元・東京大学学長、現・学習院大学法学部教授の佐々木毅による政治学の「古典」紹介。
【構成】
まえがき
Ⅰ 政治の意味
プラトン『ゴルギアス』-「魂への配慮」としての政治
マキアヴェッリ『君主論』-全ては権力から始まる
ヴェーバー『職業としての政治』-燃えるような情熱と冷静な判断
Ⅱ 政治権力
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アリストテレス『政治学』-政治権力とは
ホッブズ『リヴァイアサン』-絶対的自由と絶対的権力
ロック『政府論』-社会契約による政治権力の構成
モンテスキュー『法の精神』-権力の制限と制度へのまなざし
バーク『フランス革命についての考察』-保守主義のバイブル
Ⅲ 政治と徳
プラトン『国家(ポリティア)』
-魂を改善し、徳を実現するポリスを求めて
孔子『論語』-仁の政治
Ⅳ 政治と宗教
アウグスティヌス『神の国』-真の正義とは神への服従である
カルヴァン『キリスト教綱要』-政治権力の宗教的使命
ロック『寛容書簡』-政治社会と教会の機能分化
Ⅴ 政治と戦争・平和
トゥーキディデース『戦史』-ポリスの悲劇的実像
孫武『孫子』-「兵とは国の大事なり」
カント『永遠平和のために』-平和のための条件とは
クラウゼヴィッツ『戦争論』-絶対的戦争と政治
Ⅵ 政治と経済
アダム・スミス『国富論』-「良い統治」と経済活動
ヘーゲル『法の哲学』-政治と経済の体系化
マルクス、エンゲルス『共産党宣言』
-プロレタリアートの勝利と政治の終焉
ロールズ『正義論』-リベラリズムの哲学的基礎づけ
Ⅶ 民主政論
ルソー『社会契約論』-人民主権論の魅力と魔力
ジェイ、ハミルトン、マディソン『フェデラリスト』-連邦制と権力分立体制
トクヴィル『アメリカにおけるデモクラシー』-民主政のリスクと可能性
J・S・ミル『代議政体論』-政治参加の作用と副作用
Ⅷ 歴史の衝撃の中で
福沢諭吉『文明論之概略』-「一国の人心風俗」の改革を求めて
孫文『三民主義』-救国の思想
ハイエク『隷従への道』-計画化反対論と自由な社会の擁護
アレント『全体主義の起源』-20世紀とはいかなる時代か
丸山真男『(増補版)現代政治の思想と行動』-政治権力についてどう論じるか
ちくま新書の「○○学の名著30」シリーズの政治学編である。同じ著者が編集した同様の文献紹介に『現代政治学の名著』(中公新書)があるが、本書は現代に限らずプラトン・アリストテレスのギリシア哲学から現代までの古典となった文献を8のテーマに分けて幅広く扱っている。
面白いのは単純に時代順に紹介するのでなく、テーマに分けることで、政治学が各命題をどのように論じてきたのかということが見えてくるという点である。これは著者と編集者の工夫が光っていると言えるだろう。しかも、難解な政治学の文献を平易な言葉で紹介してくれているので、非常にわかりやすく読めるのもありがたいところ。
『歴史学の名著30』の時もそう感じたが、やはり「古典」は学生時代に読んでおくべきだったと改めて感じさせられた。