岩井克人の作品一覧
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ユーザーレビュー
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知性とか教養とかって、まさしく岩井克人みたいな人をさすのだろう。貨幣が貨幣で有るのは貨幣だから、という自己循環論が基本に。
Posted by ブクログ
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書店で目に付き購入しました。これまで岩井氏の本は何冊か読んでいましたので、その意味で本書はこれまでの岩井氏の主張のおさらい、という位置づけでしたが、大変読みやすく改めて岩井理論の面白さを再確認できました。岩井氏の主張を一言でいうなら、会社はヒトでもありモノでもある存在ということ、そしてその中心に位置
...続きを読むしているのはフィドゥーシャリー・デューティ(信任義務)だ、ということです。
私自身はこの主張に同意できましたし、本書を読むにつれ、いかに世間の多くの識者の視野が狭いか(あたかも「群盲象を撫でる」という故事のように)、またロナルド・コース流の、会社は情報流通の効率化のために組織化されている(つまり社外の人との取引費用が大きいため会社が組織化されている)、という取引費用理論が本質をついていないということを再認識しました。
本書ではまったく議論されていませんが、本書の法人理論を読むにつれて、はたしてAI(人工知能)はどのような存在として将来位置付けられるのだろうかと感じました。おそらく遠くない未来に、人工知能にも「人格」を与える、という国が登場するでしょう(これまでの例にもれず英国あたりがその最初の国かもしれません)。するとAIはヒトかモノかという論争がビッグイシューになるであろうこと、その際は、「A or B」ではなく、岩井氏の法人論のように「ヒトでもありモノでもある(A and B)」存在としてとらえるべきなのだろう、と本書を読んで想像を膨らませました。
Posted by ブクログ
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2015年に出版された本で、前から読みたいと思っていたのですがやっと読む時間ができました。読む前の期待感はかなり高かったのですが、期待は裏切られませんでした(合理的期待形成ができました)。岩井氏の貨幣論、資本主義論、法人論は別の本でなじみがありましたが、序盤に書かれている生い立ちや少年時代、そして東
...続きを読む京大学やMIT留学時の話などは「私の履歴書」を読んでいるようで新鮮でした。子供のころはじめて読んだ本が図鑑で、それが自分の思考回路を決めたと著者が述べているように、岩井氏は物事を俯瞰的に見たうえで、各人の主張を位置付ける、ということが特徴的だと思います。一言で言えば視野が恐ろしく広い、ということで、特定の主張(例えばケインズ経済学)に完全にとらわれるわけではなく、様々な人の主張をつなげることができること、また近年では経済学の範囲外にまで研究対象を広げて(言語、法など)、そこに貨幣論との共通性を見つけるようなこともされています。本書の中で、イェール大学時代からの知り合いとして哲学者の柄谷行人さんの名前が登場しますが、岩井氏と柄谷氏には、「常人には思いもよらない点と点を結びつけて線あるいは面にする力」が共通していると思います。そしてこの力は、アカデミックの極端な分業化が進んだ昨今では極めて貴重な(希少な)能力だと思います。本書は中盤から後半にかけて、主に岩井氏の研究内容の中身とその変遷が綴られていますが、わかりやすく好感を持ちました。アカデミックの人々だけでなく、一般の人々にも岩井ワールド、そして経済学の面白さを知ってもらうには最高の本だと思います。
Posted by ブクログ
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本書は著者が80年代、90年代に書き下ろした論文集(エッセイ含む)を一冊の本にしたもので、私は文庫版を手に取りました。その意味では20年以上前に書かれている論文がほとんどですが、多くの面で現在への示唆に富んでいると思いました。まず本書の中でメインの論文が本のタイトルにもなっている「二十一世紀の資本主
...続きを読む義論」です。岩井氏は、金融危機、経済危機が資本主義を終わらせるのではない、むしろ1997年のアジア通貨危機は基軸通貨であるドルへの信認を逆に高めたと言うことで資本主義を強化したと解釈されていて、資本主義が終焉するとしたらそれは貨幣への信認がなくなった時であると述べています(つまりハイパーインフレーション)。また面白かったのは、資本主義が「純化」すればするほど資本主義の不安定性が増す、つまり貨幣の制御ができなくなるということで、さてこれからの資本主義は再び国家の介入が増えざるを得ないのか、言い換えれば不純化されるのか、という点も興味がわいてきました。また一貫して述べられている、資本主義の本質は差異であるということ。これは産業資本主義だけでなくはるか昔から存在している商人資本主義など資本主義を大きく俯瞰すれば当然それが正しい解釈と言うことになるのだと思います。
2番目には「インターネット資本主義と電子貨幣」という論文が掲載されています。こちらも興味深く読みましたが、こちらについては不遜な言い方ですが、2017年時点のデジタル化の状況を踏まえると著者の論調は「まだまだ見通しが浅い」のではないかと感じました。岩井氏は、インターネットもこれまでと同じ資本主義内の動きであって、電子貨幣はむしろ資本主義の純化を証明していると論じています。私もこれについては同意できるのですが、もし岩井氏が現在起こりつつあるシェアエコと呼ばれる動きを見たらどう評価するのかは興味があります。ただしシェアエコとよばれるものも、大半は貨幣と遊休資産へのアクセスを交換するという点で、既存の資本主義の枠内で起こっている現象だとは思うのですが、IoTのように貨幣を介さない情報シェアリングが価値を生み出す仕組みが登場したり、貨幣を全く介さないデジタルコモンズ上でのネットワーク型物々交換の仕組みが登場しているなど、資本主義とは言えない仕組みすらデジタルは生み出している気配があります(つまり貨幣を必要としない仕組みがデジタルで生み出されている)。その意味で、デジタルは資本主義を強化する一方で資本主義を解体する力も持っているのではないかと個人的には考えています。
いずれにせよ、本書は2017年に読んでも多くの気づきが得られる本で、とても感銘を受けました。オススメです。
Posted by ブクログ
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貨幣論などで著名な経済学者岩井氏による本です。本とは言っても全編通して対談形式になっています。雑ぱくな感想について。まず対談形式であればさぞ読みやすいだろうと思って読み始めましたが、内容がかなり高度、というか空中戦すぎて理解しながら読み進めるのにそこそこ時間がかかりました。また主役が岩井氏で「聞き手
...続きを読む=三浦雅士」となっていますが、三浦氏は「聞き手」の領域を大幅に超えて「話し手」にもなっていました。これは良かったと思う箇所もありましたが、「しゃべりすぎでは?」と感じる箇所も多々ありました。個人的に岩井氏の主張にもっと誌面を割いてもらいたかったので、聞き手は聞き手らしくもっとシンプルに切り返してもらった方がありがたかったです。
序盤は読むのに苦戦しましたが、面白いもので、中盤くらいからはだいぶペースアップしました。まず岩井氏の主張が一貫していることで、「門前の小僧習わぬ経を読む」ではありませんが、だいぶ私(門前の小僧)の頭の中にも入っていきました。
岩井氏の主張は何かといえば、言語・法・貨幣は自己循環的に成立していること。つまりこれらによって社会が存在しているのですが、その存在基盤とも言えるこの3つは実は根拠が無く不安定なものだということです。たとえば貨幣であれば、貨幣需要がものすごく高まるとデフレ(恐慌)になり、貨幣需要がものすごく低くなるとハイパーインフレーションになったりする。そしてこの不安定な資本主義を補完しているのが、市民社会であって、それはカントの定言命題としての普遍的な倫理をベースにしたものである、という感じです。著者の主張が正しいかどうかは私のレベルではまったくわかりませんが、とても面白く感じました。そういう風に物事を見ることも出来るのか、という発見があったという感じです。繰り返しますが、「空中戦」の議論が多くて最初は良くわからないかもしれませんが、だんだん著者の言いたいことがわかってきますので、我慢して最後まで読めば多くの気づきがあるかと思いました。
Posted by ブクログ
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