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京都・三条大橋のたもとに、御所に向かって遙拝する銅像がある。それまで忘れ去られていた天皇を「発見」し、勤王志士のさきがけとなった高山彦九郎である。彼が扉を開いた幕末は、開国の混乱、大津波、尊攘派と幕府との攻防、大政奉還を経て新時代へと突き進む。本書は、いまも関西に残る幕末維新の史跡を訪ねる「足で読む歴史」である。ウォーキング、出張、修学旅行のお供にも。巻末に『戊辰戦記絵巻』前篇を付す。
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Posted by ブクログ 2017年01月28日
京都国立博物館の特別展『坂本龍馬』で、ショップで見かけた本書を購入。販売されていた場所が京都博物館であるだけに『京阪神編』とありますが、『東京編』の姉妹編であり、幕末から明治初期にかけて、京都・大阪・神戸を中心に、京阪神界隈を舞台とした数々の事件と、それに関わった人物の顛末が記されています。『禁門の...続きを読む変』や『戊辰戦争』といった、日本の歴史を学んでいるのであれば誰でも知っている事件から、『堺事件』や『神戸事件』等、一般的な歴史の教科書には殆ど語られず、地元の神社仏閣等でその歴史がひっそりと語り継がれているもの、果ては路傍の石碑にその痕跡があり、注意深く調べなければ決して露見されることがないものまで、大小様々な歴史の事変がずらり。時系列にまとまっているわけではなく、またかつての章や項で登場した人物が、かなり後の章や項で登場したりと、行ったり来たりが続くため読みづらい箇所もあります。とは言え、皆が知っている歴史の裏で、このようなことが起こっていた、実はこのような事実を孕んでいた、といったことが多数書かれており、あるいは点と点の繋がりがようやく見いだせたことで、読むにつれて何度も感嘆の声をあげてしまいます。 様々な考え方や方向性を持つ登場人物が多数登場しますが、ほぼ全て(と言っても過言ではありません)において共通していることは、皆「血気盛ん」「己の正義を信じて疑わない」というところでしょうか。他方にとっては歪んだ正義感であっても、自分自身はどこまでも真っ直ぐな正義感で世を変えるために奔走している、という気概が、暑苦しいばかりに伝わってきます。それであるが故に、幕末の京都は、血と炎で赤く染まり、明治維新、さらに戊辰戦争となって、その血染めが全国へと広がってしまった、というわけですが。 しかし同時に、どのような最期を遂げたとしても、各人の「生き切った」という気概もあります。たとえ二十代、三十代という若さで亡くなったとは言え。勝てば官軍となりどのような悪行も『正義』とみなされ、方や負ければ賊軍とみなされ、どんな行いも悪の烙印を押されるのですから、必死だったのでしょう。 単に有名どころを周遊していた京阪神の旅も、こうした、小さいながらも決して見落とさずに拾い上げ、一つの独立した歴史の事変として紹介により、少しずつ自分の中の考えも変わってきたように思います。流石に短時間で全てを回りきるわけにはいきませんが、ふとした切っ掛けでこの本を片手に、京阪神の小さく隠れた、でも歴史を語るには欠かせない場所を巡ってみるのもいいかもしれません。 また、本文に直接語られなかった事項(例えば地名)等も、やはり興味を引きながら拝読しました。それらは、『幕末』という限られた歴史の中だけではありません。こうした切り口からでも、さらに面白く街歩きが出来そうです。
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