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「中国は唯一の競争相手」――バイデン米大統領がこう明言するように、近年、米中の角逐は激しさを増している。貿易戦争、科学技術開発競争、香港・台湾問題……。米国の対中姿勢は関与・支援から対立へとなぜ一変したのか。両国のリーダーが誰になろうとも、今後も対立が続き、緊張緩和はないのか。国交回復から現在まで、五〇年にわたる米中関係をたどり、分断が進む世界のなかで、日本のとるべき針路を考える。
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Posted by ブクログ
米中対立 アメリカの戦略転換と分断される世界 著:佐橋 亮 中公新書 2650 なぜ、米中は今日のように対立するに至ったかを語る書 常に思うことであるが、アメリカにとっての重荷とは、自国民の安全を保障するとともに、同盟国のそれをも担保しなければならないことである。 始点は、1969年、中ソ国境...続きを読む紛争だ。 アメリカは、万が一にも、中国がソ連に敗れるようであれば、微妙なバランスを保っている冷戦構造が大きく東側に傾き、アメリカが一気に不利になるのではないか、との恐怖からだった。 そのため、1971年キッシンジャーが、1972年ニクソンが電撃的に訪中し、米中関係を早急に改善しようとした。いわゆる上海コミュニケだ。 米国が中国に期待し続けたのは、次の3つであった 中国が政治改革を進めること 市場改革を行うこと 既存の国際秩序を受け入れてその中で貢献を増していくこと 平和を守る最前の方法は、平和的解決以外の方法はあり得ないという国際環境を作り出すこと 中国の軍事的脅しを看過すれば、アメリカの同盟国への安全の約束が疑われてしまう 戦略的再保証 中国の成長を前提に、米中関係を2カ国関係の管理にとどめず、地域やグローバル課題に積極的に活かすという発想のことで、当時のジム・スタインバーグ国務副長官のドクトリンである オバマの中国戦略 オバマ政権の力点が置かれたのは、同盟国のみならず、東南アジア諸国への協力の強化である 南シナ海が中国の進出で動揺する中、重ねて東南アジアとの関係を重視するとのメッセージが発信された 一方、リーマンショックの影響でも成長を続ける中国は、アメリカの網に包囲されるという恐怖をいだいた 2014年米国防総省は、第三次オフセット戦略を提唱する 通常戦略による抑止力を、戦争の作戦レベルにまで強化するためには、最先端の科学技術においてイノベーションを起こして、それを軍事に応用することである オバマ政権後期には、中国の国際社会への貢献は期待が薄いこと、民主化への道筋も、市場化改革の後退もあって、明確な失望が中国に関する議論の主流となった 2017年トランプ政権において、アメリカの対中姿勢は一気に硬化する アメリカは中国を念頭においた、経済規制の立法化や、行政が実施された トランプの訪中に同行したマクマスター補佐官の言 習近平政権の軍民融合の方針を鄧小平以来の市場化改革の終わりを告げるものと位置づける ここに、キッシンジャードクトリンが打ち出した中国への3つの期待は、政権トップによって放棄された アメリカの対中対立が本格化していくなかで、台湾への姿勢も変化していく 対台湾武器売却が行われた 一方 2019年から、中国の台湾海峡における軍事行動が活発化する アメリカに中国ロビーがあるように、台湾ロビーだってある。 日本に次ぐ、外貨準備高を持つ台湾はその経済力を利用して政治家や有識者へのアメとムチを行使していく 台湾海峡周辺の海空域、東沙諸島では、人民解放軍や、海警の活動が活発化しており、対するように、米軍、台湾側の活動も増えている 台湾は、米中対立にとって、もっとも危険な発火点になる可能性がある (本紙には触れられていないが、台湾が中国の侵攻を受けた場合、米軍には出動義務をある 結果、米中の軍事衝突が発生すれば、日本の領海内であり、かつ友軍の支援という、日米安保条約の規定により、自衛隊は有無を言わさず、参戦することとなる) 米 2021年3月公表の、国家安全保障戦略指針には 中国は、経済力、外交力、軍事力、技術力を組み合わせて、安定的で開かれた国際システムに持続的に挑戦することができる唯一の競争相手 とある 地政学的にも、日本は、米中対立の最前線に位置することは明らかだ が結論です 目次 はしがき 序章 米中対立とは何か 第1章 関与と支援―対中政策における主流派の形成 第2章 不確かなものへの恐怖―中国警戒論の胎動 第3章 高まる違和感―台頭する中国と出会ったオバマ政権 第4章 関与政策の否定へ―トランプ政権と中国 第5章 アメリカのなかの中国―関与と強硬姿勢、それぞれの原動力 第6章 米中対立をみつめる世界 第7章 今後の展望―米中対立はどこに向かうのか おわりに あとがき 主要参考文献 索引 ISBN:9784121026507 出版社:中央公論新社 判型:新書 ページ数:328ページ 定価:940円(本体) 2021年07月25日初版 2022年04月20日4版
米国が中国に対して信頼→関与→疑念→対立と変化していく様子を描いた本。冷戦下での支援に始まり、天安門や台湾海峡危機を経ても政治改革・市場改革・国際社会での責任の3つの期待を含む[経済成長による民主化論]が(産業界の後押しもあり)主流で懸念論は少なかった。オバマ政権でもG2案(マジで嫌い)を始めとした...続きを読む関与論者が多かったが、段々と強圧的な中国の姿や中国の国際社会での無責任さ、経済の急成長によって脅威論者が増えていった。個人的に見逃せないのが2015のAIIBだ。あそこで米国は主導権を握られる怖さを感じたのではないか。トランプ政権が大転換の要因。従来の産業界・専門家は中国擁護論が多かったが、政権の中心にいる官僚・議会・米軍・福音派が反中に傾いたことが決定打となった。米台関係が米中関係と反対に動いていることにも注意。欧印韓アジアは中国の人権・軍事に懸念を示しつつも経済との損得を天秤にかけている。日台は対米傾斜を強めている(?)総裁選でどう変わるのか注意。 米中対立は今後30年程度、中国が本格的な人口減少に陥るまで続くと予想する。多国間協調が失われること(気候変動大丈夫?)や台湾問題など不安は多いが、筆者は米国の孤立主義と中国の民主化で対立が解消するかもしれないと述べている。人口推移的には根競べは米国が勝つようにできているので、中国共産党は大胆に仕掛けるインセンティブが出てくる。非常に危険かなと思う。そうならないよう多国間でデタントを定期的に起こすなどリスク管理が必要になってくるかな... 2021/9/8
著者がテレ東オンラインに出ており興味を持った。 学者らしく、感情論の中国本とは違い、読んだ後に長期的で冷静に国際関係を見れるようになった(気がする)
米中関係50年史。 タイトル「米中対立」だが、本書ではアメリカの対中政策の変遷を辿っている。特に、アメリカの対外政策に影響を及ぼす国内アクターについても、深く分析を加えている(第5章)。50年史ではあるが、オバマ政権以降の対中政策の記述が多く(オバマ政権期、トランプ政権期にそれぞれ一章を当てている)...続きを読む時事的な要素が強いことも否めない。 新書でありながら、様々な識者・専門家の知見を明示的に参照しているのが印象てきだった。学徒としては、末尾の参考文献リストも貴重である。
米中国交正常化への過程を博士論文で扱った著者がその続編となるような本をということで、まだ現在進行形で史料は乏しいながらも同時代のアメリカの記事や論考をもとに、アメリカの対中政策の変化を書いている。 冷戦期に対立から対ソの観点から米中は接近する。これ以降、アメリカには政治改革、市場化改革を進め既存の国...続きを読む際秩序に貢献するという3つの期待があった。90年代以降に台湾問題や技術流出等を巡って警戒感は強まりつつも、関与指示派が多数を占めていた。しかし、オバマ政権で中国の脅威が認識され、緩やかに戦略転換が始まる。トランプ政権では3つの期待への失望から関与政策が見直された。 アメリカの対中政策の見直しはかなり米国の独りよがりで変わってきているところがある。著者は米中関係が米ソ関係と違うことは認識しながらも、冷戦から参考にすべきことは多いとする。
米中対立というよりも、アメリカからみて中国に対する政治方針が行ったり来たりを説明している。中国についての対米政策は資料がないので、仕方がない。
SNSでの話題を見て、ようやく入手しざっと一読。 米中関係について協力関係から対立構造へと移っていく米国の様子が明瞭に記されている。 文章構造も整然(序章/終章、各章の問/小括)としていて一読して把握しやすかったが、個別具体的な記述も濃厚だったように感じた。機会を見つけて再読したい。
1979年の米中国交正常化・鄧小平訪米から現在に至る米中関係を丹念に調べ上げた点で白眉の出来と思います。さらに、こうした事実を振り返り、米国側の対中意識の変化を論じた優れた著作です。 1979年の米中国交正常化により、米国は中国の成長を支援する「関与政策」を立ち上げ、「しぶとく」支援を続けた...続きを読むとあります。これには、中国の経済成長による「三つの期待(政治改革、市場化改革、国際社会への貢献、への期待)」が米国側にあったためですが、その後、①「三つの期待」は習近平政権によって裏切られた、②中国経済がここまで成長するとは予想せず米国側が焦燥感を持った、ことから米国内での意識が変化。そのなかで、オバマ政権末期の中国での人権や安全保障問題によって軋みが生じ、トランプ政権になって決定的に「米中対立」に至ったという分析です。 中国側はこうした動きに「受動的に」対応とのことですが、本書は米国からの視点中心であり、中国側の意識変化などもあればさらに良いかと思いました。また、日本の対応についても、もう少し記述が欲しいとは思いましたが、いまの米中関係を紐解くには最適の1冊と思います。
関与と支援 不確かなものへの恐怖 高まる違和感 関与政策の否定 アメリカの中の中国 今後の展望 アメリカが中国に長年根拠の薄い期待を持ち続けたこと、近年急に不信や追いつかれる恐怖に支配された事は確かで、その背景はかなり独りよがりだ
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