ビジネス・実用 - 講談社学術文庫の検索結果
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中国の歴史
講談社創業100周年企画として2004年~05年に出版された全集「中国の歴史・全12巻」の学術文庫版が、いよいよ刊行開始。本全集は、2014年には中国で、2016年からは台湾で翻訳出版され、そのレベルの高さと視点の新しさから累計で150万部を超えるベストセラーになっている。 待望の文庫化、第1回配本は、第1巻と第2巻の同時配本。第1巻では、長年、中国での遺跡発掘を手掛けてきた著者が、「三皇五帝」や「盤古伝説」などで知られる中国の神話の表す史実を探り、「夏王朝」「殷王朝」の謎に迫る。 中国の古代文明といえば、かつては「黄河文明」を指したが、現在では、長江流域をはじめ、各地の多様な自然環境から展開した多元的な古代文明と理解されている。現在の中国のさまざまな地域社会や風土を考える際にも、こうした先史時代から続く地域文化の脈絡を無視できないのである。約1万年前の新石器時代、南北の文化地帯の周縁でアワ・キビ農耕や稲作農耕が生まれ、そこから牧畜型農耕社会と遊牧社会が分離し、さらにその周辺には狩猟採集民が存在した。こうした基本的生活様式が誕生した中から、いかにして初期国家が生まれたのか。最古の王朝とされる夏王朝と二里頭文化の関係とは――。 文庫化にあたり、原本刊行後の重要な遺跡と発掘成果を大幅に加筆。〔原本:2005年、講談社刊〕 -
日本の俗信
「靴の紐が切れるとよくないことが起こる」本当の理由、ご存知ですか? 予兆、卜占、禁忌、呪術、妖怪、憑物……全国各地で採集された俗信、すなわち「超人間的な力の存在を信じ、それに対処する知識や技術」を体系的に整理。”非科学的で取るに足らぬもの”から日本文化の基層を明らかにする、民俗学の精華! (解説:廣田龍平) [本書で扱う主な俗信ーーその由来とは?] ○烏が屋根で啼くと死人が出る ○膝を絶えず小刻みに動かすと貧乏になる ○婚礼に雨が降ると縁起がよい ○一富士、二鷹、三茄子、四葬式、五火事 ○厄年に生まれた子は捨子にする ○ものもらいは七軒の家から米をもらって食べるとよい ○手振水をかけられた人は死ぬ ○丙午(ひのえうま)の年は出生数激減(次回は2026年!) …… [目次] はしがき 第一章 俗信概論 一 俗信の概念 二 予兆 三 卜占 四 禁忌 五 呪術 第二章 信仰と俗信 第三章 厄年および年祝い 一 はじめに 二 従来の諸説 三 厄年行事の要素 四 贈答の意義 五 厄年行事の意味 六 信仰と俗信 七 厄年受容の基盤 八 結び 第四章 呪的な食べ物ーー味噌の魅力 一 食習研究と味噌 二 葬式と味噌 三 家移りと味噌 四 味噌つき日の吉凶 五 味噌煮の日 六 持ち寄るもの 七 せち味噌 八 山の神と味噌 九 味噌長者 十 呪的な食べ物 第五章 妖怪の地域性 第六章 妖怪と信仰 第七章 死と俗信 一 生と死との境 二 忌の飯 三 死の忌 四 種々のまじない 参考文献 解説 俗信の概念と発生について 廣田龍平 索引 (*本書の原本は、1975年に弘文堂から刊行されました。) -
ギリシャ神話集
紀元後2世紀頃、ローマの一般大衆へギリシャの神話世界を伝えるために編まれた、277話からなる神話集。壮大なギリシャ神話の全容を網羅的に扱うためか、神話の骨子や人物の事績等がきわめて簡潔に綴られていて、作者は事典的性格を意図したものと推測される。作者のみが伝える神話要素も含み、ギリシャ神話の研究者・愛好家必読の書。本邦初訳。 -
日本動物民俗誌
山海の神か、田の神か。贄か、神使か、妖怪か――。 サル・キツネ・オオカミ・クマからネコ・トリ・ムシ・サカナまで、日本人は動物たちをいかに認識し、どのような関係を取り結んできたのか。膨大な民俗資料を渉猟し、山/海、家畜/野生、大きさ、人との類似などの基準によってその歴史と構造を明らかに! 25種の動物ごとの章立てで、「事典」的なニーズにも対応。 (解説:小松和彦) 【本書に登場する主な動物たち】 [キツネ]気高き神の使者は、やがて商業神、憑きものへ [イヌ]化け物の正体を見破る特異な辟邪力 [ネズミ]経典荒らしが転じ、仏法の守護者に? [オオカミ]なぜオオカミだけ? 「産見舞い」に赤飯を [ネコ]擬人化の果てに、愛する人の形代に [サカナ]山神はなぜ毒棘持ちのオコゼを愛したのか [ウサギ]ウサギvs.サルvs.カエル「動物餅争い」の結末は? [カニ]甲に浮かぶ悲運の英雄たちの無念 …… -
インド思想史
インド最古の聖典『リグ・ヴェーダ』にはじまり、世界的にも類がないほど深遠な思想を生みだしてきたインド。ウパニシャッド、ジャイナ教、仏教、マハーバーラタ、正統バラモンの六派哲学、ヒンドゥー教から、近代のガンジーやタゴールに至るまで、3000年以上にわたる複雑で多様な思想の全領域をコンパクトに大観する。 アーリヤ人の侵入や農村社会の成立、王朝の興亡など、それぞれの時代の社会変動の影響も踏まえつつ、各思想大系の特質を明らかにすることで、〈解脱〉をもとめてやまない人類の思索の歴史が描き出される。 世界的なインド哲学、仏教学者であり、比較思想の開拓者でもあった著者による、半世紀以上にわたって読み継がれてきた不朽の概説書。原本:『インド思想史 第2版』岩波書店、1968年) 第一章 アーリヤ人の侵入とリグ・ヴェーダの宗教 第二章 農村社会の確立とバラモン教 第三章 都市の興隆と自由な思索の出現 第四章 国家統一と諸宗教の変動 第五章 統一国家崩壊後における諸宗教の変遷 第六章 クシャーナ帝国時代における新思想 第一節 時代の趨勢 第二節 仏 教 第三節 ジャイナ教 第四節 南インド文化の開花 第七章 集権的国家における諸哲学学派の確立 第一節 正統バラモン系統 第二節 仏 教 第三節 ジャイナ教 第八章 諸王朝分立時代における諸学派の継続的発展 第一節 バラモン教およびヒンドゥー教 第二節 仏 教 第九章 回教徒の侵入と思想の変化 第一節 中世的宗教の発展 第二節 近代的思惟の発展 第十章 外国資本主義制圧下における思想運動 第十一章 〔附論〕科学思想 -
キリスト教綱要 初版
本書は、フランス東北部ピカルディーに生まれ、スイスで宗教改革を実践して改革派を指導したジャン・カルヴァン(1509-64年)の名を知らしめた主著の初版です。 パリに出たカルヴァンは、マルティン・ルター(1483-1546年)によって推進されていたドイツの教会改革の影響を受けながら人文主義を身につけたあと、オルレアン、次いでブルージュで法学を修め、パリに戻って聖書の言語の研鑽を積みました。転機が訪れたのは1534年。この年の10月にフランスで「檄文事件」が起き、パリの町中にミサに対する攻撃的な文書「教皇のミサの恐るべき、重大な、耐えがたい弊害について真正な諸箇条」が貼り出されました。これに激怒したフランソワ1世は宗教改革者8名を焚刑にし、カルヴァンはスイスのバーゼルへの亡命を決意するに至ります。この地でキリスト教信仰の内容を概説するためにカルヴァンがラテン語で書き上げ、1536年に初版が公刊されたのが、本書にほかなりません。 本書は、ルターの宗教改革が第一段階である「破壊」だったとすれば、第二段階にあたる「形成」の基礎となりました。その根底にあったのは若き日のカルヴァンが身につけた人文主義的な知識とセンスであり、それが本書を唯一無二のものにしています。そうして改革派の基盤をなすことになった本書は、「福音主義」や「予定説」の名とともに広く知られるようになりました。その代表が『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』(1904-05年)でカルヴァンとカルヴィニズムを「禁欲的プロテスタンティズム」の諸類型の一つとして取り上げたマックス・ヴェーバー(1864-1920年)でしょう。 本書は出版されると増刷を繰り返し、カルヴァン自身はフランス語版を出版した上、改訂の作業に取りかかります。改訂は5回にわたり、初版では全6章だったものが、最終版(1559年)では全80章に及ぶ巨大な書と化しました。日本語訳で1600頁に及ぶ最終版は簡単に手を出せるものではありませんが、初版は分量の点のみならず、のちにさまざまな展開を見る思想の原型を見出せる点、そしてカルヴァンの聖書解釈の技巧を知ることができる点で、最良の入門となることでしょう。初の文庫版となる新訳を、ここにお届けいたします。 [本書の内容] 〔献 辞〕 第一章 律法について、十戒の説明を含む。 第二章 信仰について、使徒信条の解説を含む。 第三章 祈りについて、主の祈りの講解を含む。 第四章 サクラメントについて。 第五章 これまで世の人々によってサクラメントと考えられてきた残りの五つのサクラメントはサクラメントではないことを証明し、ならば何であるかを明らかにする。 第六章 キリスト者の自由、教会の権能、国政について。 -
デパートの誕生
劇場のように華やかな装飾。高い天窓からふり注ぐ陽光。シルクハットで通勤するしゃれた従業員。乗合馬車で訪れる客を待つのは、欲望に火を付ける巨大スペクタクル空間! 帽子職人の息子アリステッド・ブシコー(1810-1877)と妻マルグリットが、様々な施アイデアで世界一のデパート「ボン・マルシェ」を育て上げた詳細な歴史を、当時を描く仏文学作品や、19世紀初頭のデパート商品目録など稀少な古書から丹念に採取。 パリの世相や文化が、いかに資本主義と結びつき、人々の消費行動を変えていったのか、 仏文学者にして古書マニア、デーパート愛好家の著者だから描けた、痛快・ユニークなパリ社会史! 内容紹介) 客の目をくらませてしまえ!世界だって売りつけることができるだろう! 「白物セール」のときには、それぞれの売り場が白い生地や商品だけを優先的に並べたばかりか、上の階の回廊や階段の手擦りを白い生地で覆いつくし、造花も白、靴も白、さらに家具にも白のレースをかぶせるなど、全館をすべて白で統一し、 1923年の「白物セール」では、「北極」というテーマに従って、アール・デコ調にセットされたシロクマやペンギンが、ホールに入った客を出迎えるようになっていた。 ようするに、ブシコーにとって、店内の商品ディスプレイは、〈ボン・マルシェ〉という劇場を舞台にして展開する大スペクタクル・ショーにほかならなかったのである。 ――第二章「欲望装置としてのデパート」より *本書は『デパートを発明した夫婦』(講談社現代新書 1991年11月刊)に「パリのデパート小事典」を加筆し、改題したものです。 -
シュメル人
紀元前3500年、まだ日本が縄文時代だった頃に巨大神殿を建て、古拙文字を発明。ビールを飲み、都市文明を謳歌し、華やかな宴会を繰り広げたシュメル人たち。紀元前2004年のエラム侵入により忽然と消えてしまった彼らの日常には、現代の日本や西欧社会に通じる様々なしきたりと人間模様が隠されていた! 古典の名著『ギルガメシュ叙事詩』や発掘された奉納額、図像などの一等史料を丹念に解読。王の父子相伝や戦記、后妃の葬儀、交易記録などから最古の文明人の驚くべき栄華と崩壊を識る! 内容紹介 第1章 シュメルの父と息子――現代人にも共感できる、王と息子の話 第2章 ラガシュ王奮戦記――自国を守るため戦う王の弱気な横顔・・・ 第3章 后妃のお葬式――シュメル女性の結婚、育児事情 第4章 商人が往来する世界――シュメル人がほしかった銅、レバノン杉、瀝青と、貿易活動 第5章 星になったシュルギ王――決して楽ではなかった王の一代記 <目次> はじめに 1 シュメルの父と息子――ウルナンシェ王の「奉納額」 ウルナンシェ王の「奉納額」/都市国家ラガシュ市/ウルナンシェ王の王碑文/奉納額の絵解き/家族の肖像/教育は人類不変の悩み 2 ラガシュ王奮戦記 二方面の宿敵/「正史」の始まり/初代王、第三代王の戦い/「エアンナトゥム王の戦勝碑」/ラガシュ最後の輝き 3 后妃のお葬式――シュメルの女性たち 葬儀は語る/シュメルの女性群像/后妃の結婚生活/后妃として母として/仇(かたき)の妻に弔われた前后妃 4 商人が往来する世界――シュメル人の交易活動 古代人の商売繁盛/ 瑠璃(るり)に魅せられて/銅は海からやってくる/ギルガメシュと「杉の森」/石油より大事なもの 5 星になったシュルギ王 帝王の佇まい/ウル第三王朝の最盛期/王の公務/神になったシュルギ王/戦いに明け暮れた後半生 あとがき 主要参考文献 主要図版引用文献 コラム 「正統な後継者」/「油あふれる」ディルムン/シュメルのモナ・リザ/生きているシュメル語/文字と争いの起源/メルッハからの「砂金」/エブラ市の発見/中島敦と古代オリエント史/王の称号 学術文庫版あとがき 索引 本書は『五〇〇〇年前の日常 シュメル人たちの物語』(新潮選書 2007年刊)を改題したものです。 -
砂時計の科学
世界は「粒」でできている! 砂時計の不思議をめぐる探究は、やがて雪崩や縞模様、果ては満員電車や交通渋滞のメカニズムの解明へと至り着く。異なるものたちのあいだに共通の法則を見出し、研究の最前線と日常生活を往還する物理学の「本当の面白さ」を伝える、自身第一線で活躍する著者による、絶好の入門書。 【本書の主な内容】 [満員電車]乗り降りをスムースにするには、ドアを大きくする? 数を増やす? [渋滞]発生の秘密は「1/fノイズ」にあった? [縞模様]砂漠の風紋はシマウマの縞に通ず? [山]麓より頂に重い砂粒が集まるのはなぜ? [砂丘]「三日月」に「星」……砂が風に飛ばされただけでなぜこんな地形が? [ピラミッド]その威容は、砂にはない「不自然」な角度のおかげ? [生命]粉粒体の縞々と生命の誕生は同じ原因? 【目次】 はじめに 第一章 流れ落ちる 第二章 吹き飛ばされる 第三章 かき混ぜられる 第四章 吹き上げられる 第五章 ゆすられる 第六章 粉粒体とは何か おわりに 参考文献ガイド 学術文庫版へのあとがき (*本書の原本『砂時計の七不思議』は第12回講談社科学出版賞受賞) -
風と雲のことば辞典
日本の空には、こんなにも多彩な表情がある――。気象現象のみならず、比喩表現、ことわざから、季語、漢詩、詩歌、さらに方言や歌謡曲に至るまで、尽きるところのない「風」と「雲」にまつわる語彙を、豊富な引用でお届けする。最先端の気象用語解説、災害への備えにも言及した、充実の「読んで面白い辞書」。ロングセラー『雨のことば辞典』の姉妹編。文庫書き下ろし。※この商品は紙の書籍のページを画像にした電子書籍です。文字だけを拡大することはできませんので、タブレットサイズの端末での閲読を推奨します。また、文字列のハイライトや検索、辞書の参照、引用などの機能も使用できません。 -
日本精神史
長くヨーロッパの文化と思想を研究対象としてきた著者は、ここ20年ほど、日本の文化と思想の研究にとりくみ、その流れを歴史的に追跡してきました。その成果がついに一書にまとまったのが、本書です。題して、『日本精神史』。 「精神」とはなにか。 ヘーゲル研究者としてスタートした著者は言う。「あえて定義づければ、人間が自然とともに生き、社会のなかに生きていく、その生きる力と生きるすがたが精神だ」。 テキストとして残された思想はもとより、土器や銅鐸、仏像、建築、絵巻、庭園など、あらゆる文化を渉猟し、縄文時代から江戸時代の終わりまでを、一望のもとに描く、まさに畢生の大作です。 ただし、著者は、難解であることを潔しとしません。ヘーゲルのわかりやすい翻訳で脚光をあびたように、あくまでも流麗な文体で、明解に描いていきます。 思想も絵画も仏像も、ひとしく日本の精神の歴史としてとらえ、あらためて、日本とはなにかを問いかける清新な傑作と言えます。 待望の文庫化! 【目次より】 第一章 三内丸山の巨大建造物 第二章 火炎土器と土偶 第三章 銅鐸 第四章 古墳 第五章 仏教の受容 第六章 『古事記』 第七章 写経 第八章 『万葉集』 第九章 阿修羅像と鑑真和上像 第十章 最澄と空海と『日本霊異記』 第十一章 『古今和歌集』と『伊勢物語』 第十二章 浄土思想の形成 第十三章 『枕草子』と『源氏物語』 第十四章 『今昔物語』と絵巻物 第十五章 東大寺の焼失と再建 第十六章 運慶の新しい造形意識 第十七章 法然と親鸞 第十八章 『正法眼蔵』 -
旧約聖書を読み解く
「旧約聖書」とはどんな書物なのか? 「旧約聖書」は、古代イスラエル(ユダヤ)の民の千年以上にわたる歴史を背景として成立した、さまざまな文書を39巻にまとめたものです。その編纂は長期に及び、増補・改訂を含む複雑な過程を経てできあがったと言われています。 ユダヤ教ではイエスをキリスト(メシア)と認めないため、「新約聖書」は存在しません。「旧約聖書」のみが聖典とされ、「タナハ(TaNaKh)」と呼ばれます。一方キリスト教では、イエスによる「新しい契約」を記した「新約聖書」に対し、それ以前の書を「旧約聖書」と位置づけます。本書は、こうした「新約」との関係を視野に入れながら、「旧約聖書」を読み解いていく本です。 古代イスラエルの民たちは、エジプトを脱出後、遊牧的生活から定住へと移行し、やがて王国を築きます。しかし、その後も南北分裂など不安定な時代が続き、王国の崩壊以降はエジプト、ペリシテ、アッシリア、ペルシアといった大国の支配下に置かれました。 このような歴史的状況のもとで成立した「旧約聖書」は、各時代を生きた人々が、伝えられてきた過去の出来事の意味を問い直し、新たな解釈を加えてきた「伝承の歴史」と言えます。そこに収められた物語や掟は、歴史的経験の中に意味を見いだそうとする営みの結晶です。 同様に、「旧約聖書」において、歴史は「神が語りかける場」「神の意志が示される場」として描かれます。創世記の原初の物語に始まり、アブラハムの旅立ち、出エジプト、王制の成立と崩壊、バビロン捕囚、そしてユダヤ教の成立――。こうした流れは、すべての被造物を救おうとする神の救済史として、一貫した意味を帯びています。 神との契約とは? 安息日の規定とは? 「約束の地」とは? 旧い契約から新しい契約への移行とは? 苦難の歴史を生きた民たちが出来事の描写に込めた意味を、原典ヘブライ語の語義や各文書の成立年代、文章構成に目を配りながら丁寧に繙いていきます。 *本書の原本は、2006年に日本放送出版協会から刊行されました。 [本書の内容] はじめに 第一章 旅立つアブラム 第二章 アブラハムと契約を結ぶ神 第三章 七日目には仕事をやめねばならない 第四章 飲み水がないと不平を言う民 第五章 ヨルダン河の東岸で――申命記という本 第六章 約束の地へと入る民 第七章 「我々にはどうしても王が必要なのです」 第八章 「お前か、イスラエルを煩わす者よ」 第九章 動乱の時代に静けさを説いた預言者イザヤ 第十章 捕囚という現実に預言者が見たもの 第十一章 平和といやしを与えるための苦しみ 第十二章 ユダヤ教の成立 関連年表 あとがき 解 説(田島 卓) -
イギリス東インド会社 軍隊・官僚・総督
21世紀の経済大国・IT大国として存在感が高まっているインドは、18世紀半ばから20世紀半ばまでの200年間、植民地としてイギリスに支配されてきた。 このイギリス支配の基礎を築いたのが、イギリス東インド会社である。しかし、その存在があまりに大きいために全体像はつかみにくく、特に日本では、その規模と活動範囲がずっと小さいオランダ東インド会社に比べても、イギリス東インド会社についての研究や著作は非常に少ない。しかし著者は、現在のインドの経済成長と今後の可能性を見るとき、東インド会社にさかのぼるイギリスのインド支配の歴史と遺産を見直すことが必要だという。 1600年にエリザベス1世がロンドンの商人に特許を与えたことに始まるイギリス東インド会社は、商社として発足しながら独自の軍隊を持ち、領土の支配者に変身していった。1858年に実質上消滅したときには、すでに商業的な機能さえもたない完全な植民地統治機関になっていたのである。 オランダやフランスとの貿易競争、会社経営と企業統治の実態、会社の軍隊と国王軍・インド政府軍の関係、さらに巨大な官僚制を支えた社員採用と社員教育や、歴代総督のプロフィールまでを通観する。 巻末に東京大学名誉教授で『東インド会社とアジアの海』の著者、羽田正氏が解説を執筆。〔原本:2009年 中央公論新社刊〕 目次 はじめに 第一章 商社の時代 一 イギリス軍インド会社とは何者か 二 オランダ、ポルトガルとの競争 三 アウトサイダーの挑戦 四 統一東インド会社の誕生 第二章 商社から領土の支配者へ 一 フランスの挑戦 二 ベンガルでの領土獲得 三 社員の不正蓄財 第三章 ベンガルの支配者から全インドの支配者 一 会社経営における商業原則の後退 二 会社と政府によるインドの共同統治 三 企業統治の変遷 第四章 インド貿易の自由化 一 会社を牛耳った「海運族」 二 私貿易人 第五章 会社の軍隊 一 会社軍と国王軍 二 会社軍 三 会社軍の部隊編制 四 二つの英軍の統合の試み 五 会社軍将校の勝利 六 インドの大反乱後も傭兵頼みのインド政府軍 第六章 インドの高級官僚―ジェントルマンリー・ルーラー 一 社員の採用と行政官教育 二 東インド会社一家 三 公開試験の時代へ 四 ICSはインドにおける超エリート 第七章 三億人の支配者インド総督 一 その起源 二 ベンガル総督 三 会社の時代の総督│クライヴからカニングまで 結びにかえて あとがき イギリス東インド会社関連年表 解説(羽田正) -
ティマイオス
プラトンの主著は何か、と言われれば、たいていは『国家』という答えになるでしょう。確かに『国家』にはプラトン哲学のエッセンスが詰め込まれ、質量ともに主著の名にふさわしいことは間違いありません。しかし、長い歴史の中で最も大きな影響力をもったプラトンの対話篇はといえば、本書『ティマイオス』なのです。 神による宇宙の製作とさまざまな自然学的理論が論じられる後期対話篇である本書は、古来プラトン信奉者たちに重視され、前1世紀から後3世紀にかけての中期プラトン主義とそれに続く新プラトン主義の時代に特権的な地位を占めるに至りました。その伝統が近代にも及んでいることは、ラファエロの有名な壁画《アテネの学堂》でプラトンが手にしている書物が『ティマイオス』であることに、はっきり示されています。 ソクラテス、ティマイオス、ヘルモクラテス、クリティアスの四人を登場人物とする本書は、導入部以外はすべてティマイオスのモノローグで構成されています。おそらくプラトンが創作した架空の人物であるティマイオスが語る宇宙論は、国家においても個人においても理性こそが主導権を握るべきだ、というプラトンの主張を正当化するものとして提示されます。この宇宙は必然や偶然の産物ではなく、理性的な製作者(デーミウールゴス)によって、理性の対象(イデア)を手本として、理性的な魂をもつ生き物として構成された、というのがその骨子です。こうして宇宙が理性によって導かれているのなら、それと類比関係にある国家においても個人においても、気概や欲望ではなく理性が支配することこそが自然にかなった正しいあり方だということになります。本書においてプラトンは、国家と人間のあるべき姿を宇宙全体の構造の中に根拠づけることを企てたのでした。 本書は、それぞれの時代、それぞれの思想家において、さまざまに異なる観点から関心の対象とされてきました。ユダヤ教徒やキリスト教徒は『創世記』の神の世界創造を理解するヒントを本書に求めたでしょう。新プラトン主義者は形而上学的真理のアレゴリーとして本書を読んだでしょうし、錬金術師は神の創造を自らの手で再現するための秘密を本書に読み取ろうとしたかもしれません。そして、自然学者や科学者にとって、宇宙の始まりと物質の究極という科学にとっての永遠のテーマを追究する本書が関心の対象となったことは言うまでもありません。 そうして「プラトニストのバイブル」とまで呼ばれた本書『ティマイオス』は、しかし日本では、なぜかこれまで文庫版が存在しませんでした。この状況を打破するべく、最良の訳者を得て、満を持しての新訳を皆さまにお届けいたします。 [本書の内容] ティマイオス 訳 註 訳者解説 -
ドラキュラ・シンドローム 外国を恐怖する英国ヴィクトリア朝
急成長を遂げた周辺国からの侵略恐怖、増加する貧窮移民の不安、友好国へのぬぐいがたい不信、新たな感染症の脅威……「ドラキュラ」の恐怖と魅力の源泉には、黄昏を迎えた大英帝国の外国恐怖症があった。ゴシック・ホラーの金字塔に織り込まれた、ヴィクトリア朝イギリス社会の闇を描き出す! 世界でもっとも有名な吸血鬼「ドラキュラ」。 数ある吸血鬼作品のなかでも特権的な地位を得て、現代に至るまで映像化が繰り返され、日本では吸血鬼の代名詞にもなっています。 そのドラキュラの恐怖と魅力の源泉には、19世紀末イギリス社会に蔓延する深刻な外国恐怖症がありました。 「太陽の沈まぬ帝国」、「世界の工場」と謳われた栄光は過ぎ去り、軍事・経済ともに急成長を遂げつつある周辺国からの侵略恐怖、増え続けるユダヤ人など貧窮移民への不安、搾取してきたアジアの植民地から入ってくる新たな感染症の脅威……。 落日の大英帝国に生きる人々は心の奥底で何を恐れ、そしてドラキュラは生みだされたのか。 『パンチ』などに掲載された風刺画をふんだんに使いながら、ゴシック・ホラーの金字塔から読み解く世紀末ヴィクトリア朝の社会! イントロダクション 第1章 ドラキュラの謎 第2章 ドラキュラの年は西暦何年か 帝国主義の世紀末 第3章 侵略恐怖と海峡トンネル計画の挫折 第4章 アメリカ恐怖と「栄光ある孤立」の終焉 反ユダヤ主義の世紀末 第5章 ユダヤ人恐怖と外国人法の成立 第6章 混血恐怖とホロコースト パストゥール革命の世紀末 第7章 コレラ恐怖と衛生改革 第8章 瘴気恐怖と細菌恐怖 おわりに――ヴィクトリア朝外国恐怖症の文化研究 増補 もうひとつの外国恐怖症――エミール・ゾラの〈猥褻〉小説と検閲 学術文庫版あとがき 引用史料一覧 コラム 吸血鬼の系譜/シャルコーの催眠術/一八九三年一〇月二日のピカディリ・サーカス/ダイヤモンド・ジュビリー/火星人/海峡トンネル・パニック/ベアリング銀行の投機失敗/ロスチャイルド一族の結婚/ロンドンとテムズ川の汚染……ほか -
播磨国風土記 全訳注
◇土地の名前、不思議な説話。そのすべては、古代びとの生きた確かな証◇ 奈良時代の初期、『古事記』や『日本書紀』とほぼ同時期に編述された、官撰の地誌『風土記』。 地方に律令政治による統治を行きわたらせようとした朝廷が、令制国の国庁にそれぞれの地理、産物、文化、歴史についての調査を命じ、その記録を献上させたものである。 各国ごとに編纂された『風土記』だが、その多くは散逸してしまい、現在まで遺されているのは、ごく数ヵ国のものに限られる。 『播磨国風土記』はその一つであり、本書は兵庫県南西部の地名の由来、大国主の伝説や景行天皇求婚譚などの説話、古代人の生活・習俗などを生き生きと伝える最重要史料である。 本書は漢文で書かれた原文からの訓下し文に、詳細な訳註つき。 さらに懇切な解説も加えた、「風土記」の世界を味わいつくす全訳注! 【本書「まえがき」より】 〈国家神話〉として再構成されたものではなく、在地に生きる古代の人々の、生きた神話や伝説、また習俗・社会などのありさまが、断片的ながらも窺える……本書は日本古代の人々の、生きた姿を、少しでも明らかにしようと努めたものである。 【本書の内容】 まえがき 凡例 一 賀古郡(一) 二 賀古郡(二) 三 印南郡 補説「印南郡」の存否 四 餝磨郡(一) 五 餝磨郡(二) 六 餝磨郡(三) 七 餝磨郡(四) 八 揖保郡(一) 九 揖保郡(二) 十 揖保郡(三) 十一 揖保郡(四) 十二 揖保郡(五) 補説「言挙げ」について 十三 揖保郡(六) 補説『万葉集』と播磨 十四 揖保郡(七) 補説 天日槍 付、粒丘銅牙石 十五 讃容郡(一) 補説 鹿の話 十六 讃容郡(二) 補説「異剣」伝説について 十七 宍禾郡(一) 補説「大神」「伊和大神」について 十八 宍禾郡(二) 補説 葦原志許乎神について 十九 神前郡(一) 補説 大汝神少比古尼神 二十 神前郡(二) 補説 百済人 二十一 託賀郡(一) 補説 盟酒 二十二 託賀郡(二) 補説 女性神 二十三 賀毛郡(一) 補説 地名起源記事の種類と性格 二十四 賀毛郡(二) 補説 根日女の話 二十五 賀毛郡(三) 補説 延喜式と風土記 二十六 美なぎ郡 補説 於奚袁奚天皇と「詠辞」 解説 鉄野昌弘 播磨国風土記地図 *本書は訳し下ろしです。訳者の遺稿に補遺を施しました。 -
クルアーンの世界 語りかけるイスラーム
「読め!」 大天使ジブリールの語りかけから、すべては始まった――。「誦(よ)まれるもの」をその名にもつクルアーン。ムハンマドにもたらされた「神の言葉」は、いかにして書物の形を得たのか。22億人が信仰するイスラーム唯一の聖典誕生の歴史と、1400年にわたって人々を惹きつけてやまない聖典が語る世界を描き出す。知る喜びに満ちたクルアーン入門にしてイスラーム入門。 世界三大宗教のひとつ、イスラーム。その信仰者ムスリムは、世界人口のおよそ四分の一を占め、遠くない未来に三分の一に達し、キリスト教を抜いて世界最大の宗教になるとも言われる。 イスラーム唯一の聖典クルアーンは、ムハンマドに断続的にもたらされた啓示を集めたものであり、内容が完成した段階では書物の形をもっていなかった極めて珍しい書物である。このように誕生したクルアーンが一義的には「朗誦(誦まれるもの)」であり、キリスト教の聖書が本質的に「書物」であることを考えると、両者の違いは明らかである。 神からの語りかけであるクルアーンは、いかにして本の形をとったのか。 今や毎年何千万部も印刷され、日本語をはじめさまざまな言語で読むことができるクルアーンだが、20世紀に入るまで、他言語への翻訳はおろか活版印刷さえ拒んできた。アラビア語で朗誦されてきた聖典の世界、魅力的な独自の人間観や社会観を、日本の読者のために再構成して描き出す。 1400年にわたって世界中の人々の心の拠りどころとなってきた聖典の扉を開く、類稀な一冊。(原本:岩波書店、2009年) 【本書の内容】 プロローグ 第1部 「神の語り」から書物へ――一つの啓典の旅路 第1章 朗誦する啓典の誕生 第2章 正典の結集 第3章 内容と構成 第4章 紙と写本の帝国 第5章 現代に生きる聖典 第2部 章句が織りなす人間世界 第1章 ムハンマドの生きざま 第2章 預言者の町マディーナ 第3章 アブラハム的世界 第4章 唯一神のコスモロジー 第5章 イスラーム法と信仰儀礼 第6章 人生と社会運営のための規定 エピローグ 参考文献 学術文庫版のための参考文献 学術文庫版あとがき 章の一覧表 -
西洋中世の愛と人格 「世間」論序説
ヨーロッパ中世の社会を、伝説、民話、さらには法や経済などさまざまな位相から総合的に再構築し、共同体のあり方を生き生きと描き出した西洋史学の泰斗、阿部謹也(1935-2006年)。晩年は西洋史家ならではの視点から、「世間」を軸にした独創的な日本人論を展開したことでも知られる。 なぜ、日本人は「世間を騒がせて申し訳ありません」と謝罪するのか。無実ならば決して謝罪せず、世の中が納得するまで主張を続ける西洋との違いはどこから生まれるのだろうか。日本古来の「世間」と対比させつつ、西洋の「社会」を構成する「個人」や「愛」がヨーロッパで成立する過程を描き出した本書は、代表作『「世間」とは何か』を著者の本領たる西洋中世史から裏づける作品であり、一連の「世間論」の原点でもある。 著者は本書でこのように述べている。「大切なのは、わが国では、「社会」と「世間」という二つの用語の世界があるということを、まず認識することである」――。日本の共同体があらゆる水準で崩壊しつつある今こそ読みたい、人と人とのつながりの根源を照らし出す一冊。(原本:朝日新聞社、1992年) -
山の神 易・五行と日本の原始蛇信仰
蛇と猪。なぜ山の神はふたつの異なる神格を持つのか? 日本古来の社の祭神の起源は、祖霊としての蛇神であった。6~7世紀、中国から将来された易・五行による新たな神々が、原始蛇信仰の神々と混淆し、山の神は複雑な相貌をもつようになる。神島の「ゲーターサイ」、熊野・八木山の「笑い祭り」、御田神社の「烏喰神事」などの祭りや習俗を渉猟し、山の神にこめられた意味を読み解く。(講談社学術文庫) -
御家騒動
「主従」とは闘争である。 時代小説や歴史ドラマなどでおなじみの、「家中のトラブルが幕府に露見して改易される」といった筋書きだか、実際にはそうした事例はほぼなかった。 有力大名家に勃発した鍋島騒動、黒田騒動、対馬の柳川一件、伊達騒動……いずれも改易とはなっていない。 子細にその経過をみてみると、幕府が騒動に積極的に介入したというよりは、むしろ大名・家中の側から幕府に積極的に訴訟し、自ら幕府の介入を招いているような節がある。 では、大名や家臣たちはどうしてこのような危ない橋を渡ろうとしたのだろうか? 本書は、御家騒動を引き起こす当事者たちの行動の原理がいかなるものであったのかを探り、「忠臣が身命をなげうって悪臣を排除し、騒動の禍根を未然に絶って御家の危機を救う」勧善懲悪ストーリーとは一味違うリアリティを、幕藩制という時代相のなかから具体的に解き明かす試みである。 "大名家のスキャンダル"を歴史学の眼で徹底検証する、スリリングな歴史研究! 【本書より】 元禄以降の十八世紀には、主従不和や家中騒動が「公儀」に対する罪過である、という固定観念ができあがっているが、それ以前に生じた騒動に対してはそうした「色めがね」(固定観念)をはずして見直してみるべきではないか。家中騒動が「公儀」に対する罪過ではなかったからこそ、大名や従臣たちは将軍・幕府に騒動の調停を強く求めることができたのではないか、という逆の視点から騒動をみていくことが必要なのである。 そのためには、当時に作成された一次的な史料に基づいて騒動全体を見直すという作業が必要となるのはいうまでもない。 【本書の内容】 第一章 近世武士の主従観念と「御家」 第二章 主君を廃立する従臣たち 第三章 従臣を排除する主君たち 第四章 主君を選り好みする従臣たち 第五章 御家騒動の伝統化 補章 「御家騒動」のなかの女性たち *本書の原本は、2005年に中公新書より刊行されました。 -
一外交官の見た明治維新
薩英戦争と下関戦争、開港をめぐる激しい外交戦、熱い政治談義、刺激的な国内旅行そして戊辰戦争― 英国青年外交官が「幕末日本」を全身で体感する! 攘夷の嵐が吹き荒れ、政局が緊迫する文久二(一八六二)年、一人のイギリス人通訳官が日本の地を踏んだ。 西郷隆盛ら雄藩・幕府の要人、果ては天皇、あるいは市井の人々との出会いを重ね、日本文化の奥深さに魅了され、そしてときには命の危険を乗り越えながら、彼は日本史上の最大転換点を目撃する。 日本人が長く読み継いできた幕末史の第一級証言を、英国外交史研究を踏まえた新訳で読む。 イギリス外交史、日英関係史を研究する訳者が、これまでの研究蓄積を踏まえ、本書の歴史的意義を問い直す、懇切な解説掲載。 -
貞観政要 全訳注
1300年以上読まれた「統治の教科書」不朽の古典、全文完全新訳。 とても読みやすい平明な訳文と、背景となる歴史がよくわかる解説でおくる、決定版! □よき君主は諫言に傾聴する□ 唐王朝(618-907年)の第二代皇帝にして、王朝の最盛と謳われる七世紀「貞観の治」をなした皇帝・太宗が、広大な版図を治め、王朝を栄えさせるために、臣下と議論を交わし、ときには痛烈な諫言を受け入れた様を描いたのが、この『貞観政要』全十巻四十篇です。 「私の非が明らかにならない理由は、官僚たちが従順で、皇帝の機嫌を損うのを憚かっているためだろうか。そうならないように、私は虚心に外からの忠告を求め、迷いを払いのけて反省しているのである。言われてそれを用いないのであれば、その責任を私は甘んじて受け入れよう。しかし、用いようとしているのにそれを言わないのは、いったい誰の責任であるか。今後は、各自が誠意を尽くせ。もし私に非があれば、直言して決して隠さないように」(本書 巻二「任賢」より) □「人の上に立つ者」のために書かれた□ 太宗が死して60年余が過ぎ、国史編纂に携わる歴史家の呉兢によって編纂されたこの書物は、唐王朝が変革のときを迎えようとする時代にあって、貞観の治世を手本とするよう、当時の皇帝に上進されたものでした。 □日本人も古代から読み継いだ□ 平安時代の日本にも伝わると、以来江戸時代を経て現代に至るまで、統治者の心構えを説く必読書として読まれ続けてきました。 徳川家康も明治天皇も読んだと言われる、「主君のための教科書」です。 □ビジネスの智恵として□ 現代にも通じる、人材育成、組織統治、コミュニケーション術の要諦を説く一冊として注目されています。 □歴史学の眼で「全文」を読み解く□ 『貞観政要』が描くのは「理想の君主」像だけではありません。 長く皇帝の座にあった太宗は、やがて怒りやすくなり、傲慢で贅沢になり、直言を嫌がるようにもなっていきます。 ・なぜ編者・呉兢は、そのようなことまで記したのか ・唐王朝はいかなる歴史の中で築かれたか ・実像の皇帝・太宗はどのような人物であったか 歴史学者ならではの鋭い分析とわかりやすい解説で、本書の「本当の意義」を読み取ることができます。 【本書は訳し下ろしです】 -
イスラームの「英雄」 サラディン――十字軍と戦った男
マムルーク朝のバイバルスとともに、イスラーム史上の英雄と称されるアイユーブ朝のサラディン。アラブと十字軍の50年以上にわたる覇権争いに終止符を打ち、十字軍から聖地エルサレムを奪回した「イスラーム世界の英雄」として知られる彼は、同時代のアラビア語史料や伝説に「アラブ騎士道の達人」「慈悲深い高潔な人物」と謳われ、ヨーロッパでも智者、果敢な騎士、寛大な性格の人物と評されました。アラブ側は異教徒と勇敢に戦った英雄として、ヨーロッパ側はアラブ騎士道の体現者として、サラディンを描きつづけています。そのような伝説に彩られた人物の実像とはどのようなものだったのでしょうか。本書は、サラディンが、どのような政治・経済・社会状況にあって、どのように考え、どのように行動したかを明らかにします。さらに、伝説と事実を峻別したうえで、架空の伝説も人々の願望の表れとしてとりあげ、「人間としてのサラディン像」をあざやかに描き出す、「英雄」の実像に迫った本格的伝記です。 〔原本/1996年、講談社選書メチエ〕 【本書の内容】 プロローグ――サラディンの生きた時代 第一章 修行時代 1 誕生 2 カリフ権力の衰退と十字軍の侵攻 3 少年サラディン 4 ヌール・アッディーンとの出会い 5 エジプト遠征 第二章 エジプトの若きスルタン 1 アイユーブ朝の創設 2 バイナル・カスラインの戦い 3 サラディンの補佐役たち 4 イエメン征服の謎 5 シリアへの進出 6 新体制の確立 第三章 カイロからエルサレムへ 1 エジプト経済の繁栄 2 聖戦(ジハード)へ向けて 3 エルサレム奪回 4 アッカーをめぐる攻防 5 サラディンの死 エピローグ――サラディン以後 -
ゴルギアス
プラトン初期対話篇の代表作、練達の訳者による決定版新訳が完成! 本書では、当時を代表するソフィストであるゴルギアス、その弟子ポロス、気鋭の政治家カリクレス、ソクラテスの崇拝者カイレポンの四人を相手にしてソクラテスが対話を展開します。その中心的な主題は「弁論術とは何か」です。 ただ雄弁に語り、聞く人を説得するのが理想的な弁論術ではありません。大した内容もなく、正しい知識を与えることもないのに、相手を論破したり、耳障りのよいことを訴えたりするだけの言葉が今もよく聞かれます。言うまでもなく、そのような言葉を語る人が政治的な意図を隠しているなら、聞く者は気づかぬうちに意図された方向に導かれ、特定の政治的な主張を支持するようにもなるでしょう。古くは「プロパガンダ」と呼ばれ、今日では「フェイクニュース」や「ポルトトゥルース」、「オルタナティブファクト」などと呼ばれる現象には、そのようなからくりが含まれています。 では、正しい弁論術とはどのようなものなのか? ソクラテスは、ゴルギアス、ポロス、カリクレスの順に濃密な対話を交わし、その答えを明らかにしていきます。それは最終的に「正しさ」とは何かを知ることに行き着くでしょう。何が正しいのかを知っている人にしか正しい弁論術は使えない――当たり前に思えますが、その当たり前のことを残念ながら人類はプラトンの時代よりよく理解し、実践していると言えるでしょうか? 価値の基準が崩壊したと言うしかない現代世界の中で、道徳的であること、正しくあることとは何か、という問いは、ますます重要性を増しています。練達の訳者によって蘇ったプラトン渾身の対話篇を手に、今と未来を考えていただけるなら幸いです。 [本書の内容] [プロローグ ゴルギアスとは何者か] [第一幕 ゴルギアス対ソクラテス] [第二幕 ポロス対ソクラテス] [第三幕 カリクレス対ソクラテス] [エピローグ 死後の裁きについて] -
ムソニウス・ルフス言行録
ムソニウス・ルフス(30頃-101年以前)は、トスカナ地方の出身で、エトルリア系の騎士階級の家柄に属していたが、ネロ帝に敵対する有力者とつながっており、帝位を狙っていると疑われたルベッリウス・プラウトゥスが亡命した際には随行したと考えられる。ルベッリウス暗殺後、ムソニウスはローマに戻ったと思われるが、65年にはネロ帝暗殺計画に加わった廉で、過酷な追放先であるギュアロス島に送られた。この措置にも屈さず、名声は高まる。ネロ帝の死後、ガルバ帝の短い治世のあいだに(68-69年)ローマに帰還したと推測されるが、69年にガルバ帝が暗殺され、次いで帝位についたウェスパシアヌス帝によって再び追放されたことが知られている。 ストア派の哲学を信奉したムソニウスは、おそらく著作を残さなかった。しかし、弟子ルキウスの手になる論考群が古代末期のストバイオス『精華集』によって伝わるほか、ポッリオによってまとめられた短い箴言調の言葉や当意即妙の名言が伝えられている。ムソニウスの教えは同時代に多くの影響を与えたが、中でも重要なのは古代ローマの哲学者として知られるエピクテトスである。 本書は、ムソニウスの教えを伝える断片集成の本邦初訳である。19世紀ドイツの古典文献学を代表するオットー・ヘンゼによる断片集成(1905年)に加え、マックス・ベルガモによる編纂・校訂で2026年に出版された最新資料「小断片」と「小断片・補遺」をいち早く訳出した。「ローマのソクラテス」と称された哲学者の全貌に初めて日本語で触れる機会が、ついに生まれた。 [本書の内容] 論 考 1 一つの問題について多くの証明を用いるべきではないということについて 2 〈人間は徳に向かって生まれているということについて〉 3 女性も哲学するべきであるということについて 4 娘たちを息子たちと同じように教育するべきか 5 習慣と理論のどちらがより強力であるか 6 修練について 7 労苦を軽く見なければならないということについて 8 王も哲学するべきであるということについて 9 追放は悪ではないということについて 10 哲学者は侮辱されたことについて人を訴えるだろうか 11 哲学者にふさわしい職業は何か 12 性行為について 13 結婚の要点とは何か 14 結婚は哲学することの妨げになるか 15 生まれる子はすべて育てるべきか 16 あらゆる点で親に従うべきか 17 老年にとって最善の蓄えは何か 18 食事について 19 身体を覆うものについて 20 家具について 21 髪とヒゲを刈ることについて 小断片 小断片・補遺 偽作書簡 訳者解説 -
日本幻獣図説
河童、鬼、天狗、人魚、龍、雷獣、そして予言獣。異界からやってきた”不可思議な生き物“は、多くの日本人を魅きつけ、ある時は恐れられ、ある時は敬われながら伝承されてきた。江戸時代から明治時代を中心に、各地の絵図・ミイラ・報道記事を通して、妖怪という名前には収まらない奇想天外な生き物たちのめくるめく世界に迫る。絵図を多数収録! 【目次】 1章 幻獣名鑑 河童 鬼 天狗 人魚 龍 雷獣 その他の幻獣たち 2章 予言する幻獣 件 アマビコ アマビコの系譜 予言獣の共通性 吉祥の幻獣たち 異形の幻獣 3章 記録のなかの幻獣 メディアと幻獣 江戸の幻獣文献 幻獣のデザイン 4章 幻獣の背景 予言獣の創造 諷刺としての幻獣 ミイラの伝承 -
韓非子 全現代語訳
鋭い人間洞察が時を超えて突き刺さる、不滅の君主論! 人間は利のために動く。君臣の間に愛はない。 徹底した現実主義的人間観に基づく実践的君主論にして、春秋戦国の乱世下に法家が磨き上げた統治思想の極致。 「矛盾」「守株」など秀逸な譬えを交える軽妙さ、 理想的統治を語る峻厳さ、 儒家への鋭い批判、 そして不合理な現実政治への悲憤― 抑揚に富んだ語り口を生き生きと伝える碩学の名訳で、全文を読む。 【本書「解説」より】 人間性一般についての洞察の鋭さ、権力の場における人間関係の分析の綿密さ、独裁国家という枠内でではあるが、君主の心術探究の深刻さ、という点ではいずれも韓非のほうがマキャベリより一段と精彩があり、ルネサンス期のマキャベリと比べても、不思議に古くないのである。韓非の眼がその時の瑣々たる政治現象をつきぬけて、人間の本質に迫っている故であろう。 【本書の内容】 [第一巻] 初見秦/存韓/難言/愛臣/主道 [第二巻] 有度/二柄/揚権/八姦 [第三巻] 十過 [第四巻] 孤憤/説難/和氏/姦劫弑臣 [第五巻] 亡徴/三守/備内/南面/飾邪 [第六巻] 解老 [第七巻] 喩老/説林上 [第八巻] 説林下/観行/安危/守道/用人/功名/大体 [第九巻] 内儲説上七術 [第十巻] 内儲説下六微 [第十一巻] 外儲説左上 [第十二巻] 外儲説左下 [第十三巻] 外儲説右上 [第十四巻] 外儲説右下 [第十五巻] 難一/難二 [第十六巻] 難三/難四 [第十七巻] 難勢/問弁/問田/定法/説疑/詭使 [第十八巻] 六反/八説/八経 [第十九巻] 五蠹/顕学 [第二十巻] 忠孝/人主/飭令/心度/制分 解説・年表・地図 *本書は1969年に筑摩選書として、1996年にちくま学芸文庫より刊行された『韓非子』(上下巻)を原本とするものです。 -
裏切り者の中国史
復讐に取り憑かれた伍子胥、人心を操り権力に固執した王莽、女のために国を売った呉三桂……。極め付きの裏切り者たちが行き着く先は? 『史記』『戦国策』『三国志』『世説新語』等の史料から、歴史を動かした個性溢れる悪漢たちを描き切る。春秋時代から明末清初まで、二五〇〇年にわたって興亡の絶えない中国をかき回した反逆者たちの数奇な人生。 中国古典の第一人者・井波律子氏による評伝集にして、中国史・中国文学のファン必携の一冊。 【主な登場人物】 ・母国の君主に父兄を殺され、敵国の呉に奔った伍子胥(ごししょ) ・品行方正を装い、世論を操作して王朝を簒奪した王莽(おうもう) ・三世代かけて国を滅亡させた諸葛亮のライバル司馬懿(しばい) ・貴族に出し抜かれ、皇帝になりそこなった繊細な桓温(かんおん) ・反乱を引き起こすも、夢半ばで息子に殺された安禄山(あんろくざん) ・英雄を処刑したため、中国史上最も忌み嫌われた秦檜(しんかい) ・恋人を奪われて激怒し、身を売り国をも売った呉三桂(ごさんけい) ほか、呉起、始皇帝、商鞅、張儀、蘇秦、趙高、則天武后、楊貴妃、項羽、劉邦、諸葛亮、永楽帝、朱元璋、李自成など多数。 【目次】 はじめに 第1章 復讐の鬼――伍子胥 第2章 自立するコスモポリタン――戦国時代のパフォーマー 第3章 頭でっかちの偽善者――王莽 第4章 持続する裏切り――司馬懿 第5章 気のいい反逆者――王敦と桓温 第6章 危険な道化――安禄山 第7章 極め付きの「裏切り者」――秦檜 第8章 恋に狂った猛将――呉三桂 年表 参考文献 あとがき -
日本法制史講義 公法篇
本書は古代から江戸時代までにおよぶ日本の通史である。ただし、大化の改新や本能寺の変といった政変や戦乱の歴史ではなく、たとえば大和朝廷時代の臣(おみ)、連(むらじ)、伴造(とものみやつこ)にはじまり律令制を経て鎌倉幕府の組織、さらに室町幕府、江戸幕府の組織に至るように、租庸調から年貢に至る税制、荘園制をふくむ土地制度、裁判制度など、この国を成り立たしめている制度の歴史、いわばこの国の「かたち」の歴史を一望する。 「佐藤君とは違って、僕は中田さんの講義を聴いたからねえ」。かつて石母田正は楽しそうに佐藤進一に語ったという。戦後日本史学の礎を築いた二人の巨人の間でこのような会話をせしめた「中田さん」こそ、中田薫その人であり、本書は、「中田さんの講義」の一つ、東京帝国大学で行われた日本法制史講義公法篇の講義録である。 中田薫(1877-1967年)は、日本における法制史研究の創始者で、法制史はもちろんのこと、前述の会話からも明らかなように日本史学にも絶大な影響を残した。西欧のみならず中国など世界中の法に通暁し、厳密な近代的法概念によって論理的に前近代の法や社会を分析することを通して、その後の日本の歴史像の土台を築いた。 当時の法律雑誌に「聞いて居ては頗(すこぶる)る面白い。通常なら乾燥無味な法律の条文解釈とは別に川柳が出たり、江戸文学の顕著な傑作や貴い珍奇な文献が読み上げられたりするので、その時は無性に面白い。それでいよいよ試験となると最もつらい一科目である」と評された名講義を、講義最終年度にあたる昭和十(1935)年度の講義録を底本に、他年度の講義録や弟子たちによる貴重なノートを参照しつつ編纂。『人物叢書 中田薫』(吉川弘文館、2023年)で入念な調査を重ねその人生に迫った編者による渾身の講義録。 【本書の主な内容】 第一編 上世 第一期 大化前代 天 皇/人民の階級/官制(中央官制)/地方制度/税制および兵制/土地制度/法源/刑法および裁判手続ほか 第二期 大化後代 天皇および皇族/人民の階級/氏姓制度/中央官制/官職(官吏法)/位階の制/地方制度/戸籍および計帳/土地制度/財政/兵制/庄園/法源/刑法/裁判所(司法制度)ほか 第二編 中世 天皇および朝廷/将軍および幕府/人民の階級/庄園/封建制の発達/地方制度/土地制度/財政/法源/刑法/裁判所(司法制度)ほか 第三編 近 世 天皇および朝臣/将軍および幕臣/幕府の中央官制/人民の階級/地方制度/土地制度/財政/封建制/法源/刑法ほか 編者解説 -
帝国大学の誕生
東京大学が「帝国大学」だった頃、すべては始まった―― 「東大」出生の秘密を暴き、その虚像と実像を抉り出す! * 明治19年の帝国大学の誕生は、のちの東京大学をも貫く基本性格を確立した歴史的特異点であった。エリート官僚養成、アカデミズムの独占的権威、立身出世・受験競争の頂点――伊藤博文、森有礼、井上毅ら設計者たちの政策的意図を辿りつつ、今日まで続く東大の本質とイメージの淵源を明らかに! [目次] 第一章 帝国大学の出自――リヴァイアサンの生い立ち 第二章 帝国大学のモデル――ドイツの大学から学ばなかったこと 第三章 官庁エリートの供給源――工科系から法科系へ 第四章 出身と出世――上昇気流にのって 第五章 明治アカデミズムの体質――講座制と研究 第六章 もしも帝大がなかったら――批判的展望 あとがき 解説 科学史/大学史を超えた「学問の歴史」 石井洋二郎 -
般若経 空の世界
「世界に固定した実体は存在しない。あらゆるものは“空”である」。 ものへの執着と、輪廻の恐怖から人々を解放した「般若経」。 1世紀半ばといわれる成立以降、数々の翻訳や加筆により、分散や繰り返しも多く、理解が難しかった大経典に、<空思想>の泰斗が正面から対峙。素朴で力強い思想の魅力を描きつつ、仏教思想史における位置と意味を明らかにする! 本書の原本は二〇〇二年八月、中公文庫BIBLIOより刊行されました。 目次 まえがき 序章 説話と思想 玄沙出家 『ヴィシュヴァーンタラ・ジャータカ』 布施太子の入山 常悲菩薩本生 サダープラルディタ(常悲)とダルモードガタ(法来) 哲学の発生 第一章 大乗仏教への道 シャーキヤ・ムニと大乗の菩薩 出家と在家 ストゥーパ (舎利塔)とヴィハーラ(精舎) 教団の分裂 ジャータカ (本生話)とアヴァダーナ(譬喩) 第二章 般若経の背景」 ボサツと菩薩 僧院の仏教 すべてがあると主張する者――有部の哲学(1) 区別の哲学――有部の哲学(2) 三世実有・法体恒有――有部の哲学(3) 第三章 「般若経」の出現 『八千頌般若経』の成立 過去仏・現在仏・未来仏 アクショービヤ如来 哲人マイトレーヤ (弥勒) 「般若経」の発展 第四章 「般若経」の思想(1) 仏母の発見 菩薩大士 大乗――声聞・独覚の批判 本来清浄――実在論批判 第五章 「般若経」の思想(2) 不二 般若波羅蜜 廻向――ふりむけの思想 巧みな手だて 菩薩の階位 縁起と空 参考文献 内容紹介 たとえば私の目の前にある机という個物は机という本体をもっていない。なるほど私がその前にすわってその上で原稿を書けば、それは机である。しかし私がそれに腰かければそれは椅子以外の何であろうか。(中略)そのようにさまざまな認識とさまざまな効用が起こるのは、その机に机の本体がないからである。机は机として空であり、本体は思惟における概念にすぎない。愛情は凡夫にとっては迷いの絆きずなであるけれども、菩薩や仏陀にとっては有情を見捨てない慈悲である。どうしてそこにただ煩悩という本体だけを認めることができようか。―――第五章「般若経」の思想(2) より -
中国の神話 神々の誕生
「子は怪力乱神を語らず」。孔子に代表される儒教の合理的精神のもと、早くに歴史の中に取り込まれ、断片的にしか伝わることがなかった中国神話。『山海経』や『楚辞』、甲骨資料などわずかに残された痕跡から、一つ目、一本足で猿面の山神を主人公に、古代中国史の泰斗が神話世界を大胆に復元する! 最古の地誌であり、儒学の厳しい検閲の網を逃れて現代にまで生き残った、さまざまな怪物が登場する『山海経』。そこには一本足で、声は雷のごとく、黄帝が生け捕りにして皮をはいで鼓をつくり、その骨をばちに打ち鳴らすと五百里四方にとどろいたという山の怪物が登場する。また別の個所では楽園の番人を殺して不死の木の実を盗んだ罪によって、足にかせをはめられ、両手と髪を縛ってある山の木に逆さ吊りにされた怪物も現れる。このいずれもが「き」という音で呼ばれる、本書の主人公である。 司馬遷が『史記』で歴史のはじめにおいた黄帝と、その強敵である蚩尤はともに風雨、とりわけ風を呪術的に自在に操る力を持っていた。風の神は同時にふいごを使う鍛冶神にも通じ、そして「き」もまた、鍛冶と深いかかわりがあったという。 多くは猿面で一つ目、一本足で表象されるこの山神を出発点に、柳田國男や折口信夫の民俗学的手法や日本神話、時にはバビロニアのマルドゥク伝説からもヒントを得ながら、古代のはるか遠い祖先神をめぐるひとつの物語として中国の神話を大胆に復元し、さらにその後、儒教化によって神話が歴史へ、呪術が宗教へと変容するまでを描く。神話世界を冒険するかのようなスリリングな魅力に満ちた一冊。 (原本:『中国の神話――神々の誕生』筑摩書房、1971年) 第一章 異形の神像 第二章 瞽師の伝承――中国の語部 第三章 風の神の発見 第四章 鍛冶師と山の神 第五章 文化的英雄の誕生――三皇五帝 第六章 神話の世界の消失 第七章 乱――エピローグ あとがき 解説 蜂屋邦夫 -
航西日記 パリ万国博見聞録 現代語訳
1867(慶応3)年、パリ万国博覧会が開催された。日本が初めて参加した国際博覧会であり、幕府は徳川慶喜の弟である昭武を公使として派遣した。使節団には幕臣となっていた渋沢栄一が随行。帰国後、渋沢は、外国奉行支配調役として同行した杉村譲(愛蔵)とともに、全6巻の詳細な渡欧記録をまとめ、1871年(明治4)に刊行した。 この記録には、フランスの繁栄を誇ったパリ万国博での見聞のほか、ナポレオン3世やイタリアのヴィットリオ・エマヌエレ2世、オランダ国王ウィレム3世ら欧州要人たちと徳川昭武の謁見、産業革命のただなかにあったイギリスの工業化や、政治・経済のシステムへの驚きなどが、生々しく描写されている。 従来、この日記は、渋沢の単著として扱われてきたが、近年の研究により、旅の前半を幕臣として同行し、後に明治政府の官僚となった杉村譲の日記と渋沢の日記から編纂・執筆されたものであることがわかってきた。こうした旧幕臣の体験と知識が、その後の近代化に大きく生かされたのである。 文庫化にあたっては、『世界ノンフィクション全集14』(筑摩書房、1962年)所収の大江志乃夫現代語訳を原本とし、「付録」として、一行の帰国の事情と帰国後の動向を記した、渋沢栄一談/小貫修一郎編著『渋沢栄一自叙伝』(渋沢翁頌徳会、1937年刊)の13章1節から4節までを収録した。 -
パリ万国博覧会 サン=シモンの鉄の夢
絶景、奇怪、絢爛。"物神【フェティッシュ】の聖堂"のスペクタクル! 現在も世界各国が競って開催する万国博覧会。 それは、サン=シモンという男が思い描いた「産業という宗教」を奉ずる者たちが、物神たる機械と商品の数々によって荘厳した神殿として創められた。 万博というものを、単なる近代産業技術のひとこまとしてではなく、来たるべきユートピアとして構築され、資本主義文明の展開そのものを懐胎した運動であったことを活写する、この著者だからこそ書けた万博論の決定版! 【本書「まえがき」より】 もしこの万博理念の形成過程史が解明され得るなら、それは、むしろ実際の万博の歴史よりも、絶対に面白いはずだ。なぜなら、それは単なるモノの歴史ではなく、モノに関するイデアの歴史、さらに言うなら近代文明についての観念の歴史となるはずだからである。 【本書の内容】 まえがき 万博の神学、あるいは万博史の逆説 第1章 サン= シモンの鉄の夢 第2章 転向サン= シモン主義者ミシェル・シュヴァリエ 第3章 パリ万国博覧会にむけて 第4章 万博理念の確立 第5章 サン= シモン主義のユートピア、一八六七年パリ万 国博覧会 第6章 アミューズメントとしての万博会場 第7章 博覧会場の外で 第8章 新たなユートピア〈恒久的万国博覧会〉にむけて 文献目録 ※本書の原本は、『絶景、パリ万国博覧会』として1992年に河出書房新社より、その後2000年に小学館文庫より副題「サン・シモンの鉄の夢」として刊行されたものです。 -
ペルシア人の手紙
本書は、「三権分立」を説いた『法の精神』(1748年)で知られるフランスの思想家シャルル=ルイ・ド・モンテスキュー(1689-1755年)の名を一躍知らしめた記念碑的作品(1721年)の新訳である。 ボルドー近郊のラ・ブレードの城に生まれたモンテスキューは、ボルドー大学で法律を修め、弁護士になった。1709年にはパリに出て、さまざまな学者や文人と交流しつつ多彩な領域について知見を深めた。本書『ペルシア人の手紙』に見られる東洋についての記述は、この時の成果である。5年後の1714年には急逝した父のあとを継いでボルドー高等法院評定官となったモンテスキューは、その傍らで執筆活動を続け、7年後の1721年に匿名で本書を発表するに至る。 宮廷での政争に疲れたペルシアの貴族ユズベクが友人のリカとともにヨーロッパに出かけてパリに長期滞在する間、故国をはじめとする各地の知人・友人と交わした書簡の集成──このような体裁をとる本書は、たちまちベストセラーになり、発売後1年のうちに10版を重ねるほどの売れ行きを見せた。その魅力は、何よりもまず18世紀前半のヨーロッパ、とりわけフランスの社会を東洋人の目で活写し、風刺したところにある。人々の生活や風俗が具体的に描かれるとともに、時には政治について、時には宗教について語られていく。多岐に及ぶ話題を扱う架空の書簡は、当時の貴重な記録として読むこともできるだろう。 もちろん、フィクションとしての魅力も大きい。ユズベクがあとに残してきたペルシアの宮廷では腐敗・堕落が進み、やがて崩壊の危機に瀕する。ところが、遠く離れたヨーロッパに身を置くユズベクに与えられた手段は手紙しかない。当然のことながら、往信と返信のあいだで生じた出来事についての詳細は語られず、読む者はさまざまな想像をめぐらせながら、宮廷の行く末を見守ることになる。その読書体験は実に刺激的であり、本書がのちの書簡体小説の先駆として高く評価され、読み継がれてきたのも当然のことと言える。 本書は、実力者として知られる研究者が最新の研究を踏まえて取り組んだ、画期的な新訳である。平明な訳文、簡にして要を得た注と解説によって、読む者はたちまち18世紀を生きることができるだろう。今後のスタンダードとなるべく満を持して送り出される渾身の訳業。 [本書の内容] 登場人物 暦について 地名について 関連地図 序 文(1721年) 『ペルシア人の手紙』に関するいくつかの考察(1758年) ペルシア人の手紙 訳者解説 手紙一覧 -
ペンギンの世界
氷点下60度、猛烈なブリザードのなか115日も絶食し、抱卵・包雛する。ひとたび海に出ればエサを追いかけ564mまで潜水し、甲殻類・魚類・イカの消費量は年間2000万トン超! 世界最大のペンギン飼育国・日本で50年以上も研究を重ねた著者が、その驚異的な能力や生態を多彩な図版とデータから教示する。「かわいい」だけじゃ、もの足りない。もっと深く広く知りたい人のための、懇切丁寧な「ペンギン学」の決定版! 目次 プロローグ ペンギン大国日本 第1章 どこでどんな生活をしているのか 南極ペンギン/バード岬/世界最悪の子育て/叫ぶ50度/レイン・フォーレストの妖精/穴掘りペンギン 第2章 生活のリズムと体のしくみ 生活史/寿命/死因/保温・熱交換システム/大食と絶食/ダイビング・ギヤ 第3章 海でのくらし イルカ泳ぎ/移動潜水・探索潜水・捕食潜水/深い潜水・ふつうの潜水/食事時間/ハイテクでペンギンを追いかける 第4章 なぜ飛ばなくなったのか 祖先は空を飛んでいた?/なぜ飛ぶことをやめたのか/古代ペンギンの生活 第5章 ペンギン、人に会う 北のペンギン、南のペンギン/最初に会った人々/「のろまな歩く食料」から「愛すべき生きもの」へ/南極のペンギンは増えている?/がんばる動物園・水族館 エピローグ 助け、見守る人々 もっと詳しく知りたい人のために あとがき 学術文庫版あとがき「ペンギンは警告する」 *本書の原本は2001年7月に、岩波新書より刊行されました。文庫化にあたりデータや数値の更新と写真の差し替えを行い、文庫版あとがきを加えました。 -
バラの世界
冬のバラを好み、わざわざエジプトから取り寄せていたという皇帝ネロ。晩餐会で天井から大量のバラの雨を降らせ、客を窒息させたほどの愛好家だった暴君ヘリオガバルス。古代ローマ人は悪酔い防止にバラの花冠が効くと信じ、中世の詩人や作家、画家はこぞってバラを描いた……。ただの「花」がなぜ憧れの象徴となり、かくも人々を虜にし続けるのか。野生から改良種まで、世界の多様な品種を眺めつつ、はてなき美の世界を旅する! まえがき 第1章 クノッソス宮殿の謎 クノッソス宮殿/青い鳥/それはバラか、バラなら/バラとする根拠/ロナ・ハースト/バラは単なる花 第2章 ギリシアとバラ テオフラストス/バラを詠む/バラ熱の兆し/何が魅力か 第3章 ローマとバラ 高貴な花へ/日常を飾る花に/休日はペストゥムで/ローマのバラとは/バラの花環/生活に欠かせぬ花に/バラの下で 第4章 バラの植物学 レーダーはいった/バラの容姿/バラの葉/托葉/バラの花 第5章 バラの園芸化の歴史を辿る 八つの野生種/一八六七年/グループとは/オールド対モダーン 第6章 オールド・ガーデン・ローズ ローザ・ガリカ/バラ水のバラ/ジョセフィーヌの幸運/2000を超す園芸品種/ダマスクバラ/バラ戦争/マルメゾン庭園のダマスクバラ/秋に返り咲くダマスクバラ/秋に咲くダマスクバラの再来/ローザ・アルバ/ボッティチェルリの『ヴィーナス誕生』のバラ/<ジャンヌ・ダルク>/キャベジ・ローズあるいはセンティフォリア 第7章 モダーン・ガーデン・ローズの黎明期 コウシンバラとは/ハーストの見解/コウシンバラの標本/英国のコウシンバラ/英国外でのコウシンバラ/二つのチャイナ・ローズと二つのティー・ローズ/スレーターズ・クリムソン・チャイナ/パリ自然史博物館の標本/カルカッタ植物園/パーソンズ・ピンク・チャイナ/ヒュームとパークスのティー・ローズ/ノワゼットバラの誕生/ブルボン 第8章 バラの花譜 バラの画家ルドゥーテ/マルメゾンの館/フランスのバラ図譜/英国のバラ花譜/ドイツ・オーストリアのバラ花譜 第9章 世界の野生バラ 〇中国のバラ 〇ヒマラヤのバラ 〇西アジアのバラ 〇ヨーロッパのバラ 〇アルプスのバラ 〇アメリカのバラ 第10章 日本のバラ ノイバラ/テリハノイバラ/ミヤコイバラ/ハマナス/サンショウバラ/カカヤンバラ 第11章 バラの現在・未来 -
西洋占星術史 科学と魔術のあいだ
「○○座生まれのあなたは……」などと始まる「星占い」――雑誌やテレビはもちろん、ネット上でも頻繁に見かけるおなじみの存在ですが、「○○座生まれ」というのはどういうことか、ちゃんと説明できる人は実はそう多くないでしょう。ましてや、星占いはいつ誕生したのか、はじめから今見るようなものだったのか、といった問いに答えられる人となると、もっと少ないに違いありません。本書は、科学や科学技術の歴史に詳しい専門家が誰にでも分かるように、そして面白く読めるように占星術の歴史をコンパクトにまとめた1冊です。占星術を生み出したのは、現在のバクダット南方に位置するバビロニアで紀元前9世紀頃から勢力を伸ばしたカルデア人でした。天文学に長けていたカルデア人は、日蝕や月蝕、彗星の出現などを地上に起きることの前兆として捉え、将来訪れる災厄を予言する技法として、占星術を開発したのです。この技法が、のちの紀元前4世紀に登場したアレキサンダー大王がバビロニアを征服したことをきっかけにしてギリシア世界に流入し、さらに古代ローマに継承されていくのが「西洋占星術」の発展につながっていきます。当初はもっぱら天下国家の運命を対象にしていた占星術は、やがて個人の運命を占うようになりました。個人といっても、はじめは皇帝や王だけがその恩恵にこうむることができましたが、時代が進むにつれて、一般の人たちも自分の運命を知るために占星術にアクセスするようになったのです。当代随一の占星術師である鏡リュウジ氏が解説を書き下ろしたこの文庫版を手にすれば、何気なく触れてきた「星占い」も、ぐっと深みを帯びて、まったく違う魅力的なものに見えてくること間違いなし、です![本書の内容]1 カルデアの知恵2 ギリシャ人の科学3 ホロスコープの技術4 「占星社会」ローマ5 ルネサンスの大論争6 近代科学からの脱落7 現代を生きる占星術 あとがき 解説 鏡リュウジ -
経済学の思考法 稀少性の経済から過剰性の経済へ
格差拡大、雇用不安、デフレ、グローバリズムの停滞……。「構造改革」以降、実感なき好景気と乱高下する日本経済。過剰な貨幣発行がもたらす問題、「複雑な“経済現象”」と「理論重視の“経済学”」の乖離など、現代資本主義が直面する困難を徹底的に検証。 アダム・スミスから金融理論、リーマンショックからアベノミクスまで、経済学の限界と誤謬を提示する。 内容抜粋 「経済学」がひとつの思想でありイデオロギーであるとすれば、今日の支配的な経済学の考え方とは異なった「経済」についての見方はできないか。「稀少な資源の配分をめぐる科学」というような経済学の典型的な思考方法ではない、別の思考様式はないのか、ということだ。―――学術文庫版「はじめに」より 目次 学術文庫版「はじめに」 第1章 失われた二〇年――構造改革はなぜ失敗したのか 学術文庫付論 第2章 グローバル資本主義の危機――リーマン・ショックからEU危機へ 学術文庫付論 第3章 変容する資本主義――リスクを管理できない金融経済 第4章 「経済学」の犯罪――グローバル危機をもたらした市場中心主義 第5章 アダム・スミスを再考する――市場主義の源流にあるもの 第6章 「国力」をめぐる経済学の争い――金融グローバリズムをめぐって 第7章 ケインズ経済学の真の意味――「貨幣」の経済学へ向けて 第8章 「貨幣」という過剰なるもの――「稀少性」の経済から「過剰性」の経済へ 第9章 「脱成長主義」へ向けて――現代文明の転換の試み あとがき――ひとつの回想 学術文庫版あとがき 2012年刊行、講談社現代新書『経済学の犯罪』を改題、 大幅加筆修正したものです -
王陽明「伝習録」を読む
中国・明代の儒学者、王陽明。その当時、新儒教として学術思想界の主座にあった朱子学の論理構造を批判的に継承した彼の実践的儒学は、陽明学として結実する。近世以降の中国のみならず、わが国でも大塩中斎や吉田松陰、西郷隆盛ら、変革者たちの理論的背景となった思想とは何か。陽明学の最重要書籍を原テキストにしたがって読み解き、その精髄に迫る。※この商品は紙の書籍のページを画像にした電子書籍です。文字だけを拡大することはできませんので、タブレットサイズの端末での閲読を推奨します。また、文字列のハイライトや検索、辞書の参照、引用などの機能も使用できません。 -
戦国大名の外交
合戦だけが戦いではない。 列島に統一権力なき時代、地域国家の主権者として割拠した戦国大名たちは、軍事同盟や国境再編、自治勢力「国衆」との関係構築の成否に自らの存立を懸けた。それはまさに外交と呼ぶべき営為であった。交渉者「取次」が奮闘し文書が飛び交う、「現場のリアル」を描き出す、戦国史研究の精華! 【本書より】 なぜ、武田信玄と北条氏康は、直接面会して和睦交渉を行わなかったのであろうか。これは、現在の外交儀礼と比較するとよくわかる。現代においても、外交交渉というものは、外交官が事前に予備交渉を行い、大筋の話をまとめたうえで、外務大臣や国家元首が対談し、協議事項に合意をするという手順を踏むのが一般的であろう。これは戦国時代においても変わりはない。 この時の武田・北条両国は、敵対関係にあった。したがって、いきなりトップである戦国大名同士が交渉することには慎重にならざるをえなかった。そこでまずは、大名の家臣同士が交渉の細部を詰め、それを踏まえて大名が直接書状をやりとりする、という手順を踏んだのである。 こうした外交交渉を担当する家臣は、史料用語で「取次(とりつぎ)」「奏者(そうじゃ)」「申次(もうしつぎ)」などと呼ばれる。いずれも交渉内容を大名に取り次ぐ、執奏する、申し次ぐ人物という意味である。ただし、このうち「奏者」「申次」という言葉は、目下から目上への言上内容を披ひ露ろうする役割を担う側近家臣を指す用語で、対等な戦国大名同士の外交を担当する家臣を呼ぶには相ふ さわ 応しくない。このなかでは、「取次」という言葉が一番上下関係を表すニュアンスが少ない。そこで筆者は、戦国大名の外交担当者を、単に「取次」ないし「外交取次」と呼んでいる。この取次という存在が、いってみれば戦国大名の「外交官」の任を果たしたのである。 【主な内容】 序章 戦国大名という「地域国家」 第一章 外交の作法 第二章 外交による国境再編 第三章 外交書状の作られ方 第四章 取次という外交官 第五章 戦国大名の使者 第六章 外交の交渉ルート 第七章 独断で動く取次 第八章 取次に与えられた恩賞 終章 戦国大名外交の行く末 補注 補論一 武田・徳川同盟の成立と決裂 補論二 外交から考える本能寺の変 補論三 取次の失態が招いた小田原合戦 主要参考文献 あとがき 学術文庫版あとがき 索引 -
切手の歴史【電子特典付き】
1840年――日本で天保の改革が行われていた頃、イギリスで誕生した小さな紙片が、世界の通信網を一気に変えた! 発売初日に410万枚も売れた「ペニー・ブラック」伝説。東欧で大ブレイクしたヌード切手の謎。19世紀末に、毎週5万フラン(当時の大英博物館館長の年俸10年分)もの大金をつぎこんだ、オーストリアの貴族蒐集家。12歳の少年が売った1セント切手が50年後に1億円相当に高騰するオークションのからくり。ドイツ独裁時のヒトラーの切手と崩壊後の顛末や精巧な贋作から幼稚な偽物まで玉石混合、切手偽造名人列伝まで・・・・・・。奇跡・珍事の数々や、ユニークなアルミ金箔、異形デザイン紹介など、切手を愛し、蒐集に生涯を捧げた暦学者による、ユニークかつ白眉の切手学・入門書。 「趣味の王者・王者の趣味」といわれた、切手の歴史と魅力を網羅する! (撮り下ろし図版も満載!!) ★国王の顔に消印禁止! イタリア ★なぜ天地逆? 逆刷500文切手の妙 日本 ★世界一優雅で繊細な凹版切手 オーストリア ★名画に加筆…切手と著作権をめぐる事件 アメリカ ★0が17桁! インフレ切手に窮余の策を ハンガリー 三角、八角、ダイヤ型、金箔にアルミ箔まで…変形、珍素材切手も大集合! 本書の原本は、1976年10月、講談社より刊行されました。 文庫化にあたり、底本切手画像の劣化を解消するため、解説者・田辺龍太氏の私物撮影を施しました。 -
素朴と文明の歴史学 精選・東洋史論集
日本の東洋史学が生んだ20世紀の巨人、宮崎市定(1901-95年)。広範な領域にわたる魅力的な著作の数々から、全集未収録作品を含め、これまで文庫に収録されてこなかったものを中心に精選したアンソロジー。長年の愛読者はもちろん、宮崎史学初めの一歩にも。 「歴史は須(すべか)らく世界史でなければならぬ。事実、私の研究は常に世界史を予想して考察して居り、世界史の体系を離れて孤立して個々の事実を考えたことは一度もない」(『アジア史研究』第一、「はしがき」より)。出発点となった宋代史研究をはるかに超えて、中国史のあらゆる時代、さらに西アジア史や古代日本史にまで及ぶ優れた業績は、いずれも偉大な歴史家の理念に力強く裏打ちされている。 鋭く細やかな洞察、時間・空間ともに壮大な展望を予感させるスケールの大きさと独創性、生き生きとした人物描写、これらを可能にする文章力……。枚挙に暇がない魅力ゆえに、宮崎の作品は、専門家にとどまらず長きにわたって多くの読者を得てきた。専門とする時代・領域ともに異なりながらも、宮崎への思い入れが嵩じて評伝を著し話題になった西洋古代史研究者の井上文則氏もその一人である。その井上氏が、歴史家としての宮崎市定、とりわけその人となりがわかるような作品を厳選、解説では宮崎の人生のなかにそれらの作品を位置づける。 中国の歴史は中国周辺の民族に代表される素朴主義と、中国社会そのものである文明主義の入れ替わりの歴史であったと喝破し、素朴主義に共感を寄せる「素朴主義と文明主義再論」。本作品をはじめとする宮崎独自の雄大な歴史観、そして古代・中世・近世史、さらに文化史についての各論を通して、巨峰宮崎市定の威容に迫る決定版セレクション! 【本書の内容】 1 歴史の見方 世界史序説 素朴主義と文明主義再論 歴史と塩 『宋詩概説』吉川幸次郎著〔書評〕 2 歴史学各論 ・古 代 中国上代の都市国家とその墓地――商邑は何処にあったか 条支と大秦と西海 ・中 世 晋武帝の戸調式に就て 六朝時代江南の貴族 清 談 ・近 世 五代宋初の通貨問題梗概 王安石の黄河治水策 雍正時代地方政治の実情――シュ批諭旨と鹿洲公案 ・文化史 シナの鉄について 江戸時代におけるシナ趣味 3 全集未収録作品 大きな静けさ はしがき〔『地獄の決闘』〕 中国漢代の都市 中国における易占の発達 付録 宮崎市定と青木木米(リチャード・ピアソン&一枝?・ピアソン) 解 説(井上文則) -
浮気な王の宮廷生活 スペイン・ハプスブルクの落日
政治には関与せず無気力。日々、絵を描き芝居を観て祝宴に列し、女性とみれば女優に修道女、宮廷の侍女から街の娼婦まで口説かずにはいられない。そんな愛欲に溺れる己に苦しみ、罪悪感から神にすがっては懺悔する…。 華やかなりしスペイン帝国をみるみるうちに凋落の一途へと導いた、国王フェリペ4世(1605-65 在位 1621-65)。 悪名高き意志薄弱な王は、いかに誕生したのか。その放埒な生活と晩年の不如意な人生と死を第1部に。凋落するスペイン帝国の実態を第2部に構成。様々な噂話やエピソードかスペイン・ハプスブルクの影を活写する。 目次 はじめに 第一部 第1章 スペイン国王フェリペ四世、誕生 王子の誕生と教育/王子の理想像/結婚、そして王位継承へ/寵臣オリバーレスと王家の人々 第2章 浮気な国王の放埒な宮廷生活 祝宴につぐ祝宴/王宮での日々/芝居を楽しむ/十七世紀式闘牛、マヨール広場にて/《狩猟をするフェリペ四世》/宮廷式求愛/宮廷画家ベラスケスと絵画コレクター/宮廷のおどけ者たち 第3章 フェリペ四世の告白できない告白 スキャンダルの始まり/女優〈ラ・カルデローナ〉との恋の戯れ/女子修道院に忍び込む/賢夫人イサベル王/ライバルは「ドン・フアン」/伯爵暗殺 第4章スペイン帝国の危機と王家の不幸 マントヴァ継承戦争とネーデルランド/カタルーニャとポルトガルの反乱/寵臣オリバーレスの失脚/権力の後継者ルイス・メンデス・デ・アーロ/イサベル王妃とバルタサール・カルロスの死/跡継ぎが生まれない!/「大地の息子」フアン・ホセ・アウストリア以後 第5章 世俗を逃れて/恩寵を求めて 神秘家マリア・コロネル/「余に天罰を!」/魂の国からのアドバイス 第6章 国王の晩年と黄昏れゆくスペイン 苦悩の晩年と国王の死/ハプスブルク家からブルボン家へ 第二部 17世紀スペインへの望遠鏡(テレスコープ) ハプルブルク・スペインのかたち/人々の生活とカトリック教会/異端審問と「アウト・デ・フェ」/黄金世紀、百花繚乱 《注》 あとがき 主要参考文献 人名索引 学術文庫版あとがき 本書は、『浮気な国王フェリペ四世の宮廷生活』(岩波書店 2003年3月刊)を改題、加筆・一部修正したものです。 -
万葉集原論
「おそらく、私は「万葉集原論」を生涯の課題としていくことだろう」。 本書は日本を代表する文学者、中西進の真骨頂である。 現存する最古の歌集『万葉集』。七、八世紀の歌、四千五百首余が二十巻に収められ、額田王、柿本人麻呂などの著名な歌人、天皇、皇族から、防人、遊女に及ぶ作者と作品の豊かさは、世界的にみても異彩を放っている。 この『万葉集』研究の第一人者であり、幅広い文学活動でも知られる著者は、古代日本文学の本質に迫ると同時に、世界のなかの日本文化を問う視座を持ち続けてきた。 『万葉集』とは何か。真摯にそれを見極めんとした本書が示すのは、学問とは何か、その方法はいかにあるべきかという切実な問題意識に裏打ちされた、著者だからこそ到達しえた比類なき『万葉集』の姿である。(原本:『万葉集原論』桜楓社、1976年) 【主な内容】 学術文庫版まえがき 一 万葉集研究の方法 文学史の方法――その「歴史」について 文学研究の方法 万葉集研究の方法 研究と批評 二 万葉集の構造 万葉集の構造 万葉集の生成 万葉集の原点 万葉集の集団性 三 万葉集の表現 万葉歌の形式 万葉歌の方法 古代的知覚――「見る」をめぐって 古代文学の言語 万葉集の漢語 桜楓社版後記 解題 犬飼公之 -
インテリジェンスの基礎理論
テロリズム、インテリジェンス、サイバーセキュリティ等は、遠い世界のことと思いがちですが、こうした問題は意外にも私たちの日常生活とも密接に結びついています。20世紀の冷戦構造があった時代には、世界情勢の中心は米ソを軸とした二極の対立でしたが、ソ連崩壊後の世界では、民族・宗教・思想の対立が複雑化・混沌とし、テロや紛争が各地で絶え間なく起こっています。 社会の諸課題が複雑化して既存の知識や分析枠組みが通用しにくくなる中、ガバナンス的思考は今後更に重要になるでしょう。こうした領域の一端に触れることによって、ガバナンス的な思考センスを身につけるためにも有効な一冊です。 さて、インテリジェンスとは何を指すのでしょうか? 「インテリジェンスとは、『政策決定者が国家安全保障上の問題に関して判断を行うために政策決定者に提供される、情報から分析・加工された知識のプロダクト、あるいはそうしたプロダクトを生産するプロセス』のことを言う」。 この定義にしたがって、本書では、情報分析の素材となる情報の収集方法、情報の加工の方法、またその過程における有効な方法と陥りやすい誤りなど、実践的な知識を提供しています。 そして、CIAやモサド、MI6や公安などインテリジェンス機関の活動の一端についての紹介やコラムで実際の事件を扱います。インテリジェンス機関と犯罪捜査機関との相違点もあきらかにされます。 得られた情報に、分析という加工を経たプロダクトの優劣の考え方、また、ミラー・イメージング、クロス・チェックといったプロダクト生成時の問題や改善法などについても述べられます。 インテリジェンス入門として、情報収集と情報加工の教科書として、格好の入門書です。 [原本] 『インテリジェンスの基礎理論 第二版』立花書房 学術文庫に収録するにあたり、全面的に改訂した。 【目次より】 学術文庫版はしがき 第一章 インテリジェンスとは何か 定義、機能、特徴 第一章の補論 第二章 インテリジェンス・プロセス 第三章 インテリジェンス・コミュニティ ― 日米の組織 第四章 インフォメーションの収集 第五章 インフォメーションの分析 第六章 その他のインテリジェンス機能 第七章 インテリジェンスの課題 伝統的な課題から新たな課題へ 第八章 インテリジェンス組織に対する民主的統制 【巻末資料】 解説 佐藤優 -
遠野物語 全訳注
全部読まなければ、この本のすごさはわからない! 日本民俗学の創始者である柳田の原点にして代表作には、いったい何が論じられ、企てられたのか。 「平地人を戦慄せしめよ」という高らかな宣言に込められたものとは何か。 「ザシキワラシ、オシラサマや河童たちが躍る不思議な世界」 「叙情豊かな日本人の原風景」 という本書がまとってきたイメージの奥にある真価を読み取るための、 懇切な解説つき全文現代語訳。 -
渋沢栄一「青淵論叢」 道徳経済合一説
〈『論語と算盤』よりも明快!〉 渋沢栄一「最後の肉声」を現代語訳。 読めば、2021年大河ドラマ『青天を衝け』が、ぐっと味わい深くなる! ■怒濤の人生を回顧し、現代人に希望を託す、畢生のメッセージ■ 時勢が緊迫する昭和のはじまりにあって、人生の黄昏を迎えていた「日本資本主義の父」は、 後世に何を言い遺こそうとしたか。 「家訓」にはじまり、倫理観、経済観、政治観、人生観など広汎なテーマについて32項目にわたって、 幕末維新の経験をふまえ、日本の明日を憂いながら語り尽くした談話集「青淵論叢」を、 渋沢という人物を知り尽くした鹿島茂が読みやすく現代語訳し、さらに懇切に解説。 「金というものは社会の力を表彰している役にたつ道具ですから、これを貴ぶのは正当なことですが、しかし、必要な場合にはよくこれを消費しなければなりません。消費はもちろんよいことなのです。よく集めてよく散じ、もって社会を活発にし、それによって経済界の進歩を促すのはまさに有為の人が心がけなければならないことなのです。真に経済のよくわかった人は、よく集めてよく散じるようでなければなりません。よく散じるとは正当に支出することです。金を善用することです」(本書「富者の要務」より) 「江戸の封建主義に代わって明治・大正の資本主義が登場しても、官は官のもの、民は民のものという疎外的分担体制はよりひどくなっている。 これは、自分にも責任があるのだから、なんとしても最終解決しなければならない。 では、どうすればいいのか? これが、日本の資本主義をほとんどゼロから独力で作り上げた渋沢が古希にあたって再度、自分に問いかけた疑問だったのである」(本書「編訳者解説」より) 【本書の主な項目】 立身出世の秘訣/信用を得る人得ない人/叱言(こごと)の云い方/真の成功とは何か/予の人物鑑識法/大国民は斯う有り度い/外来思想と咀嚼消化の力/国家観念と世界主義/政治経済と道徳観念/道徳と経済の合一説/事業経営に必須の条件 ほか -
都会と田舎 日本文化外史
花のみやこか、懐かしきふるさとか――。日本列島の文化の歴史は、海の外からやってきた最新の情報があつまる都会への憧れと、生まれ育った郷土への思い入れのはざまで紡がれてきた。奈良、京都、のちには江戸・東京という「みやこ」に対する「地方」の憧れと反発、さらに中国大陸や欧米という「中央」に対する「辺境」日本の憧れと反発という二重の交錯を見据え、そこに織りなされる綾を丹念に描き出した唯一無二の列島文化史。 夷なる日本が華なる中国に劣らないと主張した京都生まれの伊藤仁斎と、関東出身で田舎固有の文化に価値を見出し江戸学芸を京から自立させた荻生徂徠。日本文化や日本的なるものの一貫性を否定した内藤湖南と「国史」の範囲に苦悩した黒板勝美。日本文化が基底のところで一体のものであることを前提にしたことで「郷土を捨象した」と批判された、民俗学の父・柳田国男が敬意をいだいていたのは、田舎に「いにしえのみやび」を見出した本居宣長だった。 古代の青銅鏡が示す畿内王権や記紀神話にはじまり現代にいたるまで時代を縦横無尽に扱いながら、独自の視点で日本文化の形を照らし出す。(原本:平凡社、1991年) 【本書の内容】 はじめに 第一章 都市の論理――先進・後進論の背景 第二章 反都市文明――「地方」主張の論理と背理 第三章 国家という単位――単一の「国」と「くに」の複合 第四章 民衆知と文字文化――ひとつの試み あとがき 解 説(長﨑健吾) -
古代文字の解読
発音も不明な謎に満ちた文様――エジプト聖刻文字、楔形文字、ヒッタイト文書、ウガリット文書、ミュケーナイ文書。主要古代文字が解読されるまで推理、仮説、検証を重ねた、気の遠くなるような忍耐と興奮の軌跡を、言語学と旧約聖書研究の泰斗が、平易かつ正確に描写。数千年を超えた過去との交流を先人とともに体感できる、心躍る書!(解説・永井正勝) まえがき 第一章 言語と文字 高津春繁 第二章 エジプト聖刻文字の解読 関根正雄 第三章 楔形文字の解読 関根正雄 第四章 ヒッタイト文書の解読 高津春繁 第五章 ウガリット文書の解読 関根正雄 第六章 ミュケーナイ文書の解読 高津春繁 学術文庫版解説 永井正勝(人間文化研究機構人間文化研究創発センター特任教授) 索引 地図 内容紹介 両者の解く古代文字解読の世界は、解読当時の学者達や社会の常識を踏まえつつ、解読者の心境を代弁するかのような語り口でなされている。そこに時折加えられる古代社会の記述も相まって、読者は解読当時の様子をこの目で見ているかの如く本書を読み進めていくことができる。(略)本書の魅力は、文化に対する深い理解と愛を持った卓越した研究者の手になる部分が大きい。 ――――――「解説」より *本書の底本は『古代文字の解読』(岩波書店 1964年10月刊)です。文庫化にあたり読みやすさに配慮して、旧字を随時、常用漢字に置き換え、送り仮名も新字対応とし、ルビの追加を行い、明らかな誤植は訂しています。 経年などにより説明が必要と思われた箇所は、編集部註として[ ]で補足いたしました。「最近」「現在」などの表記につきましては、原本が出版された一九六四年時点の時制といたします。 本書には現在では差別的とされる表現も含まれていますが、著者が故人であることと差別を助長する意図はないことを考慮し、原本刊行字の文章のままとしております。 -
日本語と西欧語 主語の由来を探る
「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」(川端康成)は英語で「The train came out of the long tunnel into the snow countory」(サイデンステッカー)。世界を表現する際の「視点」 の違い。英語は「神の視点」を得ることによって主語の誕生を準備したが、「虫の視点」を持つ日本語にはそれは必要なかった。英語の歴史を踏まえ両言語と文化の違いを考察。 -
レオナルド・ダ・ヴィンチ 伝説と実像と
「天才」と呼んだ瞬間に見えなくなる、本当のすごさがわかる! 絵画・彫刻・建築・土木・軍事……多岐にわたるその仕事は、しかしほとんどが未完に終わった。 彼が生きた同時代において、その名声はかならずしも高いものではなかった。 後世にも驚異をもたらすその着想は、実は彼一人の独創ではなく、先達の知見を踏まえてのものだった。 では「天才」というのはまったくの虚像だったのか? いや、そうではない。 現代の美術史研究による精緻な分析によって、まったくあらたな、一人の類い希なる表現者の姿が立ち上がる! 「フレスコ画を描かない画家」だったということにはじまり、ルネサンス期のイタリア各地を転々とする、苦闘と挫折に満ちた創作の人生を追いながら、神格化されたレオナルド像の向こうにある、真価を見いだそうとする試み。 夢想家〈ファンタジスタ〉レオナルド・ダ・ヴィンチの実像をたずねる、スリリングで発見に満ちた探究の美術史! *本書の原本は、2003年に角川書店より『レオナルド・ダ・ヴィンチという神話』として刊行されました。 【本書の内容】 序 章 神格化されたレオナルド 第一章 フレスコ画を描かない画家 一 システィーナ礼拝堂の壁画に参加しなかったレオナルド 二 ヴェロッキオ工房で修業したこと、しなかったこと 三 超えられない先輩ボッティチェッリ 四 ≪東方三博士の礼拝≫―先達への挑戦 第二章 新天地ミラノでの活動 一 ミラノ着任の経緯 二 素描リストの意味 三 技師・発明家・建築家としての真価 第三章 宮廷芸術家の立場と活動 一 舞台美術家としてのレオナルド 二 音楽家・楽器製作者としてのレオナルド 三 スフォルツァ騎馬像制作 第四章 最後の晩餐 一 ついに勝ち得た最大の好機 二 ドラマの表現を完成させたレオナルド 三 成功と悲運 第五章 夢ファンタジスタ想家レオナルド 一 フィレンツェ帰還 二 ≪ジョコンダ(モナ・リザ)≫と晩年のレオナルド 三 絵画による世界の完全な視覚化を目指して 参考文献・図版出典一覧 図版目録 あとがき -
ベルギー大使の見た戦前日本 バッソンピエール回想録
ことしは日本とベルギーが国交を結んでから150年。その間、バッソンピエールが在任した18年間は、日本の運命を決する致命的な諸契機が、歴史のページに次々に刻みこまれていった時代でした。大正天皇の病気、関東大震災、ワシントン、ロンドン両条約における軍縮問題、満洲事変と国際連盟脱退、相次ぐ要人の暗殺、五・一五事件と二・二六事件……。それらを外交官としてつぶさに観察した希有な記録、それが本書です。 -
愛と欲望のナチズム
《すべての性欲を解き放て!》 第三帝国が企てた「快楽」と「生殖」をめぐる大衆動員の実態とは? ナチズム研究をリードする著者による衝撃的論考の増補文庫化! 産めよ殖やせよ。強きゲルマン人の子らを━ナチスは人間の欲望、とりわけ性欲を解放させることで、人々を生殖に駆り立て、社会を支配せんとした。 「厳格で抑圧的なナチズム」という通説のイメージを、膨大な同時代資料を渉猟することによって覆し、性と権力、快楽と大衆操作が絡み合い展開した「欲望の動員」の実態に光を当てる、決定的研究! 【本書「はじめに」より】 本書はこのような観点から、第三帝国下の「性-政治」の実態を描き出そうとするものである。そこでの性と権力の複雑なからみ合いを、体制側の狙いと個々人の実践との齟齬や矛盾にも留意しつつ、性教育、同性愛、裸体文化、婚外交渉などの争点ごとに検証していきたい。その際とくに、従来の一般的な見方とは異なって、ナチズムが市民道徳への反発から性的欲求の充足を奨励し、ある種の「性の解放」を促進したプロセスに注目する。ダグマー・ヘルツォークの研究が明らかにしているように、彼らにとって性は生殖のためだけのものではなく、快楽や喜びをもたらす一種の刺激剤でもあったのであり、それを徹底的に活用した点にこそ、この運動の動員力を説明する手がかりがあると考えられる。その意味で本書は何よりも、生殖と快楽の問題にとりつかれた体制の「欲望の動員」のメカニズムを解明することをめざしている。 【本書の内容】 はじめに 第一章 市民道徳への反発 第二章 健全な性生活 1 性的啓蒙の展開 2 性生活の効用 第三章 男たちの慎み 1 男性国家の悪疫 2 結婚を超えて 第四章 美しく純粋な裸体 1 裸体への意志 2 ヌードの氾濫 3 女性の魅力 第五章 欲望の動員 1 新しい社交 2 悪徳の奨励 3 道徳の解体 おわりに 補章 注 図版出典 あとがき 学術文庫版あとがき 索引 *本書の原本は、2012年に講談社選書メチエより刊行されました。 -
音楽教程
古典的学識に通じ『哲学の慰め』『算術教程』などを著した「最後のローマ人」ボエティウス。その著作群は大きく4つに分けられる。数学的諸学科に関する教育的作品、アリストテレス、キケロ、ポルフュリオスなどの著作の翻訳と注釈、キリスト教神学の哲学的考察、そして最後に『哲学の慰め』。『音楽教程』は第一期に属するもので、ピュタゴラス以降の音楽理論を総覧し詳述しており、後世とくに中世~18世紀までの西洋音楽理論に絶大な影響力を維持していた。「協和・不協和」「音程と旋律」「オクターヴ」「5度」「4度」「全音」「半音」など、音の性質を体系立てたことの意義は大きい。オクターヴの完璧さは何に由来するのか、5度、4度の協和が「完全」である理由は何なのか、また、半音は本当に全音の「半分」なのか、あるいは、旋法の構造はどのようなものなのか。 聴覚に甘美に響くことが音楽の起源ではあるにせよ、そこに判断のすべてを任せる姿勢を批判し、強調されるのは最終的な完全性と認識は理性に存するという一点である。そのうえで探求されるのは、音程あるいは協和音に関する数学的解明であり、モノコルドの弦長を二分割、三分割、四分割……と計算を尽くす方法で「数比」の重要性を明確にし、音程の根拠を示すこと。1500年ほども前に形作られたこの理論の骨子は、音響科学などの知見をもって近代の音楽理論が挑んだ刷新の試みにも完全に克服されたとは言えず、いまだに西洋音楽の基盤をなすものである。 本書は、19世紀のラテン語版刊行物を底本とし、英・仏・独・露語版を参照して翻訳した初めての日本語版である。 -
星界の報告
ガリレオにしか作れなかった高倍率の望遠鏡に、宇宙はどんな姿を見せたのか?──1609年7月に初めて製作した望遠鏡の倍率は3倍。その4カ月後には、他の誰にも追随できない20倍の倍率を実現したガリレオは、翌年初頭から天体観測を開始した。人類が初めて目にしたレンズの先には、月の表面の起伏が、天の川をなす無数の星が、そして木星をめぐる四つの衛星が現れた。人類初の詳細な天体観測の貴重な記録、待望の新訳!※この商品は紙の書籍のページを画像にした電子書籍です。文字だけを拡大することはできませんので、タブレットサイズの端末での閲読を推奨します。また、文字列のハイライトや検索、辞書の参照、引用などの機能も使用できません。 -
魏武注孫子
■英雄たちが読み継いできた『孫子』は、曹操が定めたものだった!■ □1800年受け継がれた”スタンダード”□ 「三国志」の激戦を戦い抜いた「魏武」曹操が、自らの軍事思想を込めて全篇にわたって付した注とともに校勘したその全文が、いまここに明らかに! 読みやすい現代語訳に、懇切な語釈を付した全訳注。 曹操が実践の応用に足るように定本をつくったからこそ『孫子』は現代まで兵法の根本として重んじられてきたことが、よくわかる! さらに、曹操や諸葛亮ら英傑たちが、戦場において孫子の説く兵法をいかに具体化させたかを分析する「実戦事例」も掲載。 『孫子』の真髄がより具体的にわかるようになり、さらには「三国志」の世界もより深く理解することができる画期的全訳。 *本書は講談社学術文庫のための訳し下ろしです。 【本書より】 曹操は、『孫子』の本文が持つ意味を深め、自身の解釈に合うような校勘をしながら、そこに自己の軍事思想を込めたのである。『孫子』は、これ以降、曹操が定めた本文を基本とした。……曹操の存在無くして、現行の『孫子』を考えることはできない(本書「解題」) 【本書の内容】 始計篇 第一 【実戦事例一 白馬の戦い1】 【実戦事例二 烏桓遠征】 作戦篇 第二 【実戦事例三 官渡の戦い1】 謀攻篇 第三 【実戦事例四 赤壁の戦い1】 【実戦事例五 下ヒの戦い】 軍形篇 第四 【実戦事例六 官渡の戦い2】 兵勢篇 第五 【実戦事例七 白馬の戦い2】 【実戦事例八 合肥の戦い】 【実戦事例九 呉の平定】 虚実篇 第六 【実戦事例十 蜀漢滅亡】 軍争篇 第七 【実戦事例十一 諸葛亮の外交】 【実戦事例十二 夷陵の戦い】 【実戦事例十三 博望坡の戦い】 【実戦事例十四 穣城の戦い・ギョウ城の戦い】 九変篇 第八 【実戦事例十五 五丈原の戦い】 行軍篇 第九 【実戦事例十六 諸葛亮の信】 地形篇 第十 【実戦事例十七 泣いて馬謖を斬る】 九地篇 第十一 【実戦事例十八 第一次北伐】 火攻篇 第十二 【実戦事例十九 赤壁の戦い2】 用間篇 第十三 【実戦事例二十 孟達を誘う】 原文 解題 曹操の生涯 年表
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