昭和は遠くなりにけり。東京オリンピックの頃、筆者の記憶に残る特別な日。ノスタルジックに振り返る昭和の東京。
「上空1万フィートの東京五輪」 昭和39年10月10日(土)
「さらば、銀座の都電」 昭和42年12月9日(土)
「日本橋には空がない」 昭和38年4月12日(金)
「ブロードウェイがやって
...続きを読むきた!」 昭和41年10月29日(土)
昭和27年生まれ、神田神保町に生まれ育った筆者の原風景。オリンピックの前後で東京の街並みは大きく変わる。その象徴的な出来事を4章構成で描いている。オリンピックの開会式のブルーインパルスが描く五輪。都電の廃止、日本橋川への首都高速の建設。ちょっと意外なセレクトが中野ブロードウェイ。当時東洋一のショッピングセンターと謳われたそうだ。
多くの関係者に取材していることがうかがえる。筆者の得意分野が本書でも活かされている。
ブルーインパルスの話は他の書籍でも有名だろう。彼らの任務は「聖火台に聖火が点り、鳩と風船がいっせいに放たれて、選手やスタンドの観客が頭上を振り仰いだ午後3時10分20秒、天皇皇后が鎮座するロイヤルボックスら見上げ角70度の高度1万フィートの上空に、五色のスモークで、オリンピックのシンボルである五輪のマークを描きはじめる。」というもの。
筆者の故郷神保町、再開発で失われた街区の思い出が語られる。都電の廃止、景観より高速道路。効率優先で失われた部分についての筆者の思い入れが滲み出る。
あまり描かれることの少ない街の沿革や住人の体験談など、特別な一日を特別でない普通の人びとがどのように過ごしたか、貴重な記録である。