前半では近世以前の西アフリカ一般の歴史の中でのナイジェリアの位置付けを
後半では近代以降のイギリス統治下の保護領としての歴史と独立後の歴史を述べている。
図やグラフも適宜挟まれていて読みやすく、歴史の概観を掴むにはちょうどいいと思う。
しかし前書きや後書きに見られる「要の国」という概念に対する説
...続きを読む明が不足しているように感じた。
アフリカは北部のアラブ主義地域と南部のネグロ主義地域に分けられる。そしてナイジェリアはこれら2つの地域をまたぐ唯一の国である。これをもって著者はナイジェリアを「要の国」とし、南北アフリカを繋ぐ役目を期待しているようである。
しかしそのような全く異なるイデオロギーを持つ両地域を1つの統一国家に押し込めることに必要性があるのかは疑問である。
本書の主題でもあるように、ナイジェリアは多くの異なる歴史的背景を持つ地方、民族の寄せ集めである。
もしナイジェリアに「要の国」であることを期待するのであれば、この国が1つの国として存続することの必然性について述べるべきであろう。
そしてそもそも"「要の国」としての役割"とはどういうものなのか、についても具体的な説明が欲しかった。
とはいえ歴史読み物としてはこの辺りの議論は本筋ではないため、大きく紙幅を割かずに簡潔にまとめることを著者は選択したのかもしれない。