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神保町の古書店「泪亭」二階に住む謎の美女・白井沙漠。学生時代に同じ部屋に下宿していたことから彼女と知り合った翻訳家の解(さとる)は、訝しく思いながらも何度も身体を重ねる。二人が共通して抱える「借金」という恐怖。破滅へのカウントダウンの中、彼らが辿り着いた場所とは――。「消費者金融」全盛の時代を生きる登場人物四人の視点から、お金に翻弄される人々の姿を緻密に描いたサスペンス。
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Posted by ブクログ
久しぶりの桜庭一樹さん。 全体に薄暗くて圧迫感のある中で明るい振り?をして頑張って生きてるけど…どうにもならない深みにはまっていく。みたいな絶望感が独特で…いつも引きこまれて読んでしまう。 時にお金は人生の破滅の入口といっても過言ではないと思う。「紙の月」「火車」この手のテーマの本は読見終わって...続きを読むから大丈夫かな?私?と不安しか残らない。
○ばらばら死体ができ上がるまでどのような心境の変化があるのか。内面に迫るルポのような細やかさを備える一冊 大学講師の吉野は、昔世話になっていた「泪亭」という神保町の古書店で沙漠と出会う。自分の境遇と重ね合わせた吉野は、昔から持っていたカギを使い部屋に侵入し、沙漠を襲う。金がもらえるのでは、と思った沙...続きを読む漠も吉野に迎合し、受け入れる。ある日吉野は沙漠を連れ出し、実家のある下北半島に車で向かうが・・・ 貧困が人間の何を変えるのか、裕福な人との違いは何なのか。 何が違うというのだろう。だって、同じ人間ではないか。 でも何かのはずみで、何かのきっかけで転落するし、人を殺してしまう。 淡々と、吉野、沙漠、沙漠の友人・里子、泪亭の主人・佐藤、吉野の娘・夕のそれぞれの口から、吉野や沙漠の生活や生き様が語られる中で、人生のどこにいったい転落してしまう危険性を孕んでいるかなんてわからなかった。吉野は大学講師という職をしながらも借金の返済生活を続けていたし、佐藤も昔の自動車事故をずっと引きずったまま生活している。 淡々と、吉野は沙漠を殺す。 昔母親を殺したときのように、淡々と鉞を振り下ろし、淡々と道すがら破片を捨てていく。 淡々と語られる口調はなぜか逆に人間それぞれの人間味を表しているようで、ルポを読んでいるかのような、殺人者と周辺の人間の内面を細やかにとらえた作品。しかし淡々と色がなく描かれているが、そこに殺され方のグロさが赤くアクセントとしてずっと残り続ける。
暗かった。でも話に引き込まれて一気に読んでしまった。 ノスタルジアに苦しいって意味が含まれてるのは何か分かるな。 お金は計画的に!と肝に命じたのであった。
お金の怖さを描いた作品だと思っていたら後半で印象ががらりと変わりました。過去に犯した罪の載った新聞を手元において消費しながら、善人であろうとする古書店店主と、自分が犯した罪の証をゴミ箱に捨てて忘れようとする人物。二人の「贖罪」の物語でもあります。たとえ法的な罪からは逃れられても、その罪と向き合わない...続きを読む限り、殺人者は永遠に孤独の中にあるのだと思います。
物語自体は面白かったけど、長い題名だけで引きつけようとするサスペンス番組見たあとみたいな何も心に残らない感じのストーリーだった
2009年、消費者金融全盛のとき。 ひとりの女とひとりの男が出会ってしまう。ノスタルジアを抱えたソロ同士、似て非なる二人の騙し合い。 ばらばらになるか、秘密を貫くか。 仕込まれた伏線が回収されていく後半につれ、物語が加速します。
終始乾いた印象。登場人物みんな幸せじゃなさそう。主要人物四人も、その周辺の人も。解の妻も幸せじゃなさそう、というか、描写するのが解と里子の視点だからなのか、幸薄い感じ。
吉野がずっと隠し続けてきた心の中にある深淵。 誰にも理解されず、誰にも知られないように、ひっそりと闇と向き合ってきた吉野だったが、同じような境遇の砂漠と知り合ったことから何かが動き出す。 自分自身の境遇を憎みながら、必死に這い出そうとする人間がいる。 流されるままに金を使い、なくなれば安易に消費者金...続きを読む融で借金をし、ついには多重債務者となった人間もいる。 似て非なる者たち・・・。 吉野の闇は死ぬまで誰にも理解されないだろうし、吉野もまた理解されたいとは思っていないだろう。 誰かが何とかしてくれる・・・そんな考え方しか出来ない人間には、結局生き残ることなんて無理だったのかも?という気もする。 でも、責任の大半は本人にあるとはいっても、砂漠の人生は哀しすぎだと思う。 読んでいてずっと感じていた違和感。 とても好きな作家だったのに、いつの間にか作り上げる世界に馴染めなくなっている。 妙にひややかに物語を眺めている自分がいた。 しばらくこの作家からは離れたほうがいいのかもしれない。 いつかまた、きっと物語の世界を堪能できるときが来るかもしれないかもしれないから・・・。
主人公の名前に「海野藻屑」「腐野花」などと平気で付けるような御仁である、桜庭一樹の作品にいわゆるリアリティを求めるのは間違っている。 ・・・のだけれど、この作品に関してはミステリとしての整合というか様式を意識したようで、物語の辻褄が合う、具体的には登場人物それぞれの行動に対する背景が想像できて、分...続きを読むかりやすいといえば分かりやすかった。一方で、いつもの桜庭作品のもつある種ファンタジックな世界観がやや失われたような感もした。赤い風景が見えるとか、ヒッチコックをモチーフにするとかはあるのだけど。 あと、「お金」という身近にあるものをテーマに選んだことで、背徳的な関係を描いた『私の男』、母娘という逃れられない関係をテーマにした『ファミリーポートレイト』に比べると、グリップがちょっと弱いと思った。
沙漠のしぐさや怠惰な性格、よくわからない解との関係、古書店の二階のぼろぼろの部屋など好きな個所はたくさんあるんだけど、ちょっと文体というかギミックがうまくいっているとは思えない。たぶんプロローグのあの感じをミスリードさせたくて全編あのような一人称視点なのにもかかわらず自分の動作を「けだるく」と言って...続きを読むしまうような書き方を貫いているんだろうけど、違和感が強い。そして沙漠の素性や大家との関係だけで十分驚けるので冒頭のしかけのためにここまで「無理」に感じるような文章にしなくてもよかったのではないかと思う。
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