岩井克人のレビュー一覧

  • 資本主義から市民主義へ

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    三浦雅士という希代の知の達人をインタビュアーに迎え、岩井克人が経済学を超えた思想界の巨人であることを示した対談集。
    現代思想の編集長時代に、岩井を発掘したのも三浦だった。
    言語•法•貨幣の存立する根拠が、自己言及的循環論にあることを示すだけでも驚くが、資本主義(貨幣)、国家(法)を超える道を市民主義に見出す。
    彼の論理構成が、柄谷行人のそれとあまりに似ていることに驚く。
    自己循環論を根拠とすることから資本主義は、ハイパーインフレーションの危機を抱えており、国家は集団ヒステリーという自己崩壊(パニック)の危険を有している。
    現代思想のもっとも重要な問題がどこにあるのかを明確に指し示す。

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    2024年07月02日
  • 貨幣論

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    岩井克人の文章は比較的わかりやすいというのが従来の印象だが、この『貨幣論』は難しくて理解の突破口となる「引っかかるところ」がないまま最後まで読み進んだ。マルクス理論独特の難解で抽象度の高い論理展開で、纏めるのには相当大変だろうが諦めずに、ここから再々度の読み込みでなんとか整理してみる。この作者をしてもこれ程の表現にならざるを得ないのは、マクロ経済学における「貨幣」というものが簡単に説明できるような単純なものではないということなのであろう。同時に本質的なものであると思う。
    貨幣形態・価値形態論と交換過程論・価値・商品価値・価値実態論・等価労働交換・交換価値・価格・貨幣起源の商品説と法制説・労働価

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    2024年01月05日
  • 二十一世紀の資本主義論

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     30年ほど前の内容であるので情報が少々古いが、本書に収録される「二十一世紀の資本主義論」と「インターネット資本主義と電子貨幣」は今読んでも色あせない。現在、米ドルを基軸通貨とするグローバル市場経済であるが、今世紀において最も危惧するべきなのが米ドルのハイパーインフレーションであると著者は主張する。ドルの過剰な供給が始まったとき、覇権国家としてのアメリカは凋落するであろう。

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    2023年04月30日
  • 貨幣論

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    「われわれは今では価値の実体を知っている。それは労働である。われわれは価値の大きさの尺度を知っている。それは労働時間である。」

     難しくて一回読んだだけではわからない。マルクスの貨幣論を修正しているようなんだけど、元のマルクスの貨幣論がわかってないから、どう修正したのかも当然わからない。でも恐慌が貨幣の存在によって起こるというのはわかった。

     貨幣も商品であり、投入された労働量によって価値が規定されている、そんなことをマルクスは論じてるらしいけど、本当なのかはよくわからない。
    それに対して、岩井先生は、貨幣の価値は「貨幣に価値があるのは、皆が価値があると信じているからである、なぜ皆は価値が

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    2022年12月12日
  • 資本主義と倫理―分断社会をこえて

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     「分断社会を超えて」の副題に興味を惹かれて読んだが、「分断」のとらえ方が各論者ごとに違っているか、その定義がないので、全体として統一感がなかった。
     また、題名も「資本主義と倫理」となっているが、内容は経済学者が、経済学を好きなゆえに、経済学には限界もあって他の学問分野と協調して倫理も含めて再構築しないといけないけど、やっぱり経済学自体は有用だよね、という確認を遠回しにしてるだけな気もする。
     それでも、契約関係から信任関係へという岩井論文や、「幸福」に関して社会関係的資本の必要性を説く内田論文は、参考になった。

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    2022年05月19日
  • 二十一世紀の資本主義論

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    二十一世紀の資本主義論
    (和書)2009年05月30日 21:49
    2000 筑摩書房 岩井 克人


    この本は出版されてすぐに買って読まずにいました。なんだか読む気がしなかったんだよね。何故買ったんだっていうことだけど、何冊かこの著者の本を読んでいてそれなりに刺激を受けたからだけど、今回読んでみて言っていることはほとんど変わっていないなーって思う。ならどうしたら良いのかってことだけどそこが積極的に書かれていない。今はどうだか知らないけど兎に角、みんな中途半端って感じです。別に違うと思ったら意見を変えても良いと思う。柄谷行人なんて考え方が変わるからって言っていました。もっと前衛的に書いて欲しい

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    2020年09月25日
  • ヴェニスの商人の資本論

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    北さんからの推薦。
    貨幣論を返す時に感想を伝えたところ、新たに借りることに。
    正直難しい。貨幣論の、ほうがまだ分かりやすかったか。。
    個人的には、最後の解説にたいする解説が、一番面白かった。
    たとえ「解説」という短い文章であるにせよ、付加価値をもったもののほうが同じ市場で安く売られるという事態は…。
    秀逸な言い訳だ(笑)

    以下メモ

    利潤とは、2つの価値体系のあいだにある差異を資本が媒介することによって生み出される。
    …しかし、差異は利潤によって死んでいく。…それゆえ、つねに新たな差異…を探し求めていかなければならない。

    まさに企業の命題。
    差異=ニーズ。
    そして、現代ではイノベイションこ

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    2017年06月10日
  • 貨幣論

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    繰り返しの中で
    貨幣は死を迎える。
    それは資本主義の死。

    貨幣論の本質は、
    資本主義の危機は
    恐慌ではなく、
    ハイパーインフレーションだということだ。

    マルクスの貨幣論に始まり、
    貨幣について、論じられた本書は
    膨大な繰り返しをあえて使う。
    それは貨幣のあり方に似て。

    貨幣を語ることは、
    現在、唯一の体制である資本主義を語ることで
    貨幣の危機は、資本主義の危機だ。

    単一の価値となりつつある貨幣は
    だからこそ、ハイパーインフレーションによって
    その価値を失う、という危機をもつ。

    貨幣は言語である、という指摘も印象的だった。

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    2017年02月28日
  • 貨幣論

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    本書の考察は、マルクスの『資本論』における労働価値説と価値形態論との関係をめぐる考察から始められます。著者によれば、マルクスは労働価値を超歴史的な「実体」として理解する一方、超歴史的な価値の「実体」がどのようにして交換価値という「形態」を取るようになるかという問題について考察をおこなっているとされます。この両者の関係には、労働価値説を前提として商品世界の貨幣形態を導く一方で、商品世界のか兵形態を通して労働価値説を実証するという循環論法に陥っているという批判がなされますが、著者はこれを「生きられた循環論法」として捉えることによって、貨幣についてさらに深い洞察を展開しようと試みます。

    貨幣は、み

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    2016年03月10日
  • 会社は社会を変えられる ─ 社会問題と事業を〈統合〉するCSR戦略

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    ネタバレ

    ギリシア、ローマ時代から19世紀末までの世界平均寿命は、25歳。20世紀に入っても31歳。2011年に70歳。



    幸せな加齢の5条件

    栄養、運動、人との交流、新概念への柔軟性、前向き志向



    日本企業のCSRレポートは、「我が社を取り巻く社会にはこういう課題があり、それは我が社のこの事業と関連しているから、こういう事を実践するのだ」という能動的に統合性が語られる事が少ない。



    企業調査をしてみると、会議で検討を重ねた企業の数よりも、具体的に実行している企業数の方が多い。これは、各社のCSRが「なぜ、どうして、今我々が?」という検討がないがしろにされている証拠。



    5つのCSR重

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    2015年07月16日
  • 貨幣論

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    マルクスの考えに沿って貨幣の本質を問い直す。
    前半部分はマルクスの思考方法が抽象的で理解が難しかった。

    貨幣は貨幣とされるから貨幣になる、それはそうなのだけれど、マルクスに限らず昔の哲学者は本質論を展開して物事を捉えきれてないような気がする。貨幣を論じているのに、信用創造や金融機関のバランスシートを語らないのでは、議論の幅に限界が生じるのは当然だろう。

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    2015年02月06日
  • 二十一世紀の資本主義論

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    20世紀の終わりに書かれた経済エッセイをなぜ今ごろ読んでいるのかといえば、単にそのときに読み損ねていたからにすぎないのだが、時間をおいて読むことで、また異なった感慨がある。
    社会主義陣営が崩壊してからの世界の目まぐるしい変容を、私もまた、息を詰めるようにして見つめていたが、あれから20年近くの間に基軸通貨国がしかけた2度の悲惨な戦争とこの国で起きた原発事故を経て、私たちは今、ますます小さくなっていく成長のパイを追い求め、方向転換のきかない恐竜のような古い経済システムが転落へと向かっていくさまを、恐れとあきらめのうちに見守っている。岩井氏がくりかえし論じるように、貨幣を導入し資本制に組み入れられ

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    2015年01月06日
  • 貨幣論

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    以前読んだ『二十一世紀の資本主義論』は「貨幣」存在の独特さを描出してとても面白かったのだが、今回の本は少し様子が違っている。やはり貨幣なるものの存在を浮き彫りにしようとするのだが、そのために、何故かひたすらマルクスを精読・分析し続ける。そして、マルクスの「可能性」として、じぶんの貨幣論に通じる要素を引っ張り出そうというわけだ。
    しかし柄谷行人といい、この人といい、何故そんなに無理してマルクスを救済しようとするのだろう?「マルクスの可能性」と言うが、結局はマルクスは古典派経済学の労働価値論(「価値は商品生産の労働時間によって決定される」)を抜け出すことができず、それを超えた理論を決して明言できな

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    2013年05月30日
  • ヴェニスの商人の資本論

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    評判もよく、センター試験にも出ていたので期待して読んだが、結果は期待はずれだった。学者が好みそうな純・学術的であり、実用性を期待していた僕にとってほとんど感慨を起こさせるものではなかった。
    ただ、純粋な学問的好奇心を求める人にとってはいい本かもしれない。

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    2013年01月01日
  • ヴェニスの商人の資本論

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    経済学は全くの門外漢だけれども、知の興奮を得た。
    なんとなくこれらの論文内容を数式化できるんじゃないかって気がするのは、良く理解していないからかな。
    媒介が媒介について媒介しはじめる話がイイね!
    水村美苗さんが奥様とは!彼女の日本語の話を再読したいと思います。

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    2012年11月11日
  • 貨幣論

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    書かれている内容については、学者の中では批判のでるところだそうです。が、左脳刺激にはもってこいです。

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    2010年03月30日
  • M&A国富論 「良い会社買収」とはどういうことか

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    M&A目的は、会社の生産性を挙げることというテーゼに沿って、新しいM&A規制を提案する本。M&Aルールなんて歴史の産物だから、頭で考えてこうやったら良いっていう制度を作っても、実際うまく動くかどうかはわからないと思うけどね。

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    2010年02月14日
  • 二十一世紀の資本主義論

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    書いてあることはすごい面白いし、この前起きたアメリカのサブプライムショックが世界に波及することも予見している点ではすごい本だと思う。ただ、全体を通してずっと同じことしか言ってないから、読んでて途中で飽きる。

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    2009年10月04日
  • M&A国富論 「良い会社買収」とはどういうことか

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    岩井克人の新しい本。「良い会社買収」を「良い経営者を選ぶこと」と定義し、「良い経営者」とは株主のみならず社会全体に良い影響を及ぼしていく経営者という観点から、M&Aの制度づくりを論じている。前提として、著者の「会社はだれのものか」「会社はこれからどうなるのか」を下敷きとしている印象があり、「会社は株主だけのものではない」という点からスタートしているようだ。

    ハードカバーで分厚いものの、論点は明確。恥ずかしながら会社法や証取法などの知識が絶無なので、「ほぉ、そうなのか。そうかもね」程度の理解だったが、今後勉強を積んで読み返してみると示唆が多いのかもしれない。第5章だけを読んでも十分。あ

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    2009年10月04日
  • ヴェニスの商人の資本論

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    この本の中に「広告上の形而上学」という項目がある。
    「?」と思う人が多いかもしれない。
    これは、プリンがプリンであることは食べてからではないと分からない。
    ということであるという。
    詳しくは中身で。

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    2009年10月04日