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気構えも足りない大人の人生
第1話の「紙人形」は、困難に際しその対応を少しばかり間違えたことで、人生が大きく変ってしまった町人の物語である。
50両もの借金を抱えた小間物屋の吉兵衛は、その返済に窮してしまい、以前奉公していた小間物屋の「えびすや」を頼って金を借りるべく訪ねた。しかし、主からは相手にもされずに冷たく追い返される。
借金の返済にこだわり過ぎ、あるいは自分の商売の存続を考えるあまり、えびすやに頼るだけが返済の道であると短絡的に考え、他に考えを巡らすことが無かったこと、それが彼の落ち度であった。1軒の店を持つ大の所帯主であるにも拘わらず、いま少し考えを巡らせれば他の方法もあったのだろうに・・・
それにしても、その吉兵衛に魔が差したのは、えびすやからの夜の帰り道のことであった。
ある家の軒を借りて雨宿りをしていると、家から人が出て行くのが見えた。しかも戸は開けっぱなしだった。吉兵衛が覗いても人の気配が無い。中に入るとタンスに巾着があった。それを盗んで戸口に戻る途中に寝ていた女主が起きて来て、手に包丁を握り吉兵衛に迫ってきた。だが、その時女は着ていた着物の裾に足を取られて転び、自分で自分の胸元を刺して死んでしまった。
これが事件の全てである。
この女主は江戸の大店の隠居の妾をして、田舎にいる親思いの優しい女であった。隠居の子どもを身籠もったが、跡継ぎ問題を避けるために止む無く中絶をした。そうしたことで、心が荒んで酒に手を出すだらしない生活を送ってきた。当然、行儀作法を教えなければならい下女がいるにも拘わらず、逆に女は冷たくあたっていた。
下女は事件の目撃者である。
橋廻り同心、立花平七郎は、2ヶ月前に京橋で油がこぼれた事件があった際、この下女が足を滑らして転んだのを目にしている。
いつも明快で優秀な平七郎とその仲間たち、すなわち、秀太に加えて今回から町廻り同心から左遷された亀井市之進と工藤豊治郎の2名が加わった橋廻り同心たちが、手際よく事件を調べ上げて無事全容を解決する。吉兵衛への裁きは、「重所払い」であった。
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小説・文芸
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