佐々木毅のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
狐のような狡猾さと獅子のような獰猛さを以て統治せよ、といったフレーズで議論を巻き起こしたと言われる本。まぁ一つのフレーズが一人歩きして印象を代表してしまうことはこの本に限らずいくつもあるだろうけど、ご多聞に漏れずこれも言うほど過激ではないと思う。表面上穏やかなだけな人を「優しい人」と呼ぶ種類の人間にとっては、過激と捉えられるだろうが。
全部で20数章にわたって著者が仕える君主に対して上梓する君主足るものこうすべき、といったことが書かれている。様々な事象を持ち出すのはよいことだが、それぞれのケースについて知らないとあまりピンと来ないどころか、どっちが味方だかわからないというようなことにもなって非 -
Posted by ブクログ
現代の政治学を学ぶにあたって欠かすことのできない重要な文献の内容紹介をおこなっている本です。とりあげられているのは、ウェーバー『職業としての政治』、ミヘルス『政党の社会学』、リップマン『世論』、ハイエク『隷従への道』、アレント『人間の条件』、ダール『ポリアーキー』、ロールズ『正義論』、ハーバーマス『後期資本主義における正当化の諸問題』、丸山眞男『現代政治の思想と行動』など、15冊です。
編者の佐々木毅には、本書のほかに『政治学の名著30』(ちくま新書)という著作もあり、こちらは単著のかたちで政治学の重要文献を紹介しています。これに対して本書は、それぞれの著作の内容とその現代的意義を、各執筆者 -
Posted by ブクログ
世界史をほとんど知らないので、今一つ具体的事例がピンと来なかったが、抽象度の高い記載は、君主をリーダーや経営者に置き換えて読むと、十分現代にも通じる。(当たり前だが。)
内容的には、韓非子に通じるように感じた。韓非子よりずっとコンパクトだけど。
「心の訓練についてみるに、君主は歴史を読み、その中で偉人達の行動を考察しなければならず、戦争において彼らがどのように行動したかを知り、勝因と敗因とを検討して後者を回避したり前者を模倣したりできなければならない。そしてこれら偉人達も彼ら以前に称賛と栄光を体現していた人物を模倣し、その者の立ち居振舞を座右の銘としたのであった。」
「恐れられるよりも愛される -
Posted by ブクログ
マキアヴェッリの『君主論』は「目的のためには手段を選ばず」というマキャベリズムを説いた書として長年批判されてきたものであるが、マキアヴェッリが本書を著した時代背景を踏まえると、大分異なる捉え方のできる著作である。
マキアヴェッリが活躍したルネサンス末期、16世紀初頭のイタリアは小国に分裂し、互いに領土を奪い合い、かつ大国フランスやスペインからも領地と財産を狙われる戦乱の時代で、マキアヴェッリは弱小国フィレンツェ共和国の官僚として外敵の脅威にさらされ続けた。
そして、他国の様々な権力者について見聞きしたことから学んだ君主のあるべき姿をまとめ、自国の君主メディチ家の小ロレンツォに献呈したものが『君 -
Posted by ブクログ
どのみち協働は避けられないのであれは、リーダ、フォロワのいずれの立場であったとしても統治の本質は理解すべきであり、本書はヨーロッパという様々な国を例に幾つかのパターンと比較によりその本質を暴く本である。
何らかのヒトのまとまりで協働する場合、その統治について過去の経験を得るための本である。現在や日本という土地にいると気づきにくい観点も含め広く論じられている。
統治される側からすれば、自らをより有利な環境に置きたくなるのは当然であり、その判定はかなり本能的になりがちである。その本人の資質も当然関与するだろうが、他者との関係性などの環境要因が大きいと改めて思った。
本書では、トルコ、フランスの統治 -
Posted by ブクログ
<きっかけ>
先に読んだ本「選ばれるプロフェッショナル」で紹介されていた。
<学んだもの>
リーダーが備えるべき資質、取るべき配慮・行動
<内容/感想>
前半でマキアヴェッリの人生、後半で君主論の和訳を記述。
前半を受けて後半を読む構成はとても良かったが、前提知識がない中では前半の文章が非常に読みづらかった。後半はすっきり明快。
あるべき君主像を論じるというよりは、「傭兵は用いない」「万人受けを狙わない」「人に憎まれることだけは避ける」など、新しく君主になる際に気をつけること、君主になった後に気をつけることといった、君主が取るべき配慮や行動について具体的・実践的に記述されている。 -
Posted by ブクログ
最近のマイテーマ「戦争・戦略論」の自主課題図書。
もーっとえげつない権謀術数論かと思いましたが、思ったより、普通。
暗黙の了解を敢えて文章にしました的な。
まあ、その時代にそれをしたことに意義があるのでしょうけれど。
さすがに今の時代にそぐわないと思われるありますが(1513年の作品ですから…約500年前?)むしろ今でも十分通用する指摘もいっぱい。
個人的に16章~19章、23章、25章はなるほどと思わされた。
あくまで「上に立つ者」として、だけど。
私には無理だ。
しかしこの本を書いたマキアヴェリ自身が当時の政治情勢・君主に翻弄される人生を送ったのは皮肉であること。