【感想・ネタバレ】日ソ戦争 帝国日本最後の戦いのレビュー

あらすじ

日ソ戦争とは、1945年8月8日から9月上旬まで満洲・朝鮮半島・南樺太・千島列島で行われた第2次世界大戦最後の全面戦争である。短期間ながら両軍の参加兵力は200万人を超え、玉音放送後に戦闘が始まる地域もあり、戦後を見据えた戦争だった。これまでソ連の中立条約破棄、非人道的な戦闘など断片的には知られてきたが、本書は新史料を駆使し、米国のソ連への参戦要請から各地での戦闘の実態、終戦までの全貌を描く。

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Posted by ブクログ

私がこの書籍に興味を持ったきっかけはとあるツイートだった。「親露派は全員読んだ方がいい」という文言とともにこの本の写真が添付されていた。
私はソビエト連邦が好きだった。政治的な意味は特に考えずにいたが、圧倒的なランドパワーを持つミステリアスなその国家は私を惹き付けるには十分だった。しかしソビエト連邦が帝国主義的な行動を取り続けていたことから無意識に目を背けていたように思う。

満州・樺太・千島列島への侵攻では、無抵抗の人間の殺害が多数あったという。なかには婦女暴行も数々存在していたと記録もあり、独ソ戦に関する小説「同志少女よ、敵を撃て」が想起された。
スターリンは、無断での退却や投降には厳罰で望んだが、勇猛果敢に前線で戦ってさえいればその他の蛮行については大目に見ていたという。自国民の人権も保障しないような国家に、占領地の住民を丁重に扱うことできない。戦争の弊害である占領地の住民への乱暴や虐殺や性加害は到底許されてはいけない。

戦争の禍々しさや恐ろしさをありありと知ることが出来たのは良い経験であった。ソビエトロシアは信用してはいけないと、改めて実感した。

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2026年01月17日

Posted by ブクログ

ネタバレ

第二次世界大戦という大きなくくりのなかでの、ポツダム宣言後にも続いていた戦争「日ソ戦争」を初めて詳しく知った。
その宣言には米英中の連合国であって、ソ連は含まれておらず、彼らの視点での論理(無条件降伏以外は認めない)によって、満州、朝鮮半島、樺太、千島列島を主とした戦場の話である。
ソ連としては、日本の敗北は見えているなかでの領土占拠戦略が目的であった。
表向きは、米ソ共有目的(日本の降伏)であったが、降伏後は両国の領土に対する思惑がぶつかった。
結果的に米国(日本からの連合国統率の呼びかけ)によって、北海道までは守られ、千島列島はソ連に譲ることとなった。ただしこの際の取り決めで、千島列島がどこからどこまでが明瞭ではなく、いまでも日ロの政治課題として残っているのだという。

またソ連による満州侵入のプロセスにおいて、市民に対して行われてた事実や、現地中国人や朝鮮人からの日本人に対する反発なども起こっていたことを知る。また当時のソ連は物資不足などの観点から、捕虜だけではなく、物資までも奪われていた現実や、日本側の当時の回顧録なども奪われてしまっており、そのような実態は表には久しく出ないであろうことも知る。そういった観点からも含め、あまり公共では知られる機会はなかったのか、とも想像してしまう。

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2026年01月12日

Posted by ブクログ

In most textbooks, this is explained in only a few sentences.
What makes this book valuable is how deeply it goes into the background of the time.
By explaining the historical context in detail, it really helps you understand what was going on back then.

○1945年2月、ドイツ敗戦が濃厚になった裏側で、米英ソの首脳がヤルタ会談にて戦後処理について協議。米国はソ連に対日参戦を望んだ。
○日本はソ連に仲裁を頼もうとしていたが、その相手から背後攻めを喰らった形に。
○日本は米英との直接交渉を避けるためにソ連へと接触。理由は無条件降伏への強い拒否感とソ連なら交渉してくれるという淡い期待。
○当時のソ連軍は、米国の輸入品に頼り切り。 
○南樺太と千島列島への侵攻は、日露間の領土問題の出発点。この戦闘の特徴は、民間人がその場で動員されたこと。南樺太では朝鮮人が多く働いており、スパイ疑惑がかけられたことも。
○千島列島は海上交通の輸送路であり、飛行場として使うために重要。
○スターリンが北海道上陸を諦めた理由は、日本軍の奮闘とアメリカへの妥協。これにより、標的は北方領土へ。
○ソ連を対日戦に引き込んだのはアメリカ。アメリカは対日戦で多くの犠牲者が出ると見込み、早く戦いを終わらせるためにソ連を巻き込んだ。結果的に、ソ連の参戦により、アメリカは満州や千島列島を取り逃がし、ソ連の東アジアでの影響力拡大を招くなど、後世への政治的影響が深刻なものとなった。
○ソ連の勝因は、ドイツとの戦いを終結させるまで対日戦に参戦しないよう時間を稼ぎ、日本軍を凌駕する大軍を投入できる準備を整えたことにある。

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2026年01月02日

Posted by ブクログ

1945年8月15日、日本はポツダム宣言を受諾し、敗戦を認め、日本の戦争は終わった。という、常識は正確ではない。日本はまだ戦争中だった。なぜなら、ソ連が8月8日に日本へ宣戦布告し、満州や北方では日ソ戦争が続いていたからだ。戦争は半月で終わったとはいえ、これはこれで間違いなく戦争だ。しかも、その結果として日本は多くの国民をシベリアで抑留され、北方領土を失う。

なぜ、ソ連は敗戦濃厚な日本へ宣戦布告したのか。なぜ、敗戦を受け入れた日本へさらに戦争を続けたのか。そして、日ソ戦争を経て、日ソ両国とアメリカ、中国が得たもの、失ったものを本書は分析する。

突然のソ連参戦で油断していた日本は無抵抗に、蹂躙されたという印象を持っていたのだが、意外に抵抗し、反撃したようだ。戦死者の数も両国拮抗している。ソ連側としても対ドイツ戦で戦力を使い果たし、ソ連国民の日本参戦モチベーションが上がっていなかったのがその理由。

とはいえ、この戦争におけるソ連、つまりロシアの情報提供が少なく、加えて北方領土問題という現在進行中の政治が絡んでいるため、歴史家にとって研究しにくい分野らしい。

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2025年11月15日

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元々終戦間際の調整役としての役回りを期待していたソ連の侵攻、それに続く奪取や蛮行。
今の日露関係の起点のみならず、中国とロシアとの蜜月の関係、ウクライナ戦争に通ずるロシア人に蔓延るDNA等、示唆がひたすら多い良書だった。

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2025年09月14日

Posted by ブクログ

八月十五日正午の玉音放送で、戦争が終わり、日本が負けた。これでもう空襲に怯えないで済む。ところが、満洲、朝鮮半島、樺太、千島列島にとってはそうではなかったことが初めて分かった。本当に、ソ連が八月八日に対日参戦したことは歴史で習った。しかし、八月十五日を過ぎても戦闘が行われ、住民が奪われ、強姦されたことは習わなかったのではないだろうか。

本書の最後に年表があり、最後の項目は九月十七日、ソ連軍、北緯38度線以上の朝鮮半島の占領を完了。
このあと、武装解除された関東軍は、もう日本人住民を守ることができず、満洲や樺太などに住んでいた日本人は(今まで圧政を敷かれていた)朝鮮の人やソ連兵の暴力にさらされたらしい。
また、冬が近づく中、日本に帰ることもさせてもらえず、多くの人が飢えたと。
これまで聞いていた他の地域に負けず劣らず、悲惨な状況が目に浮かんだ。

この本は、南方戦線に比べて目立たないし期間も短い日ソ戦争に焦点を当てて書かれたものだ。
アメリカとソ連のパワーバランスや、ヤルタ密約などのやりとりから、会戦の様子、将校一人一人の対応など細かなところまで、聞きなれない樺太や朝鮮とソ連の国境付近の地名を丹念に追いながら詳述してある。
現在でも北方領土問題が残っており、決して過ぎ去った過去の出来事ではないと思う。
大量の日本語、英語、ロシア語の文献をもとにして書かれたこの本は、現代の日ソ(日露)関係を考える上で必読なのではないだろうか。

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2025年08月20日

Posted by ブクログ

自分の歴史観が揺さぶられる一冊。1945年の8月、9月に満州、朝鮮半島で何が起きていたのかを知る。今まさにロシアとウクライナが戦っていることを踏まえても、第2次世界大戦から刻々と歴史は続いており、国同士の争いは終わっていないことを感じられる。

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2025年08月18日

Posted by ブクログ

第二次世界大戦終結間際に起きた日ソ戦争の全貌を描く本。あとがきに「日ソ戦争で流された血や涙はまだ乾いていない」とあるように、悲惨な実態であったにもかかわらず、その詳細はまだ明らかでない。結論から言うと、終戦間際の日本が弱ったところにソ連がハイエナのように食いつき、領土や資源、あげくに抑留という形で労働力まで奪っていった悪辣な戦争と言える。まあ日本もとやかく言えるような戦い方をしていないが、強姦や虐殺が当たり前だったソ連軍の非道はそれを上回る。著者の指摘するように、日ソ戦争は日本だけでなく、朝鮮半島の分断や中華人民共和国の誕生など東アジアの戦後史に大きな影響を与えた。その意味でも、日ソ戦争の全体像を知ることが出来たのは意義あることであった。

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2025年08月01日

Posted by ブクログ

太平洋戦争の最末期、突然開かれたソ連との戦端。参戦のタイミングを測るソ連。一方でアメリカの原爆投下で戦争は終結に向かう。終戦後の日本統治、北海道統治は慌ただしく決められ,北方領土四島の領有もきちんと話し合われた形跡がない。

この日ソ戦争に関してソ連側の軍規の緩さ、軍の残虐さ、横暴さは今も変わらないと思う。略奪品を一旦ソ連軍に集めはするが、安く兵士に払い下げるなど,常識が通用しない行動をとる。その最たるものがシベリア抑留。ソ連側のロジックとしては、独ソ戦で多数の死傷者を出したため、復興に必要な人手を捕虜にやらせた、ということだろうが、国際法上は全く根拠のない違反行為である。

本書は、「全体の情勢」「満州における関東軍との戦闘」「南樺太における戦闘」「北方領土を含む千島列島における戦闘」を詳述する労作。

父がシベリア抑留者、母が終戦時国後島に暮らしていた私にとって、待望の一書だった。

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2025年07月02日

Posted by ブクログ

・「8月15日で戦争は終わった」って、ずっとそういうふうに思ってた。でもこの本を読むと、終わったどころか、むしろそこから始まった戦いもあったんだなと。

・ソ連が満洲とか樺太とか千島に一気に攻めてきたのは知識としては知ってたけど、ここまで本格的だったとは思ってなかった。
しかも、民間人がすごく巻き込まれていたということにびっくりした。開拓団の話はきつい。

・8月15日以降の日本って「平和になった」っていうイメージだったけど、実際には現地では停戦がうまく伝わらず、むしろ攻撃が激しくなってたりする。
終わるはずの戦争が、別のかたちで続いてる感じ。

・シベリア抑留につながる話も出てくる。捕虜として扱われるのか、戦犯としてなのか、そのあたりもあいまいなまま連れていかれてたらしい。

・全体的に、すごく丁寧に資料を出して書いてある。
読みながら、高校のときに知ってたら、日本史の印象だいぶ違ったかも思った。

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2025年06月24日

Posted by ブクログ

かなり前に占守島の戦闘を描いた浅田次郎さんの「終わらざる夏」を読みました。あの時も苦い思いが残りました。昭和天皇の無責任さと日本政府、日本軍の底抜けのバカさ加減は既に十分認識していましたが、ロシアという国の陰湿、非道さとロシア人の程度の低さはやっぱりそうだったかと改めて思わされました。プーチンはまさにそのロシアを象徴する悪人。そんなロシアと仲良くする必要などないですね。北方領土返還まで国交断絶しても良いんじゃないですか。ロシアで儲けようとしている日本企業には不買運動を起こすべきだと思いました。

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2025年05月14日

Posted by ブクログ

圧巻でした。
『シベリア出兵』に続けて本書を読み、今まで知らなかったソ連と日本の出来事や、アメリカとの関係性を認識することができました。

戦争を終わらせることの難しさ。
武装解除によって起こること。
民間人が取り残されたときに起きること。
集団自決を選ぶに至った女性たちが置かれた環境の厳しさ。

戦争は起こしてはならないと、改めて胸に刻みました。

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2025年04月24日

Posted by ブクログ

むがー!

どうする?どうしたらいい?

はい、『独ソ戦』に続いて今度は、その反対側で行われた『日ソ戦』について学びます

しかも今回は日本が絡んできますので、より身近

それにしてもソ連軍非道いわ
いや日本軍だってまぁまぁ非道いんだが、あいつらほんまにエグい

無条件降伏しとるのにがんがん攻めてくるし
民間人殺しまくりだし
女性は強姦されまくりだし
あるものみんなとってくし
どさくさに紛れて千島列島占領しちゃうし
どんどんシベリアとか送るし

スターリンが非道いのか
ソ連軍が非道いのか
ロシア人て基本そんな奴なのか
戦争でおかしくなってたのか
その全部なのか
わかりません

分かりませんけど

この本を読んでね
どうしても思っちゃう
「お前ら、いつかやったるかんな!」って
わいなんかほら武闘派やないですか
だからもうソ連軍の非道は許せんのよ!
だからどうしても思っちゃう
ちょっとだけど思っちゃう
いつか仕返ししたるわ!って

それがいかんのよ!
絶対ダメなのよ!
だけどやっぱり思っちゃう
だってほんと非道いんだって

この気持ちをさらっと乗り越える方法を見出して、地球のみんなで共有できたら、きっと恒久的な平和ってやつが実現するのかもしれんな〜なんて思ったけど、なんかすごく難しそうだな〜

まぁ、でも今回はぐっと耐えよう
良かったなプーの字
わいが温厚な武闘派で(自己矛盾)

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2025年04月22日

Posted by ブクログ

教科書では、「8月9日にソ連が、中立条約を破棄して侵攻した」と短い記述があるくらいだと理解していたが、短期間で広大な領域で戦闘が行われたことを初めて知った。力作。

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2025年04月11日

購入済み

第二次大戦の裏

ソ連参戦の一行の裏が、よくわかる一冊。北方領土を守った日本陸軍の健闘、シベリア抑留や、うちの親、祖父母も経験した満州からの引き揚げの苦労が身に迫ってきた。巻末の参考文献のボリュームに、どれだけのご苦労と思いで書かれたかが伝わる。

#アツい #深い #共感する

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2025年03月20日

Posted by ブクログ

1945年8月8日から9月上旬まで、日ソ中立条約を破棄してのソ連の侵攻により、満洲・朝鮮半島・南樺太・千島列島で行われた日ソ戦争について、新史料も駆使して、その全貌を描く。
これまで、戦争末期のどさくさに紛れ日ソ中立条約を一方的に破棄してソ連が攻めてきて、シベリア抑留等につながったというくらいのイメージしか持っておらず、あまり知らなかった日ソ戦争について、その経緯や実態がよくわかった。例えば、ソ連の参戦についてはアメリカの要請が以前からあったこと、日本側ではソ連参戦を察知する部署もあったが希望的観測の下、大本営等は見て見ぬふりを続けていたこと、一部では日本軍も健闘していたこと、ソ連兵による民間人の虐殺や性暴力など戦争犯罪行為の跋扈、千島列島や北方領土をソ連が奪取する過程などである。
日ソ戦争は短期間の戦争ではあったが、北方領土問題や現在のウクライナ戦争でも見られるロシアの「戦争の文化」などにもつながる重要なものであったと認識し、現代においても教訓の多いものだと感じた。また、当時のソ連の様々な非道については、きちんと責任を追及していくべきだと思った。

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2026年02月22日

Posted by ブクログ

日ソ戦争が勃発した背景、戦争の内容、その後の変化が詳しく記載されていた。ポツダム宣言を受諾する姿勢を見せたにも関わらず、解釈をねじ曲げて開戦に踏み入ったソ連。戦時下で繰り広げられる数々の残虐。改めて、他者を顧みずに自身の利益だけを追い求める人間の残虐さや恐ろしさを感じた。歴史的背景に疎かったが、この本を読むことで各国の思惑や領土問題について学習することができた。

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2026年02月17日

Posted by ブクログ

【感想要約】
戦争末期のソ連参戦の経緯・背景・影響を丁寧に解説。通説を踏まえつつソ連の意図や事前準備、米国の関与に新たな視点を示す。被害の大きさに比して知名度が低い点を問い、「日ソ戦争」の呼称に込めた問題意識と歴史を正しく知る必要性を訴える。

【内容】
先の大戦末期の日ソ戦争に焦点を当てた書籍。一ヶ月も経たずに終結したものの、ソ連兵150万人以上が既に軍事的、経済的に消耗しきった日本へ満州、樺太、千島列島といった多方面から一斉に攻撃を仕掛けたこの戦いは、ノモンハンを超える一大戦争だった。特筆すべき点は、第一に民間人への被害が停戦後も続き、各地で深刻な被害や不法行為が多発したこと。第二にシベリア抑留という強制連行が行われたこと。第三に他の連合国と異なりソ連は領土を奪取したこと。これらは「スターリンの呪縛」として現代日露関係の不信感の起点となっていると筆者は主張する。
日ソ中立条約締結時から双方互いを信用していなかったが、太平洋方面の戦況悪化に伴い無条件降伏を許容できない日本の軍民両首脳部はソ連の仲介に期待するようになり、ソ連に対して希望的楽観を抱きつつあった。一方で米英から参戦を請われるソ連は表向きには態度を決めかねないそぶりを見せつつ、独ソ戦終結前から着実に準備を進めていた。ソ連の日本に対する曖昧な態度は時間稼ぎに過ぎなかった。そして戦争の早期終結のため、アメリカは核兵器の早期実戦投入と並行してソ連の参戦を強く求め続けた。
ドイツ降伏から3か月後の8月9日からソ連は満州、樺太、千島列島に攻撃を仕掛けた。満州を守る関東軍は持久戦で対抗しようとしたが、東西全方面で豊富な人員と装備を用意の上縦深攻撃を仕掛けたソ連によって満州国はあっという間に崩壊した。樺太、千島方面でも多数の軍勢を揃えて侵攻したが、特に千島はソ連側の準備不足と日本軍の効果的な防衛の結果、占守島より先への武力侵攻を阻止したまま停戦に至った。樺太、千島方面は停戦と自衛の狭間で混乱した点も戦局、終戦の推移に大きな影響を与えた。
戦後の日本統治の方針を巡って米ソ間での綱引きがあった。北海道の北半分の統治を望むソ連に対してアメリカは日本の一体統治を譲らなかったが、米ソ間の取り交わしにおける千島列島の定義が曖昧だったことをきっかけに、戦後処理の構造的問題も重なったことで現在「北方領土」と呼ばれる島々のソ連(後にロシア)の占拠を許してしまった。戦後日本の復讐を恐れたスターリンは日本の民主化推進、日ソ友好同盟条約の締結による日本包囲網の構築、安全保障上の緩衝地帯としての樺太・千島列島の併合、そしてシベリア抑留を推し進めた。これらは日本のみならず周辺国に少なからぬ影響を与えた。
日ソ戦争におけるソ連の勝因は、物的・人的資源を十全に用意した上で関東軍の持久策に乗らずに奇襲的速攻を仕掛けられたこと、そして独ソ戦での失敗から学んで成熟したスターリンのリーダーシップ(本極東戦争では大枠を示し必要な資源と外交策を用意したのみで、実際の戦闘は現場に任せた)にあった。一方で日本の敗因は、対米戦で軍事力と経済が破綻していたことに尽きる。前線将兵の敢闘は特筆すべき点だが、それでも国家戦略の失敗は作戦、戦闘では覆せず短期間での敗北に繋がった。

【感想】
先の戦争末期のソ連参戦という、知っているようで詳細はあまり知られていない戦争に焦点を当ててその経緯や背景、影響を詳細に解説している。大きな流れや経緯では一般的な認識にズレはないものの、ソ連の意図や戦前からの準備、アメリカの関与等については新たな知見も多くあった。歴史的経緯を知る入門書としても、対日参戦のより深い背景を知る専門書としても、価値のある一冊だと感じた。
また被害の大きさに比して知名度が低い、という点を著者は問題視している。そもそも「ソ連の対日参戦」に確たる名称がない状況に対して、「日ソ戦争」という語を用いたことに筆者の想いが強く表れている。このような被害の歴史は歴史認識問題にもつながり扱いが難しいのも事実だが、とはいえ風化させて良いものでもなく、我々一般市民はまず正しく知り認識することが重要と考える。

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2026年02月15日

Posted by ブクログ

協定破りや抑留・略奪への感情もあれどひとまず脇に置き、読後の「感想」を書く。

① ソ連による北海道占領構想の事実
東西ドイツや南北朝鮮のように戦後分断された国の例は知っていたのに、日本でも同じ構想があったとは考えたことがなかった。
たぶん「ロシア=遠い国」というイメージを無意識に持っていたせいだと思う。
よく考えれば、樺太や北方領土は北海道のすぐそばにあるのに。
もし北海道がソ連とアメリカで分割統治されていたら、たとえ後に返還が実現したとしても、日本という国の「かたち」のイメージは今とはまったく違っていたはずだ。

② 北方領土の地政学的重要性
国境近くの小さな島々が、世界的な緊張の“ど真ん中”に位置していることに、これまで軽い違和感を持っていた。
しかし、ソ連がアメリカや日本を仮想敵国としたとき、またアメリカが対ソ抑止を考えたとき――北方領土が極めて重要な意味を持っていたことを知った。
国際関係では、面積よりも「位置」が重要度を決めることがある。
そしてその結果、当事国だけでなく第三国・周辺国までもが思惑の渦に巻き込まれていく。
その構図がとても印象的で、いまの台湾情勢にも通じると思った。

第二次世界大戦に関する読み物は、加害をふまえた自省や被害への共感を基調にしているものが多い。
それ自体は大切な態度だが、ときに情緒が先行して、フラットな理解や学びを妨げることもあると思っている。
その意味で本書は、感情と距離を保ちながら事実を見つめる視点の置き方がほどよく、良書だと感じた

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2026年01月25日

Posted by ブクログ

本を読みながら、怒りと悲しみで泣きそうになったのは初めての体験だった。
そもそも「日ソ戦争」とは何なのか、学校で習った記憶があるだろうか。おそらく無いと思う。なぜならこの戦争は日本国において公的な名称がまだ存在しないからだ。「日ソ戦争」とは、研究者が便宜上呼んでいる名称だ。

日本にとっての第二次世界大戦は8/15をもって完全に終わった訳ではなく、その後もソ連との間で戦闘が行われ、兵士はもちろん多くの民間人が犠牲になり、危うく北海道の北半分までも失いかけたという事実はもっと知られるべきだと思う。本書を読んでから今のロシア・ウクライナ戦争を見ると、ロシア(旧ソ連)が戦後80年の歳月を経てもなお、全く成熟してないんだなぁという印象を持たざるを得ない。

本書のあとがきに書かれてある「日ソ戦争で流された血や涙はまだ乾いていない」という一文に、筆者の並々ならぬ決意と覚悟を感じた。

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2025年08月31日

Posted by ブクログ

戦争は突き詰めて言えば、強者による弱者に対する強奪行為。この強奪行為を国家が行うため、非常に大規模かつ計画的となる。

日ソ戦のソ連は、国家の強奪行為を計画的に行う反面、兵卒の個人的な掠奪行為には軍規がゆるいため、多くの民間人が必要以上に殺されたり被害に遭わされた。

比較的最近の戦争であるため記録が残っているが、戦国時代の日本の国内の戦でも同じような悲劇が数多くあったのだろう。

世の古今東西を問わず、戦争では民間人など弱い者は強者に虐げられ、奪われる。

国家はいかにして政治力、外交力、経済力で生き抜くかを考えて欲しい。安易に戦争に走るような下策は取ってもらいたくないものだ。

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2025年06月18日

Posted by ブクログ

中ソ戦争は、日本の戦争の終わりに粗暴なソ連がどさくさに紛れて攻め込んできた、くらいの認識しかなかったが、4000キロの国境を持つ中国での各種作戦、有名な都市の強奪、樺太での上陸作戦など、全体を俯瞰できた。日本の武器が、国民党ではなく共産党に流れたことが、共産党を強くする力となった。歴史のうねりがどう形作られれたか、垣間見た思い。

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2025年06月08日

Posted by ブクログ

日ソ戦争という言葉はあまり使うことがないが、ロシアではソ日戦争というらしい。日本の太平洋戦争というときにあまり意識することのない戦争だが、北方領土問題、満州と南樺太の残留移民問題、民間人の大きな人身被害などかなり大きな傷痕を残した戦いであったことを思い知らされた。米国ルーズベルト大統領は自国民の戦争被害を拡大したくないためにソ連の参戦を促し、スターリンがそれを弄ぶかのようにタイミングを見ての満州、朝鮮、樺太、千島での広範囲の進撃、日本がそれに振り回されていたのだ。それは8月15日の終戦記念日と私たちが呼んでいる日以降も続き、どのようにして終結するのか、読みながら不安になるほど。ソ連の北海道北半分の領有まで至らなかったことは僥倖だったように感じる。日ソ双方に多数の戦死者を生み、絶望的な形勢の戦いの中で、日本が極めて善戦していたらしきことには感心した。この北の戦争に関しては慰霊の日が無いことは大きな欠陥のように感じた。

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2025年05月18日

Posted by ブクログ

1945/8/8から8/15以降も9月上旬まで行われた日本とソ連の戦争についての記述。
アメリカはソ連を対日戦に参戦させようとしていたが、ドイツに集中していたソ連は断り続け、ドイツが負け、日本の負けが確定的なった時に極東へ送った軍勢を使い圧倒的戦力差で日本を後退させた。
一方日本は、太平洋戦争の戦況が厳しく、日ソ不可侵条約を結んでいたソ連に仲介を頼んでいた。対米戦が厳しく、ソ連にその気がなく、戦闘準備も情報として挙がっていたが、すがるようにソ連へ希望を託していたのが裏切られ、8/8に宣戦布告を受けた。北海道占領の意図があったが、おそらくアメリカの意を受けてそこまでは出来なかったというのが通説だが確たる証拠はない。
戦死者はそれぞれ3万人を超えるが、ソ連の日本人戦死者は8万人程度であるが戸超の可能性があるが日本の方の統計は不確か。

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2025年04月19日

Posted by ブクログ

2025.03.30〜04.26
どんな戦争も悲惨な結果しか、生まない。
それを未だに学習できない政治家って、何なんだろう。
それに従わなければならない国民って。

戦争開始の理由を「いかにも」的に正当化してるけど、戦勝後にはなんだかはちゃめちゃなことをしている。

「話せばわかる」が真に通用する世の中はいつか、訪れるのだろうか。

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2025年04月26日

Posted by ブクログ

ソ連が終戦を仲介してくれる、という「甘い」考えの日本に対し、スターリンは戦略家として「成長」し、一手一手を冷徹で正確に打ってくる。

現代のプーチン大統領と重ねながら読んだ。かの国の指導者を決して敵に回してはいけない。先の大戦から得られる教訓は、ほんとにたくさんある。しかもそのほとんどが、現代にも生きる。

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2025年08月14日

Posted by ブクログ

現在の領土問題に禍根を残す大戦再末期の日本とソ連の戦いを描く。日本首脳部が一撃講和論とソ連和平依頼論を併用していたことが第1章で書かれている。第2章以降は満州・樺太・千島列島での日ソの戦いに迫っている。終わりにの部分の最後の記述が印象的。日本のロシアに対するイメージはこのときにできあがった。「ロシアは条約を平然と破って領土を奪取した。日ソ戦争は不信感を基調とする現在の日露関係の起点である」

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2025年07月31日

Posted by ブクログ

ネタバレ

少し難しいところがあったが、最後まで普通に読めました。

印象に残ったこと
軍紀ゆるゆるのソ連兵の蛮行。
狡猾なスターリン。
日本軍中枢のソ連への無警戒。
アメリカはソ連に、結構支援をしていた。

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2025年07月13日

Posted by ブクログ

あまり語れることのない日ソ戦争について詳しくかかれておりとても面白かった。この戦争による影響が今も色濃く残っているんだなと。日本がソ連に対して和平を申し込む間にソ連側は粛々と戦争の準備をして気づいたら領土を奪うというソ連の狡猾さに驚いた。アメリカがソ連に頼まなければまた歴史も変わったのか。

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2025年05月25日

Posted by ブクログ

前提知識がなさすぎて、ほとんど理解できなかったのが正直なところだけど、性暴力に関する文章が印象に残ったしきつかった。起こってしまったことはどうしようもないことにしろ、最も犠牲を生まない結果になれなかったのかというふうに思う。そもそも戦争するなよって話ではあるんだけども。

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2025年04月13日

Posted by ブクログ

近代史については余り勉強してなかったことと太平洋戦争時代に関する本も然程読んでなかったことから、終戦記念日の8/15に戦争は終わったものだと思い込んでいた。しかし、その後もソ連軍による満州・南樺太・千島列島侵攻があったとは知らなかった。
今のウクライナ侵攻を考えると成程と思ってしまう。

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2026年01月17日

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