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古代中国の戦国期、「戦国七雄」にも数えられぬ小国、中山国宰相の嫡子として生まれた楽毅は栄華を誇る大国・斉の都で己に問う。人が見事に生きるとは、どういうことかと。諸子百家の気風に魅せられ、斉の都に学んだ青年を祖国で待ち受けていたのは、国家存立を脅かす愚昧な君主による危うい舵取りと、隣国・趙の執拗な侵略だった。才知と矜持をかけ、若き楽毅は祖国の救済を模索する。
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Posted by ブクログ
わたくし小中学生の時に『三國志』にどえらいハマりました。それこそ講談社の『三国志人物辞典』を隅々まで精読しては暗記出来た名前+字(あざな)をつぶやいて悦に入るドス昏き青春を送っていたのですが、当然のようにコーエーの歴史シミュレーションゲームにものめり込んで、その中に「いにしえ武将」という隠れてないけど隠し要素があって、そこで知って推しになったのが楽毅将軍だった訳であります。
本書の発売が2002年なので、まさしくわたしが高校時分の刊行ですね。擦り切れるぐらい繰り返し読んで大事にしてましたが引越しかどこかのタイミングで処分してしまいました。
随分の時を経て何回目かわからない再読。
思い出補正を加味したとしても大変素晴らしかった。
第一巻は13話収録。
青年時代の〈楽毅〉が斉国留学時の〈孟嘗君(斉の薛公、田文)〉との出逢いと趙国・〈武霊王〉による中山国征伐、侵攻に立ち向かう楽毅と趙将〈趙与〉が戦いを繰り広げた井陘(せいけい)攻防戦がハイライト。
大喝したり一騎討ちしたりというような派手な戦闘演出は無いし直接的な人物造形描写はごく少ないけども、スッキリとした文章は非常に読み易くて時勢や人物の動きを掴むことを妨げない。
また、外交や人物交流の機微・駆け引きを丁寧に書いているのも特徴で、特に合戦シーンでは視点が各人物へ切り替わることで策の読み合いや攻防の緊迫感をより一層味わうことが出来る。
シリーズを通しての主題にして名フレーズだと思う、冒頭書き出しのひと節
「人がみごとに生きることは、むずかしいものだな。」(p11)
は、誇張でなくわたしも高校時代から心に留め置いていることば。
作中にはそのヒントとなる文章がいくつも登場する。
「名誉にも不名誉にも逃げない、性情のままの自分でありたい。」(p127)
「物とことばの氾濫のなかに立たされつづけているうちに、信念の尊さを知るようになった。そうでなければ自己をうしなってしまうようなところなのである。
その信念とはなにか、と問われれば、
「仁義」
と、こたえるしかない。」(p292)
自分らしく生きる為には、他者の評価で揺らぐ程度のものではない幹のような‘自’、すなわち主体を持っている事とそれを分かっている事が前提であるのだけどもそこを護っているだけでは理想に潰されてしまうだろうし、だからこそ「むずかしい」という事じゃないだろうか。うむ、今の歳だからこそ感じるものがあるな。
また、楽毅が素晴らしいのは当然ながら、腹心の配下である〈丹冬〉と〈超写〉にもそれぞれ見所があって良いんですよね。容姿の詳細は触れられていないけれども妄想のなかではむちゃ男前。
そして、再読して魅力に気がついたのが前述の趙与ですね。こんなにかっこいい名将だったんだっけ。互いに火計を仕掛け合う場面とかあまりにも痺れすぎてよだれが垂れますね。
一巻では趙と中山の講和直前まで。
脳汁が漏れる。
19刷
2026.10.25
Posted by ブクログ
<文庫全4巻を通してのレビュー>
古代中国の戦国期、「戦国七雄」にも数えられぬ小国、中山国宰相の嫡子として生まれた楽毅は、栄華を誇る大国・斉の都で己に問う。
人が見事に生きるとは、どういうことかと。
諸子百家の気風に魅せられ、斉の都に学んだ青年を祖国で待ち受けていたのは、国家存立を脅かす愚昧な君主による危うい舵取りと、隣国・趙の執拗な侵略だった。
才知と矜持をかけ、若き楽毅は祖国の救済を模索する。
楽毅は戦国時代の小国:中山国の宰相の嫡子であり有能な武将。
若い頃は斉の臨淄で孫子の兵法などを学び、人が溢れている雑踏の中で「人が見事に生きるのはなんと難しいことか」と考える。
孟嘗君を尊敬し、傾倒していったのも自然な流れだろう。
故郷の中山国に戻った楽毅を待ち受けていたのは、暗愚な君主のためにまさに崩壊寸前の母国と、希望の光でもある太子。
太子は全面的に楽毅を信頼しており楽毅はきたるべき太子の時代を思い、国のために忠誠を尽くしますが、虚しくも中山国は趙の武霊王によって滅ぼされる運命となる。
ここまでの展開でも楽毅の才能と魅力はいかんなく発揮されているが、母国が滅んでからの楽毅がまた素晴らしい!
孟嘗君からの陰の支えもあり、燕の昭王に仕えることになった楽毅。
その楽毅をしたって続々と燕にやってきた、かつての盟友や臣下たち。
昭王の最大に目標ともいえる斉攻略をとうとう実現させる。
有能で魅力的な人物は引き際も素晴らしい。
-人が見事に生きるとはどういうことなのか-
それをじっくりと考えさせてくれる一作。
Posted by ブクログ
同作者の「孟嘗君」を読み終えたので、次はこれを読み始めました。
本作は「孟嘗君」と同じ戦国時代の話で、序盤に孟嘗君その人も出てきます。
孟嘗君は作中において、主人公である青年楽毅の心の支えといえるくらいの重要な人物なので、「孟嘗君」を読んでいると感慨もひとしおと思います。
「孟嘗君」は戦国時代の話のわりに人間ドラマ的な色合いが濃かったのですが、本作はまさに戦国という感じ。
「孟嘗君」も優れた作品であることは間違いないですが、個人的にはこっちのほうがわかりやすくて好きですね。
主人公の楽毅ですが、第1巻ではまだ二十代の青年です。
にもかかわらず、人格がすでに完成されています。
昔の人でそれも名家の生まれなので、当然といえば当然なんですが、二十代にしてすでに人望を集めながらも、決して奢らない。
常に冷静に戦況を見るさまは、とても若者とは思えません。すごいです。
ならば主人公の成長物語はないんじゃないか?
そんなふうに思われる方もおられるでしょうが、そんなことはありません。
実は、楽毅は生まれが中山という弱小国で、さらに君主がとんでもないくそやろうなため、自分の身の振り方に悩んでいたのでした。
上司に恵まれなかったというわけですね。
そこで彼は常に自分自身に対して、人が立派に生きるとはどういうことかと問い続けるのです。
ところで、楽毅のほかに、武霊王という登場人物も出てきます。
この人は楽毅の祖国を攻め取ろうとする趙という大国の王。
いわば楽毅の最大の敵なのですが、その強敵っぷりが凄まじい。
そんな少年漫画のような興奮を味わえるのも、この作品の面白いところだと思います。
Posted by ブクログ
中国 戦国時代中期の名将・楽毅の小説。
生き方自体が哲学であり、その言動が彼の生き方そのものを映している。
そんな一本筋の通った潔さ・清々しさに胸を打たれる逸品である。
宮城谷小説には珍しく、物語の冒頭から青年の楽毅が登場する。
序盤の彼は、孫子の兵法を学び、過去の歴史を学ぶ、小国の宰相の子として登場する。暗愚な君主に率いられた中山国でいかに生きるか、悶々と悩む彼の行動にはまだ迷いが多く、正直この時点ではこの小説の魅力に疑問を感じた。
しかし、読み進めるほどに楽毅が成長し、いつしか孫濱兵法を戦場だけでなく外交・内政でも発揮する、実践する哲学者とでも言いたくなる楽毅像が出来上がってくる。
もうこうなると、彼の生き方・進退の鮮やかさ・人間的魅力にただただ魅了されるばかり。
魅了されるばかりではない。組織の№2としての組織への殉じ方、あるいは前線部隊の長としての部下育成のあり方など、今の世でも活かせるような哲理を言動で表している、実に得るところの多い書物である。
面従腹背・朝令暮改の世の中を、「人」に視点を据えて清々しく見事に生き切った楽毅の姿を、ここまで鮮やかに想像した宮城谷氏の筆力に、ただただ感嘆。
Posted by ブクログ
諸葛亮孔明をして、軍略の天才と言わしめた中国春秋戦国時代の名将・楽毅の生涯を描いた大作。1巻から4巻まであるが、若者としての楽毅が苦境を乗り越えて中国史に残る偉業を達成するまでの過程が、個人としての成長とリンクして非常に清々しい。
戦国時代、趙や斉、魏といった大国に囲まれた中山という小国の宰相の子として生まれた楽毅は若くして斉の首都に留学し、孫子の兵法を学ぶ。だがそれ以上に彼にとって財産となったのは、戦国四君にも数えられる当代一の英雄・孟嘗君との交流であった。
大望を胸に抱きながらも主君に恵まれず、隣国趙の侵攻から太子を守りながら奮闘する若き楽毅の姿に、ページを捲るのももどかしいほどに感情移入した。それとなく処世術とも言うべきエッセンスが加えられており、とくに若い人にとって読んでもらいたい内容である。
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