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江戸回向院前の「へんろ宿」には訳ありの旅人がやってくる。旗本の嫡男で剣の達人だった市兵衛と一弦琴の名手の佐和夫婦が安い宿賃ながら心を込めてもてなす――。死期迫る浪人が江戸で最後の願いを遂げるべく投宿するが(表題作)。江戸藩邸内で消息を絶った父親を救いに関所を躱してやってきた娘(「名残の雪」)。実直そうな紙商人が宿に戻ってこない(「通り雨」)。こころ打つ人情ものの傑作四編。(解説・縄田一男)
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Posted by ブクログ
時代小説は本屋に多く並べてあるけれど、かなり年配の方が読むものと、今までスルーしてたので今回初めて読みました。 また、短編はあまり好んで読まないんだけど、時代小説+短編はありかも。 元武士で今は宿の店主として、そこに訪れた客の困難に立ち向かう。水戸黄門のような、毎回スッキリ系。
江戸回向院前にある「へんろ宿」は、手持ちの金が心細くて、旅籠に泊まれない人や、御府内近郊の神社仏閣に参詣するためにやって来た人など、普通の宿には泊まれない、泊まりたくない人達のために三年前に、 始めた宿。 主人は、一兵衛といって、元は旗本三百五十石笹岡家の嫡男で、お家断絶後、両親を相次いで亡くし、...続きを読む諸国を回り、剣の修行をし、後、武士を捨てて、宿屋の主人となった。 妻は、佐和といい、一弦琴の名手で、五日に一度、町の裕福な商家の娘達に教えている。謝礼金は、へんろ宿の上がりより、ずっと多く、一兵衛、佐和夫婦と、女中のおとらの三人の暮らしを支えている。 《へんろ宿》 自分の妻になる筈だった女の不幸を知り、自分を裏切った女の無念を晴らすため、敵を討とうとする男。 《名残りの雪》 父親が、藩邸の牢に繋がれていると聞き、手形を持たず、国を出た、武家娘・弥生。 共の者も山賊に襲われて、崖から落下したらしい。 《蝉の時雨》 25歳のおたまは、毎日、どこかに出かけて、落胆して宿に戻ってくる。 二世を契った男と、約束したにも関わらず、会えないという。 《通り雨》 紙商人の泊まり客は、三十過ぎの働き盛り。 醜男ではあるが、桜の絵が上手。 一兵衛・佐和夫婦は、泊まり客には、詮索はしないと言いながらも、何かと、手助けをして、泊まり客を送り出す。
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