タイムスリップ物。もう、タイムパラドックスしまくり。けど、細かなことはどうでもいいです。とても劇的に、情緒たっぷりに、ロマンチックに物語は展開します。
この小説のメインは昭和7年の、戦前の平和な風景です。とても詳細にリアルに描かれており、まさにタイムスリップした気分で没入するように読みました。当時の
...続きを読む状況を知る貴重な史料とも言えるのではと考えます。
マイナスゼロ地点である昭和37年の状況ですら読み手の現代から見たら過去になるわけで、色々な年代の錯覚にめまいを起こしそうです。
未来から来たタイムマシンの設定が10進数ではない故、それを使う登場人物達を誤った年代に飛ばすアイディアも秀逸。意外だったのは伝蔵さんが徴兵に取られてそのまま終戦まで生きるところです。先が見通せなくなり不安になります。ひねりがきいています。
しかし、啓子さんが実は美子さんで自分が自分を産んでその子供にとってはお母さんとおばあちゃんが同一人物なんてなんてやり過ぎですね。タイムマシンの存在が否定される最たる例えの1つになりそうです。それにしても俊夫さん、手が早すぎ。
更にこの先戻ってくるタイムマシンでその娘が考える過去と未来がパラドックスを深めそうです。
昭和7年から37年に来た警官はどうなるのでしょうね。
未来から来た伊沢先生は?ヨーヨーの特許ネタはほったらかしですね。結局ほぼ働かずに浪費するだけの俊夫さん。
音響機器の事情にやたら詳しいところは作者の造詣の深さではなくお話の都合ですね。
いつかまた読み返したい傑作です。