小説・文芸 - 新潮文庫作品一覧

  • 紳士協定―私のイギリス物語―
    4.4
    1986年、入省二年目の私はイギリスにいた。語学研修に追われる単調な日々の小さな楽しみは、ステイ先で出会った12歳のグレンとの語らいだった。ロンドン書店巡り、フィッシュ&チップス初体験。小さな冒険を重ね、恋の痛みや将来への不安を語りあった私たちは、ある協定を結んだ……。聡明な少年を苛む英国階級社会の孤独と、若き外交官の職業倫理獲得までの過程を描く告解の記。
  • 楽毅(一)
    4.2
    古代中国の戦国期、「戦国七雄」にも数えられぬ小国、中山国宰相の嫡子として生まれた楽毅は栄華を誇る大国・斉の都で己に問う。人が見事に生きるとは、どういうことかと。諸子百家の気風に魅せられ、斉の都に学んだ青年を祖国で待ち受けていたのは、国家存立を脅かす愚昧な君主による危うい舵取りと、隣国・趙の執拗な侵略だった。才知と矜持をかけ、若き楽毅は祖国の救済を模索する。
  • わたしが出会った殺人者たち
    3.5
    犯罪事件を取材して半世紀。幾多の殺人の真相を書き続けてきた作家が、古希を越えた今、これまでの取材を振り返り、殺人者との交流を回想する。拘置監で大粒の涙を見せた無期懲役囚、「自分を小説に書いてくれ」と資料を寄越した家族殺害犯、著者が喪主を務めた前科十犯の男――。昭和・平成を震撼させた凶悪犯18人の知られざる肉声や人間臭い横顔を描く、著者の集大成的な犯罪回顧録。
  • つぎはぎプラネット
    3.8
    同人誌、PR誌に書かれて以来、書籍に収録されないままとなっていた知られざる名ショートショート。日本人 火星へ行けば 火星人……「笑兎(ショート)」の雅号で作られた、奇想天外でシニカルなSF川柳・都々逸。子供のために書かれた、理系出身ならではのセンスが光る短編。入手困難な作品や書籍、文庫未収録の作品を集めた、ショートショートの神様のすべてが分かる、幻の作品集。
  • 駆けこみ交番
    3.6
    新米巡査の高木聖大は、世田谷区等々力の交番に赴任した。大事件などない閑静な住宅街で、不眠症のおばあさん神谷文恵の夜の話し相手が聖大の目下の役割だった。ところが、ひょんなことから、聖大は指名手配中の殺人犯を逮捕するという大手柄を挙げた。以降、文恵の態度が微かに変化する。文恵を含む七人の老人グループが聖大に近づいてきた……。人気沸騰中、聖大もの四編を収録。
  • 国銅(上)
    4.4
    1~2巻737円 (税込)
    歯を食いしばり一日を過ごす。星を数える間もなく眠りにつく。都に献上する銅をつくるため、若き国人は懸命に働いた。優しき相棒、黒虫。情熱的な僧、景信。忘れられぬ出会いがあった。そしてあの日、青年は奈良へ旅立った。大仏の造営の命を受けて。生きて帰れるかは神仏のみが知る。そんな時代だ。天平の世に生きる男と女を、作家・帚木蓬生が熱き想いで刻みつけた、大河ロマン。
  • シェイクスピアを楽しむために
    4.1
    【シェイクスピア】1564~1616(ひとごろしイロイロと覚えます。謀略・発狂・嫉妬・情死、作品の登場人物は、考えられる限り様々な理由でこの世を去ります)。誕生日と命日は同じ4月23日。欧米の大衆娯楽演劇の原点、ハリウッドで最も売れている脚本家、世界で一番有名な作家です。名前は知っているけど、作品も大体見当がつくけど……、という方のための〈アトーダ式〉解説本。※文庫版に掲載の挿画は、電子版には収録しておりません。
  • 女の勲章(上)
    3.8
    1~2巻737~781円 (税込)
    大阪船場に生まれ若くして両親を失った大庭式子は、三人の若い弟子たちと甲子園に聖和服飾学院の新校舎を建設する。一方、学院に出入りし、さまざまな場面で式子をサポートする八代銀四郎は、東京の名門大学を卒業し、一流会社に就職しながら、一年でサラリーマンに見切りをつけた経歴の持ち主。銀四郎の商才にたけた巧みな手腕で、式子は虚飾のファッション界の階段を昇っていく。
  • 黒い雨
    3.9
    一瞬の閃光に街は焼けくずれ、放射能の雨のなかを人々はさまよい歩く。原爆の広島――罪なき市民が負わねばならなかった未曾有の惨事を直視し、“黒い雨”にうたれただけで原爆病に蝕まれてゆく姪との忍苦と不安の日常を、無言のいたわりで包みながら、悲劇の実相を人間性の問題として鮮やかに描く。被爆という世紀の体験を、日常の暮らしの中に文学として定着させた記念碑的名作。野間文芸賞受賞。
  • 恍惚の人
    4.3
    文明の発達と医学の進歩がもたらした人口の高齢化は、やがて恐るべき老人国が出現することを予告している。老いて永生きすることは果して幸福か? 日本の老人福祉政策はこれでよいのか? 老齢化するにつれて幼児退行現象をおこす人間の生命の不可思議を凝視し、誰もがいずれは直面しなければならない《老い》の問題に光を投げかける。空前の大ベストセラーとなった書下ろし長編。
  • 卒業
    4.3
    1巻737円 (税込)
    「わたしの父親ってどんなひとだったんですか」ある日突然、十四年前に自ら命を絶った親友の娘が僕を訪ねてきた。中学生の彼女もまた、生と死を巡る深刻な悩みを抱えていた。僕は彼女を死から引き離そうと、亡き親友との青春時代の思い出を語り始めたのだが――。悲しみを乗り越え、新たな旅立ちを迎えるために、それぞれの「卒業」を経験する家族を描いた四編。著者の新たなる原点。
  • ナイフ
    3.9
    1巻737円 (税込)
    「悪いんだけど、死んでくれない?」ある日突然、クラスメイト全員が敵になる。僕たちの世界は、かくも脆いものなのか! ミキはワニがいるはずの池を、ぼんやりと眺めた。ダイスケは辛さのあまり、教室で吐いた。子供を守れない不甲斐なさに、父はナイフをぎゅっと握りしめた。失われた小さな幸福はきっと取り戻せる。その闘いは、決して甘くはないけれど。
  • 美少女
    -
    星と月の刺青をもつという混血の美少女・三津子が突然失踪した。彼女の行方を追う放送作家の城田祐一は、手掛りを求めて近づいた女たちの太腿に、何故かみな、同じ女王蜂の刺青があるのを見た。彼はこの不可解な刺青の謎を探りはじめるが……。都会的センスで洗練された軽妙洒脱な文体と、ミステリアスな手法で、複雑にもつれあう人間関係と、屈折した愛の心理を解きあかす長編。
  • 青い鳥
    4.6
    1巻737円 (税込)
    村内先生は、中学の非常勤講師。国語の先生なのに、言葉がつっかえてうまく話せない。でも先生には、授業よりももっと、大事な仕事があるんだ。いじめの加害者になってしまった生徒、父親の自殺に苦しむ生徒、気持ちを伝えられずに抱え込む生徒、家庭を知らずに育った生徒──後悔、責任、そして希望。ひとりぼっちの心にそっと寄り添い、本当にたいせつなことは何かを教えてくれる物語。
  • きみの友だち
    4.5
    1巻737円 (税込)
    わたしは「みんな」を信じない、だからあんたと一緒にいる――。足の不自由な恵美ちゃんと病気がちな由香ちゃんは、ある事件がきっかけでクラスのだれとも付き合わなくなった。学校の人気者、ブンちゃんは、デキる転校生、モトくんのことが何となく面白くない……。優等生にひねた奴。弱虫に八方美人。それぞれの物語がちりばめられた、「友だち」のほんとうの意味をさがす連作長編。
  • 痴人の愛
    4.2
    きまじめなサラリーマンの河合譲治は、カフェでみそめて育てあげた美少女ナオミを妻にした。河合が独占していたナオミの周辺に、いつしか不良学生たちが群がる。成熟するにつれて妖艶さを増すナオミの肉体に河合は悩まされ、ついには愛欲地獄の底へと落ちていく。性の倫理も恥じらいもない大胆な小悪魔が、生きるために身につけた超ショッキングなエロチシズムの世界。

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  • 一瞬の夏(上)
    4.1
    1~2巻737円 (税込)
    強打をうたわれた元東洋ミドル級王者カシアス内藤。当時駆けだしのルポライターだった“私”は、彼の選手生命の無残な終りを見た。その彼が、四年ぶりに再起する。再び栄光を夢みる元チャンピオン、手を貸す老トレーナー、見守る若きカメラマン、そしてプロモーターとして関わる“私”。一度は挫折した悲運のボクサーのカムバックに、男たちは夢を託し、人生を賭けた。
  • 長英逃亡(上)
    4.2
    シーボルトの弟子として当代一の蘭学者と謳われた高野長英は、幕府の鎖国政策を批判して終身禁固の身となる。小伝馬町の牢屋に囚われて五年、前途に希望を見いだせない長英は、牢名主の立場を利用し、牢外の下男を使って獄舎に放火させ脱獄をはかる。江戸市中に潜伏した長英は、弟子の許などを転々として脱出の機会をうかがうが、幕府は威信をかけた凄まじい追跡をはじめる。

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  • ポーツマスの旗
    4.5
    1巻737円 (税込)
    日本の命運を賭けた日露戦争。旅順攻略、日本海海戦の勝利に沸く国民の期待を肩に、外相・小村寿太郎は全権として、ポーツマス講和会議に臨んだ。ロシア側との緊迫した駆け引きの末の劇的な講和成立。しかし、樺太北部と賠償金の放棄は国民の憤激を呼び、大暴動へと発展する――。近代日本の分水嶺・日露戦争に光をあて交渉妥結に生命を燃焼させた小村寿太郎の姿を浮き彫りにする力作。

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  • 冬の鷹
    4.2
    わずかな手掛りをもとに、苦心惨憺、殆んど独力で訳出した「解体新書」だが、訳者前野良沢の名は記されなかった。出版に尽力した実務肌の相棒杉田玄白が世間の名声を博するのとは対照的に、彼は終始地道な訳業に専心、孤高の晩年を貫いて巷に窮死する。わが国近代医学の礎を築いた画期的偉業、「解体新書」成立の過程を克明に再現し、両者の劇的相剋を浮彫りにする感動の歴史長編。

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  • 或る「小倉日記」伝―傑作短編集(一)―
    4.1
    身体が不自由で孤独な一青年が、小倉在住期の鴎外を追究する芥川賞受賞作『或る「小倉日記」伝』。旧石器時代の人骨を発見し、その研究に生涯をかけた中学教師が、業績を横取りされる『石の骨』。功なり名とげた大学教授が悪女にひっかかり学界から顛落する『笛壺』。他に9篇を収める。

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  • 町奉行日記
    4.5
    着任から解任まで一度も奉行所に出仕せずに、奇抜な方法で藩の汚職政治を摘発してゆく町奉行の活躍ぶりを描いた痛快作『町奉行日記』。藩中での失敗事をなんでも〈わたくし〉のせいにして、自己の人間的成長をはかる『わたくしです物語』。娘婿の過誤をわが身に負ってあの世に逝く父親の愛情を捉えた短篇小説の絶品『寒橋』。ほかに『金五十両』『落ち梅記』『法師川八景』など全10篇を収録。

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  • 珊瑚
    4.0
    華やかな珊瑚景気にわく五島列島を襲う空前の海難事故。海に生き、珊瑚採りに愛と野心と生命を賭けた三人の若者を描く海洋ロマン。

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  • 孤高の人(上)
    4.4
    1~2巻737円 (税込)
    昭和初期、ヒマラヤ征服の夢を秘め、限られた裕福な人々だけのものであった登山界に、社会人登山家としての道を開拓しながら日本アルプスの山々を、ひとり疾風のように踏破していった“単独行の加藤文太郎”。その強烈な意志と個性により、仕事においても独力で道を切り開き、高等小学校卒業の学歴で造船技師にまで昇格した加藤文太郎の、交錯する愛と孤独の青春を描く長編。
  • 死海のほとり
    4.1
    戦時下の弾圧の中で信仰につまずき、キリストを棄てようとした小説家の「私」。エルサレムを訪れた「私」は大学時代の友人戸田に会う。聖書学者の戸田は妻と別れ、イスラエルに渡り、いまは国連の仕事で食いつないでいる。戸田に案内された「私」は、真実のイエスを求め、死海のほとりにその足跡を追う。そこで「私」が見出し得たイエスの姿は? 愛と信仰の原点を探る長編。
  • 悲しみの歌(新潮文庫)
    4.5
    米兵捕虜の生体解剖事件で戦犯となった過去を持つ中年の開業医と、正義の旗印をかかげて彼を追いつめる若い新聞記者。表と裏のまったく違うエセ文化人や、無気力なぐうたら学生。そして、愛することしか知らない無類のお人好しガストン……華やかな大都会、東京新宿で人々は輪舞のようにからみ合う。――人間の弱さと悲しみを見つめ、荒涼とした現代に優しく生きるとは何かを問う。
  • 歪んだ複写―税務署殺人事件―
    4.0
    東京郊外で発見された、男の腐爛死体。その身元を追及しようとする二人の新聞記者は、次第に、あまりにも意外な事件の核心にふれてゆくこととなった。酒と女の供応に明け暮れしている、そんな悪徳税務署員の私行が招き寄せた、三つの殺人事件を通して、脱税に、収賄にと、腐敗しきった税務署の、驚くべき内情が描かれる。――現代の黒い霧に挑む著者の、代表的な社会派推理小説!

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  • 佐渡流人行―傑作短編集(四)―
    3.5
    時代小説の第2集。誤解から役人の妻との過去を疑われた男が、逃れるすべのない絶海の孤島佐渡に送られ、金山の湧き水を汲み出す水替人足として想像を絶する地獄の苦しみを味わう「佐渡流人行」。下級役人の哀しい運命をたどる「甲府在番」。江戸っ子の意地を痛快に語る「左の腕」。ほかに「陰謀将軍」「腹中の敵」「秀頼走路」「戦国謀略」など戦国時代に取材した力作8編を収める。

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  • 黒地の絵―傑作短編集(二)―
    3.5
    現代小説の第2集。朝鮮戦争のさなか、米軍黒人兵の集団脱走事件の起った基地小倉を舞台に、妻を犯された男のすさまじいまでの復讐を描く「黒地の絵」。美術界における計画的な贋作事件をスリリングに描きながら、形骸化したアカデミズム、閉鎖的な学界を糾弾した「真贋の森」。他に、一画家のなにげない評伝から恐るべき真実を探り当てる「装飾評伝」など7編を収める。

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  • 龍神の雨
    3.7
    添木田蓮と楓は事故で母を失い、継父と三人で暮らしている。溝田辰也と圭介の兄弟は、母に続いて父を亡くし、継母とささやかな生活を送る。蓮は継父の殺害計画を立てた。あの男は、妹を酷い目に遭わせたから。――そして、死は訪れた。降り続く雨が、四人の運命を浸してゆく。彼らのもとに暖かな光が射す日は到来するのか? あなたの胸に永劫に刻まれるミステリ。大藪春彦賞受賞作。
  • 四日のあやめ
    3.5
    武家の法度である喧嘩の助太刀のたのみを、夫にとりつがなかった妻の行為をめぐって、夫婦の絆とは何かを問いかける『四日のあやめ』。娼婦仲間との戯れに始まった恋であるが故に、一子をなしながらも、男のもとから立去ろうとする女を描いて周五郎文学ならではの余韻を残す『契りきぬ』。ほかに『ゆだん大敵』『貧窮問答』『初夜』『古今集巻之五』『燕』『榎物語』など珠玉作全9編を収める。

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  • あとのない仮名
    3.3
    江戸で五指に入る植木職でありながら、妻とのささいな感情の行き違いがもとで、職を捨て、妻子も捨てて遊蕩にふける男の寒々とした内面を虚無的な筆致で描いて、周五郎文学に特異な位置を占める最晩年の傑作「あとのない仮名」、夫婦の変らぬ愛情を、枯死するまで色を変えない竹柏に託した武家ものの好編「竹柏記」ほか、「主計は忙しい」「桑の木物語」「しづやしづ」など、全八編を収める。

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  • 松風の門
    4.1
    幼い頃、剣術の仕合で誤って幼君の右眼を失明させてしまった俊英な家臣がたどる、峻烈な生き様を見事に描いた“武道もの”の典型「松風の門」、しがない行商暮しではあるけれども、心底から愛する女房のために、富裕な実家への帰参を拒絶する男の心意気をしみじみと描く“下町もの”の傑作「釣忍」、ほかに「鼓くらべ」「ぼろと釵」「砦山の十七日」「醜聞」など全13編を収録する。

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  • おごそかな渇き
    4.3
    長年対面しつづけた宗教的課題を取り上げ、“現代の聖書”として世に問うべく構想を練りながらも絶筆となった現代小説「おごそかな渇き」。ほかに“下町もの”の傑作「かあちゃん」「将監さまの細みち」「鶴は帰りぬ」、“武家もの”の名品「紅梅月毛」「野分」「蕭々十三年」、“こっけいもの”の「雨あがる」、“メルヘン調の「あだこ」「もののけ」と、周五郎文学のさまざまな魅力を一冊に収めた。

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  • 深川安楽亭
    4.0
    抜け荷(密貿易)の拠点、深川安楽亭にたむろする命知らずの無頼な若者たちが、恋人の身請金を盗み出して袋叩きにされたお店者に示す命がけの無償の善意を、不気味な雰囲気をたたえた文章のうちに描いた表題作。完成されたものとしては著者最後の作品となった「枡落し」。ほかに「内蔵允留守」「おかよ」「水の下の石」「百足ちがい」「あすなろう」「十八条乙」など全12編を収録する。

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  • 闇の狩人(上)
    4.2
    江戸の盗賊の小頭雲津の弥平次は、山奥の湯治場で記憶喪失の若い浪人谷川弥太郎を刺客から救う。束の間の出会いと別れ。時は過ぎ、いつしか弥太郎は香具師の元締に剣の腕を見込まれ、仕掛人として夜の江戸の街に暗躍していた。彼の身を案じつつ、その失われた過去を追って、自らも盗賊の跡目争いに巻き込まれながら弥平次の活躍が始まる。彼の探った怪し気な武家屋敷とは……。
  • ゼロの焦点
    4.1
    前任地での仕事の引継ぎに行って来るといったまま新婚一週間で失踪した夫、鵜原憲一のゆくえを求めて北陸の灰色の空の下を尋ね歩く禎子。ようやく手がかりを掴んだ時、“自殺”として処理されていた夫の姓は曾根であった! 夫の陰の生活がわかるにつれ関係者がつぎつぎに殺されてゆく。戦争直後の混乱が尾を引いて生じた悲劇を描いて、名作『点と線』と並び称される著者の代表作。

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  • わるいやつら(上)
    3.8
    1~2巻737~781円 (税込)
    米倉涼子主演のドラマ原作。“どのように美しくても、経済力のない女は虫のように無価値だ”医学界の重鎮だった亡父の後を継ぎ、若くして病院長となった戸谷信一は、熱心に患者を診療することもなく、経営に専心するでもない。病院の経営は苦しく、赤字は増えるばかりだが、彼は苦にしない。穴埋めの金は、女から絞り取ればいい……。色と欲のため、厚い病院の壁の中で計画される恐るべき完全犯罪。

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  • スープ・オペラ
    4.1
    ルイ。独身。35歳。女手ひとつで育ててくれた叔母さんが、還暦を前に突然の恋に落ちて出奔。一人残されたルイの家には、ひょんなことから二人の独身男が転がり込んできた。初老だけどモテモテのトニーさんと、年下の気弱な康介。唯一の共通点はスープ好き。一つ屋根の下で暮らすことになった、そんな三人の関係は。そして叔母さんの恋の行方は? 温かくキュートで少しだけ辛口の物語。

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  • パプリカ
    3.9
    同名アニメ映画の原作。精神医学研究所に勤める千葉敦子はノーベル賞級の研究者・サイコセラピスト。だが、彼女にはもうひとつの秘密の顔があった。他人の夢とシンクロして無意識界に侵入する夢探偵パプリカ。人格の破壊も可能なほど強力な最新型精神治療テクノロジー「DCミニ」をめぐる争奪戦が刻一刻とテンションを増し、現実と夢が極限まで交錯したその瞬間、物語世界は驚愕の未体験ゾーンに突入する!

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  • 明治の人物誌
    3.9
    星新一の父・星一は、苦学しながらアメリカの大学を卒業し、帰国して製薬会社をおこした。事業は成功したが、やがて政争に巻き込まれ衰退していく。それでも常にエネルギッシュで近代人的な生き方を貫いた生涯だった。彼の夢と理想に手をかした野口英世、伊藤博文、エジソン、後藤新平など、近代国家の形成期に活躍した明治人たちとの交流の中から、星一の生涯を辿った異色の伝記。
  • 私の愛した小説
    -
    敗戦直後に出会ったモーリヤックの「テレーズ・デスケルー」は、作家として進むべき方向を、私に教えてくれた作品だった。『沈黙』を書く時も『侍』の時も、必ずこの小説を読み直してから執筆を始めた……。四十年以上にわたり、読むたびにいつも新しい顔を見せる「テレーズ」を回想し、文学と宗教について語った長編エッセイ。巻末に遠藤周作訳「テレーズ・デスケルー」を収録する。

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  • 大変だァ
    -
    腑甲斐ない男どもの多い中に、塙剛太氏は男だ。家では〈風呂。メシ。寝る。〉の三語で万事を済ませる関白亭主。ところが娘の友達の軟弱な男子学生を鍛えようとした闇鍋会で、放射能を浴び性転換を起した鶏を食べてしまったから、さあ大変。言葉優しく胸は少女のようにふくらみ始め……。男性の女性化、女性上位、学園紛争など、現代の世相をアイロニカルに諷刺した痛快ユーモア小説。

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  • 煉獄の使徒(上)(新潮文庫)
    値引きあり
    4.1
    1~2巻723~1,034円 (税込)
    “カリスマ教祖”十文字源皇率いる、〈真言(マントラ)の法〉。弁護士・幸田は侍従長の高位にあり、外界との交渉を担っている。組織に罪を背負わされ失脚した児玉警部補は、この新興教団に目をつけた。ここは金のなる木だ、と。両者の間に奇怪な盟約が結ばれる。教祖が敵対する弁護士の殺害を命じたとき、黙示録の扉は静かに開かれた――。欲望と狂気に憑かれた男たちを描き切る、群像サスペンス。
  • 風屋敷の告白
    値引きあり
    3.0
    定年退職して暇をもてあまし、素人のくせに事務所を立ち上げた還暦探偵コンビ、憲幸と勉。最初のお客である美しい人妻の依頼で、空き家となった洋館の持ち主を捜し始めた二人は、なんとそこで白骨死体を発見してしまう。いったい殺されていたのは誰なのか。そして屋敷に隠された秘密とは――。危なっかしくも果敢なオヤジ探偵の大奮闘。めくるめく展開が待ち受ける長編ミステリー。
  • 安楽病棟
    値引きあり
    3.9
    深夜、引き出しに排尿する男性、お地蔵さんの帽子と前垂れを縫い続ける女性、気をつけの姿勢で寝る元近衛兵の男性、異食症で五百円硬貨がお腹に入ったままの女性、自分を23歳の独身だと思い込む女性……様々な症状の老人が暮らす痴呆病棟で起きた、相次ぐ患者の急死。理想の介護を実践する新任看護婦が気づいた衝撃の実験とは? 終末期医療の現状と問題点を鮮やかに描くミステリー!
  • 櫛の火
    -
    一年ぶりの再会も束の間、弥須子はその翌日に入院、十日後広部の目の前で息をひきとった。形見の櫛を握りしめ、恋人の亡骸と共寝して一夜を明かした彼は、深い喪失感からいつしか大学を中退して会社勤めを始めるが、年上の女柾子と出逢ってようやく生の現実感を取りもどすかに見えた……。行方の知れない現代の青春の深みから、新たな神話的ロマンの世界を開示する本格長編小説。
  • サイレント・ラヴ
    4.5
    私の髪を憮でる、その指で、その腕で、彼女のことを抱くのですか―出会った日から22歳の今日まで、ミヤコは彼だけをみつめ続けてきた。そんなある日、偶然ひき合わせた親友が、一瞬にしてふたりの歳月を飛び越えて……。きっと、だれの心の底にも沈んでいる、冷たい恋の化石を胸に、何も言えず、ただみつめるだけのせつない愛。ひそやかな片想いのゆくえを描くラヴ・ストーリー。
  • 黒船秘恋
    3.7
    黒船来航、台場建造で騒然とする江戸品川。川越藩樋口家の主・杢右衛門と妻・沙代は、台場守備の陣屋築造のため、下屋敷に移り住むことになった。砂塵が舞う仮住まいの暮らしに、みおという砂まみれの女が下女としてやってくる。そして夫の朋友彦三郎も同居することに……。夫と妻と女と男、妖しく揺らぐ恋情を、新たな時代の息吹のなかに濃やかに描き出す長編小説。
  • あねのねちゃん
    4.0
    恋人にふられ、職場でもつらい目にあい、絶望に沈むOL玲香。彼女の前に、幼いころの想像上の友だち(イマジナリー・コンパニオン)だった、あねのねちゃんが現れた! 幻覚であるはずのその子は、玲香を苦しめた上司や元彼に、超自然的パワーで過激な復讐を実行。あねのねの行動は次第にエスカレートし、玲香は不安を覚えるが──。かわいくてちょっとフシギ、驚きの展開が待つ物語。
  • 越後つついし親不知・はなれ瞽女おりん
    4.0
    1巻715円 (税込)
    越後の雪深い村。夫が京都・伏見の酒蔵へ杜氏に出ている冬の間に、妻は卑劣な村人に襲われ、子を身ごもった……。「越後つついし親不知」 幼い頃に瞽女屋敷にもらわれ、盲目の旅芸人となったおりん。だが、掟を破って男と契り、一座を追放され放浪の身に……。「はなれ瞽女おりん」 水上文学を代表する表題作2編に、男女の哀切、寒村の生死を描いた初期傑作3編を加えた珠玉短編集。
  • 金閣炎上
    4.3
    1巻715円 (税込)
    昭和二十五年七月二日未明、鹿苑寺金閣は焼亡した。放火犯人、同寺徒弟・林養賢、二十一歳。はたして狂気のなせる業か、絢爛の美に殉じたのか? 生来の吃音、母親との確執、父親ゆずりの結核、そして拝金主義に徹する金閣への絶望……。六年の後、身も心もぼろぼろになって死んでいった若い僧の生を見つめ、足と心で探りあてた痛切な魂の叫びを克明に刻む長編小説。
  • その橋まで(上)
    -
    1~2巻715~770円 (税込)
    殺人犯として刑に服し、17年ぶりで娑婆に出てきた名本登。仮釈放を許され、自由の身になったとはいえ、彼は厳重な保護観察を受けなければならず、どんな微罪でも犯せば最後、たちまち刑務所に逆戻りだった。地道な木工職人として社会復帰の道を踏み出した彼には、しかし、ひょっとした成り行きから、婦女暴行殺人の容疑がかけられる……。犯罪者の更生の苦しみを描く問題作。
  • 査察機長
    4.5
    新米機長、村井知洋は頭を抱えた。ミスひとつで資格を剥奪されてしまう査察飛行、その担当が氏原政信キャプテンに決定したからだ。氏原は鋭いチェックで皆から恐れられる存在だった。そして、村井の最も長い一日が、幕を開ける。目的地、雪のニューヨークは遥か彼方、前途には様々なトラブルが待ち受けていた。操縦席、そしてパイロットの真実を描き切った、内田幹樹の最高傑作。
  • パイロット・イン・コマンド
    3.9
    ロンドン発202便は、飛行機好きの小学生、護送される国際犯罪者など、様々な人々を日本へと運んでいた。だが成田が近づいたその時、突如、第二エンジンが炎上! 機長ふたりも倒れてしまう。乗員乗客の命は、副操縦士の江波が預かることに。経験不足のパイロットは、傷ついたジャンボを無事着陸させられるのか? 航空サスペンスとミステリを見事に融合させた、内田幹樹の処女作。
  • 操縦不能
    4.2
    北朝鮮からの亡命者を乗せたワシントン行き002便は、大雪のため遅れて離陸した。その直後、機長二人が倒れ、コクピットには副操縦士の江波だけが残された。そして墜落の危機が訪れる。速度と高度を示す計器がなぜか狂いはじめたのだ。万策尽きた江波に、救いの女神が現れる。元訓練生の岡本望美が、地上のシミュレーターで“一緒に飛ぶ”というのだ。最も危険な夜間飛行が、いま始まる。
  • 暗殺国家ロシア―消されたジャーナリストを追う―
    3.8
    白昼堂々行われる射殺、ハンマーでの撲殺、そして毒殺。社会主義政権崩壊後、開かれた国になるはずだったロシアで不審死が相次いでいる。犠牲者はジャーナリストたち。彼らはメディアが政権に牛耳られる国の中で、権力批判を繰り広げる急先鋒だった──。偽りの民主主義国家内部で、今、何が起きているのか? 不偏不党の姿勢を貫こうとする新聞社に密着した衝撃のルポルタージュ。
  • 山口瞳「男性自身」傑作選 熟年篇
    4.0
    1~2巻715~770円 (税込)
    ガスの点火ができない/バターは食品の最高傑作/軍隊では、狡猾な男が褒められ、偉くなる/私は向田邦子処女説を支持/夏の終り、咲き残っているアジサイが好き/嫌いなのは「でしょうねえ」と受け答える人――週刊新潮で31年続いた名物コラム「男性自身」は、ユーモアとペーソスにあふれた出色の身辺雑記だった。今読んでも色褪せない傑作を熱烈ファンの嵐山氏が選び、再編集した。
  • 愛ってなに?
    -
    1巻715円 (税込)
    “愛ってなんでしょうか”中年に達した男の心にふとよみがえる若い女の声……。男女の機微とサラリーマン生活の哀歓を鮮やかにとらえた表題作はじめ、『罐蹴り』『鳩胸の鳩』『葛の花』等、さまざまな愛のかたち――そのはかなさ、にがさを、優しく透明なユーモアに包む珠玉の名編15選。『翡翠の色』ほか本書初収録の作品を加えて、短編小説の名手山口瞳の全貌を明らかにする。
  • 丸山蘭水楼の遊女たち
    4.0
    一八六三年。数年後に控えた明治維新という一大転換を予感するかのように、時代はその歩みを早めていた。長崎は丸山の遊廓界隈を舞台に、時代の波に翻弄されながらも、ひたむきに生きようとする男女数名の愛憎、苦悩、希望が同時進行の形で描出されてゆく。綿密な考証に裏付けられ、土地の言葉を自在に操って、抒情性と力感溢れる文体で生き生きと語られる、著者初めての歴史小説。
  • 人生の棋譜 この一局
    5.0
    升田幸三、大山康晴両巨星の死、米長邦雄の50歳にしての名人位獲得劇、そして羽生名人の誕生など、'90年から'94年にかけての激動の将棋界をつぶさに実況中継する。歴史に残る数々の名勝負に留まらず、「恐がられるようでなければ勝負に勝てない」「弱みを握られたらお終い」ほか、興味深い盤外勝負も満載。一般の社会以上に人間くさい天才棋士たちの、知られざる日常を軽妙に映し出す。
  • 父子鷹(上)
    -
    名代の分限者・男谷家に生れ、四十俵余の小普請・勝家の養子となった剣豪・小吉は、男谷の父と兄の運動が功を奏して仕官の道がひらけたのも束の間、誤って卑劣な役人をその手で殺してしまう。しょせん、情実と賄賂のうずまく権勢にまっ向から抗して仕官を断念、わが子・麟太郎(海舟)にすべての夢を託して、清廉・直情、市井に生きる父と子と。菊池寛賞受賞のきっかけとなった傑作長編。
  • 海市
    4.3
    妻のある画家・渋太吉は、旅先の伊豆南端の海村で蜃気楼のように現われた若い女性を愛しはじめる。渋はかつて一緒に死ぬ約束をした女性を裏切り、現在の妻とは離婚寸前の状況にある。やがて伊豆で逢った女性は親友の妻・安見子であることが判明するが、渋の安見子への思慕はやみがたく肉体関係を続ける。恋愛のいくつかの相を捉えて、頽廃と絶望の時代における愛の運命を追求する。
  • 風土
    3.0
    関東大震災と第二次大戦の勃発という二つの運命的な9月1日にはさまれた16年間を背景に、画家の桂と、彼が片時も忘れ得なかった昔の恋人・三枝夫人とのゆき違った愛の行方を追う。日本という特殊な風土に育った芸術家の愛と生の悲劇を主題に、世界史の動乱のさ中で芸術家が味わねばならなかった苦悩を描き、人生の深淵にせまる野心作。10年を費やし、著者の文学的出発をなす長編。
  • 兵士は起つ―自衛隊史上最大の作戦―
    4.4
    津波に呑まれながらも濁流の中を自力で泳ぎ、人々を救助した隊員たちがいた! 自らの家族の安否も確認できないままでの救助活動、遺体と向き合う苛烈な日々……。そして非常事態に陥った福島第一原発では、世界が注視する中、全国からさまざまな部隊が召集されていた――。自衛隊を追い続けた著者二十年の歳月が生み出した緊迫と感動のノンフィクション。兵士シリーズの最高傑作。※新潮文庫版に掲載の写真の一部は、電子版には収録しておりません。
  • 遠すぎた輝き、今ここを照らす光
    4.2
    月刊誌記者として働く小坂井夏輝、31歳。取材先で中学の同級生・瀧光平と再会する。かつて周囲を見下していた瀧を夏輝は疎んじ、片や誰彼なく優しくする夏輝を瀧は偽善者と嫌っていた。だが次第に夏輝は瀧が抱える痛みを、瀧は夏輝の葛藤を知るようになる。過去を受け止め、前を向いて歩くために、二人はある行動に出る。逃げたくなる自分の背中をそっと押してくれる、優しい物語。
  • 春告げ坂―小石川診療記―
    3.5
    たとえ治る見込みがなくとも、罪人であったとしても、その命はすべて尊い――。長い長い坂を登り切った先に位置する小石川養生所。身寄りがなく、弱い立場に置かれた人間が集まるこの場所で、医師・高橋淳之祐は日々奮闘していた。ある日入所した老人の秘められた人生が淳之祐の父の死の真相を明らかにするとき、彼の前に進むべき道が現れる。爽やかな感動を呼ぶ「赤ひげ」青春譚。
  • 小説以外
    3.7
    本好きが嵩じて作家となった著者は、これまでどのような作品を愛読してきたのか? ミステリー、ファンタジー、ホラー、SF、少女漫画、日本文学……あらゆるジャンルを越境する読書の秘密に迫る。さらに偏愛する料理、食べ物、映画、音楽にまつわる話、転校が多かった少女時代の思い出などデビューから14年間の全エッセイを収録。本に愛され、本を愛する作家の世界を一望する解体全書。
  • 着物をめぐる物語
    4.0
    華やかな歌舞伎座の楽屋に、藤娘の衣裳を着て現れる女形の幽霊。唐子の着物をほめてくれた混血の美青年が戦時中にたどった運命。夫と息子に先立たれた老女が黙々と織る越後上布。男に翻弄されたホステスが遺した大島。老境を迎えた辰巳芸者の着物への執念。畳紙に包まれ密やかに時を刻んでいた着物が、繙かれ鮮やかに語り始める……。縦糸と横糸のあやなす、美しく残酷な11の物語。※新潮文庫版に掲載のイラストは、電子版には収録しておりません。
  • あした―慶次郎縁側日記―
    4.0
    泥棒長屋に流れ着いた老婆の悲しみが、出世にとことん無欲だった若き慶次郎の思いと交わる表題作「あした」。無精な夫を捨てた、髪結い妻の思わぬ本音を描く「春惜しむ」。内緒の逢瀬を重ねてはらんだ娘が、未来ある思い人を必死に庇う「むこうみず」など、円熟の筆致が香り立つ江戸の哀歓十景。慶次郎への尽きぬ思いを語る、生前最後の著者談話も収録した、人気シリーズ第13弾!
  • 閉鎖病棟
    4.1
    とある精神科病棟。重い過去を引きずり、家族や世間から疎まれ遠ざけられながらも、明るく生きようとする患者たち。その日常を破ったのは、ある殺人事件だった……。彼を犯行へと駆り立てたものは何か? その理由を知る者たちは――。現役精神科医の作者が、病院の内部を患者の視点から描く。淡々としつつ優しさに溢れる語り口、感涙を誘う結末が絶賛を浴びた。山本周五郎賞受賞作。
  • 街のアラベスク
    -
    なぜだろう、この街を歩いていると、僕を通り過ぎていった愛しい人たちへの想いが甦る。まるで、街角の風景が、あの恋の記憶を永久保存していたかのように。井の頭公園、麻布十番、銀座、五反田、神楽坂、浅草、蒲田、新宿・十二社、善福寺──ふとした瞬間浮かび上がる、嘘のなかった誓いの台詞、息も詰まるような別れの言葉。東京という街のアルバムに綴じられた、切ない恋の物語。
  • ガラシャ
    3.8
    明智光秀の娘として美しく成長した玉子。主君である織田信長の媒酌で、細川藤孝の子・忠興と華燭の典を挙げ、平穏な日々を送っていた。だが、突如発生した本能寺の変。実父の犯した罪により蟄居を命じられた玉子は、幽閉先で出会った男に惹かれてしまう。愛の何たるかも知らず妻となった女を苦しめる恋の業火──。絶世の美女と謳われた細川ガラシャの人生を描く華麗なる戦国純愛絵巻。
  • 傷―慶次郎縁側日記―
    3.7
    空き巣稼業の伊太八は、「身内に迷惑を掛けない」というのがモットーだ。豊蔵から共謀を持ちかけられ、目的の瓦屋に忍び込んだはよかったが、何とそこは豊蔵の弟の家だった。自らの信条に反する仕事をさせられた挙げ句、あらぬ罪まで着せられてお尋ね者になってしまった伊太八──彼の運命やいかに? 元南町奉行所同心の隠居・森口慶次郎が人々の心を潤す、粋と人情のお江戸事件簿。
  • 燃えあがる緑の木―第一部 「救い主」が殴られるまで―
    3.8
    1~3巻715円 (税込)
    百年近く生きたお祖母ちゃん(オーバー)の死とともに、その魂を受け継ぎ、「救い主」とみなされた新しいギー兄さんは、森に残る伝承の世界を次々と蘇らせた。だが彼の癒しの業は村人達から偽物と糾弾される。女性へと「転換」した両性具有の私は彼を支え、その一部始終を書き綴っていく……。常に現代文学の最前線を拓く作者が、故郷四国の村を舞台に魂救済の根本問題を描き尽くした長編三部作。
  • 島倉千代子という人生
    -
    日本の戦後を代表する歌手、「島倉千代子」。だが、婉然とした笑顔の陰には、人知れぬ波瀾万丈の人生が荒々しくも滾っていた。七歳の時の大怪我、十六歳でのデビュー、結婚と離婚、巨額の借金、そして乳癌宣告…。「この世の花」「からたち日記」「人生いろいろ」など、数々のヒット曲に乗せ、辣腕政治ジャーナリストがその愛と悲しみを描ききる。
  • ドナウの旅人(上)
    3.6
    1~2巻715~770円 (税込)
    夫を捨てて、突如出奔した母・絹子。「ドナウ河に沿って旅をしたい」という母からの手紙を受け取った麻沙子は、かつて五年の歳月を過ごした西ドイツへと飛ぶ。その思い出の地で、彼女は母が若い男と一緒であることを知った。再会したドイツの青年・シギィと共に、麻沙子は二人を追うのだが……。東西ヨーロッパを横切るドナウの流れに沿って、母と娘それぞれの愛と再生の旅が始まる。
  • きのうの空
    4.0
    見上げた空は果てしなく高かった。都会での華やかな暮らし、想い続けている人の横顔が、ふわり浮かんだ。だが、この地にしがみつき、一日一日をひたすらに積み重ねなければ、生きてゆけなかった。わたしの帰りを家族が待っていた。親やきょうだいは、ときに疎ましくときには重く、ただ間違いなく、私をささえていた。名匠が自らを注ぎこみ、磨き続けた十色の珠玉。柴田錬三郎賞受賞作。

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  • 川のある下町の話
    -
    恵まれぬ大衆の生活の重みと苦しみが渦巻いて虚無の雑音によどむ庶民の街――これは、そこに住む貧しい医学生、清純な女学生、薄幸の美少女、知性の優れた女医、キャバレーの孤独な青年など、善意に満たされた人々の人間讃歌であり、また人間の脆さ、哀れさを奏でて死を思わせる虚無の歌でもある。頽廃と死をつきぬける青春の愛の姿に、いのちの美しさの極致を描く。

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  • ニコライ遭難
    3.9
    明治24年5月、国賓のロシア皇太子を警護の巡査が襲った。この非常事態に、近代国家への道を歩み始めた日本が震撼する。極東進出を目論むロシアに対し、当時日本は余りにも脆弱であった――。皇太子ニコライへの官民を挙げての歓待ぶり、犯人津田三蔵の処分を巡る政府有力者と司法の軋轢、津田の死の実態など、新資料を得て未曾有の国難・大津事件に揺れる世相を活写する歴史長編。

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  • 火の杯
    -
    日本最大の財閥、御池家の庶子、康彦は財閥解体からのがれるための生け贄として、別人に仕立てられて公金拐帯の罪をきせられて、最後には生命までも奪われようとする。出生の秘密にまつわるニヒルな性格から、過酷な指令をただ受け入れているだけの康彦であったが、かつて自分の愛した奥勤めの娘の献身的な愛によって運命に立ち向かうようになる。山本周五郎が戦後の現実に挑んだ意欲作。

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  • 迷走地図(上)
    -
    1~2巻715円 (税込)
    保守党派閥抗争の確執の中、若手議員・川村は色と金を求め、銀座の高級クラブのママ織部佐登子に眼をつけた。だが、彼女は財界人をパトロンに持ち、政・財界間の影の資金ルートをつないでいた。次期首相を約束される寺西議員のもとから、逆リベートを運ぶ途中、佐登子は若い男に金を強奪されてしまう――。秘書、運転手、院内紙記者、代筆屋など代議士の陰で蠢く永田町人種の生態。

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  • 針女
    4.0
    死にに行く男が、愛を打ちあけたら、銃後に残される女はどんなに困るだろう――出征した帝大生の弘一が残した〈青春の遺書〉を胸に、針仕事に打ちこむ孤児の清子。やがて戦争は終り、弘一は復員するが、彼の性格は一変していた。二人の愛の結末は? 愛も哀しみも針一本にこめて激動の時代を生きたひとりの女性の姿を通して、日本人が忘れてはならない戦争の傷跡を描く。
  • 鬼怒川
    -
    鬼怒川のほとりにある絹の里・結城。貧農の娘チヨは、紬織りの腕を見込まれて、16歳で日露戦争生き残りの勇士のもとに嫁いだ。気のいい婚家の人々の中で、彼女は幸せになれるかに思われた。しかし、夫も、太平洋戦争から復員した息子も、そして孫までも“黄金埋蔵伝説”にとり憑かれ、悲惨な運命を辿る……。戦争の傷跡を背負いながら精一杯たくましく生きたひとりの女の生涯を描く。
  • 海暗
    -
    若者は次々と島を捨て、社会の動きからも隔絶された伊豆七島の御蔵島に、ある日「米軍射爆場に内定した」というニュースが伝わる。戦争中でさえ爆弾が落ちたことはなかったのに、なぜ? あまりのことに呆然とする島民たち――別名を海暗とよばれる黒潮に、断崖絶壁を洗われる平和でのどかな御蔵島を舞台に、射爆場設置に反対し、離島問題に取組む島民の苦悩と哀歓を描く問題作。
  • 地唄
    5.0
    琴に命を賭ける盲目の父と、父に背き日系二世の米国人と結婚した娘――父娘の愛憎の絆を妙なる調べに映す「地唄」、女流舞踊家と老墨絵職人の心の交わりを唐墨の逸品に凝縮させた「墨」、翻訳劇の端役を演ずることになった黒衣の悲喜劇を軽妙に綴る「黒衣」、文楽座の分裂を素材にして芸人の世界の厳しさをえぐった「人形浄瑠璃」。日本の伝統的な芸の世界を追究した珠玉四編を収める。
  • 表裏源内蛙合戦
    -
    迸る才知と野心を、時代の制約の中で徒らに空転させる江戸の一大奇人平賀源内の夢と挫折の生涯を、色と欲の渦巻く風俗の中に浮び上らせる表題作。ストリッパーの半生記に仕立てた吃音治療劇に仮託して、現代日本の社会と精神を徹頭徹尾、洒落のめした『日本人のへそ』。洒落に地口に語呂合せ、言葉遊びの爆撃で、笑いのうちに時代と人間の核心を衝く井上戯曲の原点を示す二大喜劇集。
  • 銀嶺の人(上)
    4.3
    1~2巻704~792円 (税込)
    女医をめざす、勝気な“泣かない子”であった駒井淑子は、冬の八ヶ岳で単独行を試みて遭難しかかった時、若林美佐子と出会う。鎌倉彫の新鋭彫刻家として注目されていた美佐子は、無口ですぐに“涙ぐむ子”であった。死を覚悟した二人を事もなげに助け出した三人の男性登攀家(クライマー)に魅入られて、彼女たちは、ついに初の女性隊によるマッターホルン北壁登攀への挑戦を試みる……。
  • 蒼氷・神々の岩壁
    3.7
    鋭いアイゼンの爪もよせつけない蒼氷に覆われる厳冬期、石が水平に飛ぶ台風シーズン――富士山頂の苛烈な自然を背景に、若い気象観測所員の厳しい生活と、友情と愛と死を描いて息づまる迫力をよぶ長編「蒼氷」。ヒマラヤを夢み、岩と氷壁に青春を賭けた天才クライマーが、登攀不能といわれた谷川岳衝立岩を征服するまでの闘志と情熱の半生を描く実録小説「神々の岩壁」。他に2編併録。

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  • 雄気堂々(上)
    4.4
    1~2巻704~748円 (税込)
    近代日本最大の経済人渋沢栄一のダイナミックな人間形成の劇を、幕末維新の激動の中に描く雄大な伝記文学。武州血洗島の一農夫に生れた栄一は、尊皇攘夷の運動に身を投じて異人居留地の横浜焼打ちを企てるが、中止に終った後、思いがけない機縁から、打倒の相手であった一橋家につかえ、一橋慶喜の弟の随員としてフランスに行き、その地で大政奉還を迎えることになる。

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  • 総会屋錦城
    3.7
    直木賞受賞の表題作は、株主総会の席上やその裏面で、命がけで暗躍する、財界の影武者ともいえる総会屋の老ボスを描く評判作。ほかに交通事故の時だけタクシー会社の重役の身代りで見舞いや弔問にゆく五十男の悲しみを描いた「事故専務」をはじめ、資本主義社会のからくり、陰謀などを、入念な考証に基づき、迫力あるスピード感と構成力で描く本格的な社会小説7編を収める。

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  • 状況曲線(上)
    3.7
    1~2巻704円 (税込)
    建設会社専務の味岡は、高級官僚に顔が利く“先生”を中心にした談合組織に入り、工事の情報を得ていた。彼が仲間と“先生”に会っていた日、同じビルの屋上で他殺死体が見つかる。偶然、後に犯人と疑われるような行動を取ってしまった味岡は、芸者との逢引き先でも、“先生”の女性秘書の遺体にぶつかってしまう……。巧妙なワナに追いつめられていく味岡! 長編サスペンスの傑作。

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  • 人情武士道
    3.5
    御用人の佐藤欽之助は、妻を通して琴の稽古友達だった女から、夫の仕官の世話を頼まれる。その女が、かつて縁談を申し込んで断られた和枝であることを知った欽之助は、思いがけない行動で依頼を果たす……。著者の鋭い人間観察眼を際立たせている表題作の他に、後年の“職人もの”の先駆をなす「しぐれ傘」や“滑稽もの”の「竜と虎」など、初期の傑作12編を収める。

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  • 季節のない街
    4.2
    “風の吹溜まりに塵芥が集まるようにできた貧民街”で懸命に生きようとする庶民の人生。――そこではいつもぎりぎりの生活に追われているために、虚飾で人の眼をくらましたり自分を偽ったりする暇も金もなく、ありのままの自分をさらけだすしかない。そんな街の人びとにほんとうの人間らしさを感じた著者が、さまざまなエピソードの断面のなかに深い人生の実相を捉えた異色作。

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  • 食卓の情景
    4.2
    いちばん好きなものは? と問われたら、鮨と答える、にぎっている時の主の眼の輝きがすばらしい。少年時代、どんどん焼屋に弟子入りしようとして〔鳥の巣焼〕という珍品を発明する。松阪牛が丹精こめられた処女なら、伊賀牛はあぶらの乗りきった年増女、これをバター焼、ついですき焼と賞味する。おいしい食べ物に託して人生観を語る無類のエッセー。著者自筆のカット7点挿入。
  • 真田騒動―恩田木工―
    4.0
    信州松代藩――五代目・真田信安のもと、政治の実権を握り放縦な生活に走った原八郎五郎を倒し、窮乏の極にある藩の財政改革に尽力した恩田木工を描く表題作。関ケ原の戦い以来、父昌幸、弟幸村と敵対する宿命を担った真田信幸の生き方を探る『信濃大名記』。ほかに直木賞受賞作『錯乱』など、大河小説『真田太平記』の先駆を成し、著者の小説世界の本質を示す“真田もの”5編を収録。
  • ようこそ地球さん
    4.1
    1巻704円 (税込)
    文明の亀裂をこじあけて宇宙時代をのぞいてみたら、人工冬眠の流行で地上は静まりかえり、自殺は信仰にまで昇華し、宇宙植民地では大暴動が惹起している――人類の未来に待ちぶせる悲喜劇を、皮肉げに笑い、人間の弱さに目を潤ませながら、奇想天外、卓抜なアイデアをとりまぜて描いたショートショート42編を収録。現代メカニズムの清涼剤とも言うべき大人のための寓話集です。
  • 令和元年のテロリズム(新潮文庫)
    NEW
    3.0
    20人を殺傷して何も言葉を残さず自殺した川崎無差別殺人犯。引きこもりとされる長男を殺害した元農水事務次官。戦後で最も多くの死者を出した京アニ放火殺人犯。自動車を暴走させて母子の命を奪い、「上級国民」という言葉を生んだ元高級技官――。令和の幕開けに起こった新時代の多難を予感させる事件から浮かび上がってくる現代日本の風景とは。安倍元首相殺害事件を追加取材した完全版。
  • 放浪・雪の夜―織田作之助傑作集―(新潮文庫)
    -
    『夫婦善哉』の作者であり、太宰治、坂口安吾の盟友としても知られる織田作之助。その作品の魅力は豊かな物語性にある。料理人順平の流浪の旅を描く「放浪」。別府へと逃れ落ちた男と女――「雪の夜」。商才に優れた男が家を再興する芥川賞候補作「俗臭」。龍馬に慕われた寺田屋お登勢の半生「蛍」。織田文学の研究者が厳選した11編を収録。波瀾万丈そして人情。大阪が生んだ唯一無二の作家がここにいる。(解説・斎藤理生)
  • 友達・棒になった男(新潮文庫)
    3.8
    平凡な男の部屋に闖入して来た9人の家族。善意に満ちた笑顔で隣人愛を唱え続ける彼らの真意とは? どす黒い笑いの中から他者との関係を暴き出す傑作「友達」〈改訂版〉(谷崎潤一郎賞受賞)。日常に潜む底知れぬ裂け目を三つの奇妙なエピソードで構成した「棒になった男」。激動の幕末を生きた人物の歴史的評価に新たな光を当てた「榎本武揚」。斬新な感性で“現代”を鋭く照射する、著者の代表的戯曲3編を収録。(解説・中野孝次)

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