集英社文庫作品一覧

  • 情状鑑定人
    3.0
    幼女誘拐の容疑で逮捕された井原信三に、情状酌量の余地があるかどうか――家裁の調査官・立花文代の依頼を受け、精神科医・祝田教授は、被告の過去を調べていく。井原は7年前、妻を殺し放火した容疑で起訴され、実刑判決を受けていたが、その背後に意外な事が……。“精神異常”の本質に迫る表題作の他、読み応えのある傑作ミステリー集。
  • 【電子特別版】ゼロ! 熊本市動物愛護センター10年の闘い
    4.4
    飼い主に見捨てられ、行き場をなくした犬や猫が、保健所で悲惨な死をむかえる―。ペットブームにひそむ現状を「しかたがない」で終わらせず、「殺処分ゼロ」を目標に立ち上がった熊本市動物愛護センター。無責任な飼い主に対する職員たちの奮闘が始まった。決して夢物語ではないことを十年がかりで証明した、彼ら独自の取り組みとは? “闘う公務員”たちを追う、リアルストーリー。電子版には「熊本市動物愛護センター日々の風景」として写真を追加収録。
  • 花のさくら通り
    4.2
    倒産寸前のユニバーサル広告社。コピーライターの杉山を始め個性豊かな面々で乗り切ってきたが、ついにオフィスを都心から、“さくら通り商店街”に移転。ここは、少子化やスーパー進出で寂れたシャッター通りだ。「さくら祭り」のチラシを頼まれた杉山たちは、商店街活性化に力を注ぐが……。年代も事情も違う店主たちを相手に奮闘する涙と笑いのまちづくり&お仕事小説。ユニバーサル広告社シリーズ第3弾。
  • この年齢だった!
    3.4
    「その時期がなければ、今の自分はない」――そんな転機となった瞬間が、どんな人にもあるものです。何かを成し遂げた女性たちの転機はダイナミックなうえ、皆それを乗りこなすのが上手。レディー・ガガ11歳、紫式部35歳、市川房枝52歳……古今東西の有名女性27人の転機となった年齢にスポットを当て、その人生を読み解くエッセイ集。思わず自分の人生と比べたくなる、驚きと共感に満ちた一冊です。
  • コミュニティ
    3.6
    欲望、妬み……、ふとしたきっかけで、自分の中に潜む闇が表出し、人生が思わぬ方向に転がりはじめる。日常を突き詰めて、あぶり出される恐怖、奇妙さ、甘美を多彩に紡ぐ短編集。不況のあおりをうけて、引越した団地での人間関係の濃さに戸惑う家族を描く表題作「コミュニティ」、大人の恋愛の切なさを美しく綴る「夜のジンファンデル」などデビュー当時から約10年間に発表された秀作を収録。
  • さまよえる脳髄
    3.2
    精神科医・南川藍子の前にあらわれた三人の男たちは、それぞれが脳に「傷」を持っていた。試合中、突然マスコットガールに襲いかかり、殺人未遂で起訴されたプロ野球選手。制服姿の女性ばかりを次々に惨殺していく連続殺人犯。そして、事件捜査時の負傷がもとで、大脳に障害を負った刑事。やがて、藍子のもとに黒い影が迫り始める――。人間の脳にひそむ闇を大胆に抉り出す、傑作長編ミステリ。
  • 水中眼鏡(ゴーグル)の女
    3.6
    黒い水中眼鏡をかけた女が、精神科医の前にあらわれた。ある朝、突然目が開かなくなってしまったという。自宅で発生した火事によって夫を失ったことが原因かと思われたが――。治療が進むにつれ、驚愕の真実が浮かび上がっていく表題作ほか、難病の妻の介護人として雇われた女性が、歪んだ夫婦関係に巻き込まれていく「ペンテジレアの叫び」など。サイコサスペンスの傑作全三篇を収録。
  • 空白の研究
    3.5
    季子が夫の愛人を殺したことは、本人の自白からも、証拠品などからも間違いないらしい。だが、裁判までの過程で、供述に微妙なぶれがあるとして、精神鑑定の依頼を受けた祝田が、犯行時の一瞬の空白を探ってゆくと……。表題作他、心理分析を背景にして描く奇妙な味のミステリー集。
  • ギンカムロ
    3.9
    花火には、二つしかない。一瞬で消えるか、永遠に残るか。幼い頃、花火工場の爆発事故で両親を亡くした昇一は、高校を卒業後、一人東京で暮らしていた。ある日、祖父から電話があり、四年ぶりに帰郷する。そこには花火職人として修業中の風間絢がいた。十二年前に不幸な出来事が重なった。それぞれが様々な思いを抱え、苦しみ、悩み、葛藤していく。花火に託された思いとは――。希望と再生の物語。
  • 残り全部バケーション
    4.1
    当たり屋、強請りはお手のもの。あくどい仕事で生計を立てる岡田と溝口。ある日、岡田が先輩の溝口に足を洗いたいと打ち明けたところ、条件として“適当な携帯電話の相手と友達になること”を提示される。デタラメな番号で繋がった相手は離婚寸前の男。かくして岡田は解散間際の一家と共にドライブをすることに――。その出会いは偶然か、必然か。裏切りと友情で結ばれる裏稼業コンビの物語。
  • 冬姫
    3.8
    織田信長の二女、冬。その器量の良さ故に、父親に格別に遇され、周囲の女たちの嫉妬に翻弄される。戦国の世では、男は戦を行い、熾烈に覇権を争い、女は武器を持たずに、心の刃を研ぎすまし、苛烈な〈女いくさ〉を仕掛けあう。その渦中にあって、冬は父への敬慕の念と、名将の夫・蒲生氏郷へのひたむきな愛情を胸に、乱世を生き抜いてゆく。自ら運命を切り開いた女性の数奇な生涯を辿る歴史長編。
  • ふゆイチ 紅白対抗文庫合戦(ふゆイチGuide2015-2016小冊子電子版)
    無料あり
    2.5
    ※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。 今年のふゆイチは紅白対抗文庫合戦! どんでん返し、時代小説、サスペンス、ノンフィクションなどのジャンルで、紅組・白組に分かれての十番勝負! あなたはどちらの作品に軍配を上げますか? また、集英社文庫が自信をもって贈る、魅力たっぷりの全10タイトルも一挙にご紹介! ※電子化されていない作品も含まれています。

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  • 吸血鬼と切り裂きジャック(吸血鬼はお年ごろシリーズ)
    3.5
    濃い霧の夜、女子高生がナイフで切り裂かれて殺されるという事件が起こった。あの“切り裂きジャック”が、100年以上の時を経て現代に甦ったのか……!? 事件の背後に禍々しい“血の匂い”を感じて調査に乗り出したクロロックとエリカ。そんなある夜、また霧が立ち込めてきて――!? 表題作のほか『吸血鬼は夜中に散歩する』『吸血鬼の優雅な休暇』の2編を収録。大好評シリーズ第13弾!!
  • きらめく星座 昭和オデオン堂物語
    4.5
    時は昭和の15、6年。浅草のレコード店・オデオン堂の家族と下宿人たちは無類の音楽好き。その音楽好きも禍いし、一時は“非国民”と貶められて、またある時は娘が傷痍軍人と結婚して“軍国美談の家”と褒めそやされて…。劇作の異才が、人間への限りない信頼を込めて描く庶民伝。
  • 月島物語
    4.0
    【第1回斎藤緑雨賞受賞作】東京は銀座から歩いてゆける町・月島。吉本隆明が生まれ、大泉黒石、きだみのる、大岡昇平らゆかりの町・月島。路地と長屋ともんじゃ焼きの町・月島。鍵もチャイムも全く不要な町・月島。狭い路地の奥に居を定めた著者が、この町の全体像を、日本近代化論でも文学論でもあり都市論でもあるという全く新しい形にまとめあげた上質のエッセイ。川田順造氏との対談収録。
  • 生きて候 上
    3.9
    倉橋長五郎政重は、徳川家御先手組にあって、無敵の大業“鬼落とし”で知られた槍の名手。家康の名参謀・本多正信の次子にして槍奉行・倉橋長右衛門の養子だが、故あって秀忠公の近習を斬り捨て徳川家を出奔。意地と野心を胸に秘め、慶長の役に身を投じる。前田利家の密命を帯び朝鮮半島に渡った政重だが、そこは人心を捨てねば生き延びられない修羅場であった。
  • 海神 孫太郎漂流記
    3.6
    江戸時代、なかば。仙台を出航した伊勢丸は突風に流される。渇きと飢えと闘いながらの百日間の漂流。その果てに、はるかな南国の島に漂着した。若き水夫・孫太郎の冒険が始まった。灼熱の太陽。奴隷の日々。殺戮と恋。力尽きて死んでいく仲間たち。望郷の念。島から島へと流転を続けながら成長していく孫太郎の青春。著者が新しい地平をめざした長編時代冒険小説。
  • 天馬、翔ける 源義経 上
    4.0
    【第11回中山義秀文学賞受賞作】平安末期。平氏追討の決起を促す以仁王の令旨が兄弟の運命を変えた。奥州藤原氏の下に逼塞していた弟・義経、そして伊豆に流罪となっていた兄・頼朝。黄瀬川で対面を果たし、力を合わせて源氏再興を図る二人だったが、かたや類いまれな政略家、かたや知勇並びなき天才武人。兄弟の溝は深まる一方だった。源平合戦の固定観念を打ち破った歴史大作。風雲急を告げる波瀾の第1巻。
  • 恋七夜
    4.5
    戦国の余燼さめやらぬ天正期。豊臣秀吉は天下人としての威勢を示さんと北野天満宮にて空前の大茶湯を企図する。その参道の由緒ある花街・上七軒を代表する北野太夫富子は、結師・源四郎と出逢う。女には出生の秘密が、男には背負い続けた過去があった。運命の恋の行方やいかに!? 大茶湯に仕組まれた秀吉暗殺の陰謀やいかに!? 知られざる日本史の真相を、恋物語を糸に紡ぎあげた歴史小説の新機軸。
  • 水のかたち 上
    4.0
    1~2巻715~759円 (税込)
    東京下町に暮らす主婦・志乃子、50歳。もうすぐ閉店する「かささぎ堂」という近所の喫茶店で、文机と朝鮮の手文庫、そして薄茶茶碗という骨董品を女主人から貰い受ける。その茶碗は、なんと三千万円は下らない貴重な鼠志野だという。一方、志乃子の姉、美乃も長年勤めていた仕事を辞め、海雛という居酒屋の女将になるという。予想もしなかった出会いから、人生の扉が大きく開きはじめる――。
  • 解

    3.8
    バブル経済絶頂期、大学生の大江波流と鷹西仁は、政治家と小説家になる夢を語り合う親友同士。代議士の息子の大江は、大蔵省へ入省。鷹西は、社会勉強と文章修業のため新聞記者になった。目標実現のためにキャリアを積む二人だったが、大江の父親が急逝したことで忌まわしい殺人事件が……。めまぐるしく転変する彼らの人生を辿りながら、“平成”という時代を抉り出す骨太の長編社会派ミステリー。
  • 花影
    -
    女の盛りを過ぎようとしていたホステス葉子は、大学教師 松崎との愛人生活に終止符を打ち、古巣の銀座のバーに戻った。無垢なこころを持ちながら、遊戯のように次々と空しい恋愛を繰り返し、やがて睡眠薬自殺を遂げる。その桜花の幻のようにはかない生に捧げられた鎮魂の曲。実在の人物をモデルとして、抑制の効いた筆致によって、純粋なロマネスクの結構に仕立てた現代文学屈指の名作。
  • 化粧
    -
    さびれた芝居小屋の淋しい楽屋に、一人の女が座っている……。女の名前は五月洋子。大衆演劇「五月座」の女座長である。やがて客入れの始まる音が聞こえ、いよいよ初日幕開きの時刻が近づいてくる。洋子が舞台化粧を始めたその楽屋に、かつて彼女が捨てた息子だという人物が現れた――。捨てたのではない、ああするより他に仕方なかったのだ。わかっておくれ……。洋子の語る物語に、観客は幻惑されていく。井上ひさし初の一人芝居にして、一人芝居というジャンルの中でも最高峰と讃えられる傑作中の傑作戯曲。併せて松尾芭蕉の生涯を描く、歌仙仕立ての名作『芭蕉通夜舟』も収録。モノローグの至芸を味わえる戯曲集。
  • 田崎教授の死を巡る桜子准教授の考察
    3.5
    1~2巻506~572円 (税込)
    マンションも買った。車も買った。足らないものは男だけ。桃沢桜子42歳。立志館大学准教授。出世争いには巻き込まないで的な、食事は売れ残り弁当でOK的な合理主義な女。ある朝、田崎教授が大学の玄関ロビーで死んでいた。前日に教授と言い争っていたのを目撃された桜子は警察に事情を聞かれる。一癖も二癖もある教授たちと大人になりきれない学生たち。魑魅魍魎が跋扈する大学内ミステリー。
  • 最初の目撃者
    -
    新進文芸評論家の建部隆之介の死体が、マンションの自室で発見された。死因は青酸性毒物による中毒死。遺書もなく、闘争の跡もなく、自殺の動機すら考えられない。なぜ、誰に殺されたのか……推理作家・垂水兼人の頭はひらめく。作家、評論家、編集者など文壇を形づくる複雑な人間模様を背景に描く表題作ほか、九篇を収録した推理小説集。
  • 母六夜
    -
    父と子が、同時にひとりの女に魅かれ、愛憎の業のなかにあえぐ名作「沼津」、大岡文学のライトモチーフになる女性像を幻想的な世界に現出する「母六夜」ほか「焚火」「問わずがたり」「木下氏の場合」など、著者の文学世界の核心をかたちづくった傑作十三篇を収録。
  • 終活ファッションショー
    -
    司法書士の市絵、34歳。近所の老人たちの相談にのるうち、「姑に希望通りの死装束を着せてやれなかった」という後悔を聞かされ、死ぬときに何を着たいかを発表する「終活ファッションショー」を開催することに。年齢も趣味もばらばらなメンバーが集まり、十人十色の理想の死装束から、それぞれの人生が見えてくる――。他人と関わり合いながら生きて死を迎える人間の絆を描く、人情「終活」物語。
  • 御不浄バトル
    3.3
    僕が入社したのは、悪徳ブラック企業!? 過酷な労働と精神的負担で営業部員は半年で辞めていく中、事務職の僕は無難に仕事をこなし二年目に。唯一の楽しみは、会社や駅のトイレでくつろぐこと。素性不明なトイレ常連メンバーたちと静かな個室争奪戦を毎日繰り広げる。しかし、ある電話がきっかけで、日常が一気に崩れ出す。限界に達した僕は、退職を決意するが……。芥川賞作家の話題作。
  • 小説版 ボクは坊さん。
    3.0
    24歳、ボクは突然、住職になった――。四国八十八ヶ所の一つである栄福寺を継ぐことになった進は、名を光円と改め、お坊さんとしての道を歩き出す。若造の自分に何が出来るのか。聞きなれない言葉やしきたりに苦悩しながらも、家族や幼馴染、檀家らに見守られて青年は成長してゆく。「ほぼ日刊イトイ新聞」で連載された白川密成氏の大人気エッセイを元に作られた映画「ボクは坊さん。」の小説版。
  • 頭痛肩こり樋口一葉
    -
    ぼんぼん盆の16日に地獄の釜の蓋があく…。夭折の天才女流作家、樋口一葉の19歳から死後2年目まで、それぞれの盆の16日に巡り来た運命は――。幽界(あのよ)と明界(このよ)にまたがる卓抜な仕掛けと会話で綴る樋口一葉像。没落士族の女家長・樋口夏子が、いかにして家族のために闘い、生き抜き、作家・一葉となって奇跡のような名作を生み出したのか。井上ひさしがユーモアをちりばめて描く、明治という激動の時代を駆け抜けた一人の女性の短くも美しい人生。再演のたびに新たな感動を呼び起こす傑作戯曲。
  • 路傍
    3.7
    【第11回大藪春彦賞受賞作】俺、28歳。金もなけりゃ、女もいない。定職にも就いてない。同い年の喜彦とつるんでは行きつけのバーで酒を呑み、泥酔したサラリーマンから財布を奪ったりしてはソープランドへ直行する日々。輝いて見えるものなど何もなかった。人生はタクシーに乗っているようなもので、全然進まなくても金だけはかかってしまう。そんな俺たちに今日も金の臭いがするトラブルが転がり込む。
  • 鬼に喰われた女 今昔千年物語
    4.0
    時は平安。京に上った東国の長者が妻と荒れ果てた邸宅に宿を取った。数日たった夕方、男が縁にいると妻の叫び声が聞こえる。驚いた男が部屋に飛び込むと、暗闇から伸びた太い二本の腕が妻をつかんで奥の間に引きずりこむところだった。妻は鬼につかまっていたのだ……(「鬼に喰われた女」)。表題作ほか今昔物語からインスピレーションをえて人間に巣食う「闇」と「エロス」を大胆に描いた短編集。
  • 花の埋葬 24の夢想曲
    -
    ひとは夢の中でさまざまなものを思い描く。生と死、愛と憎、肉体と精神、官能と苦痛、永遠と瞬間、安心と恐怖。あるときは縛られ閉じこめられ、あるときは解き放たれる。亡くなった家族や友人たちの思いが私を圧迫したり、癒したりする。そんな不条理で豊穣な「夢の世界」を確かな筆致で描く。自らの夢をもとに紡いだ24編のショート・ストーリー。
  • 快楽の封筒
    3.0
    隣家の主婦に荒々しい欲望を抱く男。見つめられる視線のなかで徐々に熟れてゆく女。想像の上での交わりが現実になったとき、そこにあらわれるのは、快楽と愉悦の宇宙。ふくれあがる欲望、激しくかわす性愛、わきあがる官能。男と女の関係を、「性」という視点から濃密に丹念に描く全8編。傑作官能小説集。
  • 日々の100
    4.1
    アメリカ郊外の村で見つけた、アンティークのキルト。古書店・カウブックスの開業時に揃えた、イームズのスツール。何気ない日常のアイテムから、大事な宝物まで、『暮しの手帖』編集長である著者が愛用する、100の品々。愛すべきモノたちと真摯に向き合い、その出合いや記憶を、自ら撮影した写真とともに心豊かに綴る随筆集です。100編の随筆に、3編が加わりました。
  • 愛する伴侶を失って 加賀乙彦と津村節子の対話
    -
    夫である作家吉村昭を闘病の末亡くした津村節子と夫人を突然に亡くした加賀乙彦。80歳を目前に長く連れ添った最愛の伴侶を失った人気作家ふたり。最期の看病をできなかったと悔いる妻と、神は存在し妻と天国で再会できると信じる夫。夫と妻の立場から辛く苦しい胸の内と、それをどう乗り越えていくかを語り合う。伴侶を偲び、夫婦という不思議なものを想い、生と死について考える心にしみる対談。
  • またやぶけの夕焼け
    3.9
    僕はヒデユキ、八王子市立第六小学校の四年生だ。放課後になるといつも近所に住むカッチャンたちと遊びに繰り出す。『侍ジャイアンツ』に影響されて魔球を投げようとしたかと思えば、弟をブッチャーに見立ててプロレスごっこ。大物のノコギリクワガタに興奮し、恐竜の化石探しに熱中する―。毎日を全力疾走する少年たちを活き活きと描く、かつて子供だった全ての人に贈る笑いと涙の青春小説。
  • 劫火 航空事故調査官
    4.0
    名古屋空港で、トランス・エイジアン航空機が着陸に失敗、炎上。現場に向かった新聞記者上沢広之は、事故原因の解明に執念を燃やす。航空事故調査官神野史郎との駆け引き。ボイスレコーダーで甦る機長と副操縦士の会話―真実はどこにあるのか。航空事故における国際的な暗面と、破滅に向かう人間の深層心理に迫る長編。
  • 五十年目の零戦
    -
    昭和20年8月16日、厚木海軍航空隊基地から、2機の零式艦上戦闘機が飛び立った。目的地は十勝の秘密基地。徹底抗戦を表明した航空隊司令の密命を受け、“そのとき”がくるまで機体を温存するためだった。しかし戦闘飛行に出ることなく、機体は十勝平野の片隅で眠りつづけることになった。―それから50年、ひとつの夢を共有する男たちの手で、零戦再生計画が動きはじめる。本格航空小説。
  • イノセントブルー 記憶の旅人
    3.4
    ペンションを経営する森川は、海岸で倒れていた美青年を助ける。才谷と名乗る彼は、「前世の記憶」を見せることができるのだという。彼の訪れをきっかけにするように、ペンションには心に悲しみを抱えた人々が集まってくる。彼らの前世の記憶と現世での縁が絡み合って起こる、息をつかせぬスリリングな展開は、やがて、やさしい癒しと明日への希望につながってゆく。静かな再生の物語。
  • くちぬい
    3.7
    夫の定年退職を機に、東京から高知の山奥の白縫集落に移り住んだ夫婦。美術教師だった夫の竣亮は趣味の陶芸に専念したい、妻の麻由子は放射能汚染の不安のある東京から逃れたいと思っていた。老人ばかりの村で、若くみられた二人は歓迎されるが、「くちぬいさま」と呼ばれる神を祀る神社に続く道の上に竣亮が陶芸の窯を作ったことから、村人達との関係に亀裂が生じ、陰湿な苛めが始まる――。
  • 朱鳥の陵
    4.1
    時は飛鳥。他者の夢の意を読み解く力を持つ白妙は、皇女の夢を解くため京にやってくる。しかしその夢を解こうとするたびに、見知らぬ少女の心に呑み込まれてしまう。それは最高権力者である太上天皇、後の持統天皇の過去だった。彼女の心の奥へ奥へと入り込む中で、白妙は恐ろしい秘密へと近づいていく。強大な権力を手にし、愛する者を次々と葬った古代最強の女帝の真実に迫る歴史長編。
  • 鬼灯
    3.5
    四国松山で発生した連続幼女誘拐殺人。奔走する警察、報道陣をよそに、犯人は再び刃を振りかざす。顔のない殺人者の内に広がる無限の闇に挑む新聞記者・上沢。なぜ、彼は少女を殺すのか。正体をつかみかけたとき、その兇刃は上沢の身辺にもおよびはじめる――。逃れられない人間の業を浮き彫りにする、戦慄のサイコサスペンス。
  • 曼荼羅道
    3.2
    【第15回柴田錬三郎賞受賞作】家業の薬売りを手伝うために妻の静佳とともに富山に戻った麻史は、祖父が残した書き付けから「曼荼羅道」の存在を知る。祖父の蓮太郎は戦時中マレー半島に渡り、部族の娘サヤを現地妻としたのだった。現代を生きる麻史と静佳、戦後を乗り越えてきた蓮太郎とサヤ。二組の男女の人生が、やがて「曼荼羅道」で交錯する。圧倒的な迫力と濃密な筆致で描く家族、愛憎、そして性。傑作長編。
  • 革命のライオン 小説フランス革命 1
    4.0
    1789年。フランス王国は破産の危機に瀕していた。大凶作による飢えと物価高騰で、苦しむ民衆の怒りは爆発寸前。財政立て直しのため、国王ルイ16世は170余年ぶりに全国三部会を招集する。貴族でありながら民衆から絶大な支持を得たミラボーは、平民代表として議会に乗り込むが、想像もしない難題が待ち受けていた――。男たちの理想が、野望が、歴史を変える! 一大巨編、ここに開幕。
  • 私のギリシャ神話
    3.6
    世界の至る所に浸透し、痕跡を残しているギリシャ神話。特に西洋の文化や芸術を味わうとき、ギリシャ神話を知っていると、10倍は楽しい! 数多くの神々や英雄が活躍する広大な神話の世界を、ゼウス、ヘラクレス、アプロディテ(ヴィーナス)など、馴染み深い神々のエピソードを中心に、巧みに水先案内。
  • 仕事師たちの哀歌
    3.5
    フロリダの小さな町で、カメラマンの和泉はプロレスを見た。セミファイナルに登場したエンペラー・リーは、番傘を手に下駄をはき、悪役を演じて見事に敗れる。和泉は彼がもと雑誌記者の松井であることに気がついた――。プロレスに魅せられた男の栄光と悲惨を描く「虚構・ケーフェイ」など傑作5編。プロレスファン、必読の一冊!
  • 真夏のバディ
    3.0
    夏休み。実家の牧場の仕事を手伝う塊太は、一人旅を続けながらまっすぐに生きる直次郎と出会った。人前でうまく自分を表現できない塊太は、内心では牧場を疎んじている。徐々に友情を深める高校生二人は、軽トラックで岩手県を駆け巡る。塊太は意外な特技を見出され、一世一代の挑戦を決心する――。互いに補完し合い、成長していく“バディ”の旅路を鮮やかに描き出す傑作青春ロードノベル。
  • 影まつり
    4.0
    美しい黒髪の妻を自動車事故で亡くした後、再婚したフランス女性も事故で失った画家。彼は奇妙な方法で妻たちを偲び……「二人の妻を愛した男」。妻は“一年に一晩だけ自由にさせて”といった。夫はその願いを長く叶えてきた。だが、妻の秘密を知りたくなり……「女系家族」。女性遍歴の末、愛した女に棄てられた旧友には、驚愕の素顔が……「紅の女」。男女の日常に潜む不可思議をミステリアスに描く傑作短編集。
  • ものがたり風土記
    -
    古代からの伝説、民話、童話、近・現代の小説まで……日本各地に「ものがたり」の舞台を訪ねてパワフルに“現場検証”。歴史に埋もれたそれらの「ものがたり」の成立の謎や、作家の思い、登場人物の実像に思いを馳せる。滋賀、鹿児島、新潟、東京――旅するうちに、思索は海外の文学にも及び、『ギリシャ神話』や『グリム童話』、ミステリーの名作なども登場。知的興奮と発見に満ちた、極上の紀行エッセイ。
  • ミドリさんとカラクリ屋敷
    3.7
    海の近くの湘南の街に、屋根から電信柱の突き出た家があった。その不思議な佇まいに惹かれて屋敷を訪れた著者は、90歳を超えたパワフルなミドリお婆さんと出会う。彼女は建築が大好きで、この家も自分で設計して建てたという。6世帯が共同で暮らす屋敷には、奇妙な仕掛けがいたるところに存在して――。カラクリ屋敷の秘密と波瀾万丈のミドリさんの生き様を軽快につづる、傑作ノンフィクション。
  • 絢爛たる鷺
    3.0
    その肉体には個性がある――胡蝶蘭に囲まれた鏡台の手前、そこには素肌にローブを纏った名優の姿があった。『ぼく』は初めて坂東玉三郎の楽屋を訪ねる。多忙な日々を過ごしつつも、迷いの真っただ中にあった作家は、この運命的な出会いを契機に、歌舞岐脚本への挑戦を企てる。そして、復活。迷いの中から、書くことによって抜け出していく足かけ7年間の「私」語り。オリジナル台本「三国伝来玄象譚」を収録。
  • ミシェル 城館の人 第一部 争乱の時代
    3.0
    不朽の名著「エセー」の著者モンテーニュはどのようにして自らの精神を確立していったのか。彼が生きた16世紀は後にルネサンスと呼ばれたが、この時代はまた、イデオロギー抗争が渦を巻き、暴動、虐殺、陰謀がうごめく時代でもあった。モンテーニュは、樅の巨木の生い繁る城館で、自らの思想を深めていった。長編“モンテーニュ三部作”第一部。和辻哲郎文化賞に輝く名作。
  • 寂庵浄福
    -
    「ひとりでいることの淋しさが、浄福ということばにつながる今こそ、私がかつて、あれほど憧れ、需めたがっていた境地なのかもしれない……」。祈り、仏像を彫り、畑を耕し、愛した人の死をとむらい、巡礼の旅にでる。出離して浄福、と言い切る境地を、移りゆく嵯峨の四季と日々の出来事の中に、確かでこまやかな筆で綴る。
  • 幻花 上
    -
    応仁の乱の胎動が聞こえる8代将軍義政の治世。政治の混乱をよそ目に、遊興に身を委ねる義政をめぐって、愛妾・今参局と正室・日野富子は妖しく命がけの色と欲の葛藤をくりひろげている。中世の末期的な猥雑をきわめた世相を背景に、御所にうずまく謀殺の企てをとおし、運命の糸に操られて生きる人間の姿を生き生きと描く長篇歴史ロマン。序章。
  • 女の海
    -
    夫と子供を捨てて竜平との恋に走った弓子。母の出奔後グレて事故死した息子や母の知人に夢中になる娘。この子供らにとって私は何であったのか? 愛の歓びにひたりながら、弓子の心の奥底に罪の意識がゆらめく。ひとりの女のラブ・アフェアが子供や愛人の運命に投げかける陰影を通して女の愛といのちの哀しみをくりひろげる。
  • わたしの源氏物語
    4.3
    初めて「源氏物語」に出会ったのは13歳のとき。千年の命を今に伝える〈王朝ロマン〉の面白さに取り憑かれて半世紀以上。源氏物語完訳をライフワークとし、文学と人生を戦いぬいてきた著者が、光源氏と彼をとりまく女たちの多彩な愛のかたち、恋のさまざまを縦横無尽に語る。読み込むほどに奥深く、新たな発見に満ちた魅力の物語世界へようこそ。
  • 田中慎弥の掌劇場
    4.5
    自殺と断定された妻を、自分が殺害したと主張する男。夫の浮気相手たちを殺す計画を立てる貞淑な妻。育児疲れの女に若い頃の自分を重ねる老婆。会社帰りに立ち寄ったバーで悪魔と隣合わせになった男。愚かで愛らしいその人々は、あなたのすぐ近くに存在するかもしれない――。何気ない日常生活が些細なことで歪みはじめる瞬間を、ブラックユーモアたっぷりに切り取った38編の掌編小説集。
  • 一休を歩く
    -
    600年前の動乱の時代を生きた禅僧、一休。後小松帝の側室の子としてわずか6歳で出家。無欲清貧、風食水宿、自己見性につとめる純粋禅僧に師事するが師と死別。やがて失意の青年僧一休は酒肆淫坊に出入りし、女犯をなす破戒三昧な生活の中で、人間的な自由禅を志向していく。放浪無頼な風狂の人、一休宗純和尚の由縁の地、京都嵯峨野、堅田、堺、住吉、田辺を水上勉が訪れ歩くほろつき文学紀行。
  • 失われゆくものの記
    -
    近江の琴糸、月瀬の奈良さらし、越後の筆匠、佐渡の人形遣い、雪の中の瞽女たち、信濃の山蚕、忘れられた巨桜たち……。昔ながらに手間と日数をかける職人の精緻な手仕事と、日本の山野の美は、まさに滅びようとしている。各地を訪ね、痛恨の思いと復興への願いをこめて書きしるす、記念碑的ルポルタージュ16章。
  • 闇の戦場
    -
    気温42度。湿度95パーセント。ジャングル。行軍。ただひたすら歩き続ける彼らは「足」と呼ばれる歩兵小隊だ。分隊長の軍曹、黒人兵ハニー・ビー、日系三世のキューシュー、新兵ウェンズディ、インディアンの血をひくダンシング・ベア、異様に大きな鼻の持ち主ノーズ・マン。一つの時空間を共有した6人それぞれの視点から、「戦場」という闇の環に閉じ込められた若者たちの運命を描く連作。戦争シミュレーション小説。
  • 門司・下関 逃亡海峡(十津川警部シリーズ)
    -
    大学講師の篠塚昭夫は、留学生のアン・ミカと浮気をしている。それに気づいた妻は、夫と無理心中をしようと部屋に火をつけ焼身自殺。だが、遺体から睡眠薬が検出され、夫に疑惑が……。十津川警部に容疑の目を向けられた篠塚は、葬儀の途中で姿を消し、愛人と逃亡を図る。警察の追跡を巧みにかわす二人を追い詰める十津川警部たち。決死の逃避行の果て掴んだ驚愕の愛! 長編旅情ミステリー。
  • あやかし草子
    3.8
    古い都の南、朽ちた楼門の袂で、男は笛を吹いていた。笛を吹いてさえいれば、男は幸せだった。ある春の夜、笛を吹く男の前に、黒い大きな影が立っていた。鬼だ。笛の音を気に入った鬼は、男に絶世の美女を与え、百日の間は絶対に触れてはならぬと告げるが……(「鬼の笛」)。人ならざるものを描くことで浮き上がる、人間の業や感情。民話や伝承をベースに紡がれた六編を収録した短編集。
  • ガールズ・ステップ
    2.0
    高校ダンス部の部長に指名された西原あずさ。前部長への恋心から引き受けるが、部員たちの反感を買ってしまい、主力メンバーが全員退部。残ったのは、落ちこぼれの幽霊部員3人と、誰よりも踊るのが上手だが無愛想で協調性のない美少女・愛海だけ。なんとか部を続けようとするあずさは、伝説のダンサー・ケニー長尾と出会い、コーチを頼むのだが……。少女たちのきらめく青春ダンス小説!
  • 純情漂流
    -
    「ナイフ!」ぼくは叫んだ。濁流が隊員を呑む。ザイルを切らねば…。かつて玄奘三蔵が辿った遙か天竺への旅路、あの天山越えに著者は挑んだ。――天安門事件、ベルリンの壁崩壊と歴史は転換期を迎え、著者は各地をさすらう。壁を殴りにドイツへ、河を下りにアラスカへ。そして鶴を見にヒマラヤへ。カラー写真多数を交えて綴る名作『神々の山嶺』の原風景。物語をつむぐ旅人の心温まる漂泊の軌跡。
  • 聖楽堂酔夢譚
    4.0
    古い木造の民家にしか見えず、表には看板もない。ほとんど誰も存在すら知らない書店。一歩踏みこめば出迎えるのは名著珍書の山。一風変わった店の名前は「聖楽堂」。祖父が書いた『清楽ひとり語り』の版元。著者が稀代の書『螺旋教典』を発見した店。――書評のようで伝記のような、伝記のようで書評のような、掟破りの意匠が冴える新小説。
  • 凍夜
    3.5
    高校卒業以来、20年ぶりの帰郷だった。鶴巻秀人、39歳、バツイチ。同窓会の懐かしい顔ぶれは、彼の中で風化していた記憶を呼び起こす。たまり場での仲間との会話、憧れの美人教師、初めて抱いた女の子のぬくもり、そして、夢。「俺、小説家になりたいんだ」。氷点下の夜、骨まで凍みる冷気に震えながらも希望に燃えていた1977年、冬、18歳の思い出――。二度と帰らぬ日々を鮮烈に描く青春小説の傑作。
  • 異形家の食卓
    3.8
    国際会議のため来日した、ゾエザル王国の外務大臣・ジュサツ。独裁国家に対する強い風当たりにもめげず、常に笑顔をたやさない彼を癒す、おぞましいストレス解消法。つぶれかけたフレンチ・レストランを救った、魅惑の食材の正体。一家団欒のテーブルで告白される、悪食の数々など、全11篇。異才が贈る、駄洒落×ホラー×グロテスクのフルコースを召し上がれ。
  • 鎮魂(鶴見京介弁護士シリーズ)
    3.7
    森塚翔太は、包丁で隣人を刺殺し、現行犯逮捕された。だが、凶器は被害者が持ってきたと主張し、殺意を否認。担当弁護士の鶴見は、接見のたびに供述を二転三転する森塚に不審を抱く。さらに森塚のDVから逃げている女性の存在が明らかになり……。阪神淡路大震災から20年の時を経て明らかになる驚愕の真実! 償いとは何かを、犠牲者たちへの祈りを込めて描く、号泣ミステリー。
  • 勇者の証明
    -
    昭和20年、戦時下断末魔の日本。凄まじいいじめ、自由を奪われた4人の少年は、お化け屋敷と称ばれる洋館を探検中、ドイツ人の瀕死の母親から娘を長崎まで送り届けてほしいと遺言される。およそ不可能な遺託に応えて4人は理不尽な時代への勇気を証明するため、少女を送り届けることに。広島を通過、長崎を躱し、千キロ以上の難旅を越え……。輝く壮大な青春ロード・ノベル。
  • 虚竹の笛 尺八私考
    -
    日本留学僧と中国女性の子として宋にうまれ、尺八を日本に伝えたといわれる虚竹禅師。南朝の御落胤といわれながら破戒の生涯を送った一休和尚。このふたりが、宇治吸江庵で出会い……。遙か古代から近代までの和漢往来を、尺八の海峡を渡る望郷の響きに託した伝来記。日本と中国の交流の深い絆と歴史を壮大な物語に結実させた、著者最後の長編。第二回親鸞賞受賞作品。
  • 三人のゴーストハンター 国枝特殊警備ファイル
    3.8
    普通の警備会社が恐れをなした怪異現象がらみの事件ばかりを扱う国枝特殊警備保障。生臭坊主・洞蛙坊、美貌の霊媒師・比嘉、反オカルト科学者・山県の三人が個々の特殊能力を発揮して、都市の魑魅魍魎に挑んでいく――。やがて彼らは、自分たちを結びつけた四年前の幽霊屋敷事件の真相に……! 異才、鬼才、天才の集結が生み出す三通りのマルチエンディング付きセッション・ノベル。
  • 故郷
    3.8
    NYの日本料理店で成功をおさめた芦田夫妻は、三十年ぶりに帰国。老後をふるさと若狭で暮らしたいと考えたからだった。だが、美しかった里は、原発銀座へと変容し、過疎化の問題を抱えていた。大自然につつまれて安らかに逝きたいと願う夫婦が、ふるさととの再会で見たものは――。急激に変貌する日本に戸惑いながらも、安息の地を探し求める一族の物語。
  • 明日 一九四五年八月八日・長崎
    3.5
    原爆投下の前日八月八日、長崎の街にはいま現在そこに住む人々と、おなじ人間の暮らしがあった。結婚式を挙げた新郎新婦、刑務所に収監された夫に接見する妻、難産の末に子供を産む妊婦……。愛し傷つき勇気を奮い起こし、悲喜こもごも生きる人々を突然に襲う運命の「明日」。人間の存在意義を問い、核の脅威と向き合う「今日」を鮮烈に描き出す。昭和文学の金字塔。
  • 靴の話 大岡昇平戦争小説集
    3.4
    太平洋戦争中、フィリピンの山中でアメリカ兵を目前にした私が「射たなかった」のはなぜだったのか。自らの体験を精緻で徹底的な自己検証で追う『捉まるまで』。死んだ戦友の靴をはかざるをえない事実を見すえる表題作『靴の話』など6編を収録。戦争の中での個人とは何か。戦場における人間の可能性を問う戦争小説集。
  • 少女は卒業しない
    4.1
    今日、わたしは「さよなら」をする。図書館の優しい先生と、退学してしまった幼馴染と、生徒会の先輩と、部内公認の彼氏と、自分だけが知っていた歌声と、たった一人の友達と、そして、胸に詰まったままの、この想いと――。別の高校との合併で、翌日には校舎が取り壊される地方の高校、最後の卒業式の一日を、7人の少女の視点から描く。青春のすべてを詰め込んだ、珠玉の連作短編集。
  • 沖縄 だれにも書かれたくなかった戦後史 上
    4.3
    沖縄の戦後65年余を知らずに現代日本は語れない。歴史的な政権交代と鳩山民主党による普天間飛行場移設問題の裏切り、「琉球処分」後に王朝尚家を見舞った数奇な運命、尖閣諸島の秘められた歴史、沖縄の戦後そのものの人生を生きたヒットマンの悲しい最期など……東日本大震災後の沖縄の今日を視座に入れながら、大幅加筆200枚。沖縄戦後史を抉る渾身のルポルタージュ。
  • オーダーメイド殺人クラブ
    3.9
    クラスで上位の「リア充」女子グループに属する中学二年生の小林アン。死や猟奇的なものに惹かれる心を隠し、些細なことで激変する友達との関係に悩んでいる。家や教室に苛立ちと絶望を感じるアンは、冴えない「昆虫系」だが自分と似た美意識を感じる同級生の男子・徳川に、自分自身の殺害を依頼する。二人が「作る」事件の結末は――。少年少女の痛切な心理を直木賞作家が丹念に描く、青春小説。
  • 沖縄戦いまだ終わらず
    4.0
    戦後70年の沈黙を破って、孤児たちが“あの夏”の辛く哀しい記憶を語り始めた。だが、オスプレイ、米軍基地、集団レイプ……沖縄の現状はあの頃と変わっていない。沖縄の叫びはなぜ本土に届かないのか。『僕の島は戦場だった』を改題し、米軍普天間基地の辺野古移設問題が争点だった2014年県知事選挙の原稿を加え、今なお続く“沖縄戦”に迫る。現代日本の歪みを暴く渾身のルポルタージュ。
  • 仰天・プロレス和歌集
    -
    試合に使う凶器のセンヌキをしみじみと地方のホテルの部屋でテーピング、あるいは、好きな女性に失恋しても耐えてリングで闘わなければならない心の痛み…。怒りを剥きだし、凶獣のようにふるまってもプロレスラーだって生身の体、リングを離れると喜び・哀しみに涙することだってある。作家・夢枕獏がそんな彼らの本音と人生模様を和歌に託して、笑いと涙でキミたちの血を沸かすプロレス本! プロレス好きの必読書。
  • MEMORY
    3.8
    葬儀店のひとり娘に産まれた森野、そして文房具店の息子である神田。同じ商店街で幼馴染みとしてふたりは育った。中学三年のとき、森野が教師に怪我を負わせて学校に来なくなった。事件の真相はどうだったのか。ふたりと関わった人たちの眼差しを通じて、次第に明らかになる。ふたりの間に流れた時間、共有した想い出、すれ違った思い……。大切な記憶と素敵な未来を優しく包みこんだ珠玉の連作集。
  • 働くことと生きること
    5.0
    天職とは最初からあるものではなく、働きながら育った人格があとから見出すもの、心のあり様次第のもの――。僧侶、販売員、役所勤め、中国での苦力監督、代用教員、新聞記者など様々な職業を体験した著者。棺づくり下駄直しなど生活のために働く父母、一品に心をこめる竹人形職人達。職に徹する人々を見つめ続けて感じた誇りをもつ明るさ。仕事から教えられる幸せと人生を綴る、珠玉のエッセイ。
  • ホテルローヤル
    3.8
    【第149回直木賞受賞作】北国の湿原を背にするラブホテル。生活に諦念や倦怠を感じる男と女は“非日常”を求めてその扉を開く――。恋人から投稿ヌード写真の撮影に誘われた女性事務員。貧乏寺の維持のために檀家たちと肌を重ねる住職の妻。アダルト玩具会社の社員とホテル経営者の娘。ささやかな昂揚の後、彼らは安らぎと寂しさを手に、部屋を出て行く。人生の一瞬の煌めきを鮮やかに描く全7編。
  • エンジェルフライト 国際霊柩送還士
    4.4
    【第10回開高健ノンフィクション賞受賞作】異境の地で亡くなった人は一体どうなるのか――。国境を越えて遺体を故国へ送り届ける仕事が存在する。どんな姿でもいいから一目だけでも最後に会いたいと願う遺族に寄り添い、一刻も早く綺麗な遺体を送り届けたいと奔走する“国際霊柩送還士”。彼らを追い、愛する人を亡くすことの悲しみや、死のあり方を真正面から見つめる異色の感動作。(解説・石井光太)
  • ストレイヤーズ・クロニクル ACT-1
    3.8
    瞬時に移動できる超人的運動能力、普通の人には聞こえない小さな音まで聞き分ける鋭敏な聴覚、決して忘却しない驚異的な視覚記憶力――常人とはかけ離れた特殊能力を持つ4人は仲間の亘を人質に取られ、老獪な政治家・渡瀬浩一郎のために裏の仕事をしている。そんな彼らに、世間を賑わしている残虐な殺人集団〈アゲハ〉の追跡が命じられる。〈アゲハ〉とは何者なのか。今、壮絶な戦いが幕を開ける――。
  • 幕末牢人譚 秘剣 念仏斬り
    4.0
    嘉永六年、品川宿。何とかなるの一念で江戸に出た針谷清蔵。侍を気取っているが実は貧農の三男で、剣の腕はからっきし。かたや南部権十郎。剣の腕はたしかだが、その日の食にも難儀している牢人者。折しも黒船来航で視察に来ていた佐久間象山、供侍の勝麟太郎との邂逅が、ふたりの運命を大きく変えていく――。時代のうねりに搦めとられた牢人たちの渡世を通して幕末を描く時代小説。
  • ジヴェルニーの食卓
    4.3
    ジヴェルニーに移り住み、青空の下で庭の風景を描き続けたクロード・モネ。その傍には義理の娘、ブランシュがいた。身を持ち崩したパトロン一家を引き取り、制作を続けた彼の目には何が映っていたのか。(「ジヴェルニーの食卓」)新しい美を求め、時代を切り拓いた芸術家の人生が色鮮やかに蘇る。マティス、ピカソ、ドガ、セザンヌら印象派たちの、葛藤と作品への真摯な姿を描いた四つの物語。
  • 北斗 ある殺人者の回心
    4.3
    【第8回中央公論文芸賞受賞作】両親から激しい虐待を受けて育った少年、北斗。誰にも愛されず、愛することも知らない彼は、高校生の時、父親の死をきっかけに里親の綾子に引き取られ、人生で初めて安らぎを得る。しかし、ほどなく綾子が癌に侵され、医療詐欺にあい失意のうちに亡くなってしまう。心の支えを失った北斗は、暴走を始め――。孤独の果てに殺人を犯した若者の魂の叫びを描く傑作長編。
  • 仙台ぐらし
    4.0
    心配性の作家がつづる地方都市生活の魅力と希望。震災で都市機能がマヒしてしまった体験を持つ仙台。そこに暮らすちょっと心配性で、ちょっと自意識過剰な作家の、軽妙で味わい深いエッセイ。途方に暮れた後にたどり着いたのは「楽しい話を書きたい」という思い。日常のすきまの希望をつづって、読後感も爽やか――。短編小説「ブックモビール」も収録。
  • 狭小邸宅
    3.8
    【第36回すばる文学賞受賞作】学歴も経験も関係ない。すべての評価はどれだけ家を売ったかだけ。大学を卒業して松尾が入社したのは不動産会社。そこは、きついノルマとプレッシャー、過酷な歩合給、挨拶がわりの暴力が日常の世界だった……。物件案内のアポも取れず、当然家なんかちっとも売れない。ついに上司に「辞めてしまえ」と通告される。松尾の葛藤する姿が共感を呼んだ話題の青春小説。
  • 青きドナウの吸血鬼(吸血鬼はお年ごろシリーズ)
    -
    クロロックの仕事に便乗し、ヨーロッパ旅行に出かけたエリカたち。ロマンティックな古都ウィーンに到着し旅気分の盛り上がった一行だが、空港で機関銃の襲撃という手荒い歓迎を受ける。狙われているのは、同行者の永井恭子か。警戒するクロロックとエリカに次々と降りかかる襲撃事件の行方は……!? 表題作のほか、『吸血鬼と幻の聖母』、『吸血鬼と花嫁の宴』を収録。大好評シリーズ第12弾!!
  • 魚の小骨
    3.0
    マスコミの報道姿勢、子どもにあげるお年玉の額から、はては雌猿の美醜まで。のどに刺さると気にかかる、世のアレコレを大人のエスプリで余裕たっぷりに語ったエッセイ集。
  • 残された者たち
    3.4
    尻野浦小学校には、杏奈先生と飛鷹かおるという生徒、そして英語まじりで話をする校長先生がいるばかり。そう、ここは海沿いの限界集落。残りの住人はかおるの父とかおるの兄だけ。そこにある日、山向こうの「ガイコツジン」集落から、エトーくんがやってきて――。それぞれの人生を抱え、集まった人たちの濃密な関係が織りなす、風変わりな家族の物語。
  • 空気枕ぶく先生太平記
    3.0
    出版界に生きる男たちの仁義なき闘い! 数多の非道な仕打ちにキレた編集者・木村彦六クンが、エロスとバイオレンスの大作家・空気枕ぶく先生の驚天動地の私生活を大暴露。印税のからくり、締切りの虚実、果ては愛人、趣味のSMのことまで……いやはや、いったいどこまでが真実!? どこからが虚構!? 各方面に累が及ぶこと必至の爆笑小説。
  • 慶応四年のハラキリ
    4.0
    慶応四年。堺。日の本の地を土足で汚した夷人にますらおの武士が発砲した。代償は籤引きで選ばれた4人の切腹だった。しかし、あの籤は怪しい。そもそも、命令された通りに発砲しただけではないか。釈然としない4人に、切腹の朝が迫る。日本一のみっともない死にざまの表題作など、ギャグとパロディとスラップスティックが冴える異色作品集。
  • 心

    3.6
    「人はなぜ生まれ、死んでいくのでしょうか」青年は深い悩みを抱えてわたしの前に現れた。一瞬、わたしは息をのみ、思わずあの子の名前を口走りそうになった――。親友の死に直面することで生きる意味を見失った学生と、ある哀しみを胸に秘めた先生。ふたりの濃やかな交流を通して描く、喪失と再生の物語。夏目漱石永遠の名作をモチーフに、自らを重ねて書き上げたベストセラー。
  • 小説家の休日
    3.0
    楽しくなければ読書じゃない! ミステリーの名手にして、恐るべき博覧強記。世の本好き&活字好きの大本尊(?!)ともいうべき著者が、軽妙な語り口で、日々の想いや創作の秘密、読書の魅力・文学の魔力を語り尽くす。鋭い文明批評や深い洞察とともに、ユーモアもたっぷり配合。“目からウロコ”の発見に満ち、著者とともに古今東西の文学の世界に遊べる、魅力尽きないエッセイ集。
  • いびつな贈り物
    4.0
    幼なじみの敏子と偶然再会した大学講師の堀田は、彼女の不遇に同情するうちに、いつしか情事にのめり込んでいった。彼のイギリス留学でふたりの仲は終りを告げるが、その機会に堀田はある決意を固めた…。表題作「いびつな贈り物」など切れ味するどい男と女のミステリー6篇。
  • 奇兵隊の叛乱
    -
    吉田松陰門下の逸材として高く評価された高杉晋作。身分の上下を問わない人員構成で近代軍隊組織の原形となった“奇兵隊”を誕生させ初代総督となった。そこに入隊した赤根武人、世良修蔵、山縣狂介ら若き志士たちの、明日の日本に賭ける夢と理想――。急転する時流のなかで悲惨な末路を迎える奇兵隊の転変を描いて、幕末の動乱を浮き彫りにする。明治政府によって捏造された維新史を糾す歴史小説。
  • ラ・ロシュフーコー公爵傳説
    -
    「太陽も死もじっと見詰めることは出来ない」(『マキシム』)17世紀のモラリスト、ラ・ロシュフーコー。深く鋭いシニカルな人間洞察から生まれたその著書、『マキシム(箴言集)』は、今日まで広く読み継がれている。争乱の世紀に名門貴族として生まれ、戦闘と陰謀と恋愛に明け暮れた彼が、なぜ厭世的な思想を持つにいたったか? 波乱の生涯を、文明と歴史を軸に描く評伝小説。

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