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戦時下の弾圧の中で信仰につまずき、キリストを棄てようとした小説家の「私」。エルサレムを訪れた「私」は大学時代の友人戸田に会う。聖書学者の戸田は妻と別れ、イスラエルに渡り、いまは国連の仕事で食いつないでいる。戸田に案内された「私」は、真実のイエスを求め、死海のほとりにその足跡を追う。そこで「私」が見出し得たイエスの姿は? 愛と信仰の原点を探る長編。
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Posted by ブクログ
とてもよかった。 沈黙、海と毒薬、深い川、白い人、黄色い人をこれまで読んできての本作。 遠藤周作の考え方、向き合い方がだんだんとわかってきて、それでもまだ途上にいるんだなという感じがすごく伝わってきた。
信仰を失おうとする私とゴルゴダの丘に至るイエスの物語が最終章に重なっていく。 深い感動が静かに胸に刻まれる作品。
聖書の奇蹟の数々をうさんくさく感じていたが、キリスト教徒でも同じなのだろうか。 イエスの最期をたどる男たちの旅と、イエスに死を与えた者、死を見届けた者たちの断片。 イエスの受難は戦時中の人間の弱さと絡みついていく。 罪ある者も赦されるという母の愛があるからこそ、ひとは救われるのだろう。
この物語は、同じイスラエルの地≪死海のほとり≫を舞台に、時代の異なる二つの物語が対位的に展開される。すなわち、主人公がイエスの足跡をたずねてイスラエルを巡礼する現代の話と、イエス・キリストが伝道のためにパレスチナの地を旅する過去の話が交互に進行する。昭和48年の文学としてはこのような技法は画期的とい...続きを読むえるのではないだろうか。主人公<私>はカトリック信者である作者の分身であろう。救い主としてあまりに無力であるが、隣人と共に喜び共に苦しむイエスの姿を描き、「永遠の同伴者」としてのイエス像を鮮烈に打ち出した作品である。
信仰を追い求めてエルサレムにやってきた小説家の私と学生時代の友人でエルサレムに住む戸田が、イエスのたどった道を辿りながらイエスを追いかけるという話。 戸田は気が付いていたみたい。イエスはけっこう造られた虚像であること。 でも、その方がより現実的で、人間的なのかもしれない。 あまりにも無力で、そんな男...続きを読むが多くの人を愛した。 一人一人の人生を横切って残した痕。それは消えない。 これから先も私と戸田には今まで通りイエスは消えないだろう。
死海のほとりでイエスの足跡を辿る現代の旅と、イエスが迫害されゴルゴダの丘で処刑されるまでの過去の物語を交差させながら、奇跡の人ではない新しいキリスト像を提示しています。 弱者のそばに寄り添いともに苦しむことしかできなかったイエス、しかしそのことは常人にはできないことであり、苦しみを抱えた人たち...続きを読むにとって大きな慰めであったのは間違いないと思います。 この小説は、遠藤氏ご自身が一生を掛けて答を求め続けた「信仰とは何か」という問いかけと氏が到達したそれへの答が示されているのだと思います。圧倒的な文章力できわめて構築性の高い物語が形作られています。
[希求の末に]近くに赴いたついでにエルサレムに立ち寄った著者は、大学時代から聖書を研究していた戸田に案内を依頼する。キリスト教に対する熱度は往時の頃と比べて衰えながらも、イエスの足跡を必死に探す著者であったが、戸田は行く先々で皮肉な笑いとともにその思いを跳ね返してしまう......。エッセイ的記述に...続きを読む聖書の物語を挟み込んだ作品です。著者は、本書をしてもっとも「その人らしい」と言われる遠藤周作。 遠藤氏が抱え込んでいた霧がかった心情を把握するために極めて適した一冊だと思います。個人的には遠藤氏はキリスト教の教え(特に無償の愛という点)そのものには共感を抱きつつも、現世に見られる数々の問題に対して人一倍の敏感さを備えてしまったが故に、その教えを最後まで信じきれなかったのではないかと。どこまで普遍化できるかは判然としませんが、遠藤氏の問題意識は極めて「日本的」「近代的」と言えるのではないでしょうか。 純粋に物語として引き込まれることができるのも本書の魅力の1つ。人間の弱さを見せ続ける「ねずみ」と呼ばれた人物に関するエピソードは読む者をして深い思索に誘ってくれるはずです。なお、本作は『イエスの生涯』という作品と裏表をなしているのですが、個人的には『イエスの生涯』を読んだ後にこちらを読むことをオススメします。 〜付きまとうね、イエスは。〜 (涙を誘うものではなく)じーんと来る読書でした☆5つ
愛はこの世で一番、非力で無力なものであった、とイエスが十字架で処刑される際、周囲の人間はつぶやいた。が、すべてが終わった瞬間、愛はこの世で一番美しく、力強く、人々の心に生き続けた。何故、イエスが人々の心に残り、我々の人生に影響を与え続けるのか?目を閉じ胸に手をあてて心に問い続けたい。
古い単行本は味がある。 昭和48年発行の単行本を古本屋で見つけました。遠藤周作さんは歴史に出てくるいろんな人たちの作品がおもしろくすてきですが、宗教者としての作品はとても比重が高いように感じます。読み応えのあるとても良い作品でした。
宗教というものを信じていない分、共感出来ない部分は多かったがそれを抜きにしても面白かった。 誰もが持つ弱さや狡さとしっかりと向きあい 咀嚼していく。 そんな生き方をしていきたいものです。
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