Posted by ブクログ
2021年06月05日
現代日本につながる実業界を作った渋沢栄一。武州血洗島出身、幕末は志士であったという。エネルギッシュな渋沢の波乱の生涯を描いた長編歴史小説。
上下巻の上巻。
大河ドラマ「青天を衝け」の渋沢栄一、日本経済、実業界の創立の立役者。武州中山道の宿場町深谷宿の北の血洗島の豪農の家に1840年に生まれる。
自...続きを読む分にとって渋沢は明治の人。調べてみたところ、意外にも高杉晋作、久坂玄瑞、沖田総司と同世代だった。
本書を読み渋沢も志士だったことを知る。
幕末に開国。攘夷、威信の風は空っ風の吹く関東地方にも及ぶ。栄一ら若者は江戸への遊学や武芸の修行者との出会いを通じ、世の中を変えようと思い至る。
一つ間違えば清川八郎と共に京に上り、新撰組の一員となっていたかもしれない。
栄一たちの計画は高崎城を奪って南下、横浜の外国人居留地を焼き討ちすること。直前で断念し一転逃亡の身となる。京に逃げるために思い付くのが少しだけ面識のあった一橋慶喜の家臣である平岡円四郎。渋沢と従兄の喜作は一橋家に雇われ関東を脱出。討幕の志士が一転、最後の将軍の家臣となる運命の変転が実に興味深い。次第に家中で表し慶喜の弟昭武の随行で渡欧し、明治維新を迎える。
欧米の風俗、制度に触れたことが維新後の渋沢の運命を大きく変える。貴人情を知らずと思われた慶喜の深い愛情、渋沢を抜擢したが暗殺される一橋家家臣の平岡円四郎と原市之進。
渋沢の同志たちの多くは、天狗争乱、戊辰戦争や彰義隊、振武軍などで命を落とす。それは一つ間違えれば渋沢の運命でもあった。
成功者の自伝や伝記を読むと、成功する人は生まれてからまっすぐに進路を取り偉人となったかのように錯覚するが、実際は右に左に大きく触れ、わずかばかりの実力と大きな運が必要であることを強く感じさせる。
面識のなかった大隈重信に抜擢され明治新政府に仕えることとなった渋沢。
上巻はここまで。