ルイ・ボナパルトのブリュメール18日

ルイ・ボナパルトのブリュメール18日

880円 (税込)

4pt

3.2

本書は、ジャーナリストとしてのカール・マルクス(1818-83年)が執筆した代表作、待望の新訳です。書名にあるルイ・ボナパルト(1808-73年)は、よく知られているとおり、ナポレオン1世の甥にあたります。1836年に武装蜂起を起こしたものの失敗して国外追放処分を受けたルイは、4年後にもクーデタを試みて失敗、終身禁固の刑を宣告されました。6年後の1846年に脱獄してイギリスに亡命しましたが、そこに勃発したのがヨーロッパ全土を巻き込む1848年の革命でした。
急遽フランスに帰国したルイは、同年9月には憲法制定議会の議員に選出され、貧困層のあいだに根強く残るナポレオン崇拝を利用して、12月には大統領選挙で勝利します。そうして、3年後の1851年12月2日にはクーデタを起こし、反対派の議員を逮捕して議会を解散、国民投票で圧倒的な支持を得ると、ついに翌1852年12月には皇帝に即位し、ナポレオン3世(在位1852-70年)として第二帝政を開始することになるのです。
本書は、この過程をジャーナリストとしてつぶさに見ていたマルクスが、1848年の革命から1851年のクーデタに至る歴史を追いながら、何が起きたのか、なぜナポレオンは次々にみずからの野望を実現することができたのかを分析したもので、ルイが皇帝になった1852年に雑誌で発表されました。ここに見られるのは、巧みに民意を利用して選挙に大勝し、政治と憲法をほしいままにしていくプロセスにほかなりません。同じ光景は、それから150年以上を経た今日、さまざまな国で再現されているものだと言えるでしょう。
――こうした背景を踏まえつつ、数多くの巧みな翻訳を送り出してきた訳者が「慣れない畑」にもかかわらず育て上げた豊かな果実が、この新しい翻訳です。底本は、1869年にハンブルクで単行本として出版された改訂第2版を用いました。
本書の日本語訳としては岩波文庫(1954年)と平凡社ライブラリー(2008年)のものが広く親しまれてきましたが、第2版の翻訳である前者はいかんせん古いと言わざるをえず、後者は新しいものの第1版の翻訳で、必ずしも一般的とは言えません。そのような状況が長らく続いてきた中、練達の訳者による第2版の新訳、たくさんの人たちのニーズに応える、まさに待望の1冊になることでしょう。

[本書の内容]
政治党派一覧
関連年表

はじめに
ルイ・ボナパルトのブリュメール18日

訳者あとがき

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ルイ・ボナパルトのブリュメール18日 のユーザーレビュー

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感情タグBEST3

    Posted by ブクログ 2021年01月24日

    同時代の事実・事件について、その背景やそこに至るまでの流れを概観し、どうしてそんなことが起こったのかということを考察する場合、筆者の思い込みによるバイアスが資料的裏付けや証言にかかってしまうという困難があると思うのだが、マルクスの記述には(もちろんバイアスはかかっているのだろうが)そんなことを少しも...続きを読む

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    Posted by ブクログ 2024年02月17日

    ルイ・ボナパルトこと、ナポレオン三世はとっても変な人で、良い独裁者だったのではないか。民主的な考えを取り入れた独裁者だったと述べたのは鹿島茂氏。本著を読む前に、内田樹氏との対談に目を通した。

    『資本論』がマルクスの資本主義論であるとすれば、本書はマルクスの民主主義論。うん、いたるところ支離滅裂で嘘...続きを読む

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    Posted by ブクログ 2023年04月15日

    1848年の2月革命から1851年のルイ・ボナパルトによるクーデターまでを、同時代人の、あのカール・マルクスが論じた本。
    ナポレオン3世のことを、凡庸でグロテスク、山師、男妾、と蔑称塗れで呼んでいるが、内容は冷静に政治過程を論じてある。

    難しい局面になると、議会政治が機能しなくなり、庶民の不満を求...続きを読む

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    Posted by ブクログ 2021年06月13日

    ジャーナリストとしてのマルクス、もしくはアジテーターとしてのマルクスか。筆が走るままに書いているような勢い。この人が現代にいたらツイッター中毒になっていたのでは、などと要らんことを考えてしまった。

    マルクスといえばロンドンのイメージが強いので、フランスの事情になんでこんなに詳しいのだろうと思って調...続きを読む

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    Posted by ブクログ 2020年05月05日

    マルクスの文章や分析には興味を覚えるが、当時の政治的背景等について一定の知識、理解がないと、本当のスゴさが分かりづらいと思われる。

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