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Posted by ブクログ
<文庫全4巻を通してのレビュー>
強国晋を中心に大小いくつもの国が乱立した古代中国春秋期。
気儘な君公に奸佞驕慢な高官たちが群れ従う斉の政情下、ただ一人晏弱のみは廟下にあっては毅然として礼を実践し、戦下においては稀代の智謀を揮った。
緊迫する国際関係、宿敵晋との激突、血ぬられた政変・・・・・度重なる苦境に晏弱はどう対処するのか。
面白いです。
今まで読んだ、「王家の風日」「沙中の回廊」「孟夏の太陽」この3作品と並ぶぐらいに傑作です。
斉の国の晏弱・晏嬰父子を「嬰子」として描いた作品であり、父子ともに生き方が爽快で、名臣中の名臣といえます。
父の晏弱と交流の深かった南郭偃と蔡朝、そして晋の郤至も見事な人物で、雄が雄を知ることの喜びを分かち合えたのだと思います。
物語前半の晏弱が将軍となって出撃した莱の戦は痛快でした。お見事!としか言いようがありません。
そして晋との戦いの中にあって、静かに粛然と亡父・晏弱の喪に伏していた晏嬰。
生涯、毅然とした言動と礼を重んじる晏嬰の活躍は、もうすでに他国にも知れ渡っていたはずであり、斉という国が春秋時代に生んだ最高の人物でしょう。
相手がたとえ君主であろうが、諌めるときはきちんと諌める。
簡単なようで難しいことであり、諫言したことによって殺される人も多かった中で、晏嬰は何よりも社稷を重んじ礼を重んじることにより、人臣からの圧倒的な支持を得ました。
最後まで驕ることのなかった晏弱・晏嬰父子、その生き様に感服です。
晋の士会と並んで、晏子が大好きです。
Posted by ブクログ
人は自分では到底敵わない行ないを為す者に対して尊敬の念を抱くもので、辛い修行を行なった僧に対して敬虔な気持ちを抱くのもそれである。その伝で行くと晏嬰という人物は聖人である。現代日本人は、どうも富貴を善しとし、成功者への志向が強く、自己喧伝に巧みであろうとする。これは先の大戦後にアメリカ的な物の考えが刷り込まれた故もあろうが、元来人間には欲があって、矢張りそれを抑える事が中々出来ないので、それを行なえる人物が尊敬される事は自明であるし、吾身の行く末を考えず諫言し得る点についても、例えば会社で上司に、その誤りを正すべく発言出来得るかと考えた時に、どうしても長い者に巻かれろ的な行動に出てしまっているのが普通の在り方だ。そういう意味で晏嬰の物語は、人生の規範と成る物であり、銘とすべき物語なのだ。父の晏弱も知仁の人であったが、どうしても巧将という感があって、物語としての面白さは父・晏弱にあれど、人としてのあり方に感動させられるのは晏嬰の方であった。
ここでは晏子(晏弱~晏嬰という親子)を描きながらも、春秋時代の中国の様々な人物群を判り易く整理して描かれてあって、春秋時代について読みながら晏子の物語りを読み、晏子の物語を読みながら春秋時代について読むという事になるのである。つまり人は時代と無関係で無いと云う事なのだが、時代とは環境とも言えて作中に「橘化して枳となる」という言葉の語源となった挿話が出て来るが、晏子を産んだ時代・環境に比べて、現代はどうなのか?、紀元前の時代に比べて、成る程、色々な事物が発明、発見されて一見進歩を辿っているように見えるが、人間そのものの行動について、例えば政治を司る人間を見るに、この物語の登場人物達より、今の政治家が進歩していると言えるのか?人間というのは、どんな年月が経てもそう容易く進歩するものではないのではないかと思われて、少し暗澹たる気持ちになった。
Posted by ブクログ
社稷を主とす-この時代には新しい思想を実行したことが興味深かった。君主が神ではなくなり、民の新しいよりどころが必要となったのが、晏嬰の生きた時代だったのだろうか。そして最も魅力を感じたのは崔杼。宮城谷氏の作品を読むと、悪人とされている人物でも実は歴史の敗者で、本来は魅力ある人物だったのではないか、と思われる人物に多々めぐりあう。崔杼もそのひとり。晏弱と晏嬰親子を輝かせたのは、崔杼ではないか、と思われる。晏弱の死後かれの手腕がフルに発揮できていたなら、と残念であるし、晩年の事件の苦悩と晏嬰が見抜いた崔杼の運命がとても切ない。そしてその事件こそがクライマックス。
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