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阿含経典
ブッダはなにを語り、どのように説いたのか。その教えを最も純粋なかたちで伝える最古層の重要な仏教経典の集成。阿含=アーガマとは伝承されてきた聖典を意味する。これらの経典群のなかには、あらゆる宗派を超えた仏教の原初のすがたがあり、その根本がある。本書は厖大な阿含経典群のなかから、よく古形を保ち、原初的な経と判定される諸経をとりあげ、パーリ語原典からの現代語訳と注解で構成。第1巻は、ブッダの悟りの内容を示す「存在の法則(縁起)に関する経典群」と、その法則に即して人間をかたちづくる要素を吟味した「人間の分析(五蘊)に関する経典群」を収録する。 -
物理学の発展 ――山本義隆自選論集II
近代に入り、飛躍的な発展を遂げた物理学。自選論集の完結編にあたる本書では、熱力学や電磁気学などの18、19世紀における革新的な成果を跡づけつつ、古典力学から量子論・量子力学の誕生までの道筋をたどる。18世紀を代表する数学者オイラーをめぐる「Eulerの力学」、近代における宇宙像の転換を論じた「カントと太陽系の崩壊」、熱力学の形成と発展を概観する「力学と熱学」、量子力学の入門となる「量子論から量子力学へ 量子力学入門」、さらにはかつて予備校生に向けて語った相対性理論の基礎講義に大幅な加筆修正を施した「相対性理論入門講座」など、計12本の論考を収録。 -
日中15年戦争
「戦争へのあこがれ」に抗して 多様な人びとの視点とともに描く全体像 1931年から1945年まで15年の長きにわたる戦争で、日本はどの国にまけたのか? 多様なひとびとの視点を通して全体像を復元する。解説 一ノ瀬俊也 === 1931年から1945年の15年にわたる戦争で、日本はアメリカにのみならず中国にも敗北したのだ 著者は、陸軍の企図・満州利権・戦費調達など国内の政治経済的背景に加え、中国側の論理も含めて戦争の経緯を解く。生々しい戦場の実態や兵士の証言など、個々人にも強い焦点をあてた著者特有の記述が、戦争の真の全体像を浮き彫りにし、戦後日本社会の深層に与えた影響も説明する。歴史教育現場からの発言を続けた著者が豊富な史料を交え、人間の内なる「戦争へのあこがれ」に抗すべく、平和への熱情を注ぎこんだロングセラー。 【目次】 概観 日中戦争と太平洋戦争 一つの質問/忘れられた感覚 第1章 中国革命にはむかうもの 国民革命と日本/山東出兵 「田中外交」の展開/張作霖爆殺事件 第2章 乾いた大陸 満州事変 一九三一年九月十八日 日中十五年戦争の開始/ゼロアワーへの道 満州事変はなぜ起こったか/関東軍と陸軍参謀本部 ある「謀略」の構造 第3章 満州占領 「王道楽土」の現実 たたかいの日々/「満州国」の誕生 第4章 上海のたたかい ある「序曲」 「爆弾三勇士」/「国際都市」上海のたたかい/上海停戦協定 第5章 万里の長城をこえるとき 「ドミノ理論」のゆくえ 国際連盟・脱退/「王道楽土」の幻影/「華北分離工作」の形成 第6章 統一中国への道 大長征 よみがえる中国共産党/「幣制改革」 経済統一の進展/西安事変 第7章 日中全面戦争の開始 「七夕」の夜の銃声 蘆溝橋事件/一九三七年夏・東京/「支那事変」の成立 第8章 苦悶する中国 南京「陥落」/第二次国共合作の成立 八路軍の誕生 第9章 「国民政府を対手とせず」 いわゆる「不拡大派」の敗退/近衛声明/どこへゆく? 近衛内閣 第10章 たたかいの日々 徐州・漢口・広東 一九三八年 徐州 「対支消極持久」方針の成立/『麦と兵隊』ノート/一九三八年 漢口・広東 第11章 生と死の構造 ひもじさの間奏曲/まずしき兵站線/死者たちの群像 苦痛のカルテ 第12章 北のくにの「銃後」 「赤紙」がきた/「銃後」万華鏡 第13章 もう一つの「中華民国」 ある「偽国」の成立 汪兆銘工作/「中華民国」政府の成立 和平交渉の終末点 第14章 「点と線」への道 華中と華南のたたかい/百団大戦 八路軍が反撃する/八路軍のたたかい方 ただ一つの「秘密の兵器」 第15章 「軍国化」の経済構造 軍国財政と国民生活/国家総動員法の成立と展開/軍国日本の土台 戦争が社会を変える 第16章 ある「共和国」の誕生 「辺区」の抵抗の構造 巷にて/晋察冀辺区のなりたち/「辺区」展開図 第17章 ある中国理解者の生涯 尾崎秀実の生と死 尾崎・ゾルゲ事件/彗星の出現/ある死刑囚の最期 “Ecce Homo” 第18章 日中戦争から日米戦争へ 日中戦争と日独伊三国同盟/日中戦争と日米交渉 第19章 たたかいのはてに 12枚のカード たたかいのなかのたたかい 終局 文庫版解説 戦争の全体像復元の壮大な試み 一ノ瀬俊也 -
中国の神話・伝説
文明を築いた古帝王、跋扈する鬼神、天人女房 超自然にして荒唐無稽な物語 一挙総覧! 文明を築いた古帝王、跋扈する鬼神――。中国古典に残された伝承の数々をテーマごとに集大成し、第一人者による解説とともに読む。 === 古代より連綿と、強大な帝国を築いてきた中国。その現実主義とはうらはらに、社会には超自然的で荒唐無稽な物語への関心は根深く浸透しており、『史記』『漢書』のような正史から『書経』『韓非子』など思想書にも古い神話や伝承の断片がちりばめられている。本書はそれらを、「天体」「神界からの贈り物」「怪物退治」「洪水/旱魃」「異界訪問」「英雄出生」「異類女房」などに分類して集成。お馴染みの日本の神話や伝承との照らしあわせも、随所に差しはさむ。斯界の大家による明快な解説とともに、豊醸なる中国神話の全体像を掴むことができる。図版多数。 解説 森和 【目次】 はじめに―中国の神話・伝説の特色 1 創世神話 2 天体の神話・伝説 3 諸文化の起源神話 4 習俗の由来伝説 5 鬼・神(神と怪物)の神話・伝説 6 怪物退治 7 旱魃と長雨 8 治水伝承 9 湖底に沈んだ県城 10 動物の築城 11 異界訪問 12 神の贈り物 13 動物報恩 14 異類女房 15 人の運命 16 英雄異常出生 17 名剣・名画の由来 18 飢餓と疾病 19 異族・異形民の起源 20 地名などの由来 21 歴史伝説 22 事物の由来伝説 23 奇妙な伝説 文庫版解説 森和 -
十五年戦争小史
戦争は、誰によっておこされ、どのように展開したか――。本書では、1931年の柳条湖事件の謀略に始まり、45年ポツダム宣言受諾と降伏文書調印によって終わった一連の戦争を「十五年戦争」と呼び、その曲折に満ちた過程と全体像を克明に描く。アジア覇権主義を掲げる日本軍部と対米英協調路線の宮中グループとのせめぎ合い、マスコミの報道によって国内で急速に高まる排外主義、アジア太平洋戦争へと向かう御前会議のありよう………。満州事変、華北分離、日中戦争、アジア太平洋戦争で構成される各部には年表、関係地図を付し、制度や組織の変遷、人事の系統図なども適宜配した。長年読み継がれてきた画期的通史。 -
宋名臣言行録
北宋時代とは、士大夫層の形成とともに中国的官僚制が確立した時代である。また、王安石の新法をめぐり、新旧両世代の対立と混乱に彩られた変革期でもあった。朱子学の大成者・朱熹が編纂したという『宋名臣言行録』(『五朝名臣言行録』と『三朝名臣言行録』の総称)は、北宋百五十年における名臣たちの言動を集録したもので、唐代の『貞観政要』と並び立つ書である。本編訳書では、明快な日本語訳と書き下し文に加え、八朝の天子の特色や登場人物の経歴、言行各条の背景を説明することで、北宋時代史としても通覧できる構成を取っている。組織での身の処し方について、名臣たちはいかなる知恵をわれわれに伝えるのか。不朽の古典がここに甦る。 -
カント入門講義 ――超越論的観念論のロジック
我々が生きている世界は、心の中の世界=表象にすぎない。その一方で、しかし同時に「物自体」はある、とも言うカントの超越論的観念論。そのカラクリとして、基本的なものの見方・考え方の枠組みが人間の心にはあらかじめセットされているとカントは強調したわけだが、この点を強調することによって、その哲学は、後年の哲学者達の思想的転回に大きく貢献したと著者は説く。平明な筆致で知られる著者が、図解も交えてカント哲学の要点を一から説き、各ポイントが現代の哲学者に至るまでどのような影響を与えてきたかを一望することのできる一冊。 -
物理学の誕生 ――山本義隆自選論集Ⅰ
科学史家・山本義隆がこれまでに発表した物理学/物理学史に関する20本以上の論文・講演原稿・書評などを集成、全2巻として刊行する。物理学とはどのような学問で、いかなる発展を遂げてきたのか。『物理学の誕生』と題した本書では、「16世紀文化革命」に注目しつつ、古代からコペルニクス、ケプラーを経て近代力学の形成までの過程を中心にたどる。山本義隆による山本義隆入門ともいうべき画期的論集。収録論考:「アリストテレスと占星術」「シモン・ステヴィンと16世紀文化革命」「「ガリレイ革命」をめぐって」「ニュートンと天体力学」「物理学の誕生」など。 -
ラテン語とギリシア語
ヨーロッパ文明の礎であるラテン語とギリシア語。印欧語族の古層に属する両言語は、近代語が失った複雑な規則を持つことから、現代人が習得するのは容易ではない。本書は文字、発音から形態に至るまで、二つの言語を対比させながらその全体像を描き出す。名詞や形容詞の格変化、動詞の細かな時制と態(ギリシア語特有の「アオリスト」や「中動態」)、その動詞がさらに変化した分詞──。様々な特徴を古典の例文とともに見ることで、複雑さに支えられた豊かな表現を持つ、ラテン語とギリシア語の輪郭が浮き彫りになる。古典語のエッセンスを凝縮したコンパクトにして本格的な案内書。 解説 吉川斉 -
幾何学の基礎をなす仮説について
一般相対性理論の概念的基礎であることが判明して再び脚光をあびたリーマン幾何学は、1854年の本書収録講演に始まる。この講演にガウスは珍しく高い評価を与えたという。すでに平行線公準の否定に始まるロバチェフスキーやボヤイの非ユークリッド幾何学はあったが、リーマンは、幾何学といいながら図形からでなく、位置を表すn個の変数の組や曲線の長さから新しい幾何学を組み立てた。数式をほとんど用いない哲学的な講義内容を、ワイルがていねいに数式展開しながら注釈。また序文でも本講演の意義を、理論物理学における遠隔作用から接近作用への潮流になぞらえ熱く語っている。ミンコフスキーの論文「空間と時間」併収。解説 H.ワイル -
夜這いの民俗学・夜這いの性愛論
筆下し、水揚げ、若衆入り、夜這い……。ムラであれマチであれ、伝統的日本社会は性に対し実におおらかで、筒抜けで、公明正大であった。日本民俗学の父・柳田国男は“常民の民俗学”を樹ち立てたが、赤松は、「性とやくざと天皇」を対象としない柳田を批判し、“非常民の民俗学”を構築し、柳田が切り捨ててきた性民俗や性生活の実像を庶民のあいだに分け入り生き生きとした語り口調で記録した。『夜這いの民俗学』『夜這いの性愛論』の二冊を合本した本書は、性民俗の偉大なフィールド・ワーカー赤松啓介のかけがえのない足跡を伝える。【解説:上野千鶴子】 -
英語の習得法
『英語類義語活用辞典』『日英語表現辞典』などの編著者であり、「英語力に練達の人」としてつとに名高い最所フミ。彼女は、言語の機能とは与えられたものをcomprehend(了解)し、absorb(吸収)して、express(外面化)するプロセスの繰り返しにあるとする。そのうえで英語を学ぶ人々に、よりいっそう力を養うにはどうすればよいかを、日本人の実状を踏まえて実践的に述べる。英語と日本語の違い、効果的な「読み」、「書く」ための心構え、英会話と音読といったテーマを通し、著者一流の秘訣を一挙公開。その方法論は今も輝きを失ってはいない。 -
京の社 ――神と仏の千三百年
この本を持っていけば、京都旅行ががぜん面白くなる 有名寺社を巡って学ぶ神と仏の一三〇〇年の歴史 === 古代から近代まで、神社の歴史がすべて一望できる貴重な都市、京都。本書はその京都を舞台に、各時代を代表し、それぞれの神社の系統の特色を持つ約二十社を取り上げ、神仏の歴史をひもといた画期的な入門書。下賀茂神社や八坂神社、伏見稲荷など、よく知られた観光名所ばかりなので、旅行気分で学ぶことができる。神社といえば古代から一貫して不変の存在と認識されることが多いが、時には仏教寺院と一体であり、祀られる神も同じ神社の中で時代ごとに変わってきた。祭や神社の建築様式などを仔細に検討し、国家神道が創られる明治以前の神々の多様な姿を明らかにする。(解説 佐々田悠) 【目次】 はじめに──なぜ京都を選んだか 第一章 県主の神から王城鎮護の神へ──二つの賀茂神社 第二章 稲荷の翁と東寺──伏見稲荷大社 第三章 比叡山の鎮守 日吉山王権現──日吉大社 第四章 八幡大菩薩の宮寺──石清水八幡宮 第五章 初めて人を祭った社──北野天満宮 第六章 牛頭天王の社──祇園社(八坂神社) 第七章 神社と神職の家元──吉田神社 第八章 神になった武将たち──豊国大明神と東照大権現 第九章 流された天皇と維新の志士たち──白峰神宮・水無瀬神宮・霊山護国神社 第十章 神になる天皇──平安神宮・護王神社・梨木神社 あとがき 参考文献 解説 変わりゆく社と生きる 佐々田悠 -
一揆の原理
一揆といえば、虐げられた民衆が農具や竹槍を手に極悪非道な領主たちに立ち向かう、そんなイメージを抱きがちだ。しかし、それは戦後歴史学が生み出した幻想に過ぎない。史料を丹念に読み解くなかで見えてくるのは、革命や暴動といった固定観念とはほど遠い、権力者とのしたたかな折衝のあり様だ。一揆とは、暴発的な武装蜂起ではなく、既成の社会関係では対応できない危機に直面した人々が「契約」によって生みだした、新たな社会的つながりなのだ──。これまで語られてこなかった一揆の実像と、現代の社会運動にまで連なる結合の原理を、新進の中世史家が鮮やかに解き明かす。 -
あいだ
自己が生命の根拠に支えられて世界と出会う行為的原理である「あいだ」。その構造を、ゲシュタルトクライス理論に拠りつつ、ノエマ・ノエシスの円環的関係を西田哲学の「行為的直観」と関連づけて、多面的に解き明かす。自己が主体として生きるということは、生命一般の根拠の「おのずから」の動きにかかわると同時に、間主体的な世界を維持することではないか。ユクスキュル、ブーバー、レヴィナスらへの言及を通じて自他の関係を考察し、ダブル・バインド仮説の可能性を改めて問う。独自の学問的地平を切り拓いた著者の世界をわかりやすく示す。 -
アイデンティティが人を殺す
集団への帰属の欲求とは何を意味するのか。この欲求が他者に対する恐怖や殺戮へとつながってしまうのはなぜなのか――。グローバル化の進展は、さまざまな文化の保持者たちの基盤を揺るがし、時に偏狭で排他的な帰属意識を生み出してしまう。複数の国と言語、そして文化伝統の境界で生きてきた著者は、本書のなかで新しい時代にふさわしいアイデンティティのあり方を模索する。鍵となるのは、「言語」だ。言語を自由に使う権利を守ること、言語の多様性を強固にし、生活習慣のなかに定着させること、そこに世界の調和への可能性を見る。刊行後、大きな反響を呼んだ名エッセイ、ついに邦訳。文庫オリジナル。 -
アイヌ歳時記 ──二風谷のくらしと心
アイヌ文化とはなにか、彼らはどのようなくらしを営み、どんな世界観をもっていたのか。本書では、史上初のアイヌ出身国会議員であり、その文化の保存・継承に長年尽力してきた著者が、みずからが生まれ育った二風谷(にぶたに)の四季の生活を振りかえりながら、その模様をやさしく紹介していく。食文化、住まい、儀礼、神話・伝承、習俗、自然観や死生観……。それらの記述を通して浮かび上がってくるのは、自然と調和し共に生きようとするアイヌの心である。いまなお日本人に広く知られているとはいえない先住民族アイヌの世界。その全貌を知るための基本書となる一冊。 -
アインシュタイン回顧録
「想定外に当たっていたね」。アインシュタインの理論を、現代の物理学者はおおむねそう評価する。実験機器と実験法の進歩につれ、ただの予想かと見えた理論が次々に実証されてきたからだ。独創の極致ともいえる理論を彼は、いったいどうやって生み出したのか? 幼少期から執筆時までの約70年間を振り返り、何をどう考えてきたのかを語り尽くす、アインシュタイン唯一の自伝。生い立ちと哲学、19世紀物理学とその批判、量子論とブラウン運動、特殊相対論、一般相対論、量子力学に疑義を呈した真意、統一場理論への思いが浮き彫りになる。貴重な写真を多数収録。達意の新訳による文庫オリジナル。 -
居酒屋の誕生 ――江戸の呑みだおれ文化
寛延年間に生まれた居酒屋は、雨後の筍のように増え続け、文化文政の頃には人口比率でほぼ現在と同じ規模の産業に成長する。食文化を豊かにし、さらには幕府の各種規制を撤廃させていく原動力ともなった居酒屋の歴史を、日記や川柳、随筆、書簡、触れ書などから丹念に掘り起こす。 -
維新の夢 ──渡辺京二コレクション1 史論
『逝きし世の面影』の著者渡辺京二は、日本近代史の考察に、生活民の意識を対置し、一石を投じてきた思想家である。その眼差しは表層のジャーナリズムが消費する言説の対極にある。本巻には、西欧的な市民社会の論理では割り切ることのできない、大衆の生活意識にわだかまる「ナショナル」なものを追求した「ナショナリズムの暗底」、明治国家への最大の抵抗者としての西郷隆盛を常識的定説から救抜する「逆説としての明治十年戦争」、北一輝と日本近代の基本的逆説の関連を問う「北一輝問題」など、日本近代史を根底から捉え返すことを試みた論考を集成する。 -
位相のこころ
位相は“近い”という日常感覚を数学的に厳密にとらえ直したもの、といってよく、現代数学において最も基本的で重要な概念の1つである。歴史的には、18世紀から19世紀末にかけて解析学が進展していくなかで、極限・収束・連続性などをめぐる議論から位相空間論が生まれ、20世紀における関数解析学の展開によって、より抽象的に定式化されていった。本書は、数学の意味・こころを語る達人である著者が、1950年代、60年代、70年代に、位相をめぐって書き綴った「位相解析入門」「位相用語集」「位相構造」という3つの文章からなる。著者の名調子に乗せられて、位相のこころを体感してみよう。 -
偉大な数学者たち
ガウスは50桁ぐらいの計算はものともしなかった。むしろ楽しみですらあった。しかも数字に異常な記憶力があり、いちど計算したことのある数は自在に取り出すことができた。整数の研究にも熱情を注ぎ、法則の発見のために独力で大きな数表をつくった。素数の表、二次剰余・非剰余の表、1000以下の素数の逆数の表……。このように数学の神に導かれたガウスもいたし、一生を数学に生きたオイラーもいた。狂熱に引きまわされ短い生涯を駆け抜けたアーベルやガロアもいた。他にアルキメデス、ニュートン、ライプニッツなど全20人が登場。天空を舞うような彼らの高揚感を熱くつづった「数学者物語」。 -
一百四十五箇条問答 ──法然が教えるはじめての仏教
法然が登場する以前、仏教は驚くことに、一部のエリートのためだけに存在する宗教だった。漢文で書かれた難解な経典が読めること、日常生活を気にせず修行に打ち込めること、が条件だったからだ。しかし実際に苦しみ、救済を必要としたのは、文字も読めない市井の人びとに他ならない。そこで法然は、誰でも、いつでも、どこでも実践可能な「念仏」を柱とする浄土宗を打ち立てた。この『一百四十五箇条問答』は、法然の教えに惹かれながらも、従来の仏教との違いに戸惑ったり、生活を改めなければならないのかと不安に思った人びとの145の疑問に、法然がやさしく答えたもの。浄土仏教や法然その人を理解するための、またとない入門書となっている。 -
イメージの歴史
有名芸術家の名作はもとより、版画や挿絵、広告や記念碑に至るまで、美術作品が、何のために、どのように描かれてきたか──それが「イメージの歴史」だ。ここではさまざまな学問領域を自由に往来し、ポスト・コロニアル的かつジェンダー的な視線で従来の美術史を書き換える。絵画と社会のかかわりや画像の解釈方法などの理論を踏まえ、さらに西欧文化が繰り返し描いてきたイメージにメスを入れ、その精神的・社会的な背景を明らかにする。レイプを描き続けたのはなぜか、新しい政治形態はどのような画像を生んだか──人間の想像力に新たな光を当てる美術史の誕生。 -
インド大反乱一八五七年
東インド会社の傭兵シパーヒーの蜂起に端を発し、インド亜大陸全体へと飛び火した大反乱。ムガル帝国皇帝を擁立した反乱軍はデリーに政権を樹立して闘争を繰り広げるが、内紛と分裂を経て、やがて大英帝国による直接統治という結末を迎える。この反乱を支えたのは、いったい何であったのか。農村社会の変容、ヒンドゥー教・イスラム教ほかの宗教、カースト制度など、本書は複雑なインド社会の根幹部分を丹念にすくいあげて分析しながら、そこに携わった多様な人々のリアルな姿も活写。20世紀の独立へと持ち越された、インド民族運動の真実の姿を描きだす。 -
インド文化入門
遠くインダス文明にまでさかのぼり、異文化が交錯する要衝の地として繁栄してきたインド。そのため現在も多様な民族、言語、宗教が混在する。また古来よりカースト制が敷かれてきたことから、社会階層も多様に存在している。しかし、どの地方、どの民族のカレーを食べてもカレーとしてのカテゴリーに収まっているように、インド文化圏は多様な中にも統一性が保たれている。それはいったいなぜなのだろうか? 映画、新聞広告、絵画、物語、遺跡、陶磁器、食べものといった身近なテーマを切り口に、インドの文化と歴史を丸ごと理解する、世界的権威によるまたとない入門書。 -
インド洋海域世界の歴史 ──人の移動と交流のクロス・ロード
グローバル経済の起源は大航海時代にあると言われる。しかしそれよりはるか前、インド洋海域世界には二千年以上もの間、様々な民族、人種、宗教が交じり合う自由で自立した大経済圏が存在していた。季節風を利用した航海技術の確立により長距離交易が盛んに行われ、アフリカから地中海世界、西アジア、インド、東南アジア、中国にわたる広大な地域が一つに結ばれていたのだ。しかしレコンキスタ終結後、この経済網はヨーロッパ人に破壊され、奪われていく。イスラームの影響下で栄えた大経済圏・文化圏の全体像を、膨大な史料とフィールドワークをもとに描き出す、海域史研究の記念碑的名著。 -
ウィトゲンシュタイン〔増補新版〕 ――言語の限界
理論への誘惑を退け、思考の悪癖を断ち切る── 現代哲学を方向づけた天才の思考をたどる最良の入門書! 哲学とは、言語の限界に突き当たってできた思考の瘤を取り除くことである。ウィトゲンシュタイン哲学の核心にふれる、定評ある入門書の増補完全版! === 哲学とは、言語の限界に突き当たってできた思考の瘤を取り除くことだ。哲学者のつとめは、自らがこうした瘤や病気をもっていることを自覚しながら、それを治療することにある。ウィトゲンシュタインの哲学は、著述の特異なスタイル、そして彼の人柄と切り離すことができない。本書は、理論への誘惑を退け、思考の陥る悪癖を断ち切ろうとするウィトゲンシュタインの粘りづよい思考を、主著『論理哲学論考』や『哲学探究』のみならず、膨大な遺稿や講義録にも分け入り、その数奇な生涯をたどりながら一望する試みである。その後の解釈論争や最新研究を踏まえ、増補を施した入門書の決定版! 【目次】 まえがき 第1章 一九二九年 第2章 『論理哲学論考』とはどんな書物か(一) 第3章 『論理哲学論考』とはどんな書物か(二) 第4章 ウィーンからケンブリッジへ 第5章 否定の謎 第6章 像としての命題 第7章 語りえぬ事柄 第8章 再出発と破局 第9章 復帰までの道のり 第10章 ふたたびケンブリッジにて 第11章 現象言語 第12章 意味と検証 第13章 哲学とは何か 第14章 『哲学探究』まで(一) 第15章 『哲学探究』まで(二) 第16章 意味と理解 第17章 私的言語 第18章 数学の哲学 第19章 心理学の哲学 第20章 最期の日々 第21章 科学主義に抗して 補章 二一世紀のウィトゲンシュタイン ウィトゲンシュタイン略年譜 主要著作ダイジェスト キーワード解説 読書案内 あとがき ちくま学芸文庫版あとがき 参考文献一覧 索引 -
映画 視線のポリティクス ――古典的ハリウッド映画の戦い
スタジオ・システムという強力な支配形態のもとにおかれた、古典的ハリウッド映画産業。利潤追求を至上命令とする製作会社によって俳優・監督・脚本家他あらゆる関係者が管理されるなか、激動期のアメリカで、いかにして映画は製作されたのか。監督と撮影所の対立、陸軍による検閲、自主検閲的倫理規定ヘイズ・コード、第二次世界大戦のプロパガンダ映画、それに携わった黒人映画作家……。複雑な力学が働く映画の生成過程に、文書資料や関係者インタビューなど一次資料を用いて実証的に迫る。映画学(フィルム・スタディーズ)という研究領域を切り拓いた画期的作品。 解説 板倉史明 -
英語のルーツ
三単現の-sは「最後の名残り」、be動詞は「保守的」?! ルーツをたどればルールがわかる! 印欧祖語からゲルマン祖語、古英語を経て現代英語へ──。波乱万丈の歴史を知れば、複雑な規則も腑に落ちる! 読めば英語の見え方が変わる快著。 === いわゆる「三単現」の場合にだけ、なぜ一般動詞は末尾に-sが付くのだろう。be動詞はam, are, isなど色々な形をなぜ使い分けなければならないのだろう。英語には一見不可解なルールがあふれている。本書は古英語、ゲルマン祖語、果てはインド・ヨーロッパ祖語にまでルーツをさかのぼり、それらと比較しながら現代英語の特徴を解明する。完成されたインド・ヨーロッパ祖語が時代と共に崩れ、新たな形の言語に再構成されてゆく──。その波乱万丈の歴史を知れば、動詞の変化や厳格な語順、仮定法の感覚、綴りと発音のずれなど、難しいルールも腑に落ちるはずだ。読めば英語の見方が一変する快著。 【目次】 はじめに─英語の3つのルーツ 序章 英語発達史概観 第1章 インド・ヨーロッパ祖語民族の言語・文化・神話 第2章 英語の語源と印欧語比較言語学 第3章 印欧諸語の中の英語 第4章 古英語から現代英語まで 第5章 文字と綴りのルーツ あとがき/文庫版あとがき/参考文献/索引 -
英語類義語活用辞典
類義語・同意語・反意語の正しい使い分けが、豊富な例文から理解できる定評ある辞典。思わぬ誤解や失礼をしないための使用例が、卓越した日本語と英語の語感をもつ著者により解説される。(1)意味がほとんど同じで、どちらを使っても大した違いのないもの。mistakeとerror、bigとlargeなど。(2)使い方をまちがえるとコミュニケーションに重大な齟齬を来たすもの。doubtとsuspectなど。(3)漠然と類義語だと信じられているがその実、異質な言葉。fortunateとhappyなど。「なるほど」と腑に落ちる効果的な使い方が、わかりやすく習得できる、学生や教師・英語表現の実務家の必携書。 -
映像の発見 ――アヴァンギャルドとドキュメンタリー
映像を表現と主体意識、存在条件との間の緊張関係から考え、真の創造を探求した至高の映画論。1950年代に始まる転換期にあって、旧来的な映画観を転覆すべく、著者は思考を尖鋭化させていく。調和を失った社会のなか、見えなくなっているものを見えるようにすることを芸術における第一義の課題としながら──。アヴァンギャルドもドキュメンタリーも、つまり内と外に分かれた意識の方向も、見えないものに迫る方法として交差し、それを通じて新たなイメージは創り出される。初刊は1963年。映画史的直感や時代との格闘から生まれた洞察はいまも色褪せてはいない。 -
映像のポエジア ──刻印された時間
「それ独自の事実のフォルムと表示のなかに刻み込まれた時間――ここにこそ、私にとって芸術としての映画の第一の理念がある」。その理念が有機的統一をもって結晶する“イメージ”。『惑星ソラリス』『鏡』『サクリファイス』など、生み出された作品は、タルコフスキーの生きた世界の複雑で矛盾に満ちた感情を呼び起こす。俳優や脚本のあり方をはじめとする映画の方法は、現代において涸渇した人間存在の源泉を甦らさんとする意図とともに追求された。戦争と革命の時代である20世紀に、精神的義務への自覚を持ち続けた映画作家の思考の軌跡。 -
英米哲学史講義
英米哲学の諸潮流は、「経験」を基盤に据えるという発想に導かれている。それは、ロックやヒュームらの「経験論」を共通の源泉とするためだ──。ベンサム、J.S.ミルに発する「功利主義」。フレーゲとラッセルを先駆に、ウィトゲンシュタイン、クワインをへて現代に連なる「分析哲学」。パースが提唱しアメリカを体現する思想となった「プラグマティズム」。そして、ロールズやノージックらの「正義論」。本書は、こうした英語圏の哲学的系譜を、経験論を基点として一望のもとに描き出す。主要哲学のつながりを明快にとらえる、入門書決定版! -
江戸 食の歳時記
和食の原型は江戸時代に形作られた。そう聞くと江戸の料理は素朴なものだったと思われるかもしれないが、さにあらず。魚は天然、野菜は有機、その上調理方法にも技巧が凝らされており、江戸の食文化はとても豊かだった。例えば刺身一つとってみても今はたいてい醤油を添えるが、江戸時代は魚の種類ごとに煎り酒や生姜酢などの各種調味料を使い分けていた。薬味もわさびだけでなく、からし、おろし大根、蓼など多様だ。本書ではそんな豊かな江戸の料理と食材を季節ごとに紹介し、各種行事食の由来も解き明かす。第一人者による人気連載を初書籍化。江戸時代の図版も約150点収録。 -
江戸の坂 東京の坂(全)
東京は坂の街。「その名は江戸っ子気質そのままで、単純明快、即興的で要領よく、理屈がなくて、しかもしゃれっ気があふれている」。富士を眺められる坂は「富士見坂」、海を望む坂は「潮見坂」、墓地のそばの坂は「幽霊坂」、赤土の坂は「赤坂」、急な坂は「胸突坂」…。東京の坂道と、その名前を見つめると、江戸庶民の暮らしと心が浮かび上がる。東京中を隈なく歩き、古書や古地図を渉猟して、坂道に織り込まれた歴史を辿る。「坂道」研究というジャンルを確立し、いまなお坂道ファンのバイブルと親しまれる古典的名著。本書を片手に散歩すれば、いまも江戸を垣間見られる。 -
江戸服飾史談
ざっと三百年間の移り変わりを述べることに致します―。大火や幾度もの改革、風呂屋や歌舞伎の流行といった時代背景・風俗とともに語る江戸服飾史入門。明治期、学者・大槻如電が三越呉服店の依頼をうけて講談調で記した原稿に、注釈や図版を多数加え、現代人向けに編集した。金ピカの裃を着て真面目な顔でいる武士たち、ひいきの役者の紋を銀簪に彫る女たち、度重なる倹約令を経てなお新たな流行を作り出す江戸の人々の姿が活写される。当時の語りの面白さを残したユニークな書であり、着物、履物、流行りの模様、髪型、帯の締め方までを詳細に示す貴重な資料である。 -
エロティシズム
労働の発生と組織化、欲望の無制限な発露に対する禁止の体系の成立、そして死をめぐる禁忌……。エロティシズムの衝動は、それらを侵犯して、至高の生へ行き着く。人間が自己の存続を欲している限り、禁止はなくならない。しかしまた人間は、生命の過剰を抑え難く内に抱えてもいる。禁止と侵犯の終りなき相克にバタイユは人間の本質を見ていった。内的体験と普遍経済論の長い思考の渦から生まれ、1957年に刊行された本書によって、エロティシズムは最初にして決定的な光を当てられる。バタイユ新世代の明快な新訳で送る、待望の文庫版バタイユの核心。 -
演習詳解 力学 第2版
「力学の原理に差はないのだから、教養課程の学生が専門課程に相当する部分まで進んでいけない理由はない。進めるだけ進め、少なくとも道は開いているほうがよい、行く先で解けるようになる面白い問題に展望があるほうがよい」。本書で提供される問題は、机上で考えられたものだけではなく、実際の自然現象に即して創られたものも多く含まれる。それらは難解な問題もあるが、話題は広く、古典力学の豊かさを余すところなく示している。経験豊富な執筆陣が、一切の妥協を排して世に送った類書のない力学演習書。練り上げられた刺激的な問題と詳細な解説で、力学の高みへといざなう。 -
エントロピーと秩序 ――熱力学第二法則への招待
あらゆる物質はなぜこのようにあり、それらはどう移ろっていくのか。そうした私たちが住まうこの世界のありようを規定する基本原理の一つが、熱力学第二法則である。熱力学というと一般に数学的な説明を避けて通れないこともあり、どうしても難解な印象を与えがちだ。それに対して本書は、その基本となる考え方を、できるだけ数式を用いずに、かつ学問的な厳密性をいささかも損なうことなく、懇切丁寧に説明していく。『アトキンス一般化学』などの定評ある教科書でも知られるイギリスの物理化学者が、蒸気機関から生命現象まで多様なトピックを扱いつつ、熱力学の奥深さを説き明かした不朽の名著。 -
王の二つの身体
ユダヤ系でありながら熱烈な愛国者にしてゲオルゲ派。迫害と亡命。二十世紀の矛盾そのものを生きたかのような著者の法外な学殖と情熱は、王権表象の冷徹な解剖に向けられた。王は死んでも王位や王冠、王朝は存続する。その自然的身体とは独立して存在するように見える王の政治的身体は、いかにして産出されたのか。王権の政治神学的・象徴的基盤は西欧の歴史の中で、どのように編制されたのか。本書には、問題提起とシェイクスピア『リチャード二世』論に始まり、キリスト論との類比、法学的思考の浸透とその影響、王を神秘体の頭と捉える政体有機体説に説き及ぶ、第五章までを収録する。全二巻。 -
沖縄の食文化
沖縄学の権威による沖縄食文化史入門。著者は『おもろそうし』などの古典文学をもとに琉球文化の源流を探る研究に取り組んできたが、最後の著書となった本書では、食を素材に、沖縄の歴史が描き出される。ヤマトとは異なる食材・料理・飲食風習を対外関係史から説明し、沖縄料理の中にある東南アジア文化、中国文化の影響を解説。そして、食の思い出とわかちがたく結びつけられた戦前・戦中の記憶をつづる。取り上げられるのはラフテーやゴーヤチャンプルーなどよく知られた料理から、今では幻となった伝統菓子にいたるまで幅広い。食が語る沖縄の歴史。 -
オートポイエーシス ――生命システムとはなにか
自律性、個体性、境界の自己決定、入出力の不在。これらを特徴とし、自己を産出するネットワークを不断に再生産し続けるシステム、それがオートポイエーシス・システムである。神経生理学の研究から導き出されたこの構想は、観察者の視点からではなく、システム自身からシステムを定式化しようと試みたもので、生命のみならず認知の領域をも射程に入れる。その可能性は社会学、経済学、法学、精神医学など多分野において汲み取られ、豊かな展開を遂げた。閉鎖系のダイナミクスがもたらす開放性の新たな意味とはなにか──。第三世代のシステム論のモデルを高度な記述とともに提示した独創的著作。 -
改訂増補 バテレン追放令 ――16世紀の日欧対決
天正十五年(1587)、豊臣秀吉は九州平定のため、大軍を率いて出陣。博多に凱旋し、戦勝祝いのさなか、「バテレン追放令」五カ条を発布した。日本でのキリスト教宣教に関する禁令である。キリシタン大名・高山右近を家臣団から排除したことと併せ、イエズス会士たちに強い衝撃を与えた。諸宗派間の平和共存を構想していた秀吉が転回をなすに至った背景には何があったのか。それは日本史上にいかなる反作用をもたらしたか――。イエズス会が支配する教会領長崎で起きた事件と、「バテレン追放令」を記す2つの文書の検証から、日本とヨーロッパの象徴的衝突に迫る。サントリー学芸賞受賞作の改訂増補版。 -
科学と仮説
数学はなぜ科学といえるのか、連続体や幾何学空間の概念はどこから生まれたか、仮説にはどういう役割と種類があるか、科学は自然に対してどういうスタンスをとるべきか――。「ポアンカレ予想」の提唱者としても名高い科学者が、数学・物理学を題材に、関連しあう多様な哲学的問題を論じる。「幾何学の公理や物理学の原理は、人間が自由に決めた定義、あるいは人間の精神が創った規約である」という「規約主義」の立場を打ち出した。科学の要件に迫り、刊行時大反響を呼び、アインシュタインら若き科学者たちを「何週間か呪文をかけられたように」高揚させたという科学哲学の古典。オリジナル新訳。 -
河童の日本史
水辺に出没する日本の妖怪・河童。本書は、民間伝承や文献に出現するこの空想生物を、時代ごと地域ごとに精査。そこから、近世の潅漑用水発達と鎖国にともない内陸の河沼へ目が向けられたこと、ワニやスッポンなど水棲生物を祖型としつつ、水死者・被差別民・処刑キリシタン等のイメージが多元的に重なって河童となったことが浮かびあがる。民俗学と科学史を横断した異色の生物学者による実証分析的空想生物学の著作。その底流には、日本人の生命観へのアプローチが満ち満ちている。 -
カニバリズム論
カニバリズム(人肉嗜食)は人類の根源的タブーのように思われながら、実のところその痕跡は古来より無数に残されてきた。著者の専門は中国でありながら、古今東西の記録・小説を博捜し、ときに舌鋒鋭く、ときに諧謔と皮肉をもってカニバリズムを縦横無尽に論じる。人間の薄っぺらな皮膚を両手で思い切りめくり上げ、曝し、目を背けたくなるようなものを直視することで、「近代合理主義精神」なるものの虚構を暴き、「良識」を高らかに嗤いとばす。人肉嗜食、纏足、宦官……。血の滴るテーマで人間の真実に迫る異色の作品。 -
鎌倉仏教
法然、栄西、親鸞、道元、日蓮、一遍―彼らを開祖として鎌倉時代に相次いで勃興した新たな宗教運動は、日本思想史上の頂点をなすと広くみなされている。「鎌倉(新)仏教」と呼ばれるこの潮流は、民衆を救済対象に据えたという点において、とりわけ高く評価されてきた。だが、新仏教の意義は、はたしてこの民衆的性格に言い尽くされるのか? 本書では、旧仏教との異同を深く掘り下げて考察することで、鎌倉仏教の宗教的特質の核心をあざやかに浮き彫りにする。思想家である前につねに実践の人であった偉大な宗教者たちの苦悩と思索の足跡をたどり、中世仏教の生きた姿をとらえた好著。 -
仮面と神話
全世界の人類文化において、宇宙観は「三つの大きな段階」を経てきたと著者は説く。それはどのようなものなのか。本書では、言葉で伝えられる〈口承文芸〉の起源と未来、世界の神話にみられる太陽と月の重要性、地域による天父・地母型/天母・地父型の違いに、順を追って迫る。ついで、太平洋における若者組や、東アジアの成年式、日本の稲作文化と正月行事へと、徐々に焦点が絞られていく。多数の図版や具体例、地理的分布図とともに、平明に語られる、壮大な大林神話学への道案内というべき書。解説:松村一男 -
柄谷行人講演集成1995‐2015 思想的地震
われわれは、もはや脱構築ではなく、建設をこそ語らねばならない──。あらゆるものが瓦解したこの20年間に、思想家・柄谷行人は、はたして何を考え、語ってきたか。本書は、その崩壊が誰の眼にも明らかとなった1995年以降の講演を著者みずから精選した、待望の講演集である。近代文学の使命とその盛衰を反照的に論じた「近代文学の終り」、日本にいつしか根づいた特異な民主主義観を、近代における個人化という根源から再考する「日本人はなぜデモをしないのか」など、計11本の講演を収録。その言葉には、いま最も必要とされる強靭な思想が確かに宿っている。学芸文庫オリジナル。 -
柄谷行人講演集成1985‐1988 言葉と悲劇
ソシュールからウィトゲンシュタインへ、西田幾多郎からスピノザへ──。1980年代後半の代表的講演を収録した本書で、柄谷は哲学、文学、宗教、言語学、経済学、数学など多様な領野を自在に行き来しつつ議論を繰り広げる。そこで執拗に追求されるのは、言語コミュニケーション(交換)における人間の悲劇的条件であり、他者との交通を可能にする普遍性がいかに生み出されうるかという問いである。いまなお多くの示唆に満ちたこれらの講演は、後の柄谷理論の展開を予感させるのみならず、批評という営み自体をも再審に付す魅力的な内容となっている。旧版の内容を再構成し、改稿を加えた決定版。 -
樺太一九四五年夏 ――樺太終戦記録
第二次大戦における沖縄戦が「国内唯一の地上戦」と語られることがある。しかし実際にはもう一つの熾烈な地上戦があった。旧日本領南樺太へのソ連侵攻である。1945年8月9日朝、ソ連軍は突如日ソ中立条約を破棄し、日本軍の軍事施設、警察施設を攻撃する。侵攻を想像しなかった日本側には、戦車の鋼板を打ち破れる火砲は数門あるのみ。残された手段は破甲爆雷を背負って飛び込むしかなかった。満足な武器もない兵士たちはわが家の見える丘の上で死んでいき、守る者のいない市民は地獄の苦しみに突き落とされた。わずか2週間で4千人以上の戦死者を出した悲劇の記録。 -
カルメル山登攀
神との合一に到るための階梯を詳述したカトリック神秘思想を代表する作品。ヨハネは自らの詩に註解を施すかたちで神学的思索を行い、魂の浄化に向かう道を指し示す。「この山にはただ神の誉れと栄光だけが住まう」とされるカルメル山。すべてが闇の内へと沈む「暗夜」を通り抜け、山の頂きへ達するには、この世のあらゆることどもから──自分自身からさえも──逃れなければならない。魂の全き赤裸と神的一致をめぐる教説は、キリスト教徒を超えて人々に多大な影響を与えた。スペイン文学の至宝でもある古典を名訳でおくる。 解説 鶴岡賀雄 -
カルロス・カスタネダ
「呪術師ドン・ファン・シリーズ」の著者、カルロス・カスタネダはその実在すらが疑われ、著作の内容も常に毀誉褒貶にまみれていた。カスタネダとは一体何者だったのか? 著述の内容をつぶさに検証し、仮面の下に潜む素顔とその思想を白日のもとに曝す。カスタネダ神話を脱構築し、新たな相貌の獲得を目論む挑発的な試み。 -
監督 小津安二郎〔増補決定版〕
「残された作品の画面に何が具体的に見えるか、そしてそのイメージが、見るもののフィルム的感性をどのように刺激するかを論じてみたい。つまり、現実のフィルム体験として生きうる限りの小津安二郎の作品について語ってみたいと思う」(本書序章より)。人々がとらわれている小津的なるものの神話から瞳を解き放ち、その映画の魅力の真の動因に迫る画期的著作。本文庫は、小津の生誕百年(2003年)を機に旧版へ三章を増補した決定版である。名キャメラマン厚田雄春と『美人哀愁』の主演女優井上雪子へのインタヴューほかを併録。 -
官能美術史 ──ヌードが語る名画の謎
恥じらいながら、生まれたばかりの透明な素肌を露にする愛の女神ヴィーナス、恍惚としてひとり横たわるマグダラのマリア、近代をとりこにした東洋の女奴隷たちの妖艶な姿態―西洋美術の世界を彩る美しいヌードが大集結。性のモラルの厳しいキリスト教社会で裸体を描くことがどうして可能だったのか? その多くが神話や聖書を題材とするのはなぜか? ボッティチェッリ描くヴィーナスのお腹が膨らんでいるわけは? いくつかの鍵を用いて読み解くと、魅惑的な姿に秘められた謎があざやかに浮かびあがる。カラー多数。200点以上の図版とともに楽しくアートの世界へ誘う極上の美術案内。 -
観無量寿経
漢文・古文の知識が必要な仏典を独学で読むのはほぼ不可能に等しい。しかし日本を代表する大作家・佐藤春夫はその筆力により、一人で経典を理解し、味わうことのできる訳を用意した。『観無量寿経』は『無量寿経』、『阿弥陀経』とともに「三部経」と称される浄土仏教の根本経典。仏や仏のいる世界を「観る」方法を説くとともに、自分の力ではいかんともしがたい人生を俯瞰し、切り抜ける方法を教えてくれる。経典の主人公はわが子アジャセに命狙われる古代インドの王妃イダイケ。なぜこのような悲劇が起こるのか説明を迫るイダイケに、シャカは因・縁・果の物語を説く。 文庫解説 阿満利麿 -
概説 人工知能 ――ディープラーニングから生成AIへ
超絶進化の鍵となる基本概念を解き明かす 爆発的かつ非体系的に発展したAI。その基盤となる基礎理論、研究・開発の歴史、可能性と限界を平易に語る人工知能入門。 === 人工知能(AI)に関する初めての論文が発表されたのは1950年のことである。しかし近年のAI研究は、それまでの歩みを圧倒的に凌駕し、AIに加速度的な進化をもたらしている。ただ、急激な発展のあまり、情報は溢れかえってはいても、概念の根本が正確に理解されているとはとても言い難い。本書は、AI研究で突出しているディープラーニング、アルファ碁、トランスフォーマー(生成AIの心臓部)を選び、各々の核心にあるアイデアを説明した後、人工知能について広く考察する。文庫オリジナル。 === 【目次】 第1講 AIが人間を超えた?! 第2講 人工知能研究の歴史 第3講 脳が働き、人が振る舞う 第4講 ディープラーニングのエッセンス 第5講 学習のポテンシャル 第6講 畳み込みニューラルネットとバックプロバケーション 第7講 アルファ碁 第8講 トランスフォーマー、生成AIの心臓部 第9講 大規模言語モデル 第10講 生成AI 巻末注 あとがき 索引