あらすじ
それぞれに忠誠心を要求し、人間の行動を左右し、激しく衝突してきた「聖」と「俗」との長い抗争は、政治に何をもたらしたのか。「政治とは何か」を考えるシリーズ二冊目の本書は、教皇至上権とトマス・アクィナスの政治論、ルターの宗教改革、マキアヴェッリの権力論、さらに宗教戦争を経て、「政治の解体」が訪れ、中世が終幕をむかえるまでを論じる。(講談社学術文庫)
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Posted by ブクログ
本書はヨーロッパ中世の政治思想を知る上での最良の入門書だと思う。中世ヨーロッパがキリスト教(カトリック)の世界だったということは誰でも知っているが、それがどのような思想的基盤によって支えられていたのかについてはあまり教わることがない。本書は両剣論(聖俗二つの権力による統治)から教皇至上主義が成立するまでの過程、トマス・アクィナスの法思想、ルターとカルヴァンによる宗教改革、マキアヴェッリの権力国家論、ジャン・ボダンの主権論などが講義形式で分かりやすく解説されており、近代世界の入り口まで案内してくれる。ホッブズから始まる社会契約説については書かれていないが、本書を読むとそれらの思想が生まれた歴史的経緯がより立体的に理解できるようになる。古代や近現代の政治思想を解説した本は沢山あるが、中世思想を解説した本は概して少ない。その意味でも貴重な一冊だ。