岩井克人のレビュー一覧
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岩井克人さんの本に出会って、経済というものの原理原則が理解出来るようになった。
ヴェニスの商人の資本論、貨幣論、21世紀の資本主義論、資本主義から市民主義へなど。
水村美苗さんの旦那と言うことも彼女の書いた「日本語が滅びるとき」で知った(笑)。
この本で、岩井さんの生い立ち、なぜ、経済学を選んだのか。
そして、私も読んで感動を受けた網野善彦さんの「古文書返却の旅」を読んでおられて、触発されたとのこと。
また、加藤周一氏との出会いのお話。
最後の方で、夏目漱石の文学論のお話も出てきたが、なぜ、水村美苗さんが「日本語が滅びるとき」を書いたのか、そのヒントがあったような気がします。
経済学のお話は、 -
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書店で目に付き購入しました。これまで岩井氏の本は何冊か読んでいましたので、その意味で本書はこれまでの岩井氏の主張のおさらい、という位置づけでしたが、大変読みやすく改めて岩井理論の面白さを再確認できました。岩井氏の主張を一言でいうなら、会社はヒトでもありモノでもある存在ということ、そしてその中心に位置しているのはフィドゥーシャリー・デューティ(信任義務)だ、ということです。
私自身はこの主張に同意できましたし、本書を読むにつれ、いかに世間の多くの識者の視野が狭いか(あたかも「群盲象を撫でる」という故事のように)、またロナルド・コース流の、会社は情報流通の効率化のために組織化されている(つまり社 -
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2015年に出版された本で、前から読みたいと思っていたのですがやっと読む時間ができました。読む前の期待感はかなり高かったのですが、期待は裏切られませんでした(合理的期待形成ができました)。岩井氏の貨幣論、資本主義論、法人論は別の本でなじみがありましたが、序盤に書かれている生い立ちや少年時代、そして東京大学やMIT留学時の話などは「私の履歴書」を読んでいるようで新鮮でした。子供のころはじめて読んだ本が図鑑で、それが自分の思考回路を決めたと著者が述べているように、岩井氏は物事を俯瞰的に見たうえで、各人の主張を位置付ける、ということが特徴的だと思います。一言で言えば視野が恐ろしく広い、ということで、
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貨幣論などで著名な経済学者岩井氏による本です。本とは言っても全編通して対談形式になっています。雑ぱくな感想について。まず対談形式であればさぞ読みやすいだろうと思って読み始めましたが、内容がかなり高度、というか空中戦すぎて理解しながら読み進めるのにそこそこ時間がかかりました。また主役が岩井氏で「聞き手=三浦雅士」となっていますが、三浦氏は「聞き手」の領域を大幅に超えて「話し手」にもなっていました。これは良かったと思う箇所もありましたが、「しゃべりすぎでは?」と感じる箇所も多々ありました。個人的に岩井氏の主張にもっと誌面を割いてもらいたかったので、聞き手は聞き手らしくもっとシンプルに切り返してもら
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本書は著者が80年代、90年代に書き下ろした論文集(エッセイ含む)を一冊の本にしたもので、私は文庫版を手に取りました。その意味では20年以上前に書かれている論文がほとんどですが、多くの面で現在への示唆に富んでいると思いました。まず本書の中でメインの論文が本のタイトルにもなっている「二十一世紀の資本主義論」です。岩井氏は、金融危機、経済危機が資本主義を終わらせるのではない、むしろ1997年のアジア通貨危機は基軸通貨であるドルへの信認を逆に高めたと言うことで資本主義を強化したと解釈されていて、資本主義が終焉するとしたらそれは貨幣への信認がなくなった時であると述べています(つまりハイパーインフレーシ
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主流の新古典派経済学を批判する様々な学説を打ち出してきた岩井克人氏の経済学者としての人生をインタビューを基に辿る。
知的にエキサイティングな内容で、大部だがのめり込んだ。経済学者として没落したと著者は自嘲するが、著者の貨幣論をはじめとする学説にはかなり説得力を感じた。
岩井克人氏というと、高校教科書に載っていた『ヴェニスの商人の資本論』の印象が強く、経済思想家みたいなイメージを持っていたが、バリバリの数理経済学者だったと知り、驚いた。しかし、流石に文章がうまい。自分は数式はよくわからないが、岩井氏の定性的な説明はとてもわかりやすく、納得させられるものだった。 -
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M&Aが国を富ませるという理屈をやりとりしてる本。岩井先生の会社論の要点が、ほどよく散りばめられており、なるほど感が高かった。
以下は、その要点。
<モノとしての会社>
・モノ=商品としてみた場合の株式固有の性質は、「議決権」が含まれている点。
・総会議決権の中で最も重要なのは、取締役の選任、解任の権利。
・敵対的買収は、この支配権を巡る争い。だから防衛策も、授権資本制度から派生する仕組みを活かして、敵対敵対買収者の持株比率を低下させるという点は共通。
・新株発行の決定は取締役会決議事項。ただし、発行可能株式総数の範囲で。
・誰にどれだけ割り当てるかも原則として取締役会 -
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Audibleでランニングしながら聴取。学生の頃読んで以来30年ぶりの再読(というか再聴)。当時は四苦八苦して読んだ記憶があるが、今聴くと重要部分の繰り返しが多く、聞き逃しても筋が追えるため「ながら聴き」には意外に適している(書き下ろしでなく「批評空間」への連載だったことが影響していると推察)。
なんといっても本書の肝は、マルクス「資本論」他における価値形態論・労働価値論に潜む矛盾を「論理循環」の形で可視化させたことにあるだろう。価値形態論を突き詰めてゆくと実は論理循環が含まれており、そこではマルクス自身が信奉して止まなかった労働価値論の項が消去されてしまうことが示される。そしてこの論 -
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非常に面白かった。貨幣の本質がよく分かった。
危機論における、ハイパーインフレで貨幣(→商品社会→資本主義社会)が機能しなくなると言う主張に関しては、論理的にはありうるだろうけど、実際的にはそんなこと起きるのか、非常に疑問であり消化不良を感じた。
・全ての貨幣が一度に機能不全に陥ることなど起きるのか?
(基軸通貨の死亡 = 貨幣の死亡とは個人的には思えない)
・貨幣が死んでも、「人間の本質」によって、貨幣は新たに創りなおされる
のではないかと思う。特に後者に関して述べたい。
個人的に「貨幣とは、貨幣として使われるからこそ、貨幣なのであり、貨幣とは、流通するからこそ、価値を持つ。」と言う -
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貨幣と哲学。一見無関係のようにも思われる両者だが、決してそうではないことを本書によって思い知らされた。
貨幣とは何か。その起源がそもそもはっきりしないことを明示した上で、岩井はまず貨幣そのものには価値がないことを確認する。確かに貨幣をいくら貯め込んだところで、使わないことには意味がない。貨幣は使うことによって、すなわち交換することによって初めて価値を付与される。ではなぜ何の価値もないはずの貨幣が交換されるのか? なぜわれわれは何の価値もない貨幣を受け取るのか?
岩井は答える。われわれが貨幣を受け取るのは、将来それを(商品と引き換えに)受け取ってくれる他者が必ずあらわれるはずだと信じている -
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ネタバレとても示唆に富む一冊。
会社とは法人である。すなわち、人であり、モノであるという二面性を持っている。株主主権のイメージが強すぎるのは、「会社=モノ」の側面が強く出すぎている。実際には、株主が所有する「モノとしての会社」は、株主に指名され、「モノとしての会社」から委任された経営者が運営している。そこには、「人としての会社」という忘れてはならない側面がある。
会社が稼ぐためには、他社との差異化が必要。そのために必要なものが、「設備・資産」⇒「アイデア」に変わってきている。そのため、「アイデア」や「イノベーション」の重要性が大きくなる。そして、それらに向かって、金が動き回る。将来的には、規模/範 -
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1.はじめに
貨幣論という書名は実に親切で、きっと貨幣について論じたものであろうことは容易に想像がつく。
強いて難癖をつけるとして、貨幣というやや畏まった表現だが、言わずもがな要はカネである。
著者はその「カネの正体とは何ぞや?」という問題を論じた挙句、「いくらカネとは何ぞやと考えたところで何も出てきやしないのだ」という結論に達する。
そして、そのカネのカネたる所以(つまり、何も出てきやしなかったというオチ)こそは、資本主義にとっての危機とは何であるかを教えてくれる。
すなわち、資本主義にとっての危機とは、マルクスの言うような恐慌(過剰生産ないし需要不足)ではなくて、レーニンの言う