岩井克人のレビュー一覧

  • 貨幣論

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     マルクス『資本論』(主に第一巻と第三巻)をベースに、著者が貨幣の本質に迫るのが本書の内容である。貨幣とは何かという問いに対して、「単純な価値形態」、「全体的な価値形態」、「一般的な価値形態」、「マルクスの貨幣形態」、「貨幣形態」と順に追っていくうちに著者はある結論を下す。それは「貨幣とは貨幣である」というトートロジーである。つまり貨幣には本質的なものはなく、貨幣について考えれば考えるほど、ますますその存在理由がわからなくなるという。経済学を専門とする著者がこのような奇妙な結論を導いたことから、貨幣が単なるモノとは異なる独自の性質を帯びていることが読み取れる。
     また、第五章危機論で言及された

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    2023年04月24日
  • 二十一世紀の資本主義論

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    貨幣は、貨幣として使われていることで人々の信頼を得て貨幣として使われる、循環論法的なものである云々。
    素養がないので突っ込めないだけかもしれないが、異様に分かりやすい文章。

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    2022年08月10日
  • 経済学の宇宙

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    経済学者が自分の人生の歩みと合わせて経済学を語っています。著者の著作に慣れ親しんだ読者であれば、読んでみる価値は十分にあるでしょう。また、タイトルだけ見ると難解な印象を受けますが、インタビュー形式で進んでいくので、専門的な注釈を除いては、わりと読みやすかったです。

    今回、この文庫版で再読してみると、経済学者というだけでなく学者として人生をまっとうしようとする姿勢が強く伝わってきました。アメリカの有名大学での研究生活を「絶頂」、その後の東京大学への就職を(少なくとも当時は)「没落」として捉えるあたりは、学者としての氏の人生観を反映しているように読めます。この点は、氏の妻であり作家である水村美苗

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    2022年07月31日
  • 経済学の宇宙

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     不均衡動学という言葉だけは著書の名と共に知っていたが、近づかなかった、というより近づけなかった。いわゆる近経は、数学を駆使して理論を作り、経済現象を科学的に分析するもの、とのイメージがあって、偏微分に挫折した自分には到底理解できないものと思っていたからである。
     岩井氏の著作を実際に読んだのは、『会社はこれからどうなるのか』だったが、あの本の内容は面白く読んだ記憶がある。

     本書は、岩井氏が自らの学問について、その歩みとともに、一般読者にも分かりやすく説いてくれた本である。著者の学問関心、先人との苦闘が非常に生々しく語られている。またマルクス、ケインズ、シュンペーターといったビッグネームの

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    2021年10月25日
  • ヴェニスの商人の資本論

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    面白い!!!ヴェニスの商人の読み方が凄すぎる。

    利潤とは、差異から生まれる。
    価値体系と価値体系の間の、差異から生まれる。

    商業資本主義:(例)東洋と西洋の
    産業資本主義:(例)労働力市場と商品市場
    今:(例)現在と未来

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    2021年08月05日
  • 貨幣論

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    貨幣が貨幣として通用するとは。
    貨幣それ自身に価値かあるわけではなく、商品流通のための潤滑剤的役割。
    しかし、人々が貨幣を主人公に祭り上げたとき、インフレが起こり、更に貨幣に熱狂し、最高潮に達したとき、ハッと我に帰る。これは、なんなのか。ハイパーインフレーションか目前だ。

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    2020年12月29日
  • 会社はこれからどうなるのか

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    「利益は差異性からしか生まれない」、「ポスト産業資本主義社会では新たな差異性を次々と創り出して行かなければ生き残れない」という言葉に暗澹たる気持ちになる。本当に創造性のない人間にとって生きづらい時代だと思う。そして不毛だ。

    この本を読んで、
    差異性とは具体的にどんなものだろうか?各企業はどのような差異性により利益を上げているのか?
    なくならない差異性、なくなりやすい差異性は何だろうか?
    差異性により利益を得るこの社会は、公平な社会へと向かっているのだろうか?それとも差異(格差)の維持を目論んでいるのだろうか?
    もっとよい社会の仕組みはないのだろうか?
    …etc というようなことが脳裏に浮かん

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    2019年12月08日
  • 資本主義から市民主義へ

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    こういうバリバリ経済学者の経済の本はほとんど読んだことがなかったし、難しいところも多くてよくわかってない部分も沢山ある。それでも、何か知的興奮があったし、「もっと知りたい」という思いにさせられた。
    経済って、もっと血が通ってなくてお金のことばっか考えてるんじゃないの?という私の経済学に対する幼稚なイメージをいい意味でぶっ飛ばしてくれた。
    経済を考えてると、そんな哲学的問題に行き着くの?!法人の存在の仕方は人間存在の仕方とニアリーイコール?!「信託」の始まりはなんと修道院にあった?!経済の話とカントヘーゲルロールズアリストテレスってそんなに関係あるの!?…等々、新鮮な驚きのオンパレード。
    岩井克

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    2019年08月24日
  • 資本主義と倫理―分断社会をこえて

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    シンポジウムの記録というスタイルのおかげで分かりやすく、内容も刺激的だ。
    資本主義の未来を予見するとともに、経済学がそこでどんな役割を果たせるのか、同時に経済学の限界についても語られる。
    自然科学が突出した今こそ、社会科学の出番だと思っていた。期待できるのかもしれないね。

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    2019年06月05日
  • 貨幣論

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    北さんからの推薦本。
    推薦されなければ読まなかったはず。
    経済学に全く疎いにも関わらず、意外にも面白い。
    結局、「貨幣とは何か?」の問いの答えは「貨幣とは貨幣として使われるものである」
    「商品」でもなければ、何者かによって恣意的要因でもたらされた「制度」でもない。
    循環論法によって自然発生的に存在したもの。いわゆる「奇蹟」である。

    作者が述べている、貨幣であるための存在規定「未来永劫貨幣として信用される日々」が、覆る日(最後の審判)が訪れて、資本主義の終焉が訪れることはあり得るのだろうか?
    本書が書き上げられてから24年。
    今ではあり得ないことではないきがしてならない。

    それにしても、商品

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    2017年05月17日
  • 会社はこれからどうなるのか

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    ネタバレ

    コアコンピタンスとは、たえず変化していく環境の中で生産現場の生産技術や開発部門の製品開発力や経営陣の経営手腕を結集して、市場を驚かす差異性をもった製品を効率的かつ迅速的に作り続けていくことのできる、組織全体の能力

    単純に得意な分野のことだと考えていたが、いつそれを越える技術が出てくるかわからないので、それを生み出す組織、力のことを指すという言葉に目から鱗。

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    2016年08月01日
  • ヴェニスの商人の資本論

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    著者のエッセイや書評、『不均衡動学』の解説や補足をおこなった論考などが収録されています。

    冒頭のエッセイ「ヴェニスの商人の資本論」は、著者の妻である水村美苗からアイディアを示された執筆に至ったとのこと。シェイクスピアの『ヴェニスの商人』におけるアントーニオとシャイロックを、共同体の論理と資本の論理の体現者として読み解き、さらにこのストーリーを展開させる「トリックスター」としてのポーシャを、「貨幣の謎」を体現する人物として解釈しています。

    「遅れてきたマルクス」という論考は、シュンペーターがワルラスの一般均衡体系からどのように離脱を図ったのかを明らかにするとともに、マルクス主義経済学の観点か

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    2016年03月10日
  • 貨幣論

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    マルクスを主に引用し、貨幣の循環論法を基本線として話しが進められる。恐慌論、危機論ともに貨幣の循環論法に起因している。思想をめぐるというもので確たる結論が用意されてるわけではないが、とても読み応えがある。

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    2016年02月15日
  • 会社はこれからどうなるのか

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    会社の歴史的な経緯、現在の構造分析から、今後会社がどうなるかまで示唆している点が素晴らしい。将来像についても、会社は将来独立をするための修行の場と考えるという考え方が良いと思った。そうすると社内政治はさしずめ将来クライアントとやりとりをする際のコミュニケーション能力を磨く場ということかな。

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    2015年09月19日
  • 会社はこれからどうなるのか

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    「会社」とはそもそも何なのか?「会社」はこれからどうなるのか?学者の立場からこれらのシンプルな問いに答えている。かたい話題の割にはスラスラ読めた。

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    2014年06月17日
  • 貨幣論

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    貨幣は貨幣として使われると貨幣になるというトートロジーこそが貨幣の本質であるという本。要素ではなく関係性に注目するのは論理哲学や構造主義っぽい感じもする。

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    2014年06月06日
  • 会社はこれからどうなるのか

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    企業と会社は似て非なる存在。ポスト産業資本主義とはどのような時代か。書かれた時期は少し前だが、その根源的な問いとそれへの回答は、今読んでもなお刺激が多い。
    ひきつづき、他著が読みたくなる。

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    2013年07月04日
  • 会社はこれからどうなるのか

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    会社についてとても丁寧にわかりやすく書かれていてとても良い本だと思います。
    サラリーマンやサラリーウーマン、これから会社に入ろうとする若い人たちはぜひ読まれるといいと思います。かなり希望が持てる内容になっています。

    コーポレート・ガバナンス(会社統治機構)やコア・コンピタンス(会社の中核をなす競争力)などのなんか流行りの言葉みたいなものもわかりやすく説明されていてそそられますし、エンロン事件やサーチ&サーチ社で起きた事例やマイクロソフト社の例など事実を摘示しての理論の展開がなされるので興味深く読めると思います。

    しかも、差異から利潤を生み出す資本主義の原理から説き起こされて、ポスト産業資本

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    2014年05月09日
  • 会社はこれからどうなるのか

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    資本論とかも含む幅広い話題でなかなか面白かった。元々インタビューの書き起こしなので、文体がバラバラな所が少し読みづらいが、内容が面白いのでどんどん読めてしまいす。
    これからの会社の姿については、個人的に感じてる事と同じだったので、そこも興味深く読めた。

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    2013年02月16日
  • ヴェニスの商人の資本論

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    記号化や”貨幣”という得体の知れないモノを、当たり前の領域から引きずり下ろしてもう一度考えるきっかけになる本。とてもわかりやすく、記号媒介的な私たちの世界の孕む不気味な雰囲気を描いていると思う。
    世界は記号で表象されている。そして計量されている。しかし、貨幣という数字が表象する”資本”はその現実の量とは関係なく際限なく増殖し続けるものだ。

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    2012年12月27日