Posted by ブクログ
2020年04月16日
これはなかなか味わい深い物語である。
しかし、著者の他の作品と同様な「小説」を期待すると肩すかしを食らうかもしれない。
大正末期~昭和初期が時代背景と思われるが浦安近辺の漁師町に数年滞在した「私」の日記のような物語で、当初その「私」は当然、山本周五郎その人であろうと読み進めるのだが、そうではないらし...続きを読むい事が少しずつわかってくる。
この変の微妙な読者の心理変化が独特な感覚を味あわせてくれる。
昭和初期なんて、もちろん私自身は知らない。
しかし、その頃の郷愁やノスタルジーはなんとなくわかる。
今、三丁目のなんとかとか昭和三十年代がもてはやされているけど、いつの時代でも昔を懐かしむ事は繰り返されていたんじゃないだろうか。
この「青ベか物語」も、「私」が感じた当時の町の住人たちの生活ぶりを書き綴ることによって、読者それぞれが持つ郷愁を味あわせてくれるという独自の小説に仕立てられている。
ちょっと難しいのですが、私のような年寄りには凄く楽しめる本でした。