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なぜ父と母は別れたのか。なぜあのとき、自分は母と一緒に住むと勇気を持って言えなかったのか。理由は何であれ、私が母を見捨てた事実には変わりはない――。完成しながらも手元に遺され、2020年に発見された表題作「影に対して」。破戒した神父と、人々に踏まれながらも、その足の下から人間をみつめている踏絵の基督を重ねる「影法師」など遠藤文学の鍵となる「母」を描いた傑作六編を収録。(解説・浅井まかて)
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Posted by ブクログ
本屋さんで目について。 沈黙、海と毒薬より読みやすいかなと思って。 出会えてよかった本。 最初の方の短編は、終わり方があっけない。救われない。しんどい。 でも、すごく静かに落ち着いている文章なのに、心にグッと迫ってくるような感じ。他の作品も読みたいと思った。
短編集なので、読み易い。 「沈黙」など、これまでに読んだ著作を思い浮かべながら読み進めていたが、最後の作品に辿り着いたときに、この本は心に残るな、っと実感した。 見つかった未発表原稿をこの1冊にまとめた編集部と表紙の選択、そして薦めてくれた読書会のメンバーに感謝と拍手です。
文庫版解説で朝井まかて氏が、遠藤周作氏の別著作である「わたしが・棄てた・女」を読んだ時に「小説はここまで書くものなのか」と心を揺さぶられた、と印象を語っているが、著者の死後に発見されたという今作に対しても、当てる角度は異なれどまさしくその表現がふさわしい、と私は思った。 私小説、とまでは言えないとし...続きを読むても、自身とその家族がモデルであることは自明であるこの「影に対して」には、文字通り愛憎入り混じったどうにも昇華しきれぬ澱のようなどろりとした感情が塗り込められている。 できれば人に知られたくない、あるいは自らが思い起こしたくもないであろう過去やそれにまつわる自身の想い、それらを曝露することこそは、紛れもなく文学の一つの形であるに違いない。 本書には表題作の他、"母"を巡り関連する既作が幾つか編まれている。 どうして本作のみが生前未発表であったのか、本当の理由は今となっては分からないが、それらと比較し、通底するものとそうでないものとを慮ってみるのも、読み手の醍醐味の一つかもしれない。
人が生きる上で母親に対して何かをしたいという想いは、大きな比重を占めているものだと思います。でもそのことを他人に素直に言うことはなかなかできないのです。遠藤周作が、生きている間に発表しなかった心情はとてもよくわかるような気がします。彼がキリスト教信者でい続けたのも、母親がそうだったからであり、そう...続きを読むでなかったらきっとキリシタンではなかったのだろうし、何度もキリシタンをやめようと思ったけれども、母親が一生懸命に信じた宗教だからそれを捨てることはできなかったのだ。 そんな遠藤周作が母について書いた小説だ。きっとこれ以上突っ込むのが怖かったのだと思いました。
見知らぬ土地からでも飼い主のいる家へ戻っていく雑種犬のように、母という存在は死ぬまで薄れず心の原点になる。低く広がり続ける冬の雲のようでもあり、呪縛のような烈しいものでもあるらしい。 没後発表の貴重な一作でした。
母と父、そして信仰を書いた6篇。 いくつもの心理描写に圧倒された。全体からとても陰鬱な空気が漂っているのに、この本質を捉えたような文章が無理なくスッと心に入ってくる。子ども目線の話も、大人目線の話もどれも読みやすかった。 主人公は、厳しく烈しかった母を美化してしまう気持ちを持っているのに対して、父に...続きを読むは冷ややかな視線を向けていた。この点は共通しているけれど、細かな設定は短編ごとに少しずつ違っている。 自身の経験が創作の元になっていることは確かだろう。でも物語をどう膨らませていくかは、ほかにも沢山の可能性があるのだなと思わされた。作品として昇華されるというのはこういうことなのかもしれない。未発表であった理由はわからないが、この作品を読めてよかった。
遠藤周作本人の母親について書かれた自伝的作品。 没死去後に未発表作として発行された作品。 彼自身、発行するつもりはなくとも、彼にとっては書かずにいられなかったであろう母に対する心の葛藤、愛情や憎悪や憐れみといったものが文章から手に取るように伺えれる。 自分の足元に常にまとわりつく影のような存在。 ...続きを読む複雑な家庭環境であり、複雑な想いをずっと抱え続けていたのだろう。 離婚後、母親がキリシタンとなり、彼自身11歳でカトリックの洗礼を受ける。 彼が最後までキリシタンだったのは、母親の存在が大きく関係しているのであろう。
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