山の音

山の音

671円 (税込)

3pt

深夜ふと響いてくる山の音を死の予告と恐れながら、信吾の胸には昔あこがれた人の美しいイメージが消えない。息子の嫁の可憐な姿に若々しい恋心をゆさぶられるという老人のくすんだ心境を地模様として、老妻、息子、嫁、出戻りの娘たちの心理的葛藤を影に、日本の家の名状しがたい悲しさが、感情の微細なひだに至るまで巧みに描き出されている。戦後文学の最高峰に位する名作である。

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山の音 のユーザーレビュー

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感情タグBEST3

    Posted by ブクログ 2023年06月03日

     そこはかとなく漂う老いと死の予感を、行間から立ち昇らせる文章。「悲しい」ものをただ「悲しい」と書かれても「ああそうですか」となり、野暮ったくて仕方ないですし、過剰に難解であったり、くどくど書かれても想像を働かせる余地がなくなって困ります。
     その点、簡素な文で、心情や情景を掬い上げる著者の筆運びは...続きを読む

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    Posted by ブクログ 2022年12月22日

    大した出来事は起こらないのにずっと読めてしまう文章。情景が頭の中で細部まで再現される。川端康成は天才だな。

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    Posted by ブクログ 2022年09月05日


    個人的康成ナンバーワン。
    過度な描写を省きに省いたミニマルの極地。
    風景・心理・説明できない情緒が流れまくる。作者がよく使う短く区切った掌編名も良い。
    根底にあるのは男尊女卑だが、ただ作品の持つ良さのみを評価したい。

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    Posted by ブクログ 2021年07月29日

    深夜ふと響いてくる山の音を死の予告と恐れながら、信吾の胸には昔あこがれた人の美しいイメージが消えない。息子の嫁の可憐な姿に若々しい恋心をゆさぶられるという老人のくすんだ心境を地模様として、老妻、息子、嫁、出戻りの娘たちの心理的葛藤を影に、日本の家の名状しがたい悲しさが、感情の微細なひだに至るまで巧み...続きを読む

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    Posted by ブクログ 2021年03月29日

    かつてそれが当たり前だと思われていた家族像が瓦解してゆく様と主人公である信吾の死の予感、彼が睡眠中に見る数々の夢が折り重なった本作品はある時代の終焉を告げているかのようです。息子の嫁である可憐な菊子の存在によって、信吾が今でも忘れられない、昔憧れていた美しい女性のイメージが幾度も喚起され、彼女の面影...続きを読む

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    Posted by ブクログ 2021年03月02日

    『山の音』は、日本の家庭の複雑な人間の心情を巧みな表現で描き出しています。

    主人公、信吾の悲しみは、死の予告とも感じられる山の音を聞くことに始まる。死に恐怖しながら老境に至りより鮮明に美の観念に傾倒してゆく。

    美しさを愛するが故に、信吾の不幸せがあるとも思われ悩ましいところでもあります。

    信吾...続きを読む

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    Posted by ブクログ 2020年11月06日

    草木への心象描写は作者の自然美に対する精神性が垣間見れた。まさに四季に寄り添う家族の肖象があった。
    初老の男が亡き者の美しい面影を義娘へ投影し、淡い恋慕に戸惑うのだが...死を目前にしても迷いがあり、侘び寂びがあると「山の音」が囁きに聞こえた...

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    Posted by ブクログ 2019年01月05日

    昭和のどこにでもある二世帯住居家族の物語。浮気、出戻りなどいろんな事件が起きる。老化を実感しはじめている60代の老主人はそれらにおろおろとしながら日々を過ごしていく。文体は淡々としているのですが、登場人物の細かな感情が、季節の風景や小物たちを絶妙に使いながら、見事に描かれているのがすごいところ。さす...続きを読む

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    Posted by ブクログ 2017年10月09日

    海外の小説ばかり読んでいたので、久しぶりに日本の小説をと思い、読み始めた。
    明快で論理だてて語られることが多い海外の小説と比べて、この作品はとにかく、行間の妙、とでも言うべきか、風景や会話などを通して、人物の心情が巧みに、繊細に描かれている。決して直接的に語られることはないが、読みながら場面をイメー...続きを読む

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    Posted by ブクログ 2017年01月08日

    老いを感じる今日この頃の主人公の心境が淡々とつづられている作品。
    しかしまあ、息子は美人の妻を放っておいて浮気する、娘は出戻りで帰ってくるなど家族を巡る事件は多発。主人公にとっての癒しは息子の嫁。嫁を見ていると若かりし頃の初恋を思い出すのでしょう。
    昔の家族の形ってこうなんだと感じる一方で、それを鋭...続きを読む

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