シーボルトの弟子として当代一の蘭学者と謳われた高野長英は、幕府の鎖国政策を批判して終身禁固の身となる。小伝馬町の牢屋に囚われて五年、前途に希望を見いだせない長英は、牢名主の立場を利用し、牢外の下男を使って獄舎に放火させ脱獄をはかる。江戸市中に潜伏した長英は、弟子の許などを転々として脱出の機会をうかがうが、幕府は威信をかけた凄まじい追跡をはじめる。
Posted by ブクログ 2021年01月21日
現代に事実を知っているだけに、非常に読むのが辛く、苦しかった。
氏いわく、「事実と事実の間を埋めて行く資料が乏しい中で。考えをめぐらす作業の辛さ、面白さを語っている。が、これほどまでにリアリティに迫る文学があるだろうかと息をのむ。
間道、街道が好きでちょくちょく行くことが多い為、場面と人の息遣い...続きを読む
Posted by ブクログ 2020年03月13日
現代に比べてSNSやインターネットなどの情報拡散ツールが圧倒的に少ないのに、各藩の村人たちの結束力や幕府の徹底した捜索により現代より遥かに逃げ延びるのが困難な世界で行く先々で多くの人に協力してもらいながら間一髪で逃げ延びる高野長英。
歴史の授業では「蛮社の獄で捕らえられたが牢屋に放火して脱獄、後に捕...続きを読む
Posted by ブクログ 2012年06月20日
蛮社の獄で捕らえられた開国論者、という予備知識しかなかった。
この弾圧が理不尽なものだったのは理解できる。
高野長英というひとが、蘭学を本当に頑張って、その道の第一人者であったのもわかる。
頑張って勉強して一人前の学者になって国のために働くつもりがこんな目に遭って
逃げ出したかった気持ちは、わからな...続きを読む
Posted by ブクログ 2012年02月24日
高野長英が政治犯として牢獄に入るところから小説は始まる。
牢獄内での凄惨な生活、その後との脱獄と逃亡生活。読む者の心も締め付ける程の描写。自分が他人から追われているような錯覚。
この『逃げる』ことの心理描写は、吉村昭の得意とするところで、「桜田門外の変」、「彰義隊」でも存分に堪能できる。
下巻が楽し...続きを読む
Posted by ブクログ 2013年08月25日
破牢の末、高野長英は武蔵(板橋、戸田、浦和、大宮)上州、越後から母に会いに故郷水沢へ。その逃避行は圧倒的なスリルに富み、また長英の心の動き、多くの支援する人々との暖かい交流。幕府の威信にかけた追跡はとても100年前とは思えないような鋭さで、思わず読んでいる私自身が追われているような緊迫感があります。...続きを読む
※予約作品はカートに入りません