小説・文芸 - 新潮文庫作品一覧

  • ご依頼の件
    3.8
    1巻671円 (税込)
    若いころの事件をたねに、金をゆすられているあなた! 殺してもあきたらないほど、憎らしい人がいるきみ! おもいきって、“殺し”はいかがですか? ご依頼の件は必ずやりとげ、絶対安全。あなたには決してご迷惑をおかけいたしません。常識的で、ありふれた世界に安住している人々の意識を痛撃し、人間の心の奥にひそむ願望をユーモアと諷刺で描いたショートショート40編。
  • 木精―或る青年期と追想の物語―
    3.8
    1巻671円 (税込)
    ドイツの神経研究所で学ぶひとりの日本人精神科医。彼が遠い異国へやって来たのは、人妻との情事に終止符を打つためでもあった。ドナウ源流地帯、チロルの山々、北国の町々――ヨーロッパを彷徨う彼の胸に去来する不倫の恋への甘美な追憶、そして、作家としての目覚めと将来への怯え。著者自身の若き日の魂の遍歴をふり返り、虚構のうちに再構成した《心の自伝》。『幽霊』の続編。
  • 赤毛のアン―赤毛のアン・シリーズ1―
    4.5
    1~10巻671~869円 (税込)
    ちょっとした手違いから、グリン・ゲイブルスの老兄妹に引き取られたやせっぽちの孤児アン。初めは戸惑っていた2人も、明るいアンを愛するようになり、夢のように美しいプリンス・エドワード島の自然の中で、アンは少女から乙女へと成長してゆく――。愛に飢えた、元気な人参あたまのアンが巻き起す愉快な事件の数々に、人生の厳しさと温かい人情が織りこまれた永遠の名作。
  • 凶悪―ある死刑囚の告発―
    3.9
    人を殺し、その死を巧みに金に換える“先生”と呼ばれる男がいる──雑誌記者が聞いた驚愕の証言。だが、告発者は元ヤクザで、しかも拘置所に収監中の殺人犯だった。信じていいのか? 記者は逡巡しながらも、現場を徹底的に歩き、関係者を訪ね、そして確信する。告発は本物だ! やがて、元ヤクザと記者の追及は警察を動かし、真の“凶悪”を追い詰めてゆく。白熱の犯罪ドキュメント。

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  • 花あらし
    -
    「一度会いに来るよ」――愛しい夫の言葉を頼りに、夫の故郷を訪ねた妻が満開の桜の中に見たものは……。美しく妖しい味わいの表題作ほか、白い蜘蛛とも、白い蟹とも、白い手首とも見えるものが、月光の下を這いまわる不気味な感触の「白い蟹」など、新鮮なアイデアと巧妙な仕掛けが生きる12編。きっと泣ける純愛ホラー。達人アトーダの名人芸をたっぷりお楽しみください。

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  • 山の音
    4.1
    深夜ふと響いてくる山の音を死の予告と恐れながら、信吾の胸には昔あこがれた人の美しいイメージが消えない。息子の嫁の可憐な姿に若々しい恋心をゆさぶられるという老人のくすんだ心境を地模様として、老妻、息子、嫁、出戻りの娘たちの心理的葛藤を影に、日本の家の名状しがたい悲しさが、感情の微細なひだに至るまで巧みに描き出されている。戦後文学の最高峰に位する名作である。

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  • 零式戦闘機
    4.5
    昭和十五年=紀元二六〇〇年を記念し、その末尾の「0」をとって、零式艦上戦闘機と命名され、ゼロ戦とも通称される精鋭機が誕生した。だが、当時の航空機の概念を越えた画期的な戦闘機も、太平洋戦争の盛衰と軌を一にするように、外国機に対して性能の限界をみせてゆき……。機体開発から戦場での悲運までを、設計者、技師、操縦者の奮闘と哀歓とともに綴った記録文学の大巨編。

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  • 流転の海―第一部―
    完結
    4.2
    660~935円 (税込)
    理不尽で我侭で好色な男の周辺に生起する幾多の波瀾。父と子の関係を軸に戦後生活の有為転変を力強く描く、著者畢生の大作。
  • 出世を急がぬ男たち
    -
    焦らずに時を待って大事を成し遂げた男たち、出世を急ぐあまりに自ら敗北を招いた男たち――。山陽鉄道社長の椅子よりも、建築事務所主任を選んだ後の宰相・高橋是清をはじめ、さまざまな実例によって、男の身の処し方を問い、現代のビジネスマンに要求されている真の能力について語る。現代の混迷した状況を乗り切るために、何に学ぶべきかを示した読書論・人物論70編を収録。
  • 私の愛する憩いの地
    -
    女の私が行ってきたのですから、私の歩いた道はどなたでも行けるのです――聖書の世界の神秘に出会うシナイ山、水源から辿るコロラド川、モザイク芸術の町ラヴェンナなど、31年にわたり「兼高かおる世界の旅」で日本のお茶の間を魅了した著者が披露する、とっておきの地の数々。すでに海外旅行通のあなたにも、新たな旅のロマンを教えてくれる“美しい星地球”への愛情溢れる一冊。 1995年刊。
  • この三十年の日本人
    4.0
    田中金脈追及のさなかにガンに冒され、わずか半年後、38歳の若さで世を去ったルポライター児玉隆也。田中退陣の導火線となった「淋しき越山会の女王」、水俣病裁判の根源を企業の成立過程にまでさかのぼって探った「チッソだけが、なぜ」をはじめ、児玉が地を這うような取材と、無名の人々への温かい眼差しとを武器に書き残した、数々のルポルタージュから珠玉の9編を収録する。
  • 国定忠治
    -
    土地の親分を斬って旅に出た国定忠治が関八州を股にかけ、なじみの深い府中宿にさしかかると、恩義ある万太郎親分が殺されて一家は離散、いとしいお光は行方不明と聞かされた。たちまち若い仁侠の血は恋と意地に燃えたぎる。市井無頼の徒のいだく悲しい英雄主義、厳しく美しい義理人情……。昭和七―八年、東京日日新聞連載。股旅ものの第一人者として作者の盛名をはせた傑作。
  • 藤村のパリ
    -
    姪との「不倫」に苦悩した島崎藤村は、逃げるようにしてフランスへ渡った。折しも勃発した第一次世界大戦に濃く色どられた約三年間のパリ生活で、藤村は何を観、何を聴き、どんな事態を体験したのか? 下宿の女主人との関係は? 河上肇や藤田嗣治ら、パリの日本人たちとの交友は? 人間への好奇心、その飽くなき情熱が生き生きと蘇えらせる、藤村の歩いたパリ。読売文学賞受賞。
  • 雪夫人絵図
    -
    旧華族の孫娘で、雪のような肌を持つ女が、女狂いでサディストの傾向のある夫に苦しめられながら、肌で夫に惹かれてゆく情感を、恋人役の作家・方哉、同性愛風に憧れる女中・浜子、ツバメ的な役柄の誠太郎少年を布置し、妖しい四角関係の中に物語る華麗な小説。気高く、つつましく、官能的な雪夫人は、ごく古風なる日本女性の理想像と言えよう。
  • おねえさんといっしょ
    5.0
    見よ! 日本出版史上に輝く驚愕の名著! 孤高の天才野田秀樹の埋もれたる業績を発掘、駄文集大成として、堂々の刊行。美空ひばり、松田聖子から長島茂雄まで徹底的にめった斬りする「おねえさんといっしょ」から、'82年から'91年までの全雑文を収録。
  • 冬の虹
    -
    親子三人の平穏な生活を送っていた家庭から、夫が莫大な借金を残して蒸発した。妻・暁子の前につぎつぎと明かされる、夫の知られざる過去、悪質サラ金業者の執拗な追及……。苛酷な現実にさらされながら、民芸店に勤めた暁子は、古い藍染めの布に出会い、その美しさと、しなやかな強さに惹かれていった。無我夢中で歩きまわっていた暗闇のかなたに見た、かすかな一条の光――。
  • 本朝無双格闘家列伝
    3.0
    神代の昔より、日本には凄まじく強い格闘家たちがいた。建御雷神、当麻蹶速、海恒世、合沢弥五郎……。格闘技を熱烈に愛する著者が史書をひもとき、いにしえの激闘に思いを馳せる。時には壮絶な闘いに身震いし、時には試合を極めた必殺技を大胆推理する。現代の格闘家の話題をはじめとした愉快な脱線話も満載。ただひたすらパワーを追求した英雄たちの歴史絵巻、ここに開幕――。
  • 夢のなかの街
    4.0
    生れた街、KOOCHI市の紀行を、幼い頃の記憶の断片と重ね合せながら幻想的に綴った表題作。“亜依子”から“麻依子”へ、“麻依子”から“ミーコ”へと変貌する多重人格の女性がひき起す不可解な行動の渦を描く『亜依子たち』。一組の男女の会話を通して、作家とおぼしき女性の模糊とした像を浮びあがらせる『迷宮』。ほかに『解体』『マゾヒストM氏の肖像』など、全12編を収める。
  • 城の中の城
    4.0
    英文学教授の山田信氏は、去年突然渡仏中にパリで洗礼を受けカトリック信者になった、と妻の桂子(30歳)さんに事後告白をした……。夫君の裏切りに、自尊心を傷つけられた桂子さんは、二人の可愛い子供を思いながらも、棄教か離婚かを夫君にせまり、二人だけの宗教戦争がはじまった! 禁じられた愛や夫婦交換を、キリスト教を背景に描き、現代の知識人家庭を風刺する長編小説。
  • 歴史への感情旅行
    -
    歴史は、資料の積み重ねではない、むしろ一個の感情である。――著者は、古老の「むかし噺」に耳を傾けるように古今の文学を逍遥する。酒を慈しみ、愛犬を偲び、信念を述べ、精一杯生きて逝った人々に思いを馳せる。どんな短い一章にも、半世紀にわたる作家人生の精髄が刻み込まれ、暮しの下敷きである「過去」への、敬愛の念が込められている。我に返る時間を与えてくれる一冊。
  • 西陣の女
    4.5
    1巻660円 (税込)
    露ぶかい山繭の村、奥信濃の有明から、京都の西陣に奉公に上り、美しい風光の中で、雅やかな西陣の女へと磨かれてゆく刈田紋。つづれ職人・松吉と密かに愛し合い、心惹かれながらも、日本画壇の長老・今畑冬葉の後妻となった紋は、夫の死後、何処へともなく失踪する……。愛憎に絡まれた哀しい女人の物語を、伝統美あふれる西陣つづれ織の世界を背景に、情感豊かに描く長編小説。
  • 風のかたみ
    3.0
    叔母の面影を秘めた萩姫を慕い大伴次郎信親は、信濃の国をあとにして京へ上る。不動丸を頭とする盗賊集団が暴れ廻り荒廃の極みに達している都では、次郎が思い焦がれる萩姫は左大臣の子・安麻呂に惹かれている。一方、笛の名人でもある次郎は笛師の娘・楓に愛される。綾なす恋は、いずれも実ることなく、秋風吹きすさぶ野の果てに消えていく。今昔物語に取材した王朝ロマン小説。
  • ラーメン煮えたもご存じない
    4.0
    インスタントラーメンだって工夫ひとつでおいしく食べられます――。柔らかい心で生きなければと思いつつも、今日び余りにも馬鹿げたことばかりで疲れます。自分中心の若者の無礼なること、権力志向する男の愚かしきこと、そして結婚だけが生きがいの女の鈍なること。しかしなぜか人生面白く人間商売やめられぬのだ。この恐ろしい世の中を、もっと柔らかい心で楽しく生きるために。
  • 紳士同盟ふたたび
    -
    あのコン・ゲーム集団〈紳士同盟〉が帰ってきた! 暴力や殺人で金を奪おうとするのは、もう古い。今の世の中、頭脳こそ、腕力や凶器以上の武器なのだ。被害者に被害にあっていると思わせない機智と品格を備えた犯罪、それがコン・ゲームだ。今度の目標は二億三千万円、東京・NYを股にかけ、大胆かつ緻密なトリックをしかけるが……。スマートでユーモラスなコン・ゲーム小説。
  • 世界の喜劇人
    5.0
    チャップリン、キートン、ロイド、マルクス兄弟、アボット=コステロ、ダニー・ケイ、マーティン=ルイス、ボブ・ホープ、ウディ・アレン……。有名無名のコメディアンたちの目を疑うような恐るべきギャグ、笑い死ぬほどのナンセンスの数々。著者自らが体験した笑いの感覚に基づいて、コメディアンたちの姿を生き生きと再現する刺激的な二十世紀の喜劇映画史。
  • 挑戦
    -
    傷ついた戦友自身の依頼により、その戦友の命を断った――消したくても消えることのない、重く暗い記憶。かくて主人公・伊崎は、戦争によって生の流れを中断されてしまった自分の存在に、それでも意味を見つけようと模索する。やがて国際資本の厳しい経済封鎖であえぐ“石油問題”の打開に己れの活路をも見出した彼は、狂気の沙汰と言うべきイラン原油買付けに命を賭けて挑む……。
  • 夢判断
    4.2
    人間は夢の中で将来起きることを予見できるだろうか? 赤い色の夢を見ると、その夢が必ず実現されるという青年の話「夢判断」。毎週届く奇怪な殺人依頼の手紙と毒入りコーラ事件との不気味な結びつきを暗示する「あの人をころして」。プロの結婚詐欺師にコロリと欺かれたかに見えた自称ハイミスの意外な正体とその復讐「蜜の匂い」。現代人の深層心理を揺さぶる恐怖と笑いの14編。
  • 着想の技術
    -
    漸新なアイデアはいかにして得られるか。ある断片からいかに小説に発展させるか。精神分析学は小説創作に有効か。夢を素材にした小説は文学たりうるか。…そして現実世界から全く独立した超虚構文学の追求へ。『虚人たち』『虚航船団』『夢の木坂分岐点』と、たてつづけに日本の文学界を震感させた著書が、名作品の執筆と平行して、自らの頭脳の中身を解剖してみせた発想学の大系。
  • 三婆
    -
    敗戦の混乱のさなかに金満家の老人が急死し、残された彼の宏大な邸に本妻・妾・小姑の三人の老女が同居する。二人を追い出そうとする本妻、居すわろうとする芸者上りの妾、血縁を主張する妹――三者入り乱れての虚実のかけひき。嫉妬と猜疑の渦巻くすさまじい葛藤を赤裸に描き、笑いの中に〈老い〉の恐怖を見据えた表題作。ほかに、『役者廃業』『亀遊の死』『なま酔い』など全7編。
  • 私は忘れない
    4.0
    日本のめざましい経済成長の陰に、電信電話もなく台風の被害も報道されない僻地。海の荒れる時は定期便の船さえ近づけない閉ざされた南の離島、黒島。スターの座を夢みながらチャンスを逃した門万里子は単身黒島へ旅立ち、自然との闘いの中でたくましく運命を切り開く人々の純朴な姿に心を打たれる――。明るい筆致で、厳しい日常生活の中に人間らしさの恢復を試みた問題作。
  • 暗黒世界のオデッセイ
    -
    人口爆発、鉛中毒、人工冬眠──奇才が正確なデータにもとづいて、近未来の日本をクールに描いてみせた『2001年暗黒世界のオデッセイ』。正気と狂気、天才と狂人の間を行きつ戻りつする現代人の深層心理をユニークに分析してみせた『乱闘人間大研究』。それに全漫画、『レオナルド・ダ・ヴィンチの半狂乱の生涯』『星新一論』を加え、筒井康隆の驚異の世界をあますところなく伝える一冊。(新潮文庫版に掲載しておりましたイラストの一部は電子版には収録しておりません。)
  • メタモルフォセス群島
    -
    足のはえてくる果実。木の枝に寄生している小動物。人間を食べて首に似た果実をつける植物。放射能の影響であらゆる生物が突然変異体(ミュータント)と化した不気味な世界を描いた『メタモルフォセス群島』。妻子を脱獄囚に人質にとられたサラリーマンが、脱獄囚の家にのり込んで脅迫のエスカレーションを企てる『毟りあい』。ほかに『五郎八航空』『定年食』など幻想と恐怖の突然変異的作品群。
  • 私説博物誌
    -
    珍獣、妙鳥、奇魚、怪草、あらゆる種類の生物の知られざる生態を紹介しながら、人間社会に視点を移し入れ、筒井康隆一流の人間批評を試みたユニークエッセー。(新潮文庫版に掲載しておりましたカットは電子版には収録しておりません。)
  • 将軍が目醒めた時
    4.0
    将軍として精神病院に君臨してきた蘆原老人が長い狂気の眠りから目醒めた時、世界が崩壊した――正気と狂気の渾然とした現実世界のナンセンスを突く表題作。一枚の切符を発端に、懐かしい故郷の駅に降り立った男を次々に襲う悪夢をシュールなタッチで描く『乗越駅の刑罰』。他に『万延元年のラグビー』『ヤマザキ』など、奇想天外なアイディアとブラックユーモアに満ちた全10編。
  • 贋食物誌
    -
    鮨屋でトロをたくさん食べるのはなぜその店に気の毒であるのか、別府温泉の城下がれいがいかに美味であるか、落花生と南京豆とピーナッツは同じものか異なるものか、等々。たべものを話の枕に、男女の問題、少年期の回想、交友、お酒、セックス、ギャンブルその他、豊富な人生経験を自在に語る洒脱なエッセイ。
  • 人狩り
    -
    水野は危(ヤバ)いことなら何でもまかせておけという暴力のプロだ。ギャラは高いが、拳銃にかけては恐るべき凄腕。頼まれればどんな人間だってきれいに消してみせる自信がある。その彼が暴力団・三光組から依頼されたのは、敵対する大和興行に潜り込んで、武器のルートを潰してしまうことと仲間割れをおこさせることだった。
  • 岩壁の掟・偽りの快晴
    5.0
    競いあう二人の女性クライマーの虚栄の犠牲となり、穂高屏風岩に自ら生命を絶った田浦敏夫。彼に町の生活を捨てさせ、山へと駆りたてたものは何だったのか……。人生の重い悲しみを負った一人の山男の屈折した生涯を、冷厳に聳える岩壁を背景に描く長編『岩壁の掟』など全6編。――人間の内面に蟠る暗い影、心に生ずる陥穽を、厳しい自然との息づまる対決の中に描く山岳小説集。

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  • からかご大名
    3.0
    三島宿のはずれで大名行列の供先を横切ったために、六歳の少女が斬られた。名主、和尚の助命嘆願の甲斐もなく……。一つの事件が引き起す波紋を追い、人間関係の複雑さに光をあてた表題作。蒙古襲来の史実に添い、肥前松浦党の戦いと情報活動を描いた「元寇秘話」。他に「弾丸よけ竹束之介」「首様」「駒ヶ岳開山」など様々な時代、階層の人間の生に視点を据え、その本質を衝く10編。

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  • 六合目の仇討
    -
    江戸後期、西神田を出発した富士詣での先達をつとめる町人・八兵衛には、幼な馴染みのぬいをめぐる苦渋の過去があった……十年前に武士を捨てた男への復讐劇が、富士山中腹に展開される表題作。蝦夷地北辺の警衛に功のあった近藤重蔵の失脚を描く「近藤富士」、ほかに「関の小万」「冬田の鶴」「指」「太田道灌の最期」「生人形」「賄賂」「島名主」「伊賀越え」「仁田四郎忠常異聞」「意地ぬ出んじら」の、歴史に材をとり、そこに生きた人々の姿を見据える全12編。

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  • 梅雨将軍信長
    4.1
    織田信長は、土砂降りの桶狭間を急襲して今川義元を倒し、雨の晴れ間を狙って長篠に武田勝頼を破った。大勝するのはいつも雨の時季。その陰には「気」を見る男がいた――。表題作の他、算法に惹きつけられた侍たちの悲劇を描いた「算士秘伝」、言い争いから富士登山に挑むことになった大奥下女の物語「女人禁制」など、自らも科学、技術、山岳の人であった著者の異色歴史小説全9編。

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  • 風雪の北鎌尾根・雷鳴
    5.0
    厳冬の北アルプス北鎌尾根を縦走中異常気象にあって遭難する二人のパーティーの緊迫したドラマを描く『風雪の北鎌尾根』、専門的な山登りとハイキングのプロセスのちがいに着想の妙をえた『雷鳴』の表題作2編をはじめ、著者がヨーロッパ旅行の経験をもとにして、日本の風土とは異なる自然を描く『古城』『牧草地の初雪』『チロルのコケモモ』など山岳小説全13編を収録する。

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  • 男たちの好日
    -
    外国製品に蹂躙されている昭和初年の日本に、電気化学工業を興すことで「国の柱」になろうと邁進する牧。しかし、苦心惨憺して開発した硫安やアルミ製造技術は、統制経済をとりはじめた国家によって公開を迫られ、牧は国策会社の社長に祭りあげられてしまう。国家を幸せにすることはあっても、国家によって幸せにされることのなかった男の生涯を通し、「男の好日」とは何かを問う。

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  • 黄金の日日
    4.5
    戦国の争乱期、南蛮貿易によって栄える堺は、今井宗久、千利休ら不羈奔放な人材によって自治が守られ、信長や秀吉たちもその豊かな富に手を出すことができなかった。今井家の小僧、助左衛門は危ない仕事を何でも引受けることで戦国武者たちの知遇を得、大船を仕立てて幾度かルソン(フィリピン)に渡り巨利をなす。――財力をもって為政者と対峙し、海外に雄飛していった男の気概と夢。

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  • 秀吉と武吉 目を上げれば海
    3.6
    戦国末期、瀬戸内海の村上水軍を率いて独立自存の勢力を誇っていた海賊の総大将・村上武吉。毛利一族などとの争いの末に獲得した徴税権と領土が、天下統一を狙う豊臣秀吉に奪われそうになった時、武吉はいかにして、それと戦ったのか。いかなる権力にも臣従することなく、己れの集団を守りぬいた武吉の生涯を通じ、時代の転換期における指導者のあり方を示唆した歴史小説。

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  • 冬の派閥
    3.6
    御三家筆頭として幕末政治に絶大な影響力を持つ尾張藩の、勤王・佐幕の対立は、ついに藩士十四人を粛清する〈青松葉事件〉へと発展し、やがて明治新政府下、藩士の北海道移住という苦難の歴史へと続く。尾張藩の運命と不可分の、藩主徳川慶勝の「熟察」を旨とする生き方を、いとこ一橋慶喜の変り身の早い生き方と対比させつつ、転換期における指導者のありかたを問う雄大な歴史小説。

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  • 隠花平原(上)
    3.8
    1~2巻660円 (税込)
    杉並の閑静な住宅街で、帰宅途次の銀行員が撲殺された。捜査は進展せず事件は迷宮入りとなるが、被害者の妻の弟で若手画家の山辺修二は、義兄は誰かと間違われたのでは、と思い至る。では誰と? やがて浮びあがった謎の男の陰に、見え隠れする新興宗教団体と地方銀行のつながり。そんな折も折、修二は問題の銀行の頭取を通じて、その宗教団体から大作絵画の制作を依頼された……。

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  • 共犯者
    3.9
    銀行を襲い、仲間と山わけにした金で商売をはじめた内堀彦介は、事業に成功した今、真相露顕の恐怖から5年前に別れた共犯者の監視を開始するが……。疑心暗鬼から自滅していく男を描く「共犯者」。妻の病気、借金、愛人とのもめごと、仕事の失敗――たび重なる欲求不満と緊張の連続が生み出す衝動的な殺意を捉えた「発作」。ほかに、「恐喝者」「愛と空白の共謀」など全10編を収める。

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  • 時間の習俗
    3.4
    神奈川県の相模湖畔で交通関係の業界紙の社長が殺された。関係者の一人だが容疑者としては一番無色なタクシー会社の専務は、殺害の数時間後、遠く九州の和布刈(めかり)神社で行われた新年の神事を見物し、カメラに収めていたという完璧すぎるアリバイに不審を持たれる――『点と線』の名コンビ三原警部補と鳥飼老刑事が試行錯誤を繰返しながら巧妙なトリックを解明してゆく本格推理長編。

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  • 黒の様式
    3.6
    結婚して二年たらずで自殺した美しい姉。歳月がながれ高校生の母親となった妹が、思春期の息子の手に負えない行状から、姉の死の真相にたどりつく「歯止め」。小さな港町の家々に投げ込まれた奇怪なチラシ。二十年前に母親が義父に殺されたと告発する男が巻き起こす騒動の驚くべき顛末「犯罪広告」。“古拙の笑い(アーケイック・スマイル)”を浮かべた若い女の硬直した死体の謎「微笑の儀式」。傑作中編小説三編。

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  • 過ぎゆく日暦
    -
    広大な“清張文学”を支えていたものは、倦むことのない取材と、こまめに記けられた「日記」であった。〈流れ作業〉で解剖が進むニューヨークの死体収容所。文豪・鴎外を始終悩ませた家族の不和。ゾロアスター教の拝火殿を眺望しながら、モーツァルトの「魔笛」を考える旅日記……。何気ないメモと、ふとした雑感が小説の土台に据えられてゆく。創作の臨場感あふれる“清張ノート”。

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  • ならぬ堪忍
    3.6
    城代家老の“御意討ち”を命じられた新八郎は、直(じか)に不正を糺すが、逆に率直な説明を受け、初めて真実を知る。世間の風聞などは信を置くに足らぬと説いた著者の人間観が現れる『宗近新八郎』。藩の“家宝”が象徴する武家の権威を否定して“人間第一主義”を強調する『浪人走馬灯』。生命を賭けるに値する真の“堪忍”とは何かを問う『ならぬ堪忍』など戦前の短編全13作を収める。

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  • 月の松山
    3.9
    あと百日の生命と宣告された武士が、己れを醜く装うことで師の家の安泰と愛人の幸福をはかろうとする苦渋にみちた心情を描く『月の松山』。口論の果てに同僚を斬ってしまった男の子供を身ごもっていた女の、数奇な運命とそれを見まもる周囲の暖かな眼を情感ゆたかに謳った『初蕾』。ほかに『お美津簪』『追いついた夢』『おたは嫌いだ』など、話術の巧みさを存分に発揮した10編を収める。

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  • 雨の山吹
    3.7
    乳呑み児をかかえた家来と出奔した妹を斬るために遠国まで追っていった兄は、みじめな境遇におちながらも小さな幸福にすがって生きる妹一家と出会う。静かな結末の余韻が深い感動を呼ぶ表題作。逆境に生きてきた勝ち気の芸者と藩政改革の矢面に立つ若侍との障害をこえた愛「山茶花帖」。ほかに「恋の伝七郎」「いしが奢る」など、武家社会のさまざまな愛の形を中心に10編を収める。

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  • 花杖記
    4.3
    何者かによって父を殿中で殺され、家禄削減を申し渡された加乗与四郎が、事件の真相をあばくまでの記録『花杖記』。どんな場合も二の矢を用意せず、また果し合いにもあえて弱い弓を持ってのぞむ弓の達人の物語『備前名弓伝』。ほかに『武道無門』『御馬印拝借』『小指』『似而非物語』など、武家社会の掟の中で生きる武士たちの姿に、永遠に変らぬ人間の真実をさぐった作品10編を収録。

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  • 樅ノ木は残った(上)
    4.0
    仙台藩主・伊達綱宗、幕府から不作法の儀により逼塞を申しつけられる。明くる夜、藩士四名が「上意討ち」を口にする者たちによって斬殺される。いわゆる「伊達騒動」の始まりである。その背後に存在する幕府老中・酒井雅楽頭と仙台藩主一族・伊達兵部とのあいだの六十二万石分与の密約。この密約にこめられた幕府の意図を見抜いた宿老・原田甲斐は、ただひとり、いかに闘い抜いたのか。

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  • 一人ならじ
    3.4
    合戦の最中、敵が壊そうとする橋を支える丸太がわりに自分の足を使い、片足を失う『一人(いちにん)ならじ』。敵の武将を倒しても首級(しるし)を掻き取ることをせず、すばやく次の敵を求めて前進する『石ころ』。ほかに『三十二刻』『殉死』『さるすべり』など、名を求めず、立身栄達も望まず、黙々としておのれの信ずる道を生きる無名の武士たちとその妻の心ばえを描いた“武家もの”の傑作全14編を収める。

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  • 天地静大(上)
    4.0
    倒幕に揺れ動く幕末、若者たちは国の為に何をすべきかを模索していた。そんな中、東北の一小藩出身の杉浦透は、世間の流れに惑わされず昌平黌に入学し、学問の道に専念することを決意する。一方、水谷郷臣もまた、藩主の弟という立場に悩みながらも、己に忠実な生き方をしようと努力する。時代の動乱に巻き込まれながらも、懸命に生きる若者たちを描いた青春群像劇。

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  • 正雪記(上)
    3.3
    立身出世を夢見て、一介の染屋職人の伜から、侍になる野望を抱き江戸へ出奔した由井正雪は、その明晰な頭脳を武器に島原の乱で浪人たちの衆望を集める。浪人隊を結成し、幕府軍の先鋒に使うことを進言する。しかし知恵伊豆・老中松平信綱の狡猾な罠が待っていた……。支配権力への抑えがたい怒りを胸に、徳川のゆるぎない天下に挑んだ巨人を正面から見つめた本格歴史長編。

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  • 虚空遍歴(上)
    3.8
    旗本の次男、中藤冲也が余技として作る端唄は、独得のふしまわしで江戸市中のみならず遠国でももてはやされた。しかし冲也はそれに満足せず、人を真に感動させる本格的な浄瑠璃を作りたいと願い、端唄と縁を切り、侍の身分をも棄てて芸人の世界に生きようとする。冲也の第一作は中村座で好評を博するが、すぐに行き詰り、妻も友をも信じられぬ懐疑の中にとじこめられてしまう。

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  • 宇宙のあいさつ
    3.8
    1巻660円 (税込)
    植民地獲得のために地球から派遣されてきた宇宙船はすてきな惑星を占領することができた。温和な気候、豊富な食料、従順な住民たち、200歳の平均寿命――疲れた地球人のための保養地として申し分なかった。しかし、喜びもつかの間、おそるべき事実が……無気味なイロニーのあふれる表題作など、奔放なアイデアと洒脱なエスプリでスマートに描くショート・ショートの傑作35編。
  • 編笠十兵衛(上)
    3.7
    浅野内匠頭は吉良上野介へ刃傷におよび即日切腹となる。一方の上野介には何のとがめもなかった。“武士の喧嘩両成敗”という幕府の定法にもかかわらず、将軍綱吉の裁決は一時の気まぐれである片手落ちだと世の反感をかう。柳生十兵衛の血をひき、将軍家から〔御意簡牘〕と呼ばれる秘密の鑑札を与えられている浪人・月森十兵衛は、幕府政道の〔あやまち〕を正すため隠密活動を開始する。
  • 黒幕
    3.8
    徳川家康のめぐらす謀りごとを実現すべく働き抜いた山口新五郎は、江戸開府後、六十歳を過ぎて初めて女体に接した。そして二度も十代の嫁を娶ることになる、この男の生涯を描いた「黒幕」。夫の仇と襲った相手が従容として、己れの左腕を斬り落とさせる姿に心を打たれ、その男の妻となる戦国の女を描いた「猛婦」。他に「勘兵衛奉公記」「槍の大蔵」など、初収録4編を含む11編を収録。

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  • 侠客(上)
    4.0
    「お若えの、お待ちなせえやし」――名調子の主は幡随院長兵衛。その波瀾万丈の生涯は、ある刃傷沙汰から始まった。塚本伊太郎(後の長兵衛)は父を殺され、仇討ちを決意。が、伊太郎も刺客に襲われて重傷を負う。その後、親友の旗本水野十郎左衛門の協力で、父の主君であった唐津の殿様の異常な性格を知る。決意を胸に秘めつつ、伊太郎は恩人の山脇宗右衛門の元に身を寄せるが……。
  • おせん
    4.1
    〔けころ〕とよばれる娼家から身請けされ、いまは囲われ者となっているおせんと、かつてのなじみ客でゆすりの罪で島流しにあった男の母親との心のふれあいを描いた表題作。それがその男の口ぐせとも知らず“不作の生大根”という罵言にかっとなり、思わず殺してしまった世間知らずの娘の、その後の人生を追った「三河屋お長」。ほかに「あいびき」「お千代」「梅屋のおしげ」など全13編収録。
  • あほうがらす
    3.5
    人間という生きものの不思議さ、運命のおそろしさ……“ポン引き”の生き方を活写した軽妙洒脱でユーモラスな表題作、忠臣蔵の悲劇の主人公浅野内匠頭の、説明のつけようもない二面性を照射した「火消しの殿」、芝居や映画のヒーローとしてではなく、一人の武士として己れの立場を貫いた男を描く「荒木又右衛門」など、著者の多岐多彩な小説世界の粋を精選した11編を収める。
  • あばれ狼
    4.0
    野州・真岡の小栗一家と竹原一家の大喧嘩にやとわれて人を殺めてしまった渡世人たち――その不幸な生い立ちゆえに敵・味方をこえて結ばれる男と男の友情を描く連作「さいころ蟲」「あばれ狼」「盗賊の宿」。多淫な母親の若き日の嘘によって翻弄され続けた樋口角兵衛の生涯をたどる「角兵衛狂乱図」など、畢生の大作『真田太平記』の脇役たちを描いた4編の、全7編を収録。

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  • アミダサマ
    3.1
    幼子の名はミハル。産廃処理場に放置された冷蔵庫から発見された、物言わぬ美少女。彼女が寺に身を寄せるようになってから、集落には凶事が発生し、邪気に蝕まれていく。猫の死。そして愛する母の死。冥界に旅立つ者を引き止めるため、ミハルは祈る。「アミダサマ!」――。その夜、愛し愛された者が少女に導かれ、交錯する。恐怖と感動が一度に押し寄せる、ホラーサスペンスの傑作。

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  • 東電OL症候群(シンドローム)
    3.8
    女なら誰しもがもっているんじゃないかしら、そういう堕ちてみたいといった感情を――。『東電OL殺人事件』に自らを投影した女たちの肉声、赤裸に語られた事柄は胸が潰れるほどの真摯な性だった。「逆転有罪」で迷走を続ける法廷、新たに起きる事件。死してなお強い磁力を発するエリートOLの眼差しが、日本社会の闇までをも浮き彫りにする。もはや瞠目するしかない、渾身のルポ。

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  • 山本五十六(上)
    3.9
    1~2巻660~737円 (税込)
    戦争に反対しながら、自ら対米戦争の火蓋を切らねばならなかった聯合艦隊司令官山本五十六。今日なお人々の胸中に鮮烈な印象をとどめる、日本海軍史上最大の提督の赤裸々な人間像を余すところなく描いた著者畢生の力作。本書は、初版刊行後、更に調査し、発見した未公開資料に基づき加筆された新版である。上巻では、ロンドン軍縮会議での活躍を中心に、若き日の山本像が描かれる。
  • 森がわたしを呼んでいる
    4.0
    父を亡くし、母と暮らす中学生の佐知子。真夜中に激しい地震があった翌々朝、自宅の周囲には突然、深い森が広がっていた。折しも母は仕事で海外へ。ひとりぼっちの佐知子に次々と迫る危険な影は、森の誕生の秘密と関わっているのか。そのとき、追い詰められた佐知子の耳に、亡き父の声と鳥の羽ばたきが聞こえてきた――。生と死が交錯する不思議の森の深奥で佐知子が出会ったものは。

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  • 定刻発車―日本の鉄道はなぜ世界で最も正確なのか?―
    4.0
    電車が2~3分遅れるだけで腹を立てる日本人。なぜ私たちは“定刻発車”にこだわるのか。その謎を追うと、江戸の参勤交代や時の鐘が「正確なダイヤ」と深く関わり、大正期の優れた作業マニュアル、鉄道マンによる驚異の運転技術やメンテナンス、さらに危機回避の運行システムなどが定時運転を支えていた! 新発見の連続に知的興奮を覚える鉄道本の名著。

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  • しゃべれども しゃべれども
    4.1
    国分太一主演の映画原作。しゃべれどもしゃべれども想いは伝わらない――。若い落語家・今昔亭三つ葉は、前座より少し上の二ツ目。そんな三つ葉が話し方教室を開くことに。無愛想で失恋ばかりしている美人、関西弁でクラスでいじめにあう小学生、野球解説がド下手な元プロ野球選手……人に教えている場合ではない先生のもとに、自分を表現できない不器用な生徒が集まり……。さりげない展開の中に絶妙のテンポ感があり、読み始めたら止まらない! 癒されたい人、必読。

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  • 花探し
    3.7
    イケよ、と綿貫は命じた。「我慢しないでイケよ」――男が射精するのをこらえるように、舞衣子は別のことを考える。だって男に命じられるのは好きじゃない。男を選ぶのは私――。舞衣子は不動産王に磨き上げられた愛人のプロ。美しく洗練された容姿を高級ブランドに包み、ベッドではテクニックの限りをつくす。そんなある日、舞衣子は新たな「男」を探すことを決意する。とにかく金を持っている男。それを惜しみなく女に遣う男を――。SM趣味の御曹司、一夜に何度もイカせる有名作家……秘密の館で、ホテルのベッドで、官能と欲望の日々がはじまる。果たして次の「男」は……

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  • 沈まぬ太陽(一) -アフリカ篇・上-
    4.3
    1~5巻660~737円 (税込)
    広大なアフリカのサバンナで、巨象に狙いをさだめ、猟銃を構える一人の男がいた。恩地元、日本を代表する企業・国民航空社員。エリートとして将来を嘱望されながら、中近東からアフリカへと、内規を無視した「流刑」に耐える日々は十年に及ぼうとしていた。人命をあずかる企業の非情、その不条理に不屈の闘いを挑んだ男の運命――。人間の真実を問う壮大なドラマが、いま幕を開ける!

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  • こころの散歩(新潮文庫)
    NEW
    -
    こんな窮屈な時代だからこそ、たまには、心に深呼吸させてみませんか? 目に見えるモノではない「心の相続」をすることの重さ、生きるためのエネルギーとなる「ノスタルジーの力」、そして「後ろ向きに前へ進むこと」の大切さ。自由闊達、融通無碍。九十歳をこえた作家が自らの豊富な経験をもとに綴る、「週刊新潮」連載のエッセイから選りすぐった、人生を楽しむためのヒント満載の四十三編。(解説・南陀楼綾繁)
  • 神の悪手(新潮文庫)
    NEW
    -
    1巻649円 (税込)
    俺はなぜ、もっと早く引き返さなかったのか――。棋士を目指して13歳で奨励会に入会した岩城啓一だったが、20歳をとうに過ぎた現在もプロ入りを果たせずにいた。9期目となった三段リーグ最終日前日の夕刻、翌日対局する村尾が突然訪ねてくる。今期が昇段のラストチャンスとなった村尾が啓一に告げたのは……。夢を追うことの恍惚と苦悩、誰とも分かち合えない孤独を深く刻むミステリ5編。(解説・斜線堂有紀)
  • 「科学的」は武器になる―世界を生き抜くための思考法―(新潮文庫)
    -
    福島原発事故直後からインターネット上の情報発信によって注目され、放射線調査にも大きな役割を果たした科学者が、サイエンスマインドの大切さを語る。エビデンスのある発信のパイオニアは、いかにして静かな研究室を飛び出し、世界を疾走し、科学を社会のために活用してきたのか。フェイクの飛び交う不確実性の時代に「ぶれない軸」を持って正しい判断をするための強力な羅針盤となる一冊。
  • カンガルー・ノート(新潮文庫)
    4.0
    ある朝突然、〈かいわれ大根〉が脛に自生していた男。訪れた医院で、麻酔を打たれ意識を失くした彼は、目覚めるとベッドに括り付けられていた。硫黄温泉行きを医者から宣告された彼を載せ、生命維持装置付きのベッドは、滑らかに動き出した……。坑道から運河へ、賽の河原から共同病室へ――果てなき冥府巡りの末に彼が辿り着いた先とは? 急逝が惜しまれる国際的作家の最後の長編!(解説・ドナルド・キーン)
  • 笑う月(新潮文庫)
    3.8
    笑う月が追いかけてくる。直径1メートル半ほどの、オレンジ色の満月が、ただふわふわと追いかけてくる。夢のなかで周期的に訪れるこの笑う月は、ぼくにとって恐怖の極限のイメージなのだ――。交錯するユーモアとイロニー、鋭い洞察。夢という〈意識下でつづっている創作ノート〉は、安部文学生成の秘密を明かしてくれる。表題作ほか著者が生け捕りにした夢のスナップショット全17編。
  • 無関係な死・時の崖(新潮文庫)
    4.0
    自分の部屋に見ず知らずの死体を発見した男が、死体を消そうとして逆に死体に追いつめられてゆく『無関係な死』、試合中のボクサーの意識の流れを、映画的手法で作品化した『時の崖』、ほかに『誘惑者』『使者』『透視図法』『なわ』『人魚伝』など。常に前衛的主題と取り組み、未知の小説世界を構築せんとする著者が、長編「砂の女」「他人の顔」と並行して書き上げた野心作10編を収録する。(解説・清水徹)
  • 飛ぶ男(新潮文庫)
    4.1
    ある夏の朝。時速2、3キロで滑空する物体がいた。《飛ぶ男》の出現である。目撃者は3人。暴力団の男、男性不信の女、とある中学教師……。突如発射された2発の銃弾は、飛ぶ男と中学教師を強く結び付け、奇妙な部屋へと女を誘う。世界文学の最先端として存在し続けた作家が、最期に創造した不条理な世界とは。死後フロッピーディスクに遺されていた表題作のほか「さまざまな父」を収録。(解説・福岡伸一)
  • 名前で呼ばれたこともなかったから―奈良少年刑務所詩集―(新潮文庫)
    5.0
    彼らはみな、加害者である前に被害者であった――。貧困、育児放棄、虐待、発達障害によるいじめ、厳しすぎるしつけ。過酷な環境で過ごし、犯罪に走った少年たち。そんな彼らの固く閉ざされた心の扉が「物語の教室」を通して少しずつ開かれ、心の内に秘めた思いが詩となって溢れ出す。受刑者に寄り添い向き合ってきた作家が編んだ奇跡の詩集、待望の第二弾。『世界はもっと美しくなる』改題。
  • 沈没船博士、海の底で歴史の謎を追う(新潮文庫)
    4.3
    最新技術を武器に、謎を追え! なぜか竜骨が見つからないクロアチアの輸送船、水深60mのエーゲ海に沈む沈没船群、ドブ川で2000年間眠り続けた古代船に、正体不明のカリブの「海賊船」。そして、ミクロネシアの海にのこる戦争遺跡――。英語力ゼロで単身渡米、ハンバーガーさえ注文できずに心が折れた青年が、10年かけて憧れの水中考古学者になりました! 深くて魅力的な海底世界へようこそ。(解説・河江肖剰、対談・丸山ゴンザレス)
  • オーバーヒート(新潮文庫)
    -
    東京から大阪へ移り住み、京都の大学で教える哲学者の「僕」。男性同士の関係である年下の恋人は、料理の好みが似ていて、僕の文章を楽しそうに読む。その穏やかな距離がもたらす思慕――。行きつけのバー、熱帯魚、故郷の家族と友人たち、折々のツイート。かけがえのない日々を鮮やかに描いて芥川賞候補作となった「オーバーヒート」。川端康成賞を受賞した傑作短編「マジックミラー」を併録。(解説・羽田圭介)
  • 世の中と足並みがそろわない(新潮文庫)
    3.7
    女性を下の名前で呼べない。「二子玉(にこたま)」と言いたくない。可愛げある「隙(すき)」が作れない。そして、この本のタイトルがやっぱり気に入らない――。世の中と折り合えない「不器用すぎる芸人」ふかわりょうが、日頃から抱く些細な違和感をタネに縦横無尽に持論を展開。ここで出会ったのも何かの縁。その独特なこだわりに呆れつつも、くすりと共感してしまう、歪(いびつ)で愉快なふかわワールドをご堪能あれ。(解説・綿矢りさ)
  • わたし、定時で帰ります。(新潮文庫)
    4.0
    1~3巻649~880円 (税込)
    絶対に定時で帰ると心に決めている会社員の東山結衣。非難されることもあるが、彼女にはどうしても残業したくない理由があった。仕事中毒の元婚約者、風邪をひいても休まない同僚、すぐに辞めると言い出す新人……。様々な社員と格闘しながら自分を貫く彼女だが、無茶な仕事を振って部下を潰すと噂のブラック上司が現れて!? 働き方に悩むすべての会社員必読必涙の、全く新しいお仕事小説!
  • 外科室・天守物語(新潮文庫)
    4.0
    1巻649円 (税込)
    私はね、心に一つ秘密がある――。伯爵夫人手術時に起きた“事件”を描く『外科室』。眷族を伴として姫路城天守閣に棲む妖姫が、若き武士と出逢う『天守物語』。二つの代表作に加えて、故郷金沢を情感ゆたかに描く怪異譚『霰ふる』。三島由紀夫が絶賛した絶筆『縷紅新草』。そして『化鳥』『高桟敷』『二三羽――十二三羽』『絵本の春』を収める。アンソロジスト東雅夫が選び抜いた、鏡花文学の精髄八篇。(解説・東雅夫)
  • サキの忘れ物(新潮文庫)
    3.7
    自分には何にも夢中になれるものがない――。高校をやめて病院併設の喫茶店でアルバイト中の千春は、常連の女性が置き忘れた本を手にする。「サキ」という外国人の男性が書いた短篇集。これまでに一度も本を読み通したことがない千春だったが、その日からゆっくりと人生が動き始める。深く心に染み入る表題作から、謎めいた旅行案内、読者が主役のゲームブックまで、かがやきに満ちた全九編。(解説・都甲幸治)
  • 血も涙もある(新潮文庫)
    3.8
    不倫? 倫理が何かは自分で決める――。35歳の和泉桃子は当代随一の料理研究家・沢口喜久江の助手を務めつつ、彼女の夫・太郎と付き合っている。「人の夫を寝盗ること」を趣味とする桃子だったが、喜久江を心から尊敬してもいる。一方の喜久江は、太郎の女癖を受け流すのが常だったが……。“lover”と“wife”と“husband”三者の視点で語られる「危険な関係」の行方は。極上の詠美文学!(解説・平松洋子)
  • サーカスの夜に(新潮文庫)
    3.5
    1巻649円 (税込)
    両親の離婚でひとりぼっちになった少年は、13歳の誕生日を迎え、憧れのサーカス団・レインボーサーカスに飛び込んだ。ハイヒールで綱の上を歩く元男性の美人綱渡り師、残り物をとびきり美味しい料理に変える名コック、空中ブランコで空を飛ぶ古参ペンギンと、個性豊かな団員達に囲まれて、体の小さな少年は自分の居場所を見つけていく。不自由な世界で自由に生きるための、道標(みちしるべ)となる物語。(解説・ミムラ)
  • カラスは飼えるか(新潮文庫)
    4.6
    カラスはペットにできないの? カラスの肉って食べられるの? 頭の良さで知られながら嫌われもする身近な野鳥。彼らを愛してやまない研究者がその生態と魅力を熱く語る。フクロウや渡り鳥の秘密。伝説となったドードー。カラスじゃない鳥類についても考察しつつ、気が付けばまたアイツの話に――。カラス博士による愉快でためになるエッセイ集。あなたのカラスの見方がきっと変わる!
  • 全部ゆるせたらいいのに(新潮文庫)
    3.7
    夫は毎晩のように泥酔する。一歳の娘がいるのに、なぜ育児にも自分の健康にも無頓着でいられるのだろう。ふと、夫に父の姿が重なり不安で叫びそうになる。酒に溺れ家庭を壊した父だった。夫は、わたしたちはまだ、立ち直れるだろうか――。家族だから愛しく、家族だから苦しい。それでもわたしが夫に、母が父に、父が人生に捨てきれなかった希望。すべての家族に捧ぐ、切実なる長編小説。(解説・桜木紫乃)
  • 影に対して―母をめぐる物語―(新潮文庫)
    3.4
    なぜ父と母は別れたのか。なぜあのとき、自分は母と一緒に住むと勇気を持って言えなかったのか。理由は何であれ、私が母を見捨てた事実には変わりはない――。完成しながらも手元に遺され、2020年に発見された表題作「影に対して」。破戒した神父と、人々に踏まれながらも、その足の下から人間をみつめている踏絵の基督を重ねる「影法師」など遠藤文学の鍵となる「母」を描いた傑作六編を収録。(解説・浅井まかて)
  • 村田エフェンディ滞土録(新潮文庫)
    4.4
    19世紀末の土耳古(トルコ)、スタンブール。留学生の村田は、独逸(ドイツ)人のオットー、希臘(ギリシア)人のディミィトリスと共に英国婦人が営む下宿に住まう。朗誦の声が響き香辛料の薫る町で、人や人ならぬ者との豊かな出会いを重ねながら、異文化に触れ見聞を深める日々。しかし国同士の争いごとが、朋輩らを思いがけない運命に巻き込んでいく――。色褪せない友情と戻らない青春が刻まれた、愛おしく痛切なメモワール。
  • コラムニストになりたかった(新潮文庫)
    3.0
    私がほんとうにやりたいことって、なんだろう! 早稲田大学を卒業するも就職に失敗。父の勤める読売新聞社でのアルバイトを経て、主婦の友社でコピーライターに。退職してヨーロッパを放浪し、ついに気持ちは定まった。フリーランスで、雑誌業界で働きたい――。雑誌『アンアン』に衝撃を受け、仏映画『どん底』にシビれた女の子がコラムニストになるまでを綴る、流行と文化と思い出の年代記(クロニクル)。(解説・佐久間文子)
  • モナドの領域(新潮文庫)
    3.9
    河川敷で若い女性の腕が発見された。ほどなく近隣のベーカリーでアルバイトの美大生が精巧な腕形のバゲットを作り、店の常連の美大教授が新聞のコラムで取り上げ、評判を呼ぶ。次に教授は公園で人を集め、その全知全能を示し始める。自らを神の上の「無限の存在である創造主」だという教授の真意とは。そして、バラバラ殺人の真相は? 天才筒井康隆がその叡智の限りを注ぎ込んだ歴史的傑作。(解説・池澤夏樹)
  • 魚は粗がいちばん旨い―粗屋繁盛記―(新潮文庫)
    3.5
    魚の粗(あら)ほど旨いものはない! 築地に日本初の魚の粗料理専門店・粗屋ができた。金目鯛の粗汁、烏賊の腸煮、皮剥の肝和え――通常は捨てられてしまう粗が、魚を知り尽くした店主、鳥海五郎にかかると絶品料理へと大変身。はやる気持ちを抑え、今宵も粗屋の暖簾をくぐる。いったいどんな料理が待っているのか。粗を肴に酒を呑む、至福の時間の始まりだ。『骨まで愛して 粗屋五郎の築地物語』改題。(解説・太田和彦)
  • もし僕らのことばがウィスキーであったなら(新潮文庫)
    4.2
    シングル・モルトを味わうべく訪れたアイラ島。そこで授けられた「アイラ的哲学」とは? 『ユリシーズ』のごとく、奥が深いアイルランドのパブで、老人はどのようにしてタラモア・デューを飲んでいたのか? 蒸溜所をたずね、パブをはしごする。飲む、また飲む。二大聖地で出会った忘れがたきウィスキー、そして、たしかな誇りと喜びをもって生きる人々――。芳醇かつ静謐なエッセイ。
  • へんろ宿(新潮文庫)
    3.0
    1~2巻649円 (税込)
    江戸回向院前の「へんろ宿」には訳ありの旅人がやってくる。旗本の嫡男で剣の達人だった市兵衛と一弦琴の名手の佐和夫婦が安い宿賃ながら心を込めてもてなす――。死期迫る浪人が江戸で最後の願いを遂げるべく投宿するが(表題作)。江戸藩邸内で消息を絶った父親を救いに関所を躱してやってきた娘(「名残の雪」)。実直そうな紙商人が宿に戻ってこない(「通り雨」)。こころ打つ人情ものの傑作四編。(解説・縄田一男)
  • ポロック生命体(新潮文庫)
    4.4
    画家の作品をそっくり再現するAIが現れた。科学倫理の研究者である水戸絵里は「盗作」ではないかと開発者に迫るが、晩年の画家の作品はAIが描いたものだったという衝撃の事実が明かされる――。再現なく創造し続けるAIこそ真の芸術家であり、無為な日々を過ごすことを選ぶ人間の方こそロボット的ではないか……。絵画や小説、将棋を通じて知性と生命の本質を問い、近未来を幻視する短編集。(解説・ドミニク・チェン)

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