佐々木毅のレビュー一覧
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本書はヨーロッパ中世の政治思想を知る上での最良の入門書だと思う。中世ヨーロッパがキリスト教(カトリック)の世界だったということは誰でも知っているが、それがどのような思想的基盤によって支えられていたのかについてはあまり教わることがない。本書は両剣論(聖俗二つの権力による統治)から教皇至上主義が成立するまでの過程、トマス・アクィナスの法思想、ルターとカルヴァンによる宗教改革、マキアヴェッリの権力国家論、ジャン・ボダンの主権論などが講義形式で分かりやすく解説されており、近代世界の入り口まで案内してくれる。ホッブズから始まる社会契約説については書かれていないが、本書を読むとそれらの思想が生まれた歴史的経緯がより立体的に理解できるようになる。古代や近現代の政治思想を解説した本は沢山あるが、中世思想を解説した本は概して少ない。その意味でも貴重な一冊だ。
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私が読んだのは講談社版の2022年第31刷版なのですがこれがとにかくおすすめです。というのもまずこの本は「大文字版」ということでシンプルに文字が読みやすいです。文字の見やすさって意外と大事ですよね。特にこうした古典作品ですと小さな文字が並んでいるだけで「うっ!」となってしまう方がたくさんおられると思います。私もそうです。読み始めるのにもかなり覚悟が必要になってきます。その点でこの「大文字版」は非常にありがたいです。
また、本書の冒頭に訳者による「まえがき」があり、そこで時代背景やこの本を読む際のポイントなどを解説してくれています。これもわかりやすく、挫折しがちな『君主論』を読み通す際に大きな助けになってくれると思います。
そして『君主論』そのものについてなのですが、正直前半部分はあまり面白くないです。内容も掴みにくく、読むのが苦しい展開が続きます。ですがそれを耐えて中盤に差し掛かる頃、第六章くらいですね、この辺から一気に面白くなってきます。ですので前半はなんとか耐えてください。厳しければ流し読みでも構いません。中盤まで来てしまえば一気に読みやすくなります。別物の作品なのではないかというくらい面白くなってきます。
私もかつて『君主論』に挫折した一人でありますがまさにこの前半で躓き、中盤からの展開を全く知らずにおりました。もしあの時中盤までたどり着けていたら挫折することなく読み切ることができたかもしれません。それほど中盤からの展開は面白いのでぜひご期待ください。
そして繰り返しになりますがぜひ『君主論』を読む前に高階秀爾著『フィレンツェ』とサマセット・モーム著『昔も今も』を読んで頂ければと思います。この二作品を読めば『君主論』がとてつもなく意味深く面白い作品であることがよくわかります。これは絶対におすすめしたいです。 -
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元・東京大学学長、現・学習院大学法学部教授の佐々木毅による政治学の「古典」紹介。
【構成】
まえがき
Ⅰ 政治の意味
プラトン『ゴルギアス』-「魂への配慮」としての政治
マキアヴェッリ『君主論』-全ては権力から始まる
ヴェーバー『職業としての政治』-燃えるような情熱と冷静な判断
Ⅱ 政治権力
アリストテレス『政治学』-政治権力とは
ホッブズ『リヴァイアサン』-絶対的自由と絶対的権力
ロック『政府論』-社会契約による政治権力の構成
モンテスキュー『法の精神』-権力の制限と制度へのまなざし
バーク『フランス革命についての考察』-保守主義のバイブル
Ⅲ 政治と徳
プラトン『国家(ポリティア)』
-魂を改善し、徳を実現するポリスを求めて
孔子『論語』-仁の政治
Ⅳ 政治と宗教
アウグスティヌス『神の国』-真の正義とは神への服従である
カルヴァン『キリスト教綱要』-政治権力の宗教的使命
ロック『寛容書簡』-政治社会と教会の機能分化
Ⅴ 政治と戦争・平和
トゥーキディデース『戦史』-ポリスの悲劇的実像
孫武『孫子』-「兵とは国の大事なり」
カント『永遠平和のために』-平和のための条件とは
クラウゼヴィッツ『戦争論』-絶対的戦争と政治
Ⅵ 政治と経済
アダム・スミス『国富論』-「良い統治」と経済活動
ヘーゲル『法の哲学』-政治と経済の体系化
マルクス、エンゲルス『共産党宣言』
-プロレタリアートの勝利と政治の終焉
ロールズ『正義論』-リベラリズムの哲学的基礎づけ
Ⅶ 民主政論
ルソー『社会契約論』-人民主権論の魅力と魔力
ジェイ、ハミルトン、マディソン『フェデラリスト』-連邦制と権力分立体制
トクヴィル『アメリカにおけるデモクラシー』-民主政のリスクと可能性
J・S・ミル『代議政体論』-政治参加の作用と副作用
Ⅷ 歴史の衝撃の中で
福沢諭吉『文明論之概略』-「一国の人心風俗」の改革を求めて
孫文『三民主義』-救国の思想
ハイエク『隷従への道』-計画化反対論と自由な社会の擁護
アレント『全体主義の起源』-20世紀とはいかなる時代か
丸山真男『(増補版)現代政治の思想と行動』-政治権力についてどう論じるか
ちくま新書の「○○学の名著30」シリーズの政治学編である。同じ著者が編集した同様の文献紹介に『現代政治学の名著』(中公新書)があるが、本書は現代に限らずプラトン・アリストテレスのギリシア哲学から現代までの古典となった文献を8のテーマに分けて幅広く扱っている。
面白いのは単純に時代順に紹介するのでなく、テーマに分けることで、政治学が各命題をどのように論じてきたのかということが見えてくるという点である。これは著者と編集者の工夫が光っていると言えるだろう。しかも、難解な政治学の文献を平易な言葉で紹介してくれているので、非常にわかりやすく読めるのもありがたいところ。
『歴史学の名著30』の時もそう感じたが、やはり「古典」は学生時代に読んでおくべきだったと改めて感じさせられた。 -
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久々に読んで面白かった新書だった。「プラトンの呪縛」などの本で知られる佐々木毅教授の本。(理論)政治学の名著30冊を、それぞれの時代背景などを付けて紹介する。西洋政治学に偏ることなく、孫子や孔子、福沢諭吉のような東洋思想家も入っている所が非常に良い点だと思う。
だが一番勉強になるのは、まえがきではないかと思った。政治学の名著に向き合う時に求められる条件として、
「この解があるようでない世界(人間の集団生活の在り方と個々のメンバーの生殺与奪に関わること)について知的なチャレンジを繰り返すことに一定の共感と意味を見出すこと」
をあげる。そして、
「政治についてどう考えるかが政治の現実を構成する要因である、という無視できない現実に思いを致すこと」
がその際に重要になると説く。うーん、含蓄深いお言葉。。 -
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なかなか上質なビジネス書でございました! ビジネス書じゃない? まっさかー(^^)
んで、本書が書かれたのは1500年頃とのことですが、その理念は現在にも通ずるところがあります。君主を上司、リーダーと置き換えてみたり、臣民を部下と置き換えてみたりすると、意外としっくりきちゃうのです。今後、まったくの新天地にリーダーとして招きいれられた場合、どのようにふるまったらいいのか、そのヒントがここに記されています。
もちろん、すべてが全て使えるというものでもないでしょう。さすがに、権力者を一同に集めて暗殺するなんてね。まあ、そのへんは比喩的に捉えてみたらいいのだと思います。
繰り返しになりますが、一つのリーダー論がここにあります。リーダーたる者、どのように行動すればよいのか? 部下とどのように接すればよいのか? 自分と同程度の権力を持つ方を対処するには? などの考え方を参考にしてみるのも面白いです。こんな時代だからこそ『君主論』! (`ー゜)b
ただ、作品の成立背景から「世界史」的な世界観が見え隠れし、そのような記述が多く見られます。そのため、高校時代に「世界史」を嫌いだった方、特に「え、僕? いやあ日本史選択だったなあ。世界史ってカタカナ多いじゃん? ああいう人名とかマジ無理なんだよねー」なんて言ったことのある人には、読んでいて辛いところもあるかと。まあ実際、僕がそうだったんですがね。
【目次】
まえがき
君主論
マキアヴェッリ年表
索引 -
購入済み
君主論を読むなら・・・
佐々木毅氏のマキアヴェッリ関連本はこの本の他に「君主論」もありますが、マキアヴェッリの生い立ちから知るには、この本から読んだ方がいいと思います。
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佐々木毅(1942年~)氏は、政治学・西洋政治思想史を専門とする、日本を代表する政治学者。東京大学総長、国立大学協会会長などを歴任し、現在、(社)学士会理事長、東京大学名誉教授。紫綬褒章、文化功労者、瑞宝大綬章、文化勲章などを受章している。
本書は、古今東西の政治学の古典・名著から厳選された30冊について、そのエッセンスをそれぞれ6ページ程度で紹介したものである。
収録されているのは、マキアヴェッリ『君主論』、ヴェーバー『職業としての政治』、ホッブズ『リヴァイアサン』、モンテスキュー『法の精神』、プラトン『国家』、孔子『論語』、アウグスティヌス『神の国』、カント『永遠平和のために』、クラウゼヴィッツ『戦争論』、マルクス&エンゲルス『共産党宣言』、ロールズ『正義論』、トクヴィル『アメリカにおけるデモクラシー』、福沢諭吉『文明論之概略』、孫文『三民主義』、ハイエク『隷従への道』、アレント『全体主義の起源』等。
私は、2007年の初版を購入し、これまで部分的に拾い読みをしてきたが、今般改めて全体を通して見てみようとしたのは、昨今の世界が(特に)政治的に行き詰っていると強く感じているからであるが、著者は図らずも「まえがき」でこう述べているのだ。「政治学の名著なるものはその内容が非常にごつごつとしている。そこでは人間の集団生活のあり方と個々のメンバーの生殺与奪に関わることが話題の中心であり、お互いに踏まえる現実も創造しようとする現実も異なっている。この解があるようでない世界について知的なチャレンジを繰り返すことに一定の共感と意味を見出すこと、これが政治学の名著と付き合う時に求められる条件である。・・・これらの名著が単なる知的アクセサリーの域を遥かに越えて、まさに現実を支え、さらには新しい政治的な現実を生み出した原動力でもあったことを忘れてはならない。このように政治学の名著は単に「ありがたがるべきもの」であるに止まらず、そこには恐るべき力が秘められていたのである。・・・その意味で政治学の名著はシリアスに受けとめられなければならない。そしてシリアスなものをシリアスに受けとめる習慣をなくすことはやがて大きな災いの素になるであろう。」と。
翻って、現実の世界はどうであろうか。「Alternative facts(もう一つの事実)」という驚くべき発言を臆面もなく繰り返す某国大統領をはじめ、世界の少なからぬ政治家・指導者が、思考することを止め、あまりに短絡的・感覚的なパフォーマンスに終始してはいないだろうか。。。
政治学は、自然科学とは異なり、おそらく唯一の正解の存在しない世界である。
しかし、いや、だからこそ、我々は、政治について「シリアスに」考え、今日よりも少しでも良い明日のために、「知的チャレンジ」を繰り返さなければならないのではないかと思う。
(2020年4月了) -
Posted by ブクログ
訳が上手くてとても読みやすかった。
なんとなく孫子と似ているな、と思う。
ただ、孫子は主に軍事面から論じており、君主論は統治面から論じている点が違いだと思う。
当時のイタリアの世相や社会情勢が本からよく伝わってくる。
孫子はあまり感情的な記述が少なく作者の想いはあまり見えてこない教科書的な内容(これは善し悪しではなく)だけど、君主論は作者の感情面が伝わってきて面白い。
自分のキャリアから得た経験を客観的かつ冷静に分析している著者マキャベリの頭の良さ、みたいなものがにじみ出てます。
内容としては、思い当たる節が色々ある。
【メモ】
ところが人間は思慮が足りないために、あることを始めるに際して好ましい面があるとそこに潜んでいる毒には気がつかないものである。
→全くですね。はい…笑 -
Posted by ブクログ
立場によって読み取り方が異なる本。
世間でいうマキャベリズムとこの本で本当に言おうとしていることは違うと思います。
君主がどうあるべきかを述べた本であり、君主になるための方法論ではありません。
エッセンスをビジネス書として読むことができます。
1.この本を一言で表すと?
・超現実的な政治手法
2.よかった点を3〜5つ
・人間は寵愛されるか、抹殺されるか、そのどちらかでなければならない(p38)
→人間の本質を見抜いている。
・すべての国にとって重要な土台となるのは、よい法律とよい武力とである(p105)
→権力の根源をわすれてはいけないという戒め。
・賢明な君主は信義を守るのが自らにとって不都合で約束をした際の根拠が失われたような場合、信義を守ることができないし、守るべきではない。(p142)
→言い訳はいくらでもある。言い方次第。
・君主は愛されるより恐れられる方が安全である。(p136)
→君主はあくまで権力者ということ。
・君主が軽蔑されるのは無節操、軽薄、軟弱、臆病、優柔不断と見られる場合である。君主はあたかも暗礁を警戒するように、このように見られないように用心しなければならない。(p147)
→軽蔑される⇒権威がなくなる⇒権力なくなる⇒破滅
2.参考にならなかった所(つっこみ所)
・国の維持、権力の維持は何のためにするのか、説明が無いのでは?
・国民の幸せという視点が一切ない。