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鎌倉円覚寺の茶会で、今は亡き情人の面影をとどめるその息子、菊治と出会った太田夫人は、お互いに誘惑したとも抵抗したとも覚えはなしに夜を共にする……。志野茶碗がよびおこす感触と幻想を地模様に、一種の背徳の世界を扱いつつ、人間の愛欲の世界と名器の世界、そして死の世界とが微妙に重なりあう美の絶対境を現出した名作である。他に「波千鳥」(続千羽鶴)を収録する。
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Posted by ブクログ
近年現代の流行作家の面白さ巧みさに興味があった中で ふと文豪と呼ばれる川端作品を手に取り その作品の魅力を一気に読み終えた 力量の高さはどこにあるのか 言葉の選び方 表現の深さを今更私ごときが言うべきではないが やはり素晴らしい 作品名「千羽鶴」は女性の持っていた風呂敷に描かれた模様 ただそれだけな...続きを読むのに終始その描写が忘れられず 作品名になったことにも納得する 胸に痣のあるその痣に毛が生えている栗本ちかこの描写が 本当に巧みで 私のまわりにもいるどこかの誰かのようで 気味悪い実感が 読後にもぬぐえない 川端康成を読み返そう
「...菊治はちか子のあざを思い出した。」始まりから忽ち心を鷲掴みにされた。茶碗や水差しなど、この物語では数々の名品が先達の心や想い、姿を投影している。このモノクロの世界に色彩豊かな千羽鶴の風呂敷が包み込んだのは、亡きものが残した唯心する愛ではなかったか...
艶っぽいあれこれが目にはつくけれどそこじゃない。目と耳と肌、自分自身で感じた事・確かめた事以外決して信じてはならない、と改めて教えられるお話し。
傑作だと思います。著者が現実を大きく超えた異世界、白昼夢を漂うような女性の姿を描きながら、あくまで現実との対比として描くことで異常性を際立たせている。ごく日本的な世界観のなかで清と濁、美と醜の表現がすばらしいです。
今まで読んだ川端の中で、最も位置づけにくく、ミステリアスな存在感を持つ作品だと感じた。 まず、作品の成立過程は、「山の音」と並行して書かれていること。この小説自体、どこが本当の終わりかハッキリしない。断続的に発表され、普通は最初に発表された5章を「千羽鶴」と呼び、次の3章を「波千鳥」(続千羽鶴)と呼...続きを読むび、いちおう最初の5章とは別にされたりしている。さらにそれよりあとにも2章ほど、同じ登場人物の話が発表されているようだが、物語の展開が別物になっているのでいちおうこのあたりで切っておくということらしく、要するに物語のあとさきがハッキリしない作品だ。 川端の作品について、一章ずつ発表されて、それぞれの章で完結するみたいな指摘はよくなされるが、それにしても千羽鶴のあとさきのハッキリしなさ加減は他の作品と比べても独特のものがあると思う。なので僕は、この作品はある程度川端のほかの作品を読んだあとに読むべき作品と感じる。そこで川端のこの作品の創作方法とか距離感とかを考えることによって川端という作家へのさらなる理解を試みるにはいい本ではないか。 古風な内容を扱いながら、手法的には他に例のないスタイルと言えるかもしれない。ひょっとしたら川端はこの作品でそういう実験的な形式を試みたのかもしれない。それが可能だったのが、この小説に対する動機の力強さがあれば、最後はなんとか整うはずだ、と思ったかもしれない、と想像してみたくなる。 最初の「千羽鶴」5章で作品としては鮮やかな印象を残して終わっていて、やはり川端文学の名作の一つだと思わされるが、そのあとに続く章がその形式を壊し、それがますます深く考えさせるものとなっている。
平易な言葉選びと感情を排した情景描写から、立ち昇る日本の雅、小都市の静けさは『古都』に通ずる良作品。 本作など特にそうだが、個人的に川端康成が作品や小編に付ける名前に非常に興味がある。 直接的な関連が見受けられないパターンが多いが、そこへの理解が川端作品を読み解く鍵になっている気がする。
千羽鶴がメインのヒロインでは無かったのでタイトルに持ってきた意味は何だったのだろう。湯呑み茶碗の口紅を筆頭にずっと太田夫人の影がじっとりと纏わりつくような感覚だった。
千羽鶴と波千鳥のふたつの小説が収録されていると思って読み始めた。 千羽鶴を読み終えた時、千羽鶴とはなんだったのかを考えた。 第一印象ということなのだろうか。でも、千羽鶴は話の中心ではない。 波千鳥を読み始めて、何故千羽鶴なのかが腑に落ちたけれども、誰がヒロインなのかは読んだ人によって変わる作品だと思...続きを読むう。 わたしには文子がすごく魅力的な女性に思えた。
耽美的作品。真似できない表現が随所にみられ、幼児が橋から落ちて運よく無事だったシーンは、思わず文字を拾いなおした。本著に収められた「千羽鶴」と「波千鳥」は最初別作品かと思ったが違っていて、一つの物語としてつながっていく。変わったタイトルの付け方だが、解説をみて、書き連ねたものとわかった。最後も満腹感...続きを読むなく中途で終わった感があったが、続稿があって全集にあるらしい。読みたい。2021.4.14
個人的にメンタルがやられてたので 自然描写や志野茶碗に恋心を重ねて描く技法に癒されました。川端さんしか描けないと思います。 物語としては少し物足りない気がしました。続編はまだ読めてません。
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