Posted by ブクログ
2016年07月23日
昭和15年の『松風の門』から昭和39年の『醜聞』まで。武家もの、滑稽もの、下町もの、現代ものと色々な作品が集まった短編集です。
明らかに少年少女を対象にした、初期の表現も直接的で、世相を反映し修身的な(修身的ラノベ?)作品が、次第に間接的で深みを持った表現に進化し、さらに善悪を超えた「性」を飲み込む...続きを読むような如何にも周五郎さん的な人間洞察に至る過程が良く判ります。
特筆的なのは、時代小説の中でレスビアンを題材にした『薊』。時制を複雑に交差させて、何とも言えない雰囲気を醸し出します。
最も私の好きな周五郎さんらしいのは『釣忍』。人情物の傑作の一つでしょう。