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Posted by ブクログ
奥田英朗が描く〈平成の家族〉シリーズは、読む人の心を静かに温めてくれます。
なかでも、僕が最も愛している『我が家の問題』に収録された「夫とUFO」に匹敵する名作が、なんと六篇も詰め込まれているのです。
本作の凄みは、篇ごとに視点もテーマも大胆に変わる点にあるのですが、
義母との関係に悩む妻の視点、出世レースからこぼれ落ちた父の視点、生みの父と育ての父の間で揺れる娘の視点、妻に先立たれた父を案じる息子の視点──。
これほど多様な立場を描きながらも、「家族」という軸と、「誰も敵にしない」という姿勢は一貫して揺るがない!
だからこそ、どの篇を読んでも不思議と共感してしまう。展開の巧みさと文章力、その両方が圧巻です。
この小説では、主人公とその家族が必ず描かれますが、家族を取り巻く“第三者”の描写もまた秀逸です。
とくに「手紙に乗せて」では、母を亡くした三人家族が描かれる一方で、長男の会社が物語の重要な舞台となります。
身内を失う辛さをまだ実感できていない先輩社員と、その痛みを知っている部長。その温度差が、驚くほどリアルです。
読んでいると、先輩の態度に思わず苛立ちを覚える場面もありますが、同時に、「自分も、誰かの悲しみに鈍感になってはいないか」と問い返されます。
この先輩が決して悪者として描かれない点も、本作の大きな魅力。
「おじさんと若者とでは、目に映る景色が違うということだ。
若者には若者の世界があるし、人生経験が乏しいというのも、それはそれで貴重な時期だ。
今から老成することもない」
部長のこの言葉は、深く胸に刺さります。
平成を描き切った奥田英朗が、令和を迎えたいま、どんな家族を描くのか。
そんな期待を抱かずにはいられません。
もっとも、その答えの一端は、最終篇「妻と選挙」にすでに示されているようにも思えます。
Posted by ブクログ
・たった35ページの短編で、こんなにも心を揺さぶられて、最後には、電車の中なのに思わず微笑んでしまったのは、初めてかもしれない。
・『虫歯とピアニスト』のピアニスト大西さん流に言うならば、人生を大げさに考えなければ、ほとんどのことは諦めがつくのだ。それを悲劇ととらえる人と、運命と想って受け入れる人の差は、心の中のスイッチひとつでしかない。
・奥田英朗の小説は、基本的に悪人が出てこないから、安心して読める。ちょっと癖のある人だなと思っても、そこらへんに普通にいる人々だし、自分でもあるし、読み終わる頃にはその人もまるっと好きになってしまっている。
・今作も、文句なしにすばらしい小説でした。
Posted by ブクログ
面白かった!やはり奥田英朗はいい。
この家族シリーズは基本的に良い人ばかり出てくるので、心が疲れない。疲れないどころか暖かくなって癒される。
「手紙に乗せて」は突然死で母を失った主人公が憔悴しきっている父に戸惑う場面から始まる。主人公の周りには、父に同情し気にかけてくれるおじさんたちと、自分の世界で忙しく他人の不幸はすぐに忘れてしまう若者達の2種類がいる。この本のいいところは、そういう若者達を決して悪者にはしないところだ。年を重ねるとは、いろんな悲しみを知ることであり、悲しみを知っているおじさん達は他人の悲しみにも敏感だが、まだ経験が少ない若者達は自分のことでいっぱいいっぱいになる。それはしょうがないのだと認めてくれる。
人に対する視線がなんとも優しく爽やかな気持ちになれる本だった。
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