あらすじ
知ってるつもりだった会社の意外な仕組みや歴史が、面白いように分かってきます。次々に謎が解けていく様は、まるで推理小説のよう! 読後にはジワリと希望がわいてきます。
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書店で目に付き購入しました。これまで岩井氏の本は何冊か読んでいましたので、その意味で本書はこれまでの岩井氏の主張のおさらい、という位置づけでしたが、大変読みやすく改めて岩井理論の面白さを再確認できました。岩井氏の主張を一言でいうなら、会社はヒトでもありモノでもある存在ということ、そしてその中心に位置しているのはフィドゥーシャリー・デューティ(信任義務)だ、ということです。
私自身はこの主張に同意できましたし、本書を読むにつれ、いかに世間の多くの識者の視野が狭いか(あたかも「群盲象を撫でる」という故事のように)、またロナルド・コース流の、会社は情報流通の効率化のために組織化されている(つまり社外の人との取引費用が大きいため会社が組織化されている)、という取引費用理論が本質をついていないということを再認識しました。
本書ではまったく議論されていませんが、本書の法人理論を読むにつれて、はたしてAI(人工知能)はどのような存在として将来位置付けられるのだろうかと感じました。おそらく遠くない未来に、人工知能にも「人格」を与える、という国が登場するでしょう(これまでの例にもれず英国あたりがその最初の国かもしれません)。するとAIはヒトかモノかという論争がビッグイシューになるであろうこと、その際は、「A or B」ではなく、岩井氏の法人論のように「ヒトでもありモノでもある(A and B)」存在としてとらえるべきなのだろう、と本書を読んで想像を膨らませました。
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欧米の会社と比較しての日本の会社の特質を分析しながら、会社の法人格の定義をした著作として読んだ。
自身も25年前の入社数年後の社内レポートで、管理職を専門職能を持つ師匠として定義したことがあり、他でも共感を以って読ませていただいた。
現在においては、優秀な学生の志向は、将来の独立も視野に入れた修行の場としての就職先を求めていることが現実にみられていて、日本の会社も課題が多いと感じている。
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今年度上半期ベスト5に入る面白さ。
・会社
・資本主義
のことが本質から非常によくわかる本。
会社(法人)
→ 所有する主体としてのヒトと所有される客体としてのモノの二重構造を持つ存在。法律上、ヒトでもモノでもある。
資本主義
→ 資本主義の本質は「差異から利潤を生み出す」こと。現在の差異の源は、人的資産。個人や組織から不可分な能力・知識・資産。
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会社について、歴史的にも、構造的にも、説明している。「株式会社無責任論」をベースに、その株式会社に在籍している者の一人として、もっと思い切った施策をやるべきだと、提言してきたつもりだが、その根拠となる点が整理できた。
ヒトとしての会社の復活、文化的には、日本人が、取りいれやすいのではないか。というのは、目から鱗。
それにしても、この本のアイデアが、エンロン破綻事件の前に温められていたというのは、著者の時代の先を読み通す力のあらわれで、すごいこと。
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読みやすかった。大学一年生にはこの本を必修にしてほしい。今でも読む価値は十分にある。タイトルはタイトルとして、テーマは時勢により古くなるものではない。しかし展望については岩井先生少し甘かったのでは(というか歴史は繰り返されると言ってもグローバル経済と日本政府クソすぎない?)と思う。あるいは大企業正社員男子みたいなクラスを主に想定しているのかなぁ、そんなこともないはずだけど。面白く勉強にはなったけど自分の展望にどう役立てるかはちょっと…時間ができばまとめてから感想を書きたい。
Posted by ブクログ
とても示唆に富む一冊。
会社とは法人である。すなわち、人であり、モノであるという二面性を持っている。株主主権のイメージが強すぎるのは、「会社=モノ」の側面が強く出すぎている。実際には、株主が所有する「モノとしての会社」は、株主に指名され、「モノとしての会社」から委任された経営者が運営している。そこには、「人としての会社」という忘れてはならない側面がある。
会社が稼ぐためには、他社との差異化が必要。そのために必要なものが、「設備・資産」⇒「アイデア」に変わってきている。そのため、「アイデア」や「イノベーション」の重要性が大きくなる。そして、それらに向かって、金が動き回る。将来的には、規模/範囲の経済を活かした非常に少数のグローバル企業と、非常に多数かつ小規模でアイデアを継続的に生み出せる企業に二分化されていく。
会社で働く人たちにとって必要なことも変わってくる。長く働くことを前提にした「組織特殊的な能力」の重要性が下がり、「汎用的(ポータブル)な能力」の必要性が高まる。両者のバランスするポイントが変わってくる。
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インタビューを元にしているので読みやすい。
分析は的確。
デフレ脱却の策が失敗であるのは間違いないが,経済学者として正しい策は提示できないのか?
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経済学者・岩井克人が書く易しい会社法人入門書のような一冊。産業革命以降の近代社会の黎明期から21世紀までを貫く資本主義のあり方と、その中で会社という法人がどういう立ち回りをしてきたか。バブル崩壊で低迷する日本的な「ヒト」的な会社共同体も捨てたもんじゃない。だって90年代敵対的買収ばかり行ってきたアメリカ的な「モノ」的な会社もエンロンショックで崩壊したじゃない。21世紀的な労働のあり方に、日本的な会社法人は実に有益ですよという、現代ニッポンの若者を心底励ましてくれる良書。とにかく難しい内容が分かりやすい!
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タイトルはおいておいて、個人的には会社の成り立ち、そしてその学問的分類、変遷が興味深かった。今後研究していく上で意義のあるものだった。それにしてもどうやったらこんな考察ができるようになるのだろう。
最後にNPOに言及されていたのにはびっくりしたが、もしかしたら今後そうなっていくのかもしれない。現にいくつか社会活動家がNPOで成功(?)しているらしいし。
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10年近く前の本だとは思えないほど資本主義と会社について、現在に当てはまる基本的な事項がまとめられている。もちろん今となっては若干懐疑的な部分が含まれているがそれを考慮しても良書。
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会社とは、モノとしての存在と、ヒトとしての振る舞いを併せ持つ特異なものである。
その会社を株主はモノとして扱いたいのか。経営者達はこの会社というものをヒトとして成り立たせるために、手となり足となり、頭脳となる。
日本の会社は、従業員でさえこの経営者として機能している。
商業資本主義から産業資本主義になり、そして現在ポスト産業資本主義の時代、今後の資本主義は何が基軸として機能するのか。
それは、今までと違い差異を意図的に作り出す事。第三の波とか情報化社会とか言われる状態。
そのような状況で「グローバル化」「IT革命」「金融革命」は必然的に手を取り合って訪れた、ということか。
そこでは、個々人のコアコンピタンスこそが重要な差異を産む源になると予言される。
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300ページ弱の大作だけれど、話があちらこちらに飛ぶこともなく、というか話はいろいろ飛ぶんだけれど、展開が理論的で筋が通っているから、不思議と全体を見失うことなく全部を読み切れる。
この本が読みやすいのは、理論の繋がりがとぎれないようにとの著者の配慮と、もうひとつは所々でキーワードを持ち出して、そのキーワードを用いながら話を展開してくれているから。
アメリカ型企業→法人名目的企業→ポスト産業資本主義、かたや日本型企業→法人実在的企業→産業資本主義とこんなふうに適切な言葉を用いてくれるから、とても分かりやすい。
こういうカッチリとした理論的な内容の本は物理問題を解いているみたいで大好き。
法人において、従業員は社員じゃないなんて初めて知った。確かに僕たち労働者は会社と雇用契約を結んでいるから、会社の内部の人間ではなく、外部の人間だ。ただ、内部の人間では無いはずの労働者があたかも内部の人間のような意識で働いているというのが日本型企業の特徴。
「そもそも法人とは・・・」というテーマからグッグッグと、まるで詰将棋のように理論が進む。
多分日常生活には全く顔をださないテーマだけれど、生産性も全く無いけれど、世の中の仕組みに興味がある人は読んでもいいかも。こういう基本の部分を理解しているといろんな展開ができるように思う。
Posted by ブクログ
古さを感じない内容だった
会社はだれのものか、会社はどこへ向かうのかを丁寧に記載している
株主のための会社、という考え方に疑問を投げかけるとともに、会社のもつ「ヒト」と「モノ」としての二面性について論じている。
これからの会社の在り方、会社との付き合い方、というのを考える上で参考になる一冊かと思う。
まとまりのない記載と感じる部分もあり、個人的には少し読みにくさもあったが、インタビュー原稿を元に書籍化したというあとがきを読んで納得した
Posted by ブクログ
「利益は差異性からしか生まれない」、「ポスト産業資本主義社会では新たな差異性を次々と創り出して行かなければ生き残れない」という言葉に暗澹たる気持ちになる。本当に創造性のない人間にとって生きづらい時代だと思う。そして不毛だ。
この本を読んで、
差異性とは具体的にどんなものだろうか?各企業はどのような差異性により利益を上げているのか?
なくならない差異性、なくなりやすい差異性は何だろうか?
差異性により利益を得るこの社会は、公平な社会へと向かっているのだろうか?それとも差異(格差)の維持を目論んでいるのだろうか?
もっとよい社会の仕組みはないのだろうか?
…etc というようなことが脳裏に浮かんだので、もう少し考えたり本を読んだりしたいと思う。
読みやすく、それなりに刺激的で、適度に学術的なバックボーンの存在も感じられるということで、経済学関係の最初の読み物として非常に読後の満足感は高かった。
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コアコンピタンスとは、たえず変化していく環境の中で生産現場の生産技術や開発部門の製品開発力や経営陣の経営手腕を結集して、市場を驚かす差異性をもった製品を効率的かつ迅速的に作り続けていくことのできる、組織全体の能力
単純に得意な分野のことだと考えていたが、いつそれを越える技術が出てくるかわからないので、それを生み出す組織、力のことを指すという言葉に目から鱗。
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会社の歴史的な経緯、現在の構造分析から、今後会社がどうなるかまで示唆している点が素晴らしい。将来像についても、会社は将来独立をするための修行の場と考えるという考え方が良いと思った。そうすると社内政治はさしずめ将来クライアントとやりとりをする際のコミュニケーション能力を磨く場ということかな。
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「会社」とはそもそも何なのか?「会社」はこれからどうなるのか?学者の立場からこれらのシンプルな問いに答えている。かたい話題の割にはスラスラ読めた。
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企業と会社は似て非なる存在。ポスト産業資本主義とはどのような時代か。書かれた時期は少し前だが、その根源的な問いとそれへの回答は、今読んでもなお刺激が多い。
ひきつづき、他著が読みたくなる。
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会社についてとても丁寧にわかりやすく書かれていてとても良い本だと思います。
サラリーマンやサラリーウーマン、これから会社に入ろうとする若い人たちはぜひ読まれるといいと思います。かなり希望が持てる内容になっています。
コーポレート・ガバナンス(会社統治機構)やコア・コンピタンス(会社の中核をなす競争力)などのなんか流行りの言葉みたいなものもわかりやすく説明されていてそそられますし、エンロン事件やサーチ&サーチ社で起きた事例やマイクロソフト社の例など事実を摘示しての理論の展開がなされるので興味深く読めると思います。
しかも、差異から利潤を生み出す資本主義の原理から説き起こされて、ポスト産業資本主義における会社のあり方、さらにその会社での働き方まで示されています。
ただ、私のように会社から脱落してしまい、組織特殊的な人的資産や汎用性のある人的資産としての知識や能力を身につけることが出来なかった者としてはもう時既に遅しです。残念。
それに、これだけ物やサービスが過剰になっている日本では、利潤を生み出す差異性を創造するのは相当困難のではないかと思われるため、平凡な大衆は他の人達とそれこそ差異がないからこそ平凡なのであって何の利潤も生み出せないまま食い詰めてしまうのではないかとふと感じてしまいました。
ですから収入を確保するには高い専門性のある知識や技能を身につける努力が必要で…そしてそれらはごく一部の人達によってしか達成されないのではないかと考えてしまい社会全体としてはなかなか楽観はできないかな?とか思いました。
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資本論とかも含む幅広い話題でなかなか面白かった。元々インタビューの書き起こしなので、文体がバラバラな所が少し読みづらいが、内容が面白いのでどんどん読めてしまいす。
これからの会社の姿については、個人的に感じてる事と同じだったので、そこも興味深く読めた。
Posted by ブクログ
「法的には単なる雇われ人に過ぎないサラリーマンが、何故、自らを会社の内側の人間として捉えるかというと、つぶしのきかない組織固有の知識や経験に長年投資し続けてきたから。会社と運命を共にせざるを得ないから。」
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タイトル通りの本。
アプローチの仕方が「ヒト」と「モノ」の違いから始めることで法人名目説と法人実在説をどう解釈するべきかをはっきりさせているのが個人的にすごくわかりやすかった。
また、利益の源泉を「差異」に求め、グローバル化、IT化が進む昨今ではどんどん差異がなくなる→利益を得る機会がなくなるがゆえに会社は変わらなくをえなくなるという見方は考えさせるものがある。
Posted by ブクログ
書名への答えである「ポスト産業資本主義」が何も特別な新しい社会ではなく、「利潤は差異性からしか生まれない」という原理から導かれる当然の帰結、という解説がしびれた。毎日の会社の中で起きること、起きつつあることが描かれていてなるほど~の連続。これはビジネスマン必読と思う。
非常に読みやすくて、前半の「法人」の説明と後半の「ポスト産業資本主義」の説明をベースに、その前後半が「日本型資本主義」という今属している世界の話でもって滑らかに結びつけられていて、非常にしっくりきた。学者さんの本は理屈がしっかりしてて好きだな。
しいて言うならポスト産業資本主義を示すもっと明解な言葉があればよかった。
Posted by ブクログ
良著。
前半は、会社そして法人とは何かという説明に終始しているけれど、
後半はポスト資本主義における「強い会社」だとか「これからの働き方」の話になります。
キーワードは差異化と人的資産。
やさしい文章で、みんなが何となく感じているであろうことを明快に論じているので、頭が整理できる一冊。
Posted by ブクログ
利潤は差異性からしか生まれない。
卒論における、比較制度分析の中での企業特殊的人的資産の良い復習にもなった。
ポスト産業資本主義に対応していける日本の社会、会社の出現が鍵になっていくという説明も納得。(以前の産業資本主義における優位性をもつ企業体・制度が確立されたものが強固となっている日本の現状)
一様に米国型株式主義、日本の経営、を批判しているだけではなく、
読み易くもある。
Posted by ブクログ
2003年に発行された単行本の文庫版。
現実を見ると、社会は論理的に順を追って変化しているわけではなく、迷走して行き過ぎてを繰り返しながら進んでいるという印象。
しかし少しずつこの本の予想は現実になっている。
Posted by ブクログ
ポスト資本主義の解説本といったところ。
法人とは2種類の顔がある不思議なもの
・「モノ」としての法人 株主にが支配
・「ヒト」としての法人 会社の資産を保有している
2種類の経営者
・個人オーナー等に委任された経営者 「任意代理」
・大企業等の経営者 「信任」
後者はまさに信任に支えられていることから、怠慢がおきやすい。
倫理性が必要。
→ エンロン事件
ポスト資本主義
差額性 → 差異性
法人という仕組みが私的な利益を追求する手段として使われ始めたのはまさに近代。NPOの仕組みは近代以前には普通にあったもの。
→ 都市、僧院、大学
これからの日本に大切なのは、リスクをとって勝負する個人を生み出す社会体制を築くことができるか否か。
個人としては、
カネをもっているかよりヒトのネットワークを築けるか。
さまざまな情報にアンテナを貼って機敏に反応できるか。
情勢が変わったときに変化に身を投じられるか。
多様な情報収集の中で、かつ専門性をもてるか。
ってあたりかな。
Posted by ブクログ
会社は株主の〈モノ〉でしかないという株主主権論は、会社と企業とを混同した、法理論上の誤りだという立場を標榜する著者が、「法人」がほんらいもつはずの公共的性格について考察をおこなっています。
会社とはたんなる企業ではなく「法人」化された企業だということを認識しなければならないと著者は主張します。近代市民社会は、〈モノ〉を所有する〈ヒト〉の権利を認めるとともに、誰かによって所有されることのないものとして〈ヒト〉を定めました。しかし「法人」は、こうした〈ヒト〉と〈モノ〉という二つの側面をもっています。ほんらい〈ヒト〉でないのに、法律上〈ヒト〉とおなじようにあつかわれる〈モノ〉が、「法人」なのです。
アメリカの株主主権論では、法人は〈モノ〉として理解されてきました。ところが、株をたがいにもちあうことで、ほかの〈ヒト〉に所有され支配されることのない、純粋な〈ヒト〉としての性格をもつようになったのが、日本型会社システムだと著者はいいます。それはアメリカ型の企業モデルとは異なるものの、「会社」のひとつのかたちとして認められなければなりません。
〈ヒト〉としての性格の強い日本型会社システムのもとでは、サラリーマンは会社への所属意識を強くいだき、ほかの社員や得意先とのつながりといった、会社のなかでしか役に立たない人的資産を重視する傾向が強くなります。いわゆる日本的雇用システムは、こうした会社のありかたとセットで成立しました。
こうした考察をおこなったあと、著者はあらゆるものを平準化してゆくポスト産業資本主義では、〈ヒト〉がもつ知識や能力が「コア・コンピテンス」としてますます重視されるようになるという見通しを示し、〈ヒト〉としての性格の強い日本型社会システムが今後進むべき方向についての展望をおこなっています。