小説 - 集英社文庫作品一覧

  • スクープ(スクープシリーズ)
    3.8
    TBNテレビ報道局社会部の布施京一は、看板番組『ニュース・イレブン』所属の遊軍記者。素行に問題はあるものの、独自の取材で数々のスクープをものにしている。時には生命の危機にもさらされるが、頼りになるのは取材ソースのひとりでもある警視庁捜査一課の黒田裕介刑事の存在だ。きらびやかな都会の夜、その闇に蠢く欲望と策謀を抉り出す。
  • 山嵐
    3.8
    時は明治期。会津の地から、ひとりの若者が上京してきた。五尺に満たない小兵ながら、その才能を講道館創始者・嘉納治五郎に見出された彼は、柔道の修行を始める。独自の技「山嵐」を編み出し、講道館四天王のひとりに数え上げられるほどになるが、かねてから夢を馳せていた大陸への渡航を決意する。『姿三四郎』のモデルとなった天才柔術家・西郷四郎の壮烈なる半生。
  • 東京デザート物語
    3.3
    地方から上京し女子大生になった朱子は、料理研究家の叔母の家に寄宿する。朱子の毎日は刺激の連続で、ひょんなことから女性誌の読者モデルに選ばれ、彼女の生活は一変する。そして秘密の恋も始まる。叔母さんのデザートレシピとアドバイスで、朱子は素敵な恋愛レッスンを積んでゆく。恋愛長編小説。デザートのレシピも一部ついています(文庫版から一部割愛)。
  • ゾラ・一撃・さようなら
    3.7
    気儘な探偵・頸城悦夫のもとに舞い込んだ、謎に満ちた美女からの依頼。それは「天使の演習」と呼ばれる古い美術品を、彼女の母のために取り戻すことだった。頸城は「天使の演習」の在り処を探ろうと、引退した大物タレントに近づく。だが、彼は世界的に有名な伝説の殺し屋・ゾラに命を狙われていて…!? 洒脱でスリリング、ちょっぴりほろ苦い新感覚のハードボイルド!
  • 肩ごしの恋人
    3.7
    欲しいものは欲しい、結婚3回目、自称鮫科の女「るり子」。仕事も恋にものめりこめないクールな理屈屋「萌」。性格も考え方も正反対だけど二人は親友同士、幼なじみの27歳。この対照的な二人が恋と友情を通してそれぞれに模索する“幸せ”のかたちとは――。女の本音と日常をリアルに写して痛快、貪欲にひたむきに生きる姿が爽快。圧倒的な共感を集めた直木賞受賞作。
  • 真夜中のマーチ
    3.7
    自称青年実業家のヨコケンこと横山健司は、仕込んだパーティーで三田総一郎と出会う。財閥の御曹司かと思いきや、単なる商社のダメ社員だったミタゾウとヨコケンは、わけありの現金強奪をもくろむが、謎の美女クロチェに邪魔されてしまう。それぞれの思惑を抱えて手を組んだ3人は、美術詐欺のアガリ、10億円をターゲットに完全犯罪を目指すが……!?  直木賞作家が放つ、痛快クライム・ノベルの傑作。
  • 平面いぬ。
    4.0
    ちょっとした気まぐれから、謎の中国人彫師に彫ってもらった犬の刺青。「ポッキー」と名づけたその刺青がある日突然、動き出し…。肌に棲む犬と少女の不思議な共同生活を描く表題作ほか、その目を見た者を、石に変えてしまうという魔物の伝承を巡る怪異譚「石ノ目」など、天才・乙一のファンタジー・ホラー四編を収録する傑作短編集。
  • 暗黒童話
    4.1
    突然の事故で記憶と左眼を失ってしまった女子高生の「私」。臓器移植手術で死者の眼球の提供を受けたのだが、やがてその左眼は様々な映像を脳裏に再生し始める。それは、眼が見てきた風景の「記憶」だった…。私は、その眼球の記憶に導かれて、提供者が生前に住んでいた町をめざして旅に出る。悪夢のような事件が待ち構えているとも知らずに…。乙一の長編ホラー小説。
  • 蜂蜜色の瞳 おいしいコーヒーのいれ方 Second Season I
    3.4
    何の保証もないとわかっていても、彼女から強い約束を引き出したい。僕だけだ、と。一生、僕以外は愛さない、と。遠距離恋愛で、思うように会えない勝利とかれん。久々に週末を一緒に過ごすが、ちょっとした誤解から、なんとなくギクシャクしてしまう。愛おしすぎて、相手を思いやる気持ちが空回りする。それでも少しずつふたりの歩みはすすんでいく……。人気シリーズ待望のSecond Seasonへ。
  • 聞きたい言葉 おいしいコーヒーのいれ方 IX
    3.8
    介護福祉士をめざすかれんは、鴨川へ移住することをついに決意する。遠く離れてふたりの関係はどうなるのだろう。かれんを応援したいけれど、行って欲しくもない勝利の心は複雑だ。彼女だって同じはず。それはふと触れ合う瞬間にだって、充分すぎるほど伝わってくる。でも確かめたい、彼女の言葉で、その胸の内を。大人気シリーズ第9弾。
  • 坂の途中 おいしいコーヒーのいれ方 VII
    3.6
    恋をすると、人は強くなれるんだろうか。それとも、弱くなってしまうものなんだろうか。一人で部屋を借りさえすれば、いつだって好きなときに彼女と二人きりになれるとばかり思っていた。なのに、思うようにはいかない勝利の一人暮らし。バイト先の「風見鶏」では失敗を重ねるし、勝利への思いを断ち切れずに苦しむ星野りつ子が気にかかる。何よりかんじんの「かれん」が離れていこうとしている……。波乱含みの大人気シリーズ7弾には、星野りつ子の独白を収録。
  • 遠い背中 おいしいコーヒーのいれ方 VI
    3.6
    大人気の「おいしいコーヒーのいれ方」シリーズ第6弾。花村の叔母夫婦がついにロンドンから戻ってくる。勝利はかれんとふたりだけになれる場所を確保するために、周囲を説得して、ひとり暮らしを決意する。男としての強さ、優しさに、磨きをかけるためにも。なのに、かれんは近いようで遠くて。ふたりの甘く切ない恋の行方がますます気になる…。
  • 緑の午後 おいしいコーヒーのいれ方 V
    3.6
    5歳年上のいとこ、かれんと恋におちた大学生・勝利。そうとは知らず、勝利に思いをよせる星野りつ子。追いつめられた勝利は、ついに星野に「秘密の恋」をうち明ける。単身赴任していた勝利の父親も帰京し再婚、勝利の妹も誕生して、かれんとその弟の丈、そして勝利の3人だけの生活が変わろうとしている。番外編、丈の恋物語も収録する好評シリーズ第5弾。
  • 雪の降る音 おいしいコーヒーのいれ方 IV
    3.8
    親父が再婚するぅ? 突然のビッグニュースに、福岡に単身赴任している父を訪ねた勝利。父と息子、男同士で過ごす夜、5歳年上のいとこ・かれんへの思いをはじめて打ち明ける。まだまだ秘密にしなければならない恋だけど、少しだけ、前進。なのに美術教師のかれんには彼女に思いを寄せる同僚がいるし、大学生になった勝利は、陸上部のマネージャーから告白されて…。公にできない恋ゆえの悩みが続く。
  • 天神
    3.6
    1~5巻555~715円 (税込)
    絶対にファイター・パイロットになるんだ――。親子三代での戦闘機乗りを目指す航空学生出身の坂上陸(りく)と、防衛大学卒業後、国を守りたいという強い思いから航空自衛隊に入ったエリートの高岡速(はやり)。立場も考え方もまるで違う二人の青年の人生が交差するとき、心揺さぶられる熱いドラマが生まれる! 戦闘機に乗ることに憧れを抱き、夢に向かって突き進む若者たちを描いた壮大な“空”の物語。
  • 高層街
    -
    総理大臣が外遊する際、随行医も務める大町が新宿の高層街にクリニックをオープン。超マンモス都市での生活の中で、極度の緊張状態を強いられる現代人たちが、気軽にすばやく健康状態をチェックできないものか、というのが開院の動機だった。誰の故郷にもなり得ない街だが、そのクリニックには作家の頼永を始め、ジャーナリストなど、様々な人たちが気安くやってくるようになる……。
  • 監督と野郎ども
    3.0
    万年最下位の札幌ベアーズは、チーム強化の秘策を練っていた。ポパイこと山形五右衛門を監督に担ぎ出そうというものだ。76歳という老雄の登場に、日本中のプロ野球ファンは驚いた。腰をぬかした。だがもっとビックリしたのはベアーズの選手たちだった。ショック療法は効き、チームは2年連続優勝を果したが…。抱腹絶倒、痛快無比、これぞユーモア野球小説の決定版。
  • 鏡の偽乙女 薄紅雪華紋様
    3.5
    大正三年、東京。画家を志して家を飛び出した槇島功次郎は、雪の無縁坂で、容姿端麗な青年画家・穂村江雪華(ほむらえせっか)と出会う。風変わりだが聡明、ずば抜けた画才を持つ雪華は、この世に未練を残して死んだ者の魂を絵で成仏させる、驚くべき能力の持ち主だった。果たせぬ恋、罪深き業……死者たちの断ち切れぬ思いが、二人の周囲に不可思議な現象を巻き起こす。幻想と怪奇に満ちた、大正怪異事件帖。
  • 黄色い部屋の謎 乱歩が選ぶ黄金時代ミステリーBEST10(2)
    4.0
    厳重に戸締まりされた「黄色い部屋」に侵入し、スタンジェルソン嬢に血まみれの重傷を負わせたのは誰か――!? 昼なお暗い森の館で企まれた奇怪きわまる密室殺人。この恐るべき謎に挑むべく、弱冠18歳の青年記者ルールタビーユは、勇躍、世紀末のパリを出発する……。息づまるサスペンスと巧みなストーリー・テリング。『オペラ座の怪人』の作者ルルーがおくる、“密室ミステリー”の古典的名作!
  • 小説 総会屋
    -
    商事会社の営業から総務課に移った戸田は、株主総会でド肝をぬかれた。殺気だち緊張がみなぎる会場で、一匹狼の総会屋として頭角をあらわしている昔のクラスメート、鈴村に出会ったのだ。彼は会社の不正を嗅ぎつけ、いきり立っていた………。企業犯罪の新手口を暴き、色と欲望の悪の世界に挑戦する男を描く迫真の長編企業小説。
  • 幻の美女
    -
    “現代の小野小町”といわれる美貌のインテリアデザイナー深草夢路に取材を申し込んだ新聞記者・庄野。ところが、彼の周囲で不可解な事件が続出した。深草の秘書の偽装心中、上司のデスクの不可解な死…。本当の姿を見せぬ美貌の深草とは一体何者なのか。現代と歴史上の謎を巧みに結んで描く長編推理。
  • 空をつかむまで
    3.8
    膝の故障で得意のサッカーを諦めた優太は、廃校が決まった田舎の中学に通う3年生。無理やり入部させられた水泳部には、姫と呼ばれる県の記録保持者と、泳げないデブのモー次郎しかいない。3人は、なくなってしまう美里中学のため、優勝すべくトライアスロン大会に挑む。市町村合併を背景にまばゆい青春の葛藤と疾走を描いた少年少女小説。第22回坪田譲治文学賞受賞作。
  • でいごの花の下に
    3.8
    プロのカメラマンだった恋人が、死をほのめかすメモと使いきりカメラを残して姿を消した。フリーライターの燿子は、彼の故郷・沖縄へと飛ぶ。青い空と海、太陽と風に包まれ愛した男を追いつづける。出会った人々それぞれの過去や今に触れながら、行方知れずの恋人の秘められた驚愕の真実を知っていく。燿子は失った愛を見つけられるのか。南の島で奏でられた生命の讃歌、濃密で一途な純愛小説。
  • 風をください
    -
    営業一課の斉坂すみれ34歳。泣く子も黙るやり手OL。ひとまわり年下の恋人ワタルと一年半は同棲も結婚もしないと約束して、日々を愉しんでいる。ある日、友人のすすめで知り合った素敵な中年紳士伊豆サンに求婚され、心が騒ぐ――。爽やかな男の子と、語り合える紳士。ふたりの間で揺れる女心をユーモアに包んでカラリと描く。愛すべきヒロインへの共感が人生の滋味を与えてくれる恋愛小説。
  • 春のめざめは紫の巻 新・私本源氏
    4.3
    須磨の流人生活から京へ戻り、政界最高の実力者となった光源氏。三十を過ぎてオジンの仲間入りだが、本人は都一の美男と自惚れ屋のまま。相変わらず色恋に熱心で、意中の姫のもとへ通うのだが……。少女から思い通りに育てたはずの紫の姫に翻弄され、生真面目な末摘花には興ざめの対応をされ、思いのズレル散々な日々。「源氏物語」の女人側からみた源氏の恋物語を現代風に描く愉しい古典パロディ。
  • 鏡をみてはいけません
    3.9
    朝ごはんを一緒においしく食べられる人と住みたい――。そんな思いが叶って野百合は仕事で知り合った子持ちの律と同居をはじめるが…。10歳の宵太の世話をやき、元気の素の食事を作る暮らしはなかなか素敵で心弾む。が、ふとなしくずしに男の人生に取りこまれていくような不安を感じる。私はなぜここに居るのだろうか。女が美しさを求めて、自分の納得のいく居場所を模索する愛の長編小説。
  • 愛してよろしいですか?
    -
    斉坂すみれ34歳。会社の仕事はそつなくこなし、重宝がられているのに、女もこの年齢で独身となると生きにくくなる。愛想がよければ男狂いと言われ、ちょっと冷たくすればヒステリー、質素にすれば色気がない――。ある旅先で、ひとまわり年下の大学生・矢富ワタルと出会い、不覚にも恋に落ちてしまった。若い男の子の顔色に一喜一憂する女の甘やかな恋心を笑いの渦に巻き込んで描く傑作恋愛小説。
  • アジア新聞屋台村
    4.2
    ワセダの三畳間に沈没するライターのタカノ青年は、台湾の美人社長に見込まれ、なぜか多国籍新聞社の編集顧問に就任。勇み立ったはいいが、アジア各国のツワモノたちに翻弄され、たちまちハチャメチャな屋台的世界に突っ込んで行く。果たして彼と新聞社の未来は? 在日アジア人と日本人の夢と現実を痛快に描く自伝的トーキョー青春物語。『ワセダ三畳青春記』『異国トーキョー漂流記』の姉妹篇。
  • きままな娘 わがままな母
    3.7
    インテリアデザイナーの沙良、36歳は、母の駒子61歳とふたり暮らし。「あなたが心配だから」という名目のもと、チャンスさえあれば、娘を支配したくてたまらない母。善意がベースとわかってはいるものの、母の言葉に、嫉妬心やライバル心を感じることがある。家賃はなし、家事もすべてお任せという夢のような環境と干渉を天秤にかける娘。結婚のこと、老後のこと、娘と母の思惑は錯綜する。
  • 十三匹の蟹
    3.7
    明治以来、軍需産業の一翼を担い「死の商人」と批判されてきた清和重工業。その会長源田誠の死体が、瀬戸内海に浮かんだ。死者の唇は縫い合わされ、甲羅に武士の怨念の顔を背負った一匹の平家ガニが口の中でうごめいていた! 「十三匹の蟹」と名乗る犯人は第二の殺人を予告。犯人が十三人いるのか、標的が十三人なのか…? 源平の合戦になぞらえた抗争で荒れる社内は大混乱! 恐怖ミステリー。
  • 仮縫
    3.5
    パリ帰りに服飾デザイナー松平ユキにスカウトされ、高級洋装店“パルファン”に勤めた清家隆子。超一流の客筋、豪華な店…初めて知る上流社会に魅了された隆子は、ユキに替ってファッション界をリードする夢を抱いた。厳しい試練を経るうちに、ユキが再びパリに行くことになり、チャンス到来とばかり、隆子は次々と新企画を発表し成功をおさめるが――。
  • 連舞
    4.1
    昭和初期の東京・上根岸。日本舞踊の名門梶川流の師匠を母とする異父姉妹。家元の血を享け、踊りに天賦の才を見せる妹の千春の陰で、姉の秋子は身を慎んで生きてきた。しかし戦後の混乱期、梶川流の存亡を賭け、秋子が進駐軍の前で挑んだ驚くべき舞台が彼女の人生を予想もつかぬ方向へ導いていく――。伝統と因襲の世界で生きる女たちの苦悩と希望を描く、波瀾万丈の人間ドラマ。傑作大河長編。
  • REVERSE リバース
    3.7
    ネットで出会い、メール交換だけで親しくなった千晶と秀紀。仕事や恋愛について、身近な人間には話せないような本音も、メールでなら素直に語れる。けれど、ひとつだけ、嘘をついていることがあった。実はふたりとも、性別を偽っていたのだ。相手を同性と思いながらも、次第に心惹かれてゆくふたりだったが――。性別や外見など、現実の枠をこえて心を通わせる男女の、新しい出会いと恋の物語。
  • 怪男児
    4.0
    年齢:18歳 職業:湘南大学芸術学部 美術学科在籍 身長・体重:187センチ 132キロ 性格・趣味:純情 凶暴 むっつり助平 詩集『智恵子抄』を愛読。こんな主人公・出雲あやめが、特別仕様の自転車に乗り純愛を求めて走り回り、オスの欲望臭を撒きちらし悩みまくる青年男女大必読感動的未得恋名作。
  • いつか白球は海へ
    3.2
    六大学野球で活躍した海藤敏は、プロ野球界入りを諦め、社会人チーム“間島水産”に入団。オーナーの熱心な勧誘と、全国制覇を遂げた名門チームへの憧れが心を動かしたのだ。だが、入団早々、オーナーが急死し、チーム存続の危機が明らかになる。勝利にこだわるルーキーの熱い思いは、他の選手達を…。野球を愛する男達の闘いを描く気鋭のスポーツ小説。ひたむきな昭和のフィールド・オブ・ドリームス。
  • マスク
    4.8
    スポーツジャーナリストの水野は、家族を捨てたプロレスラーの父が死んだと聞き、メキシコの街セントロへ向かう。太陽のように崇められた人気仮面レスラー“エル・ソル”とは、どんな男だったのか。プロレスが唯一の娯楽という貧しい街で、孤児達をかわいがったという父。なぜ、彼は私を捨てたのか――。街で暮らしながら、関係者の証言を集めていく水野が知った父の実像とは……。熱血青春小説。
  • 8年
    3.4
    オリンピックで華々しい活躍をし、当然プロ入りを期待されたが、ある理由から野球を捨ててしまった投手・藤原雄大。8年後、30歳を過ぎた彼は、突然、ニューヨークのメジャー球団に入団する。あの男ともう一度対戦したい! その悲願のためだけに……。一度は諦めた夢を実現するため、チャレンジする男の生き様を描くスポーツ小説の白眉。第13回小説すばる新人賞受賞作。
  • 疑惑 裁判員裁判(鶴見京介弁護士シリーズ)
    4.0
    被告人保窪耕平52歳。保険金詐欺目的で妻を殺した容疑がかかる。前妻の死亡時にも保険金を受け取り、疑われた過去があった。弁護士の鶴見は、保窪が何かを隠していると感じる。一方、裁判員の鳴沢は、目を合わせた時の保窪の奇妙な反応が気になり……。“疑惑”に囚われた裁判員と検察、犯行を否認する被告。やがて哀しくも尊い絆が明らかに――。真実を求め闘う法廷ミステリー。
  • 水無川
    3.2
    担任した児童が親の虐待で死亡するのを防ぐことができず、教師を辞職した真壁。彼の恋人、夏美は、幼い娘への暴力を止められずに苦しんでいる。心の傷をなめあうような、未来の見えない二人の関係。夏美はしだいに、隣りに住む謎めいた男、野口に惹かれて行く。しかし野口にはおそろしい秘密があった――。親と子の愛情の深淵、家族の絆の再生を、渾身の筆で描いた傑作長編ミステリー。
  • 不遜な被疑者たち
    3.5
    30歳の若き弁護士・梶原藤子は、弁護士会から派遣される「当番弁護士」として事件に係わることが多い。だが、被疑者たちは、なぜか誰もが担当の彼女に真実を言おうとしない。そんな“不遜な”被疑者たち、そして、一筋縄では行かない事件。苦闘する藤子の力強い味方とは――? 下町生まれの熱血女性弁護士の仕事と恋を描く、人情味あふれる異色の連作ミステリー。
  • 二重裁判
    4.0
    東京高輪でおきた社長殺しの容疑で逮捕された古沢克彦は無実を叫びながら、獄中で自殺した。兄の無実を信じ名誉回復の再審を弁護士に依頼する妹秀美。だが、公判中の被告人の死は、有罪ではなく無実というのが法律上の建前で再審請求には該当しない。マスコミが騒ぎ、殺人者に仕立て上げられた兄の無実を晴らすために、秀美が打った奇策と意外な事実とは…。真実を問う長編法廷ミステリー。
  • 絆

    4.0
    “夫殺し”の起訴事実を、すべて認めた被告弓丘奈緒子。執拗に無実を主張する原島保弁護士。犯行に使われたと思われる柳刃包丁を買ったのは奈緒子だ、と認める証人。殺された夫には愛人がいた。離婚話もあって……状況は被告不利に傾いてゆく。だが、裁判の進行につれて明らかになる秘められた意外な真実とは。人間の心の気高さを謳いあげる感動の長編法廷ミステリー。第41回日本推理作家協会賞長篇部門受賞作!
  • 悪しき星座
    3.0
    OLが旅先で拾った恋が地獄の入口とは。悪魔にそそのかされて横領した四億五千万円は忽然と消え、OLの遺体のみ廃棄物として発見された。女を騙し貪り尽くした凶敵を追う捜査が始まる。ようやく焙り出したOLに繋がる男も、突如消えてしまう。嗤う真犯人に翻弄されて、捜査本部はついに解散。残った二人の刑事が、執念の追跡行の果てに掴んだ真相を降りこぼれる満天の星座が語る本格ミステリ。
  • 死刑台の舞踏
    -
    女性を助けようとして暴漢と争い、相手を刺してしまった持田明。ところが、刺された男は、数日後全く別の場所で絞殺死体として発見される。そして第二の殺人が――。事件を担当した志水刑事は、殺された男たちが、少年時代の自分の怨敵と知り、複雑な思いで捜査を進める。やがて浮上した第三の男……。正義とは何か? 逃れられぬ人間の情念とは? 多重構成で人間の闇と光を描く、渾身の本格推理。
  • ガラスの恋人
    3.0
    過去を捨て、警備員として暮らす桐生。迷い猫が縁で、飼い主の少女・翔子と出会う。親しみ以上の気持ちを抱き始めた頃、彼女がボーガンで襲撃される。桐生は彼女を庇護し、ある殺人事件に関わっていることを突き止めるが……。秘密を抱えた少女との絆を守る為、男は封印した過去を掘り出し、圧倒的な巨悪に向かい合う。息づまる攻防の中に一筋の純愛を貫く男に、未来はほほえむか。傑作長編ミステリー。
  • 明日香・幻想の殺人(十津川警部シリーズ)
    -
    高松塚古墳の側で、古代貴人の衣装を纏った男の絞殺体が発見された。被害者は資産家の小池恵之介70歳。彼の口座から30億もの大金が引き出されていた。十津川警部は、小池の秘書で愛人の早川亜矢子を訪ねるが、何も知らないという。やがて、彼女も失踪し……。捜査の為、十津川警部たちは奈良へ。飛鳥時代への幻想の果てに連続する殺人! 古代史の闇に迫る名推理。旅情あふれる長編歴史ミステリー。
  • 冤罪(鶴見京介弁護士シリーズ)
    3.6
    河川敷の車から、男の死体が発見される。練炭自殺かと思われたが、不審な点があり、男と関係のあった銀座ホステス美奈子に容疑がかかる。弁護人の鶴見が調査を開始すると、彼女の周りで数名の男が死んでいる事が判明した。疑惑をもつ鶴見だったが、ある団体と美奈子の繋がりが浮かび……。悪女か、聖女か? 魔性に翻弄されながらも真実を求めて闘う弁護士。長編ミステリー。渾身の書き下ろし。
  • 聖域捜査[捜査シリーズ]
    3.3
    “生活安全特捜隊”――風俗から環境犯罪まで、あらゆる事案を追う警視庁生活安全部の特別捜査隊である。入庁以来、第一線の刑事への夢を抱き続けていた結城公一警部は、40歳を迎えた年にその“生特隊”の班長に任命される。捜査一課をはじめとする花形部署から軽んじられる生特隊だが、結城は個性豊かな部下たちにサポートされて果敢に難事件に挑んでいく。犯罪捜査を新たな視点で描く警察小説。
  • 死者はまどろむ
    4.5
    美しい自然に囲まれ、信仰心の厚い村人が住む夢見村に魅せられひと夏を過ごすことになった間宮亜希子の一家。小説家の夫はスランプを脱し、義母も優しくなった。幸福をもたらす魔法の土地だと思った。しかし異様な葬式の列と共同墓地を見たことから、彼らの周囲で何かが狂い始める。ざわめく木立の隙間に、きらめく光の中に使者の影が忍び寄る。幸福に浸っていた家族を恐怖のどん底に突き落とす怪奇の連続とは。長編ホラー小説。
  • 美ら海、血の海
    3.9
    東日本大震災発生から3日後、石巻に入った老人・真栄原幸甚(まえはらこうじん)は眼前の惨状に、60数年前、戦時下の光景を思い出す。1945年、日本は敗色濃厚。14歳、沖縄一中の生徒だった幸甚は、鉄血勤皇隊として強制的に徴用される。ついに米軍は沖縄へ上陸。激しい砲撃・爆撃に本島南部への撤退を余儀なくされた日本軍の道案内を命じられ、あまりに苛酷な地獄を見る! 慟哭の沖縄戦を描く異色の力作長編!
  • こころ
    4.1
    学生の私が尊敬する「先生」には、どこか暗い影があった。自分も他人も信じられないと語り、どんなに親しくなっても心を開いてくれない。そして突然、私の元に「先生」から遺書が届く。そこには、「先生」から人生の全てを奪った事件が切々と綴られていた。親友と同じ人を好きになってしまったことから始まる、絶望的な悲劇が――。人間の本質を見据え、その真実の姿を描ききった、漱石の最高傑作。
  • 平成大家族
    3.7
    三十路のひきこもり息子と90歳過ぎの姑と共に、静かに暮らしていた緋田夫妻。ある日突然、破産した長女一家と離婚した次女が戻ってきて、4世代8人の大所帯に! 物置に閉じこもる孫、離婚後に妊娠が発覚した次女、戦中の記憶と現在を混同する姑……平穏を愛する当主・龍太郎の思いをよそに、次から次へと騒動が押し寄せる。悩み多き一家の姿を軽妙に、時にシニカルに描く痛快家族小説。
  • コンビニ・ララバイ
    3.4
    小さな町の小さなコンビニ、ミユキマート。オーナーの幹郎は妻子を事故で亡くし、幸せにできなかったことを悔やんでいた。店には、同じように悩みや悲しみを抱えた人が集まってくる。堅気の女性に惚れてしまったヤクザ、声を失った女優の卵、恋人に命じられ売春をする女子高生……。彼らは、そこで泣き、迷い、やがて、それぞれの答えを見つけていく――。温かさが心にしみる連作短編集。
  • 永遠の出口
    3.8
    「私は、〈永遠〉という響きにめっぽう弱い子供だった。」誕生日会をめぐる小さな事件。黒魔女のように恐ろしい担任との闘い。ぐれかかった中学時代。バイト料で買った苺のケーキ。こてんぱんにくだけちった高校での初恋……。どこにでもいる普通の少女、紀子。小学三年から高校三年までの九年間を、七十年代、八十年代のエッセンスをちりばめて描いたベストセラー。第一回本屋大賞第四位作品。
  • サムシングブルー
    3.6
    結婚を意識していた恋人と別れてしまった27歳の梨香は、哀しみのさなか、結婚式の招待状を受け取る。差出人は高校時代の彼氏と親友。二人が付き合っていたことを全く知らず、失恋との二重のショックに落ち込む梨香。さらに、当時の仲間たちと一緒に結婚祝いを贈ることになり……。迷いながら、揺れながら、幸せを手さぐりで追い求める女性の姿を丁寧に描く、胸ふるわせる長編恋愛小説。
  • はるがいったら
    3.7
    両親が離婚し、離れて暮らす姉弟。完璧主義の姉・園は、仕事もプライベートも自己管理を徹底しているが、婚約者のいる幼なじみと不毛な恋愛を続けている。体が弱く冷めた性格の弟・行は、寝たきりの愛犬・ハルの介護をしながら高校に通い、進路に悩む。行が入院し、ハルの介護を交代した園。そんな二人に転機が訪れ――。瑞々しい感性が絶賛された、第18回小説すばる新人賞受賞作。
  • マドモアゼル、月光に消ゆ(南条姉妹シリーズ)
    3.3
    “南条家の星”サッちゃんが通う名門小学校の修学旅行先は、なんとドイツ! 母の麗子はもちろん、その双子の妹・美知をはじめ南条家一同も、なぜかうちそろって同行することに――。今回は、旅先ドイツで起こった怪事件とともに、「なぜ美知は14歳で家出をして、ギャング団のボスになるに至ったのか?!」という“衝撃の過去”が明かされます。大好評「南条姉妹シリーズ」の第5弾!
  • ヘッドライン(スクープシリーズ)
    3.9
    報道番組「ニュースイレブン」の記者、布施。素行の悪さに目をつけられながらも、独自の取材で多くのスクープをものにしてきた彼が興味を示した女子学生猟奇殺人事件は、警視庁捜査一課第二係、黒田の担当だった。警察も知らない事実を布施が握っているらしいと感づいた黒田は、彼に張り付くことを決める。記者と刑事、異色のタッグを組んだ二人は、やがて事件に潜む大きな闇の核心に迫って――。
  • あやし うらめし あな かなし
    4.0
    子供の頃、伯母から聞かされた恐怖譚――。月のない夜、奥多摩の霊山に建つ神官たちの屋敷を男女の客が訪れた。思いつめた二人は、神主の説得の甲斐もなく屋敷内で心中を図ったという。だが女は死に切れず、事切れた男の隣で苦しみながら生き続け……。著者の母方の生家に伝わる話を元にした「赤い絆」「お狐様の話」など、怖ろしくも美しい全7編。短編の名手が紡ぐ、味わい深き幽玄の世界。
  • 母 ―オモニ―
    3.5
    太平洋戦争が始まる年、許嫁の父を訪ねて18歳の母は単身、朝鮮から日本に渡った。熊本で終戦を迎え、「在日」の集落に身を寄せる。そして、祖国の分断。正業に就くことも祖国に還ることもできない。貧困に喘ぎながら生きることに必死だった他の在日一世たちとともに、忍従の日々を過ごす。ひたむきに、「家族」を守るために――。かけがえのない母の記憶をたどり、切なる思いをつづった著者初の小説。 【ナツイチ2013対象作品】
  • 今夜は心だけ抱いて
    3.6
    47歳の経験と知恵があって、身体が17歳だったとしたら。あの頃、躊躇してできなかったこと、悔いの残ったことを、もう一度やり直せるとしたら。バツイチの柊子と、幼い頃に手放した娘の美羽の身体が、ある日、入れ替わった。久しぶりの学校の試験に四苦八苦しながらも若さを楽しむ柊子。一方いきなり30歳も身体だけが歳をとってしまった美羽は……。母と娘、女と女として向き合うふたりの運命は?
  • いじめへの反旗
    3.0
    アメリカで生まれ育ったユーこと小野田雄一郎。父親の仕事の都合で帰国、地域で有名な進学校の中学二年に転入した。二重国籍者として日米の教育の違いに戸惑う日々がつづく。ある日、仲良くなった級友が校舎の屋上から転落死した。学校側は自殺を隠蔽しようとするばかり。いじめによる自殺に違いないと見抜き、ただ独り正義の闘いを開始する。社会派サスペンスの旗手がいじめ問題に挑んだ迫真作。
  • WILL
    4.0
    11年前に両親を事故で亡くし、家業の葬儀店を継いだ森野。29歳になった現在も、寂れた商店街の片隅で店を続けている。葬儀の直後に届けられた死者のメッセージ。自分を喪主に葬儀のやり直しを要求する女。老女のもとに通う、夫の生まれ変わりだという少年――死者たちは何を語ろうとし、残された者は何を思うのか。ベストセラー『MOMENT』から7年、やわらかな感動に包まれる連作集。
  • MOMENT
    4.2
    死ぬ前にひとつ願いが叶うとしたら……。病院でバイトをする大学生の「僕」。ある末期患者の願いを叶えた事から、彼の元には患者たちの最後の願いが寄せられるようになる。恋心、家族への愛、死に対する恐怖、そして癒えることのない深い悲しみ。願いに込められた命の真実に彼の心は揺れ動く。ひとは人生の終わりに誰を想い、何を願うのか。そこにある小さいけれど確かな希望――。静かに胸を打つ物語。
  • 私を知らないで
    4.1
    中2の夏の終わり、転校生の「僕」は不思議な少女と出会った。誰よりも美しい彼女は、なぜか「キヨコ」と呼ばれてクラス中から無視されている。「僕」はキヨコの存在が気になり、あとを尾行するが……。少年時代のひたむきな想いと、ままならない「僕」の現在。そして、向日葵のように強くしなやかな少女が、心に抱えた秘密とは――。メフィスト賞受賞の著者による書き下ろし。心に刺さる、青春の物語。
  • しゃもぬまの島
    3.7
    「迎えに来ました」――人を天国へと導く幻獣「しゃもぬま」が祐のもとに突然やってきた。特産品の夏みかんと並び地元の島で有名なその生き物は、死後必ず天国へ行くことから、神聖視されている。そして、自らの死期が近づくと、島の人を死へ誘うという。逃れる方法は一つ、しゃもぬまを誰かに譲ること。微妙な距離感の幼馴染姉妹や、父親を教えない母へのわだかまりを抱え、生と死の狭間で揺れる彼女が導き出した答えとは。心に傷を持つ女性の葛藤と再生を描く幻想奇譚。第32回小説すばる新人賞受賞作。
  • 国道沿いのファミレス
    3.7
    【第23回小説すばる新人賞受賞作】佐藤善幸、外食チェーンの正社員。身に覚えのない女性問題が原因で左遷された先は、6年半一度も帰っていなかった故郷の町にある店舗だった。淡々と過ごそうとする善幸だが、癖のある同僚たち、女にだらしない父親、恋人の過去、親友の結婚問題など、面倒な人間関係とトラブルが次々に降りかかり……。ちょっとひねくれた25歳男子の日常と人生。
  • 六月の輝き
    3.8
    戻りたい。きらめく光で満ちていた、あの季節へと――。気が強くて元気な美奈子と、病弱で優しい美耶。同じ誕生日、隣同士の家に生まれた二人は、互いに傍にいることが当たり前の「特別」な存在だった。だが、11歳の夏、美耶の持つ「ある力」がきっかけで二人の関係は壊れてしまう。すれちがったまま残酷に過ぎていく月日が、やがて優しい奇跡を呼び……。少女たちを繋ぐ、不思議な“絆”の物語。
  • 浮雲心霊奇譚 赤眼の理
    3.6
    1~7巻572~781円 (税込)
    時は江戸末期。絵師を目指す青年・八十八は、夜道で幽霊に出くわして以来、奇妙な行動を取るようになった姉を救うため、憑きもの落としの名人に会いに行く。肌が異様に白く、両眼を覆うように赤い布を巻いた男。名を、浮雲という。布の下に隠した赤い両眼で死者の魂が見えるという破天荒な浮雲と行動を共にするうち、八十八の前には新たな世界が見えてきた――。幕末ミステリー、堂々開幕!
  • コンジュジ
    3.3
    1993年9月2日未明、11歳のせれなは恋に落ちた。テレビ番組で偶然見かけた伝説のロックスター・リアンに。母に捨てられ、父から性虐待を受けるせれなにとって、その愛しい人は唯一の生きる理由となった。彼女は苦しみのたび、リアンとの妄想世界にトランスする。甘美な夢と凄惨な現実。その境界線は次第に曖昧になっていき――。過酷な現実を生きる一人の少女による自らの救済の物語。圧巻のデビュー作にして、第44回すばる文学賞受賞作。川上未映子氏絶賛!!
  • みちびきの変奏曲
    3.0
    「つかぬことをうかがいますが、こういう手の動きはなんなのかわかりますか?」――通り魔に襲われて亡くなった女性・清藤真空。その最期を看取った人材派遣会社の社員・棚橋は、死の間際の彼女のメッセージの意味を知るため、真空にゆかりのある人々を訪ねてゆく。建築士、音大生、児童養護施設の園長……。真空が遺したのは「きらきら星」だった。そのメロディに導かれるように、それぞれの人生模様が交錯し、真空のこれまでの人生と想いも次第に見えてきて……。人の優しさに触れる癒しと再生のミステリー。
  • 雪と心臓
    3.0
    クリスマスの夜。猛スピードで暴走する車を二台のパトカーが猛追していた。時は二時間ほど前に遡る。その男は、偶然、火事の現場に遭遇する。家の外で助けを求める母親。二階の窓からは泣き叫ぶ娘の姿が。すると男は燃え盛る家の中へと飛び込んだ。それから五分足らず。男は胸に十歳の少女をしっかりと抱きかかえて出てきた。だが、その男は少女を母親に手渡さず、車に乗せてそのまま逃走した。なぜ男は英雄から一転、誘拐犯になったのか。そこにはある男女の双子を巡る二十余年の物語があった。事件の真相に秘められた温もりと寂しさに、あなたはきっと焦がれ、涙する。心に触れる傑作青春ミステリ。
  • 生のみ生のままで 上
    3.9
    1~2巻572円 (税込)
    「私たちは、友達じゃない」25歳、夏。恋人と出かけたリゾートで、逢衣は彼の幼なじみと、その彼女・彩夏に出逢う。芸能活動をしているという彩夏は、美しい顔に不遜な態度で、不躾な視線を寄越すばかりだったが、四人で行動するうちに打ち解けてゆく。東京へ帰った後、逢衣は彩夏と急速に親しくなった。やがて恋人との間に結婚の話が出始めるが、ある日とつぜん彩夏から唇を奪われ、「最初からずっと好きだった」と告白される。彼女の肌が、吐息が、唇が、舌が、強烈な引力をもって私を誘う――。綿矢りさ堂々の新境地! 第26回島清恋愛文学賞を受賞した鮮烈なる愛の物語。
  • 鏡のなかのアジア
    -
    【第69回芸術選奨 文部科学大臣新人賞(文学部門)受賞作】チベット、台湾、クアラルンプール、京都……。言葉の魔力がいざなう、アジアへの旅路。はるかな歴史を持つ僧院で少年僧が経典の歴史に触れる「……そしてまた文字を記していると」、雨降る村でかつて起こった不思議な出来事を描く「Jiufenの村は九つぶん」、時空を超え、熱帯雨林にそびえる巨樹であった過去を持つ男の物語「天蓋歩行」など、アジアの土地をモチーフに、翻訳家でもある気鋭の著者が描く、全五編の幻想短編集。
  • 放課後ひとり同盟
    3.3
    「なにか護身術習えば?」痴漢に遭った女子高生の林は、友人にそう提案されるがまま、パルコの屋上にいる「蹴り男」に会いに行く。その男は、降ってくる不幸を阻止するために、空に向かって蹴りを続けていると言うが……(「空に飛び蹴り」)。離婚寸前の両親、体と心の性別の不一致、永遠に叶わぬ恋。一人きりで悩んで今にも心が爆発しそうな時、この本はきっとあなたの味方になる! 青春連作短編集。
  • 地下芸人
    3.0
    中学校からの友人であるオダと広瀬がお笑いコンビ・お騒がせグラビティーを結成して早十年。未だ一向に売れる気配がなく、周囲の芸人も次々と引退していく中、何が面白いのかもわからなくなったオダは、広瀬からコンビ解散を告げられてしまう。解散まであと一か月。オダが最後にすることは……? 元芸人の著者がひたすらに笑いを追求する者たちを描いたデビュー作。ジャンプ小説新人賞受賞。尊敬するお笑い芸人・カズレーザー氏との対談も収録。
  • 母のあしおと
    4.5
    愛する妻の死後、楽しく暮らすことに後ろめたさを覚える夫。(「はちみつ」)「私はあなたのお母さんじゃない」恋人の言葉が忘れられない次男。(「もち」)義母に嫌われているのではないかと悩む長男の婚約者。(「ははぎつね」)母・道子の人生は"平凡"な、どこにでもあるものだったのだろうか──? 道子の死後から少女だった頃まで、その人生を遡る。七つの視点で綴られた感動の連作集。
  • 怖い話を集めたら 連鎖怪談
    3.8
    恋愛小説家のいつきは、旧知の元編集者から怪談の収集を依頼される。ノベルアプリ開発のため、彼が紹介する取材相手から怪異体験談を聞き、原稿にまとめるという仕事だ。友人に反対されつつも生活費のために依頼を引き受けたいつきだが、異様な体験の数々を聞き集めるうちに奇妙な夢を見るようになり、身の回りにも変化が……。「呪い」が、システムに則って動き出す。
  • よだかの片想い
    4.2
    顔に目立つ大きなアザがある大学院生のアイコ、二十四歳。恋や遊びからは距離を置いて生きていたが、「顔にアザや怪我を負った人」をテーマにした本の取材を受け、表紙になってから、状況は一変。本が映画化されることになり、監督の飛坂逢太と出会ったアイコは彼に恋をする。だが女性に不自由しないタイプの飛坂の気持ちがわからず、暴走したり、妄想したり…。一途な彼女の初恋の行方は!?
  • 持たざる者
    3.9
    僕はどこだか分からないここにいる―修人。全ての欲望から解放された、いや、見放された―千鶴。人生とは結局、自分自身では左右しようのないもの―エリナ。きっと、私がここから別の道を歩む事はないだろう―朱里。他者と自分、世界と自分。絡まり合う、四者の思い。思いがけない事故や事件。その一瞬で、ねじ曲がる。平穏な日常が、約束された未来が。混沌、葛藤、虚無、絶望。――現代社会の風潮を照射した傑作小説。
  • 社賊
    1.0
    一流商社の部長職を辞め、名門ホテルで第二の人生を送ることになった畑中教司。マラソン中に眼前で社長の犬飼が誘拐された。数日後無事に救出されたものの、犯人からホテルに対して執拗な脅迫が始まる。犬飼から特命を受けた畑中は、誘拐直前に起きたホテル従業員の転落死に着目。ホテルの裏側の極秘事項に肉薄し、真相を掴もうとするのだが……。巨大企業に巣食う悪を描く傑作長編社会派推理。
  • 我が家のヒミツ
    4.2
    結婚して数年。自分たちには子どもができないようだと気づいた歯科受付の敦美。ある日、勤務先に憧れの人が来院し…(「虫歯とピアニスト」)。ずっと競い合っていた同期のライバル。53歳で彼との昇進レースに敗れ、人生を見つめ直し…(「正雄の秋」)。16歳の誕生日を機に、アンナは実の父親に会いに行くが…(「アンナの十二月」)。など、全6編を収録。読後に心が晴れわたる家族小説。
  • 相棒はドM刑事1 女刑事・海月の受難
    3.3
    1~3巻572~880円 (税込)
    神奈川県警港みらい署の若手女性刑事・菱川海月。署内で「女の子」扱いされ捜査の蚊帳の外に置かれることを不満に思っていたところ、後輩とコンビを組むことに。その後輩・亘善は頭脳明晰なイケメンだが、気の短い海月に叱り飛ばされたり殴られるたびに悦ぶ、とんでもないドM。海月は、嫌々ながら彼と捜査をすることになり……。横浜で起きるいっぷう変わった事件にSMコンビが挑む!
  • それは経費で落とそう
    3.3
    年上の部下と年下の上司、単身赴任先での浮気、領収書のごまかし、人事異動の内示、お偉いさんとの気づまりな会話――。サラリーマンにとって決して避けて通れない身近なテーマ。喜劇と悲劇がつねに紙一重という、綱渡り的会社員生活の日常に潜む、思いもかけない恐怖をリアルに描く。身につまされる笑いのあとに、背筋も凍る戦慄、読みだしたら止まらない興奮の5編。ブラックな会社ミステリー。
  • 眠る魚
    3.3
    ガイドや通訳をしながら南太平洋のバヌアツに暮らす彩実は、東日本大震災からしばらくの後、父の訃報を受けて故郷の北関東の町に一時帰国する。放射線被害についての危機感の相違や、保守的な家族たちの思考と言動に噛み合わない思いを抱くうち、「アオイロコ」という奇妙な風土病の噂を耳にする。そんな中、彩実の口中の腫瘍が悪性と診断され、入院することに――。坂東眞砂子、絶筆作品。
  • 百匹の踊る猫 刑事課・亜坂誠 事件ファイル001
    -
    1~2巻572~638円 (税込)
    5歳の少女が誘拐された。目的は、少女の家族が経営する化学企業が引き起こした水質汚染の告発。新聞社に届いた声明文には汚染事実を報道せよという要求と、符牒として「百匹の踊る猫は告げていた」という一文が記されていた。幼い娘と二人で暮らすK署の若手刑事亜坂は、本庁のベテラン刑事土橋と組み、不可解な事件の真相を追う――日本推理作家協会賞受賞作家が新境地を拓く、初の警察小説。
  • 回廊封鎖
    3.8
    連続する殺人事件には共通点があった。見せしめのような殺害方法、被害者は破綻した大手消費者金融「紅鶴」の元社員。それに気付いた刑事・久保田は事件を追い始める。紅鶴に人生を破壊された男たちの復讐劇の最後にして最大のターゲットは社長一族の元専務・紅林伸夫。決着の場所は、六本木の巨大ビルで行われる映画祭。その壮絶な結末とは――!? 現代社会の闇に向き合った渾身の犯罪小説。
  • 幸福な日々があります
    3.9
    「夫としてはたぶんもう好きじゃないんだよね」。三十六歳で結婚をしてから十年を迎える年の正月、お雑煮を食べながら森子は祐一に告げた。別に嫌いになったわけじゃない。親友としてなら、好き。けれどももう一緒にはいたくない。戸惑う夫を尻目に森子は一人暮らしの準備をし、離婚の手続きを進めようとする――。恋とは結婚とは、一体何なのか。女性の心に潜む本音が共感を呼ぶ長編小説。
  • ハローサヨコ、きみの技術に敬服するよ
    3.2
    高校一年生の誠が抱える秘密、それは幼馴染の小夜子と二人でネットにまつわる事件を解決していること。誠が依頼を受け、小夜子が実作業を担当する。当初は厄介ごとが彼女に降りかからないように選んだ手段だったが、誠は次第に罪悪感を覚え始める。自分たちがしているのは人助けか、はたまた犯罪か。思い悩む彼を待ち受けていたのは予想もつかない事件だった――。甘酸っぱく愛らしい学園小説。
  • 赤と白
    3.7
    【第25回小説すばる新人賞受賞作】冬はどこまでも白い雪が降り積もり、重い灰白色の雲に覆われる町に暮らす高校生の小柚子と弥子。同級生たちの前では明るく振舞う陰で、二人はそれぞれが周囲には打ち明けられない家庭の事情を抱えていた。そんな折、小学生の頃に転校していった友人の京香が現れ、日常がより一層の閉塞感を帯びていく……。絶望的な日々を過ごす少女たちの心の闇を抉り出す。
  • 【電子特別版】少女か小説か
    4.0
    卒業式の日、誰もいなくなった教室で、制服を脱ぐときが訪れた少女と男性教師が「恋」について交わす会話のゆくえは……。(「セーラー服を脱がないで」)ほか、“トラウマテクノポップ”バンド・アーバンギャルドのリーダー松永天馬が描きだす「少女」たちの物語。病的にポップ。痛いほどガーリー。アーバンギャルドの代表曲をモチーフにした短編小説12編を収録した短編集。電子版には宮崎夏次系イラスト集を収録。
  • シャッター通りに陽が昇る
    3.6
    瀬戸内の城下町“さぬき亀山市”。かつては大勢の客で賑わった亀山商店街だったが、今ではわずかに数店舗が開いているだけの寂しいシャッター通り。東京からドロップアウトして戻ってきた果物屋の一人娘、英里子はその光景を目にして商店街の復興を決意するが――。芸術家の道風、左遷中の銀行マンの田嶋ら、個性豊かな面々と力を合わせて地元のために奮闘する、アラフォー女性の町おこし小説。
  • ガールズ・ステップ
    2.0
    高校ダンス部の部長に指名された西原あずさ。前部長への恋心から引き受けるが、部員たちの反感を買ってしまい、主力メンバーが全員退部。残ったのは、落ちこぼれの幽霊部員3人と、誰よりも踊るのが上手だが無愛想で協調性のない美少女・愛海だけ。なんとか部を続けようとするあずさは、伝説のダンサー・ケニー長尾と出会い、コーチを頼むのだが……。少女たちのきらめく青春ダンス小説!
  • 小説 最後まで行く
    3.5
    年の瀬も押し迫る12月29日の夜。危篤の母の元に向かうために、刑事・工藤祐司は酒気帯びで車を飛ばしていた。その時、課長から電話が入る。「週刊誌がウチの署に裏金があるって告発記事を書くんだと」――刑事でありながら、反社会的勢力から裏金を貰っていたことをマスコミにリークされた事実も工藤を焦らせる。その極度の精神状態の時、男をはねてしまい、さらにひき逃げという罪まで背負うはめに。死体隠し、裏金のもみ消し、彼を追うエリート監察官・矢崎とのひりつく駆け引き……。同名映画を小説化、圧倒的スピード感で描くノンストップ・エンターテインメント!!
  • おいしい家族
    4.0
    母の三回忌、実家である都内の離島に帰省した橙花。都会暮らしに疲れた橙花にはちょうどよい休暇だった。故郷に暮らす一つ年下の弟の翠は、スリランカ人女性と結婚し、間もなく新しい命が誕生する予定。実家に着くと、橙花を出迎えたのは、母のワンピースを着た父だった! 唖然とする橙花に追い討ちをかけるように、夕食の席に現れたのは、見知らぬ中年男・和生と、その娘で生意気な女子高生・ダリア。そして父はこう宣言した。「父さんな、あたらしい家族の母さんになろうと思う」。性別、血縁、国籍、あらゆる壁を超えた、あたらしい家族の誕生を描いたユートピア小説。
  • さいはての家
    3.7
    家族を捨てて逃げてきた不倫カップル(はねつき)。逃亡中のヒットマンと、事情を知らない元同級生(ゆすらうめ)。新興宗教の元教祖だった老齢の婦人(ひかり)。親の決めた結婚から逃げてきた女とその妹(ままごと)。子育てに戸惑い、仕事を言い訳に家から逃げた男(かざあな)――「家」はいつもそこにあり、なにも言わず受け入れてくれる。安息を手に入れたはずの住人たちはやがて、奥底に沈む自身の心の澱を覗き込むことになる。傷ついた人々が、再び自分の足で歩きだすまでを「家」とともに描く連作短編集。
  • 鯨の岬
    4.3
    札幌に暮らす奈津子は、鯨が腐敗爆発する動画を見て臭いを思い出す。後日、釧路の母を訪ねる途中、捕鯨の町にいた幼い頃の記憶が蘇ってくる……。老境の主婦の置かれた生活環境と家族関係を描きながら、その生い立ちと忘れていた過去を掘り起こした彼女は(「鯨の岬」)。江戸後期の蝦夷地野付に資源調査のため赴任した平左衛門。死と隣り合わせの過酷な自然の中で、下働きの家族と親しくなり……(「東陬遺事」/北海道新聞文学賞受賞作)。命を見つめ喪失と向き合う人々の凄絶な北の大地の物語。全二編。
  • 神遊び
    3.0
    同窓会に出席するため、七年ぶりに故郷の村を訪れた俊介。その日は、俊介が村を離れるきっかけになった祭りの日だった。七年前の祭りの夜、俊介は友達と五人で村に伝わる「神遊び」をしようと決める。成功すれば願いが叶うが、怖いものに遭うという噂もあって……。小さな冒険心が引き起こした悲劇、そして遺された者たちの後悔の行方は――。表題作ほか三編を収録。神と人をめぐる連作短編集。
  • 聖母たちの殺意
    3.0
    役者のエージェントとして働く美穂。ある日、女子大の同級生で“マドンナ”と呼ばれた笑子が殺され、驚く。しかも殺人の重要参考人である笑子の夫と、やはり女子大の同級生で富裕な人妻の克子とが、居候として家に転がり込んで来た! そして、もうひとりの親友、香は――。卒業後10年、かつてのマドンナたちの恐るべき変貌。すべては時の流れのなせる業なのか!? 仄かな苦さを秘めた大人のサスペンス。
  • 呪いの花園 ミステリー組曲「幻影稼業」
    4.5
    男は、その人形をいとおしむように撫でて、「これを使えばあなたの望みは叶いますよ」と言った…(表題作「呪いの花園」)。夜の街でノッペラボーの“呪い人形”を売る男や、“悪夢”を買わせてくれと頼む黒装束の人物――この世にはあなたの知らない「幻影稼業」がうごめいている! 心の闇に潜むさまざまな願望や欲望の顛末を描いた、異色の連作ホラー6篇。そっと仕掛けられた甘美な毒にご注意。

最近チェックした本