Posted by ブクログ
2022年07月11日
「城山三郎」が太平洋戦争末期の若者たちを描いた作品『一歩の距離 小説 予科練』を読みました。
「城山三郎」作品は昨年の夏に読んだ『指揮官たちの特攻―幸福は花びらのごとく―』以来ですね。
-----story-------------
司令は静かな口調で命令した。
「戦局を一変させるべく、帝国海軍...続きを読むでは、この度、必殺必中の兵器を動員することになった。全員、目を閉じよ。兵器への搭乗を志願する者は一歩前へ!」塩月は躊躇した。
前に出る練習生の靴音が聞こえる。
出なければ、出なければ。
死ぬために来たのに、何をためらっているのか。
両親や兄弟のことを思った。
脇の下を冷たい汗が流れる…。
生と死を隔てる“一歩の距離”を前にして立ち竦む予科練の心理の葛藤を通して、戦時下の青春群像を描いた表題作、他一編。
-----------------------
夏になると、戦記モノが読みたくなるんですよね。
忘れてはいけない歴史ですからね。
■一歩の距離―小説 予科練
■マンゴーの林の中で
『一歩の距離 小説 予科練』は、太平洋戦争末期の予科練における十代の若者たちの人間模様を描いた物語、、、
パイロット養成目的で集められたはずなのに、配属された予科練には訓練用の飛行機もなく、過剰なしごきやバッター(棍棒?)による体罰の日々… 飛行機が配備されている予科練へ配属された仲間への嫉妬や特攻志願への一歩を踏み出した者と躊躇った者の間の葛藤、生き残った者の複雑な思い等が見事に描かれた作品でしたね。
たったの一歩ですが、その後の運命を大きく変える一歩、、、
自分だったらどうしたんだろうなぁ… と思いつつ、子どもたちには、こんなことを絶対にさせちゃいけないなぁ… という強い憤りを感じながら読み進めた感じでした。
太平洋戦争末期の混乱と狂乱という背景はあるものの、人間って、ここまで非理性的になれるもんだんですねぇ… 怖いなぁ。
『マンゴーの林の中で』は、太平洋戦争末期の台湾における震洋特攻部隊の特攻要員たちの人間模様を描いた物語、、、
ベニヤ板で作った小舟に自動車のエンジンを載せ頭部に230キロの爆弾を装備した〇四艇(まるよんてい)を操り敵艦隊に突撃するため、ひたすら敵艦隊が台湾近辺に現れるのを待つ日々… 死を宣告されながらも、生かされているという精神的に追い込まれた状況が、隊員である少年たちと、上官である海兵出身の職業軍人、学徒出身の予備士官、たたき上げの特務士官の、それぞれの立場から巧く描かれていました。
上官については、その経歴や立場から、全く違う人格に書き分けられていたので、自分だったら、どんな判断や指示をしたいんだろうなぁ… と考えながら読み進めました。
学徒出身の予備士官の考え方がイチバン馴染めて、感情移入もできましたね。
本書を読んで、戦争の残酷さを改めて感じることができました… 色々と考えさせられましたね。