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抜け荷(密貿易)の拠点、深川安楽亭にたむろする命知らずの無頼な若者たちが、恋人の身請金を盗み出して袋叩きにされたお店者に示す命がけの無償の善意を、不気味な雰囲気をたたえた文章のうちに描いた表題作。完成されたものとしては著者最後の作品となった「枡落し」。ほかに「内蔵允留守」「おかよ」「水の下の石」「百足ちがい」「あすなろう」「十八条乙」など全12編を収録する。
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Posted by ブクログ
小品集。いつもながらホロっとくる作品もあり、またタイトルとなっている深川安楽亭はなぜこんなヒリヒリとした緊張感を文字だけで表現できるのか。ますます山本周五郎が好きになった一冊。
"百足ちがい"は「長い坂」の次に好き。----せくこたあねえ、せくこたあ。 ----じたばたしたとって、春が来ねえば、へえ花はさかねちゅうこんだ、 おちついてやるだよ。"真説吝嗇記"も面白い。
初期作品から、周五郎の最後の完成作品である「桝落し」まで満遍なく収集された短編集です。全体の出来は中の上くらいでしょうか。 こうして初期から後期までの作品を並べられると、山本周五郎が成長しつづけた昨夏であると良く判ります。一つの作品を読むと、それが何時頃書かれたものなのか、想像がつくようになります...続きを読む。初期の作品群には、やや修身的な色合い、説教臭さのある作品が集められています。これらの作品は直線的で、底が浅い感じがします(後期に比べてですけど)。それに比べ後半の作品は、流石に重厚感があります。ただ暗い色調なのが残念なのですが。
『あすなろう、だなんてね』 僕は好きだった。意地悪じゃない時代小説は大好きだ。如法闇夜のとこの世は。
文学然とした時代小説。時代小説といっても事実に忠実な司馬遼太郎のような作風ではなく、ある時代設定における架空人物のストーリーという点で、どちらかというと藤沢周平のそれに近い。人生訓になるような作品が多く、登場人物の名言名台詞が心に残ります。 著者の作品は黒澤明の映画に使われることが多く、映画好きの...続きを読む方にはとっかかりやすいのかも。
少々怪しい居酒屋「深川安楽亭」。確かにそこは不穏ではあるが,人情は確か。そこが周五郎。安楽亭やら内蔵介やら石を抱いて堀に入った話やら少々戦いの場面が多い。
表題作だけでも読んでみる価値ありまする。 最近幾つか読んでみて(読まされて見て?)鑑みるに、この作家は後半の方が良い作品を生み出しているように思われます。円熟味とはまさにこのこと。
短編集。救いがあるのかないのか。生きる内にある困りごと苦しいことは、今も昔も根っこは変わらず。不器用にもほどがあろうかと、ニヤニヤ読んでも己が事を写した様でそわそわもする。
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