Posted by ブクログ
2020年12月23日
文庫本全9巻まとめてのレビュー
春秋時代の中国南方(楚・呉・越)を舞台に展開された物語。
話の大きな軸は二人。
一人は伍子胥であり、もう一人は范蠡。
この時代のこの二人に主な焦点をあてた作品が今までなかったので、
読んでいてとても楽しい。
伍子胥についての大まかな知識は、海音寺潮五郎氏の「孫氏」で...続きを読む読んだことがあるが、
そこにはない伍子胥の生涯や魅力がこの本にある。
呉の公子光や孫武が、伍子胥にとっていかに大切な人であったか。
父親と兄の復讐をなすために、いかに多くの人々と巡り合い、力を貸してもらったか。
伍子胥に人としての魅力があったからこそ運命的な巡り合いがあるし、人として寛容であったからこそ、協力してくれる人もいる。
同じように、越王句践が范蠡にとっていかに大切な人であったか。
范蠡も実家と家族を失うも、やはり『人徳』というものに支えられ、多くの人々と知り合い、幸せにし、そして己の道を進んでいく。
”復讐”から始まる話は古代中国にたくさんある。
古いところでいえば太公望がそうである。
太公望にしろ、伍子胥にしろ、范蠡にしろ、
まずは復讐を成し遂げようとする本人たちが人間としての魅力を備えていないと、協力者も得られないし、何も達成できない。
その意味では「太公望」と似た話の展開ともいえる。
呉越の最終決戦がついに始まるとき…
それは呉の巨人・伍子胥と、越の天才・范蠡の知の対決でもあった。
とにかく一読の価値はある傑作だと思う。