領土を失う。
なぜ、ソ連は敗戦濃厚な日本へ宣戦布告したのか。なぜ、敗戦を受け入れた日本へさらに戦争を続けたのか。そして、日ソ戦争を経て、日ソ両国とアメリカ、中国が得たもの、失ったものを本書は分析する。
突然のソ連参戦で油断していた日本は無抵抗に、蹂躙されたという印象を持っていたのだが、意外に抵抗し、反撃したようだ。戦死者の数も両国拮抗している。ソ連側としても対ドイツ戦で戦力を使い果たし、ソ連国民の日本参戦モチベーションが上がっていなかったのがその理由。
とはいえ、この戦争におけるソ連、つまりロシアの情報提供が少なく、加えて北方領土問題という現在進行中の政治が絡んでいるため、歴史家にとって研究しにくい分野らしい。
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元々終戦間際の調整役としての役回りを期待していたソ連の侵攻、それに続く奪取や蛮行。
今の日露関係の起点のみならず、中国とロシアとの蜜月の関係、ウクライナ戦争に通ずるロシア人に蔓延るDNA等、示唆がひたすら多い良書だった。
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八月十五日正午の玉音放送で、戦争が終わり、日本が負けた。これでもう空襲に怯えないで済む。ところが、満洲、朝鮮半島、樺太、千島列島にとってはそうではなかったことが初めて分かった。本当に、ソ連が八月八日に対日参戦したことは歴史で習った。しかし、八月十五日を過ぎても戦闘が行われ、住民が奪われ、強姦されたことは習わなかったのではないだろうか。
本書の最後に年表があり、最後の項目は九月十七日、ソ連軍、北緯38度線以上の朝鮮半島の占領を完了。
このあと、武装解除された関東軍は、もう日本人住民を守ることができず、満洲や樺太などに住んでいた日本人は(今まで圧政を敷かれていた)朝鮮の人やソ連兵の暴力にさらされたらしい。
また、冬が近づく中、日本に帰ることもさせてもらえず、多くの人が飢えたと。
これまで聞いていた他の地域に負けず劣らず、悲惨な状況が目に浮かんだ。
この本は、南方戦線に比べて目立たないし期間も短い日ソ戦争に焦点を当てて書かれたものだ。
アメリカとソ連のパワーバランスや、ヤルタ密約などのやりとりから、会戦の様子、将校一人一人の対応など細かなところまで、聞きなれない樺太や朝鮮とソ連の国境付近の地名を丹念に追いながら詳述してある。
現在でも北方領土問題が残っており、決して過ぎ去った過去の出来事ではないと思う。
大量の日本語、英語、ロシア語の文献をもとにして書かれたこの本は、現代の日ソ(日露)関係を考える上で必読なのではないだろうか。
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自分の歴史観が揺さぶられる一冊。1945年の8月、9月に満州、朝鮮半島で何が起きていたのかを知る。今まさにロシアとウクライナが戦っていることを踏まえても、第2次世界大戦から刻々と歴史は続いており、国同士の争いは終わっていないことを感じられる。
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第二次世界大戦終結間際に起きた日ソ戦争の全貌を描く本。あとがきに「日ソ戦争で流された血や涙はまだ乾いていない」とあるように、悲惨な実態であったにもかかわらず、その詳細はまだ明らかでない。結論から言うと、終戦間際の日本が弱ったところにソ連がハイエナのように食いつき、領土や資源、あげくに抑留という形で労働力まで奪っていった悪辣な戦争と言える。まあ日本もとやかく言えるような戦い方をしていないが、強姦や虐殺が当たり前だったソ連軍の非道はそれを上回る。著者の指摘するように、日ソ戦争は日本だけでなく、朝鮮半島の分断や中華人民共和国の誕生など東アジアの戦後史に大きな影響を与えた。その意味でも、日ソ戦争の全体像を知ることが出来たのは意義あることであった。
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太平洋戦争の最末期、突然開かれたソ連との戦端。参戦のタイミングを測るソ連。一方でアメリカの原爆投下で戦争は終結に向かう。終戦後の日本統治、北海道統治は慌ただしく決められ,北方領土四島の領有もきちんと話し合われた形跡がない。
この日ソ戦争に関してソ連側の軍規の緩さ、軍の残虐さ、横暴さは今も変わらないと思う。略奪品を一旦ソ連軍に集めはするが、安く兵士に払い下げるなど,常識が通用しない行動をとる。その最たるものがシベリア抑留。ソ連側のロジックとしては、独ソ戦で多数の死傷者を出したため、復興に必要な人手を捕虜にやらせた、ということだろうが、国際法上は全く根拠のない違反行為である。
本書は、「全体の情勢」「満州における関東軍との戦闘」「南樺太における戦闘」「北方領土を含む千島列島における戦闘」を詳述する労作。
父がシベリア抑留者、母が終戦時国後島に暮らしていた私にとって、待望の一書だった。
Posted by ブクログ
・「8月15日で戦争は終わった」って、ずっとそういうふうに思ってた。でもこの本を読むと、終わったどころか、むしろそこから始まった戦いもあったんだなと。
・ソ連が満洲とか樺太とか千島に一気に攻めてきたのは知識としては知ってたけど、ここまで本格的だったとは思ってなかった。
しかも、民間人がすごく巻き込まれていたということにびっくりした。開拓団の話はきつい。
・8月15日以降の日本って「平和になった」っていうイメージだったけど、実際には現地では停戦がうまく伝わらず、むしろ攻撃が激しくなってたりする。
終わるはずの戦争が、別のかたちで続いてる感じ。
・シベリア抑留につながる話も出てくる。捕虜として扱われるのか、戦犯としてなのか、そのあたりもあいまいなまま連れていかれてたらしい。
・全体的に、すごく丁寧に資料を出して書いてある。
読みながら、高校のときに知ってたら、日本史の印象だいぶ違ったかも思った。
Posted by ブクログ
かなり前に占守島の戦闘を描いた浅田次郎さんの「終わらざる夏」を読みました。あの時も苦い思いが残りました。昭和天皇の無責任さと日本政府、日本軍の底抜けのバカさ加減は既に十分認識していましたが、ロシアという国の陰湿、非道さとロシア人の程度の低さはやっぱりそうだったかと改めて思わされました。プーチンはまさにそのロシアを象徴する悪人。そんなロシアと仲良くする必要などないですね。北方領土返還まで国交断絶しても良いんじゃないですか。ロシアで儲けようとしている日本企業には不買運動を起こすべきだと思いました。
Posted by ブクログ
圧巻でした。
『シベリア出兵』に続けて本書を読み、今まで知らなかったソ連と日本の出来事や、アメリカとの関係性を認識することができました。
戦争を終わらせることの難しさ。
武装解除によって起こること。
民間人が取り残されたときに起きること。
集団自決を選ぶに至った女性たちが置かれた環境の厳しさ。
戦争は起こしてはならないと、改めて胸に刻みました。
Posted by ブクログ
むがー!
どうする?どうしたらいい?
はい、『独ソ戦』に続いて今度は、その反対側で行われた『日ソ戦』について学びます
しかも今回は日本が絡んできますので、より身近
それにしてもソ連軍非道いわ
いや日本軍だってまぁまぁ非道いんだが、あいつらほんまにエグい
無条件降伏しとるのにがんがん攻めてくるし
民間人殺しまくりだし
女性は強姦されまくりだし
あるものみんなとってくし
どさくさに紛れて千島列島占領しちゃうし
どんどんシベリアとか送るし
スターリンが非道いのか
ソ連軍が非道いのか
ロシア人て基本そんな奴なのか
戦争でおかしくなってたのか
その全部なのか
わかりません
分かりませんけど
この本を読んでね
どうしても思っちゃう
「お前ら、いつかやったるかんな!」って
わいなんかほら武闘派やないですか
だからもうソ連軍の非道は許せんのよ!
だからどうしても思っちゃう
ちょっとだけど思っちゃう
いつか仕返ししたるわ!って
それがいかんのよ!
絶対ダメなのよ!
だけどやっぱり思っちゃう
だってほんと非道いんだって
この気持ちをさらっと乗り越える方法を見出して、地球のみんなで共有できたら、きっと恒久的な平和ってやつが実現するのかもしれんな〜なんて思ったけど、なんかすごく難しそうだな〜
まぁ、でも今回はぐっと耐えよう
良かったなプーの字
わいが温厚な武闘派で(自己矛盾)
Posted by ブクログ
教科書では、「8月9日にソ連が、中立条約を破棄して侵攻した」と短い記述があるくらいだと理解していたが、短期間で広大な領域で戦闘が行われたことを初めて知った。力作。
第二次大戦の裏
ソ連参戦の一行の裏が、よくわかる一冊。北方領土を守った日本陸軍の健闘、シベリア抑留や、うちの親、祖父母も経験した満州からの引き揚げの苦労が身に迫ってきた。巻末の参考文献のボリュームに、どれだけのご苦労と思いで書かれたかが伝わる。
Posted by ブクログ
1945/8/8から始まった戦争の記憶。大変分かりやすかった。「戦争の記憶の風化に抗いたい」著者の思いがまっすぐに伝わってくる。
高校生や大学生、若い世代に読んでほしい。一冊読み切るのが難しいと感じている人には、端的にまとめられた「あとがき」だけでも読んでほしい。そして共に歴史をつないでいきたい。
Posted by ブクログ
久しぶりにとんでもない良書に出会えた充実感があった。日ソ戦争という、太平洋戦争のサブの文脈として捉えられがちな陰惨な戦争を本気で解読した一冊であると思う。シベリア抑留、満洲残児、ラストエンペラー溥儀というような独り歩きしている単語の裏にある歴史的背景とソ連という国の持つ恐ろしい性格をこれほど素人にもわかりやすく示している一冊はあまりなく、単なる事実の羅列ではなく、将兵や政治家の人物像や心理が伝わって来た。今自分が普通にぬくぬくと生活をしていることに心から感謝し、歴史の証人たちに敬意を表したくなる一冊だった。
Posted by ブクログ
秀作。
日本人の殆どが注目していないのに大事な歴史。もっと知らなけらばいけない。
日本最後の(最後にしたい)戦争。
ロシア(ソ連)は信じるに足らない国であることを認識しなくてはいけない。中国も。米国も信じ切ることはできない。自国の防衛は必要で、外交の巧みさも必要。
Posted by ブクログ
本年はちょうど終戦から80年。だからというわけではないが、第28回司馬遼太郎賞を受賞するなど評価が高い本作を読んでみた。本作は表題のとおり、第2次世界大戦末期に行われた「日ソ戦争」について描いた作品である。原爆投下後ソヴィエト聯邦が大日本帝国に対して参戦して、「ポツダム宣言」受諾後も戦争が継続されたことはもちろん歴史の授業でも習うため智識として知ってはいたが、本作ではじめて知るような内容も多かった。たとえば、日本がソ聯と開戦するまさにその直前まで、聯合国との媾和の仲介をソ聯に依頼していたとは知らなかった。たしかに「日ソ中立条約」を結んでいたとはいえ、おなじ枢軸国であるドイツと大激戦を繰り広げたソ聯相手に対して、あまりにも楽観的すぎる見通しではないか。また、満洲や南樺太における戦いも、教科書などでは時系列を追って細かく学ぶことはないため、なかなか興味深い内容も多かった。とくに、軍人の家族がいち早く脱出したという話は、あまりにも胸糞が悪いが、自分がおなじ立場だったらどうしていたか胸を手に当てて考えてみると、なかなか糺弾一辺倒というわけにもいかない気がする。いっぽうでソ聯の側にも胸糞悪い内容が含まれていて、現地の民間人相手に相当あくどい行為を繰り返していたという記述を読むに、現在も続くウクライナ戦争でのロシア軍による暴虐非道との共通点が見いだされ、ロシア軍のDNAのようなものを感じずにはいられない。このように読後感がよくない箇所も多くはあったが、とはいえ戦争について学ぶことはこれからも不断の努力をもって継続してゆきたい。
Posted by ブクログ
日本とソ連の戦争の概要を述べた本。研究書という堅苦しさがなくすっと読める。起こったことがていねいに紹介されているが、深みは感じられない。
戦争というものが多くの民間人を犠牲にするものだということははっきりと分かる。
Posted by ブクログ
本を読みながら、怒りと悲しみで泣きそうになったのは初めての体験だった。
そもそも「日ソ戦争」とは何なのか、学校で習った記憶があるだろうか。おそらく無いと思う。なぜならこの戦争は日本国において公的な名称がまだ存在しないからだ。「日ソ戦争」とは、研究者が便宜上呼んでいる名称だ。
日本にとっての第二次世界大戦は8/15をもって完全に終わった訳ではなく、その後もソ連との間で戦闘が行われ、兵士はもちろん多くの民間人が犠牲になり、危うく北海道の北半分までも失いかけたという事実はもっと知られるべきだと思う。本書を読んでから今のロシア・ウクライナ戦争を見ると、ロシア(旧ソ連)が戦後80年の歳月を経てもなお、全く成熟してないんだなぁという印象を持たざるを得ない。
本書のあとがきに書かれてある「日ソ戦争で流された血や涙はまだ乾いていない」という一文に、筆者の並々ならぬ決意と覚悟を感じた。
Posted by ブクログ
戦争は突き詰めて言えば、強者による弱者に対する強奪行為。この強奪行為を国家が行うため、非常に大規模かつ計画的となる。
日ソ戦のソ連は、国家の強奪行為を計画的に行う反面、兵卒の個人的な掠奪行為には軍規がゆるいため、多くの民間人が必要以上に殺されたり被害に遭わされた。
比較的最近の戦争であるため記録が残っているが、戦国時代の日本の国内の戦でも同じような悲劇が数多くあったのだろう。
世の古今東西を問わず、戦争では民間人など弱い者は強者に虐げられ、奪われる。
国家はいかにして政治力、外交力、経済力で生き抜くかを考えて欲しい。安易に戦争に走るような下策は取ってもらいたくないものだ。
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中ソ戦争は、日本の戦争の終わりに粗暴なソ連がどさくさに紛れて攻め込んできた、くらいの認識しかなかったが、4000キロの国境を持つ中国での各種作戦、有名な都市の強奪、樺太での上陸作戦など、全体を俯瞰できた。日本の武器が、国民党ではなく共産党に流れたことが、共産党を強くする力となった。歴史のうねりがどう形作られれたか、垣間見た思い。
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日ソ戦争という言葉はあまり使うことがないが、ロシアではソ日戦争というらしい。日本の太平洋戦争というときにあまり意識することのない戦争だが、北方領土問題、満州と南樺太の残留移民問題、民間人の大きな人身被害などかなり大きな傷痕を残した戦いであったことを思い知らされた。米国ルーズベルト大統領は自国民の戦争被害を拡大したくないためにソ連の参戦を促し、スターリンがそれを弄ぶかのようにタイミングを見ての満州、朝鮮、樺太、千島での広範囲の進撃、日本がそれに振り回されていたのだ。それは8月15日の終戦記念日と私たちが呼んでいる日以降も続き、どのようにして終結するのか、読みながら不安になるほど。ソ連の北海道北半分の領有まで至らなかったことは僥倖だったように感じる。日ソ双方に多数の戦死者を生み、絶望的な形勢の戦いの中で、日本が極めて善戦していたらしきことには感心した。この北の戦争に関しては慰霊の日が無いことは大きな欠陥のように感じた。
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1945/8/8から8/15以降も9月上旬まで行われた日本とソ連の戦争についての記述。
アメリカはソ連を対日戦に参戦させようとしていたが、ドイツに集中していたソ連は断り続け、ドイツが負け、日本の負けが確定的なった時に極東へ送った軍勢を使い圧倒的戦力差で日本を後退させた。
一方日本は、太平洋戦争の戦況が厳しく、日ソ不可侵条約を結んでいたソ連に仲介を頼んでいた。対米戦が厳しく、ソ連にその気がなく、戦闘準備も情報として挙がっていたが、すがるようにソ連へ希望を託していたのが裏切られ、8/8に宣戦布告を受けた。北海道占領の意図があったが、おそらくアメリカの意を受けてそこまでは出来なかったというのが通説だが確たる証拠はない。
戦死者はそれぞれ3万人を超えるが、ソ連の日本人戦死者は8万人程度であるが戸超の可能性があるが日本の方の統計は不確か。
Posted by ブクログ
日ソ戦争とは、1945年8月8日から9月上旬まで満州•朝鮮半島•南樺太•千島列島で行われた第2次世界大戦最後の全面戦争。短期間に両軍の兵士200万人が参加した。玉音放送後に戦闘が始まる地域もあり、日本側からするとやむを得ない「自衛戦争」だが、ロシア側は「軍国主義」
日本からの「解放」となる。
日ソ戦争は、ソ連の中立破棄、シベリア抑留、非人道的戦闘など断片的に知られてきたが、本書は新史料を駆使し、米国のソ連への参戦要請から各地での戦闘の実態、日ソ双方の勝因と敗因、米国が及ぼした影響などについて考察する。
ソ連を対日戦に引き込んだのはアメリカ。その張本人はローズベルト大統領。スターリンは独ソ戦で疲弊した国内の厭戦ムードもあり、対日参戦を避けていた。しかし、領土拡大など莫大な報酬を目当てに結局、参戦、非戦闘員の殺害など、暴れまくる。
本書ではソ連の勝因を圧倒的な物的•人的資源に加え関東軍の用意した持久戦に乗らず攻め込む戦術、スターリンのリーダーシップだと分析している。一方、軍事力や経済が破綻状態にあった日本の指導者たちはソ連との開戦を望まず、時間稼ぎした上、ソ連との国境地帯にいた部隊を南方や日本本土に送り続け、挙げ句、満州の民間人の保護を後回しにして、過酷な生活を招いた
本書の分析で注目すべきはソ連、そしてロシアの「戦争の文化」。
自軍の将兵の命すら尊重せず、軍紀が緩い。戦争犯罪に当たる蛮行、住民の選別とソ連への強制連行、貪欲な領土奪取意欲、これらは現在のロシアとウクライナの戦争にもつながる。
また、日ソ戦争を演出したアメリカでも紆余曲折があった。ローズベルトが死去後、トルーマン大統領は日本を無条件降伏させるための手段として、ソ連参戦より原爆を重視していた。しかし、最終的に日本が無条件降伏をのむと、「大日本帝国の遺産相続」を巡ってソ連との争いが本格化する。結果的にソ連が参戦したことで、アメリカそれに中国国民党は満州や千島列島などを取りこぼし、この地域の大部分が共産主義陣営に組み込まれるきっかけとなった。
戦後80年を迎える節目に教科書では学べなかった歴史の舞台裏を本書から学ぶことができた。誠に意義深い読書になったと感じている。
Posted by ブクログ
2025.03.30〜04.26
どんな戦争も悲惨な結果しか、生まない。
それを未だに学習できない政治家って、何なんだろう。
それに従わなければならない国民って。
戦争開始の理由を「いかにも」的に正当化してるけど、戦勝後にはなんだかはちゃめちゃなことをしている。
「話せばわかる」が真に通用する世の中はいつか、訪れるのだろうか。
Posted by ブクログ
終戦間際の悲劇:日ソ戦争、シベリア抑留の真実と現代への警鐘
本書は、第二次世界大戦末期、1945年8月9日から始まったソ連軍による対日侵攻作戦の実態を、日米ソの視点から詳細に描き出した作品です。
戦争の実情と多角的な視点、そしてシベリア抑留
日ソ戦争は、なぜ起きたのか?本書は、終戦間際の混乱の中で起きた悲劇を、冷静かつ多角的に分析しています。特に、以下の点が印象的でした。
ソ連軍の電撃的な侵攻と日本軍の壊滅:ソ連軍は、満州、樺太、千島列島で圧倒的な兵力と機動力で日本軍を圧倒しました。日本軍は、物資の補給不足と情報不足により、有効な抵抗ができませんでした。
アメリカの対ソ戦略:アメリカは、対日戦の早期終結と戦後の国際秩序を考慮し、ソ連の参戦を促しました。しかし、その後の米ソ冷戦により、この判断は複雑な遺産を残すことになります。
日本軍の戦略と物資の補給不足:日本軍は、本土決戦を重視するあまり、満州方面の防衛を軽視しました。また、物資の補給不足は、前線の兵士たちの士気と戦闘能力を著しく低下させました。
シベリア抑留という悲劇:終戦後、武装解除された日本兵たちは、ソ連によってシベリアに抑留され、過酷な労働を強いられました。その数は数十万人規模に及び、多くの犠牲者を出しました。このシベリア抑留は、日ソ戦争の延長線上にある悲劇であり、現代においても深い傷跡を残しています。
戦術・兵站の分析と現代への教訓
本書は、単なる戦史の記録に留まらず、戦争における戦術と物資の補給の重要性を改めて認識させてくれます。特に、現代の安全保障環境を考える上で、以下の点は重要な教訓となるでしょう。
情報戦の重要性:正確な情報収集と分析は、戦略立案の基礎です。日本軍の情報不足は、現代の軍事作戦でも避けるべき教訓です。
物資の補給の重要性:物資の補給は、軍事作戦の成否を左右します。現代の軍事作戦でも、持続可能な物資の補給の確保は不可欠です。
多角的な視点の重要性:一つの視点に偏らず、多角的な視点から国際関係を分析することが重要です。
北方領土問題と日本の安全保障、そしてシベリア抑留
日ソ戦争は、現代の北方領土問題の原点でもあります。本書は、この問題の歴史的背景を理解する上で、貴重な資料となるでしょう。また、日米露中を中心とした現代の国際関係、日本の安全保障を考える上でも、多くの示唆を与えてくれます。そして、シベリア抑留は、戦後日本の国際的立場を考える上で、忘れてはならない歴史的事実です。
おわりに
『日ソ戦争 帝国日本最後の戦い』は、戦争の悲惨さと愚かさを改めて認識させてくれる作品です。同時に、現代の国際関係と日本の安全保障を考える上で、多くの教訓を与えてくれます。軍事史に興味がある方はもちろん、国際関係や安全保障に関心がある方にも、ぜひ読んでいただきたい一冊です。
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日本のポツダム宣言受諾直前のソ連の対日戦争参戦から8月15日以降も続けられたソ連との戦いを丹念にまとめた労作。もっとこうだったら失われなかった命や領土もあったのかもしれないといった思いを持つところも多いが、今の世界はこの現実から繋がっている。
(省略)スターリンと書簡を交わし、千島列島を占領する道を自ら閉したのはトルーマンだ。そもそも、ヤルタ秘密協定に署名したのはローズヴェルト大統領である。アメリカが千島列島の「喪失」の責任者を問うなら、彼ら大統領だろう。現在も北方領土問題にアメリカが消極的なのは、こうした過去と無関係ではない。(p 234)
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ソ連が終戦を仲介してくれる、という「甘い」考えの日本に対し、スターリンは戦略家として「成長」し、一手一手を冷徹で正確に打ってくる。
現代のプーチン大統領と重ねながら読んだ。かの国の指導者を決して敵に回してはいけない。先の大戦から得られる教訓は、ほんとにたくさんある。しかもそのほとんどが、現代にも生きる。
Posted by ブクログ
現在の領土問題に禍根を残す大戦再末期の日本とソ連の戦いを描く。日本首脳部が一撃講和論とソ連和平依頼論を併用していたことが第1章で書かれている。第2章以降は満州・樺太・千島列島での日ソの戦いに迫っている。終わりにの部分の最後の記述が印象的。日本のロシアに対するイメージはこのときにできあがった。「ロシアは条約を平然と破って領土を奪取した。日ソ戦争は不信感を基調とする現在の日露関係の起点である」
Posted by ブクログ
少し難しいところがあったが、最後まで普通に読めました。
印象に残ったこと
軍紀ゆるゆるのソ連兵の蛮行。
狡猾なスターリン。
日本軍中枢のソ連への無警戒。
アメリカはソ連に、結構支援をしていた。
Posted by ブクログ
あまり語れることのない日ソ戦争について詳しくかかれておりとても面白かった。この戦争による影響が今も色濃く残っているんだなと。日本がソ連に対して和平を申し込む間にソ連側は粛々と戦争の準備をして気づいたら領土を奪うというソ連の狡猾さに驚いた。アメリカがソ連に頼まなければまた歴史も変わったのか。