あらすじ
根戸川の下流にある、うらぶれた裏粕という漁師町をふと訪れた「私」は、“沖の百万坪”と呼ばれる風景が気にいり、ぶっくれ船“青べか”をテもなくかわされてそのままこの町に住み着いてしまう。その「私」の目を通して、町の住人たちの生活ぶりを、巧緻な筆に描き出した独特の現代小説。
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山本周五郎氏は有名だし、母も好きな作家だし、家にも何冊か本があったのにもかかわらず今まできちんと読んだ覚えのない作家さんでした。この間読んだ本に浦安市のことが書かれていて青べか物語にも触れていたので、ふと読んでみようと思い立ちました。
面白いけれどどこか物悲しい。さみしいお話なんだけれどもどこか滑稽。土地に根付く人とそこにやって来た異郷の人との見えるようで見えない、見えないようでしっかりと存在する境界線のような物を感じました。同じ国で同じ言葉を話していても異郷と言うのはこんなにもさびしいものなのか。文化や常識はこれほど違うものなのか。
ふるさとは遠きにありて思ふもの
そして悲しくうたふもの
そんな詩を思い出しました。
(そして作者を覚えてなかったので検索してみたら室生犀星だそうで。一発で出てきました。便利な世の中になったなあ)
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山本周五郎 著「靑べか物語」、1964.8発行。著者は大15春、浦安にスケッチでぶらり訪れ、風景が気に入って3年過ごしたそうです。数えの23から26迄。この作品は浦粕(浦安)という根戸川(江戸川)下流の漁師町を舞台にした物語です。著者若き日の体験を小説風にアレンジされてます。青べかってなんだべと思いつつ、浦粕に住むたくましい男たち、女たちの暮らしぶりにぐいぐい引き込まれていきました。さしずめ昭和の初めのディズニーランドのようですw。体も心も素っ裸な女性が印象的です。短編連作、ある意味、異色作品だと思います。
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日本という国が、まだまだ青年だった頃の姿がある。なんだかまぶしいくらいだ。「芦の中の一夜」はお芝居を見ているようで切なくてほろっときました。「今日はいいおひなみですね」って。老船長の悲恋物語です。映画もよかったけどなかなか見られないと思います(/ー ̄;)
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うらぶれた漁師町に訪れた主人公が、およそ常識とはかけ離れた住人たちの生活を描く小説。住人たちはとてもずる賢く人をだまして儲けようとするし、そうかと思えばとても素朴だったりする。愉快。
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田舎の人たちとの触れ合いという題材だと、心温まるような物語が展開されるんじゃないかと安直に考えてしまっていたが全く違った。
舞台は昭和初期の浦安(作品の中ではもじっていたが。)、およそ善良とは言えない人々とのあまり心は温まらない触れ合いが描かれている。
こういう前にも悪にも分けられないむき出しの人間が描かれる作品は面白くて好きだ。
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「青べか物語」名前と舞台が浦安だということは知っていた。青く塗ったのり採り用の船、べか船。「べか」は床を押すと「ペコペコ」いうくらいの薄い板で作ってあることから、「ぺこ」がなまって「べか」のなったのだという。そんな船の廃船を高く(修理費含め)売りつけられ、浦安の海に浮かべての漁師との関わり合いが昭和の匂いを奏でる。男女関係は元禄時代(いや平安時代か)を彷彿とさせる。そんな頃から在日コリアンはエネルギッシュだったのであるよ。東京ディズニーランドのカヌー漕ぎなんかも青べかでやれば、浦安の伝統が残せたのになぁ~
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これはなかなか味わい深い物語である。
しかし、著者の他の作品と同様な「小説」を期待すると肩すかしを食らうかもしれない。
大正末期~昭和初期が時代背景と思われるが浦安近辺の漁師町に数年滞在した「私」の日記のような物語で、当初その「私」は当然、山本周五郎その人であろうと読み進めるのだが、そうではないらしい事が少しずつわかってくる。
この変の微妙な読者の心理変化が独特な感覚を味あわせてくれる。
昭和初期なんて、もちろん私自身は知らない。
しかし、その頃の郷愁やノスタルジーはなんとなくわかる。
今、三丁目のなんとかとか昭和三十年代がもてはやされているけど、いつの時代でも昔を懐かしむ事は繰り返されていたんじゃないだろうか。
この「青ベか物語」も、「私」が感じた当時の町の住人たちの生活ぶりを書き綴ることによって、読者それぞれが持つ郷愁を味あわせてくれるという独自の小説に仕立てられている。
ちょっと難しいのですが、私のような年寄りには凄く楽しめる本でした。
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読み始めてすぐに、浦粕が浦安、徳行が行徳だとピンときた。
そう思うと、よりいっそう面白かった。
田舎の庶民てこんなだったんだろうなあと身近に感じて楽しい。
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「さぶ」に続いて読みました。庶民の生活が、垣間見れて面白く読めました。私自身が、大阪の漁師町育ち故、なんだかこんな人がいたような気がすると思わせる部分が多々ありました。
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浦粕での日常と様々な人々の物語であり、東京のごく近くでもこのような光景があったのにはなかなか想像がつかなかった。千葉・浦安にいた作者はどこまで実際の人を描いたかわからないが、にくめない「留さん」はモデルの人がいたと感じた。
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浦粕町の、決して上品ではないが懸命に生きる人々の姿がよかった。
特に好きなのは「家鴨(あひる)」の章である。増さんが自らの行いを悟ったところが、すごくよかった。
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その集落に住んでる人たちや関係のある人たちの事や出来事を
作者の目線で綴った短編集なのですが、まぁ読み難かったこと!
方言なんでしょうか?
訛りそのままセリフに書いてあるので、慣れるまでホント読み難い。
しかしながら慣れてしまえば、なかなか面白く興味深く読めました。
教育も薄く無知な人々。
昔ってどこもこんな感じだったんだろうなぁ・・・。
決して誰もが幸せなわけではないのだけど、
ただその日を一生懸命生きてる感じが印象深かったです。
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田舎というか昔の時代というか
浦安ならではの土地柄?を存分に楽しめた。
どれも綺麗とは言えないような話ばかりだけれども、人間味のあふれた
周五郎ならではの作品
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作者が青年時代に過ごした村をモチーフにした、漁村で営まれる人間模様を描いた短編集。
どの話も衝撃的ではあるけれども、
視覚的に凄まじそうなのは「白い人たち」、
心情的に計り知れないものを感じたのは「家鴨」。
「留さんと女」はこの作者の他の作品にも共通する、
きれいごとは言ってはいないけれど、
「がんばんなきゃな」と感じさせるものの
代表だと思った。
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俗っぽくて,下品で,たくましいと言うよりは粗野で,そんな人々のあからさまな暮らしぶりがなかなか頭の中に入ってこないが,でも,そんな生活に打ちのめされながらも彼らを受け入れるところがやはり懐の深さを感じる。苦しみつつ、なおはたらけ、安住を求めるな、この世は巡礼である。
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山本周五郎氏の自伝的小説といわれる。確かに、一人称の物書きの視点で書かれている。
物語は、江戸川河口近くの地域が気に入って数年移り住んだ「先生」が、現地の人々とのやり取りや生活を描いたもの。手漕ぎボートのようなぼろ船を売りつけられ、それが青べかと呼ばれて地元の子にからかわれる。川岸に絵を書きにいったり、聞いたエピソードを小説に仕立てたりして、ほとんどは実際に著者が体験した実話のようだ。最後に、30年後に同じ土地を訪れてみた感想があり、興味深い。
各小話は3ページほどと短く、独特の言葉遣いにも読むうちに慣れてくる。が、なかなか感情移入もできず、なにしろ地元の人が良く言えばしたたか、悪く言えば隙を見せるとすぐつけこむのに嫌悪があった。当時(1920年代か?)の生活を考えると仕方ないのかもしれないが。
先日読んだ「赤ひげ診療譚」のほうが面白かった。
Posted by ブクログ
時代小説のようでその実は、筆者:山本周五郎が住んだ、昭和初期の浦安と、そこに暮らす人々のスケッチ。 方言もそのまま、生々しさもある。 時代も生活様式も変われど、庶民の噂好きと、女の逞しさは不変なのだなと。