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私はね、心に一つ秘密がある――。伯爵夫人手術時に起きた“事件”を描く『外科室』。眷族を伴として姫路城天守閣に棲む妖姫が、若き武士と出逢う『天守物語』。二つの代表作に加えて、故郷金沢を情感ゆたかに描く怪異譚『霰ふる』。三島由紀夫が絶賛した絶筆『縷紅新草』。そして『化鳥』『高桟敷』『二三羽――十二三羽』『絵本の春』を収める。アンソロジスト東雅夫が選び抜いた、鏡花文学の精髄八篇。(解説・東雅夫)
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Posted by ブクログ
幼くして美しい母を失った鏡花の母への思慕の情と、鳥や虫への偏愛を窺わせる『化鳥』、少年のときに家で見た二人の怪しい婦人、それは一体何だったのだろうと振り返る『霰ふる』、自分の心の秘密を譫言で言ってしまうかもしれないからと麻酔を拒んで手術を受ける伯爵夫人を描く『外科室』、当てもなくブラブラしていたと...続きを読むきに見た光景に心を奪われていた男が、一気に怪異に見舞われる『高桟敷』、家の庭に来る雀を慈愛をもって可愛がる様子がほほえましい随筆『二三羽―十二三羽』、しかしこれもやはり鏡花、終盤不思議な出来事に出くわすこととなる。家の近くの様子を描写していたかと思いきや、大水により流された古屋敷に巣食っていた大量の蛇が白浜から鎌首を擡げている怪異の様がラストに描かれる『絵本の春』、恥ずかしめを受けお堀に身を投げた零落の工女の墓石を巡る不思議と彼女を悼む人たちの愛憐の情を描いた鏡花最晩年の作『縷紅新草』、そして傑作戯曲『天守物語』。 副詞、接続詞に使われる漢字がひらいているのはちょっと残念だがやむを得ないだろうし、難しい読み方にはルビが付されているので、読むのにそんなに苦労はしないだろうと思う。 各編ともそれほど長いものはないし、怪異幻想の作家、鏡花の入門編としては適当な作品が選択されているのではないだろうか。
抒情的な言葉の並びがリズミカルで流麗 独り言のような語り口調が笑いを誘うところもある 赤蜻蛉の唄が印象的で刹那 怪異な物語の情景がありありと浮かぶ
『外科室』 画師「予」が、親友の医学士・高峰が執刀する手術に立ち会う場面から始まります。患者は貴族階級の伯爵夫人。手術直前、夫人は麻酔を拒否します。理由は「麻酔で譫言(うわごと)を漏らし、秘めた想いが知られてしまうのが怖いから」。 周囲の反対を押し切り、夫人は麻酔なしでの手術を望み、高峰はそれに...続きを読む応じます。手術が進む中、夫人は突然高峰の手を握り、「あなたは、私を知りますまい」と言いながら、自らの胸をメスで切り裂きます。 高峰は「忘れません」と答え、夫人は微笑みながら息を引き取ります。 物語の後半では、9年前に高峰と「予」が植物園で偶然見かけた美しい令嬢の回想が描かれます。その令嬢こそが伯爵夫人であり、高峰はその一瞬の出会いを胸に秘め、結婚もせず生きてきたのです。夫人の死後、高峰も同じ日に亡くなります。 原文、文語体が難解で読めず、不気味さだけが際立ってしまいました。。。 現代訳のあらすじと読み合わせました。 明治期には、身分制度によって婚姻が制限される社会背景があり、鏡花はそれに対する静かな不満を抱いていました。 彼の作品では、直接的な恋愛描写を避けながらも、言葉の奥に濃密な感情が込められています。
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