佐々木毅のレビュー一覧
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本書はヨーロッパ中世の政治思想を知る上での最良の入門書だと思う。中世ヨーロッパがキリスト教(カトリック)の世界だったということは誰でも知っているが、それがどのような思想的基盤によって支えられていたのかについてはあまり教わることがない。本書は両剣論(聖俗二つの権力による統治)から教皇至上主義が成立するまでの過程、トマス・アクィナスの法思想、ルターとカルヴァンによる宗教改革、マキアヴェッリの権力国家論、ジャン・ボダンの主権論などが講義形式で分かりやすく解説されており、近代世界の入り口まで案内してくれる。ホッブズから始まる社会契約説については書かれていないが、本書を読むとそれらの思想が生まれた歴史的
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私が読んだのは講談社版の2022年第31刷版なのですがこれがとにかくおすすめです。というのもまずこの本は「大文字版」ということでシンプルに文字が読みやすいです。文字の見やすさって意外と大事ですよね。特にこうした古典作品ですと小さな文字が並んでいるだけで「うっ!」となってしまう方がたくさんおられると思います。私もそうです。読み始めるのにもかなり覚悟が必要になってきます。その点でこの「大文字版」は非常にありがたいです。
また、本書の冒頭に訳者による「まえがき」があり、そこで時代背景やこの本を読む際のポイントなどを解説してくれています。これもわかりやすく、挫折しがちな『君主論』を読み通す際に大きな -
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元・東京大学学長、現・学習院大学法学部教授の佐々木毅による政治学の「古典」紹介。
【構成】
まえがき
Ⅰ 政治の意味
プラトン『ゴルギアス』-「魂への配慮」としての政治
マキアヴェッリ『君主論』-全ては権力から始まる
ヴェーバー『職業としての政治』-燃えるような情熱と冷静な判断
Ⅱ 政治権力
アリストテレス『政治学』-政治権力とは
ホッブズ『リヴァイアサン』-絶対的自由と絶対的権力
ロック『政府論』-社会契約による政治権力の構成
モンテスキュー『法の精神』-権力の制限と制度へのまなざし
バーク『フランス革命についての考察』-保守主義のバイブル
Ⅲ 政治と徳
プラトン『国家( -
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久々に読んで面白かった新書だった。「プラトンの呪縛」などの本で知られる佐々木毅教授の本。(理論)政治学の名著30冊を、それぞれの時代背景などを付けて紹介する。西洋政治学に偏ることなく、孫子や孔子、福沢諭吉のような東洋思想家も入っている所が非常に良い点だと思う。
だが一番勉強になるのは、まえがきではないかと思った。政治学の名著に向き合う時に求められる条件として、
「この解があるようでない世界(人間の集団生活の在り方と個々のメンバーの生殺与奪に関わること)について知的なチャレンジを繰り返すことに一定の共感と意味を見出すこと」
をあげる。そして、
「政治についてどう考えるかが政治の現実を構成 -
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以前に岩波文庫のものを読んだが、二度同じものを読むよりは訳者が違うものを読む方がいいと考え、今回は講談社学術文庫のものを手に取った。
改めて目次を見てみると、目次のすごさが目を引いた。目次を見るだけでマキャベリという人が対象をどれだけ明快に分類し、考察していたかがわかる。
「本は目次が大事」はその通りかもしれない。目次が良くないものは、著者も明快に考察できていないと考えた方がよい。
この本を読むのは二度目で、しかも『わが友マキアヴェッリ』や『マキアヴェッリ語録』を読んだ後なのでスーッと入ってくる。なんといっても一気に読み通せてしまう長さであるのが良い。訳は特別良くもなく、悪くもなく…。一章ごと -
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なかなか上質なビジネス書でございました! ビジネス書じゃない? まっさかー(^^)
んで、本書が書かれたのは1500年頃とのことですが、その理念は現在にも通ずるところがあります。君主を上司、リーダーと置き換えてみたり、臣民を部下と置き換えてみたりすると、意外としっくりきちゃうのです。今後、まったくの新天地にリーダーとして招きいれられた場合、どのようにふるまったらいいのか、そのヒントがここに記されています。
もちろん、すべてが全て使えるというものでもないでしょう。さすがに、権力者を一同に集めて暗殺するなんてね。まあ、そのへんは比喩的に捉えてみたらいいのだと思います。
繰り返しになりま -
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佐々木毅(1942年~)氏は、政治学・西洋政治思想史を専門とする、日本を代表する政治学者。東京大学総長、国立大学協会会長などを歴任し、現在、(社)学士会理事長、東京大学名誉教授。紫綬褒章、文化功労者、瑞宝大綬章、文化勲章などを受章している。
本書は、古今東西の政治学の古典・名著から厳選された30冊について、そのエッセンスをそれぞれ6ページ程度で紹介したものである。
収録されているのは、マキアヴェッリ『君主論』、ヴェーバー『職業としての政治』、ホッブズ『リヴァイアサン』、モンテスキュー『法の精神』、プラトン『国家』、孔子『論語』、アウグスティヌス『神の国』、カント『永遠平和のために』、クラウゼヴ -
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訳が上手くてとても読みやすかった。
なんとなく孫子と似ているな、と思う。
ただ、孫子は主に軍事面から論じており、君主論は統治面から論じている点が違いだと思う。
当時のイタリアの世相や社会情勢が本からよく伝わってくる。
孫子はあまり感情的な記述が少なく作者の想いはあまり見えてこない教科書的な内容(これは善し悪しではなく)だけど、君主論は作者の感情面が伝わってきて面白い。
自分のキャリアから得た経験を客観的かつ冷静に分析している著者マキャベリの頭の良さ、みたいなものがにじみ出てます。
内容としては、思い当たる節が色々ある。
【メモ】
ところが人間は思慮が足りないために、あ -
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立場によって読み取り方が異なる本。
世間でいうマキャベリズムとこの本で本当に言おうとしていることは違うと思います。
君主がどうあるべきかを述べた本であり、君主になるための方法論ではありません。
エッセンスをビジネス書として読むことができます。
1.この本を一言で表すと?
・超現実的な政治手法
2.よかった点を3〜5つ
・人間は寵愛されるか、抹殺されるか、そのどちらかでなければならない(p38)
→人間の本質を見抜いている。
・すべての国にとって重要な土台となるのは、よい法律とよい武力とである(p105)
→権力の根源をわすれてはいけないという戒め。
・賢明な君主は信義を守るのが