講談社文芸文庫の検索結果

  • 野鴨
    3.0
    はかなく取りとめない日常の中に現代の至福を描き出す長篇小説。家族を愛し人生を慈しむ――丘の上に住む作家一家。息子たちは高校生・大学生になり、嫁いだ娘も赤ん坊を背負ってしばしばやってくる。ある時から作家は机の前に視点を定め、外に向いては木、花、野鳥など身近な自然の日々の移ろいを、内では、家族に生起する悲喜交々の小事件を、揺るぎない観察眼と無限の愛情を以て、時の流れの中に描き留めた。名作『夕べの雲』『絵合せ』に続く充実期の作家が、大いなる実験精神で取り組んだ長篇。 ◎庭に来る鳥や、庭の樹木から書き起こされる章が多いが、人の心が自然現象のなかに融け、照らし出されているように感じられる。八章には、「四十雀が飛び立ったあと、水盤の水に映った空が揺れている。」という小景描写があった。水面が揺れているのではなく空が揺れている。こんなところを読むと、今、見ているような気がする。昭和の小説には、このような豊かさがあった。<小池昌代「解説」より>
  • 埴輪の馬
    -
    滑稽というより、生活の事実を淡々と書きながら、思わず笑ってしまうといった味わいで、文学の師である井伏鱒二や友人たちとの交友を描く。表題作「埴輪の馬」では、埴輪様式の土器の馬を購入のため、師井伏鱒二や友人と出かける。地方都市の駅には先方のお迎えの車が、それも消防自動車が来ていて、それに乗車することの困惑。他10篇収録。
  • 半日の放浪 高井有一自選短篇集
    3.5
    疎開先で入水した母の遺骸を凝っと見つめる、少年の目。二世帯住宅にするため、明日は家を取り壊すという日、嬉々とする妻をよそに、街に彷徨い出た初老の男の目。――戦争と母の自死を鮮烈に描いて文学的出発を告げた、芥川賞受賞作「北の河」、人も街も変質する世情への微妙な違和感を描く「半日の放浪」など、透徹した観察眼で昭和という時代を丸ごと凝視し続ける、高井有一の自選7短篇。
  • 平凡 私は懐疑派だ
    5.0
    明治文学の黎明を告げる名作「浮雲」を執筆しながらも人生への懐疑より一時筆を断ち、晩年はロシヤに渡って、病に倒れ、帰途ベンガル湾洋上にて、45歳で客死。終生、、人間いかに生くべきかを自問し、明治の激動期を生き急いだ先覚者四迷の小説、翻訳、評論を1冊に集成。自伝体小説「平凡」、翻訳「あいびき」、「狂人日記」他、評論「私は懐疑派だ」「予が半生の懺悔」「遺言書」等収録。
  • 北愁
    3.5
    幼くして母を亡くし、継母と文筆家の父に育てられた才気煥発な娘あそぎ。そのまっすぐな気性は時に愛され、時に人を傷つける。婚家の没落、夫婦の不和、夫の病――著者・幸田文自身を彷彿とさせる女性の波乱の半生を、彼女を取り巻く人々とのつながりの中でこまやかに描きあげた長編小説。
  • 骨の肉・最後の時・砂の檻
    5.0
    生の深奥を抉る明晰な衝撃。河野文学の中期秀作群――初期作品「美少女」「幼児狩り」、芥川賞受賞作「蟹」から、話題の『みらい採り猟奇譚』まで、著者の誠実な文学的展開の中で、中期と呼ぶべき中・短篇群。特に世評高い名篇「骨の肉」ほか、女流文学賞受賞の「最後の時」、更に「砂の檻」ほか4篇収録。男と女の関係、特に子供のいない女・妻と男・夫の関係を描き、抉り出されてくる生の深奥の類例のない明晰な衝撃。
  • 街角の煙草屋までの旅 吉行淳之介エッセイ選
    3.5
    坂の上の角の煙草屋まで行くのも旅だと考え、自分の住んでいる都会の中を動くことに、旅の意味を見出す表題作。小説作品のモチーフになった色彩体験を原風景に遡って検証する「石膏色と赤」ほか、心に残る幼年時代の思い出、交遊、文学観、なにげない日常の暮らしや社会への思いなど、犀利な感性と豊かな想像力を通して綴る「人生の達人」の珠玉のエッセイ選。吉行文学の創造の秘密が詰まった47篇。
  • 木菟燈籠
    4.0
    そこはかとないユーモアやはにかみを湛えたかざりのない文章でどこか懐かしいような風景を描き上げて多くのファンを持つ"小沼文学の世界"。季節や時代の移ろいに先輩の作家や同僚の教員、学生時代の友人など愛すべき人々の風貌を髣髴とさせる、この著者ならではの好短篇集。
  • 椋鳥日記
    3.5
    ライラックの蕾は膨らんでいても外套を着ている人が多い4月末のロンドンに着いた主人公は、赤い2階バスも通る道に面した家に落ち着く。朝早くの馬の蹄の音、酒屋の夫婦、なぜか懐かしい不思議な人物たち。娘や秋山君との外出。さりげない日常の一齣を取りあげ、巧まざるユーモアとペーソスで人生の陰翳を捉え直す、純乎たる感性と知性。ロンドンの街中の“小沼文学の世界”。平林たい子賞受賞。
  • 村のエトランジェ
    3.7
    小さな村に疎開してきた美しい姉妹。ひとりの男をめぐり彼女らの間に起こった恋の波紋と水難事件を、端正な都会的感覚の文章で綴った表題作ほか、空襲下、かつての恋人の姿をキャンバスに写すことで、命をすりへらしていく画家との交流をたどる「白い機影」など、初期作品8篇を収録。静かな明るさの中に悲哀がただよい、日常の陰影をさりげないユーモアで包む、詩情豊かな独自の世界。「小沼文学」への導きの1冊。
  • 論語知らずの論語読み
    4.5
    論語をダシに奇人変人作家仲間を独特の文章でつづる名随筆――二千数百年前の中国の古典『論語』。余りにも有名であるけれど、きちんと読んだ人は、どのくらいいるだろう。ならば、孔子にならい、我流の読み方をしてみようと、阿川弘之が、悪友・遠藤周作、三浦朱門、吉行淳之介、北杜夫らとの珍談奇行の交友録をまじえて、世相風俗万般をにがりのきいた独特のユーモアでつづった快エッセイ。論語を知らない人も、ちょっと論語を楽しめる1冊。
  • 大いなる日 司令の休暇
    5.0
    父をこよなく愛した幼、少年の日々。敗戦により海軍軍人であった父の失職の帰還。失意と家庭の不幸を耐えた父のストイシズム。人間の魂の高貴を平明、粉飾なき文体で描く秀作群。惜しまれて急逝した不朽の文学者魂・阿部昭の世界。
  • 芥川龍之介と太宰治
    3.0
    対照的な文学的軌跡をたどりながら、最終的にはともに自死を選んだ芥川龍之介と太宰治。「近代的自我」の問題を問うた福田恆存が、その問題意識から二人の傑出した作家に見出したものは何だったのか。初期の作家論を代表する「芥川龍之介I」をはじめ、戦後に書かれた「芥川龍之介ll」、太宰の死の前後に書かれた二つの評論を所収。独自の視点で描かれた傑作文芸評論集。
  • アメリカの影
    4.0
    戦後日米関係の根底を問う鮮烈なるデビュー作。江藤淳の『成熟と喪失』および一連の占領研究を精細に追跡することで、彼の戦後言説空間への強烈な批判意識とその背後に隠されたアメリカへのナイーブな思いとの落差に、戦後社会の変容を読み解き、また、原爆投下を可能とした<無条件降伏>という思想それ自体を問うことで、日米関係の<原質>に迫る。文学者としての鋭い直観と斬新な視座から日本の戦後をとらえ直した。
  • 鮎の宿
    -
    志賀直哉門下の著者が師にまつわる様々な出来事を中心に綴った滋味溢れるエッセイ集。志賀の臨終を描いた「終焉の記」をはじめ、滝井孝作、尾崎一雄ら同門の作家や「白樺」同人の里見、梅原龍三郎のこと。志賀と前後して亡くなった三島由紀夫、川端康成、文壇仲間吉行淳之介、遠藤周作との交流、親しかった人々や食、旅をめぐる話などを清澄な文章で記した初期のエッセイ59篇。
  • 鮎・母の日・妻 丹羽文雄短篇集
    -
    幼くして生母と離別し、母への思慕と追憶は、作家・丹羽文雄の原点ともなった。処女作「秋」から出世作「鮎」、後年の「妻」に至る、丹羽文学の核となる作品群。時に肉親の熱いまなざしで、時に非情な冷徹さで眺める作家の<眼>は、人間の煩悩を鮮烈に浮かび上がらせる。執拗に描かれる生母への愛憎、老残の母への醜悪感……。思慕と愛憎と非情な<眼>による、「贅肉」「母の日」「うなずく」「悔いの色」ほか10篇。
  • 暗室
    3.9
    屋根裏部屋に隠されて暮す兄妹、腹を上にして池の底に横たわる150匹のメダカ――脈絡なく繋げられた不気味な挿話から、作家中田と女たちとの危うい日常生活が鮮明に浮かび上る。性の様々な構図と官能の世界を描いて、性の本質を解剖し、深層の孤独を抽出した吉行文学の真骨頂。「暗い部屋」の扉の向こうに在るものは……。
  • アヴァンギャルド芸術
    -
    常に時代を"転形期"として捉え、前近代的なもの、B級の芸術を否定的媒介にして"モダニズム"を超える思考の提出。世界の秀れた前衛の思想をラジカルに踏んだ強力な視座、常にダイナミックな"変革"を志す世界的発信性の獲得。思想の追尋者・花田清輝の代表作。
  • 異邦の香り ネルヴァル『東方紀行』論
    -
    ウィーン、カイロ、シリアを経てコンスタンチノープルへ。『東方紀行』は異国への憧憬と幻想に彩られながら、オリエンタリズムの批判者サイードにさえ愛された、遊歩者(フラヌール)ネルヴァルの面目躍如たる旅行記であった。四十代で縊死、時を経てプルースト、ブルトンらにより再評価された十九世紀ロマン派詩人ネルヴァルの魅力をみずみずしい筆致で描く傑作評論。読売文学賞(研究・翻訳賞)受賞作。巻末に、東京大学文学部での最終講義「ネルヴァルと夢の書物」を収録。
  • 絵合せ
    3.7
    グリム童話が不思議に交叉する丘の上の家。"姉がひとり、弟が二人とその両親"――嫁ぐ日間近な長女を囲み、毎夜、絵合せに興じる5人――日常の一齣一齣を、限りなく深い愛しみの心でつづる、野間文芸賞受賞の名作「絵合せ」。「丘の明り」「尺取虫」「小えびの群れ」など全10篇収録。
  • 駅・栗いくつ
    3.0
    「男と女のなかには距離がひそむ。親子のあいだにも寸法は残されている。駅も距離だし、国も距離だし、ことばも距離だし、風も著物も距離だ」(『駅』「さとがえり」)――男と女の縁、夫婦、親と子、幼な友達、嫁と姑。ささやかな日常の中に人生の機微を掬い取り、鮮やかに命を吹き込む、幸田文の強靱な感性。連作的随筆『駅』の12章と小説『栗いくつ』を収録。
  • 回転どあ・東京と大阪と
    3.0
    「いったい涼しげというのは、すっきりと線が立っている趣をいい、すっきりとは或る鋭さを含んでいるとおもう。……。げというのは力量である。」(『回転どあ』「あじさい」)――父・幸田露伴の思い出を綴った文章で世に出た著者は、東京下町・向島に生まれ育った。気性の激しさ、繊細鋭利な感性、強靱な文体で身辺を語り、日々の発見を精妙に記す。庶民生活を清新に描いた、単行本未収録エッセイ101篇。
  • 幽 花腐し
    5.0
    中華街のバーで、二十年以上前に遇った女の幻影に翻弄される男の一夜を描く、事実上の初小説「シャンチーの宵」、芥川賞候補作「幽」、同受賞作「花腐し」ほか全6篇。知的かつ幻想的で、悲哀と官能を湛えた初期秀作群。社会から外れた男が生きる過去と現在を、類稀な魅力を放つ文体で生々しく再現し、小説の醍醐味が横溢する作品集。
  • 風と光と二十の私と
    4.3
    余は偉大なる落伍者となって歴史のなかによみがえる雪の国新潟の教室の机に彫って上京し、あえて、孤独な自己鍛練の世界に彷徨する、"精神の巨人"坂口安吾の繊細にして豪放、聖にして俗の、ダイナミックな自伝世界。
  • 還暦の鯉
    -
    太宰治の不可思議な人柄にふれて書かれた随筆「社交性」、旺盛な好奇心で体験を語る「私の動物誌」、「還暦の鯉」他。語尾の「が」や「しかし」に飽くまで拘わる文士気質や徹夜の仕事で書いた原稿を前に独り言をいう著者の癖など94歳の今日まで悠々たる歳月を歩みきった作家が還暦前の頃の充実した日々を、独特の含羞をうかべつつも寛いだ筆致の裡に見せる素顔の表情。身辺随想31篇。
  • 季節と詩心
    -
    外交官である父に伴われて、メキシコ、スペイン、ブラジルと大正期のほとんどを海外で過ごし、ベル・エポックの香気に触れた“雅び”の詩人・堀口大學。アポリネール、コクトーら、20世紀“新精神(エスプリ・ヌーヴォー)”詩人たちの息吹きを満載した訳詩集『月下の一群』は、洗練された機智と豊潤なエロスを薫風にのせて、わが国の湿潤な文学風土に送り込んだ。詩の子、恋の子、旅する子の面目躍如たる第一随想集。
  • 黒い裾
    4.0
    千代は喪服を著(き)るごとに美しさが冴えた。……「葬式の時だけ男と女が出会う、これも日本の女の一時代を語るものと云うのだろうか」――16歳から中年に到る主人公・千代の半生を、喪服に託し哀感を込めて綴る「黒い裾」。向嶋蝸牛庵と周りに住む人々を、明るく生き生きと弾みのある筆致で描き出し、端然とした人間の営みを伝える「糞土の墻」ほか、「勲章」「姦声」「雛」など、人生の機微を清新な文体で描く、幸田文学の味わい深い佳品8篇を収録した第一創作集。
  • 群棲
    4.0
    向う三軒両隣ならぬ“向う二軒片隣”の四軒の家を舞台とし、現代の近郊の都市居住者の日常を鋭く鮮かに描き出す。著者の最高傑作と評され、谷崎潤一郎賞も受賞した“現代文学”の秀作。
  • 慶応三年生まれ 七人の旋毛曲り 漱石・外骨・熊楠・露伴・子規・紅葉・緑雨とその時代
    4.0
    夏目漱石、宮武外骨、南方熊楠、幸田露伴、正岡子規、尾崎紅葉、斎藤緑雨の七人がみな、幕末維新動乱真っ只中の慶応三年生まれの同い年だということに、著者が興味を感じ続けてきたことからすべてが始まる。明治期の文学に造詣の深い著者が膨大な文献を渉猟することで浮かび上がってきた、七人の傑物たちの姿や相互に絡み合う関係を生き生きと筆致で描くことで、明治初期から日清戦争までの時代を鮮やかに浮かび上がらせる本書は、2001年講談社エッセイ賞を受賞した。鋭い批評性を保ちながらも、ひたすら頁を繰っていきたくなる面白さに満ちた文芸評論の傑作。
  • 鶏肋集/半生記
    4.0
    子守り男に背負われて見た、花の下での葬式の光景。保養先の鞆ノ津で、初めて海を見た瞬間の驚きと感動。福山中学卒業と、京都の画家橋本関雪への入門志願。早稲田大学中退前後の、文学修業と恋の懊悩。陸軍徴用の地マレー半島で知った苛酷な戦争の実態。明治31年福山に生れ、円熟の作家が心込めて綴った若き日々・故郷肉親への回想の記。
  • 現代詩人論
    -
    大正末期から戦後まで、混迷の時代の中で輝かしい光を放った詩人たち――西脇順三郎、金子光晴、中野重治、中原中也はじめ、「四季」の三好達治、立原道造、戦後「荒地派」の鮎川信夫、田村隆一さらに清岡卓行、谷川俊太郎に及ぶ、23人の魅力の源泉に迫る。「詩」と「批評」という二筋道を、一筋により合わせ得る道を自らの内に探求してきた著者の、刺激に満ちた詩人論。現代詩を語る上で、必読の詩人論が誕生した!
  • 舷燈
    5.0
    海軍予備学生に志願し従軍した牧野の青春は敗戦とともに打ち砕かれた。心は萎えていた――身内に暗い苛立ちを棲みつかせ、世間に背を向け頑なに生きる男。短気で身勝手で、壮烈な暴力をふるう夫に戸惑い反撥しながらも、つき従う妻。典型的な夫婦像を描く作品の底に、亡き戦友への鎮魂の情を潜め、根源的な哀しみを鋭く突きつける傑作。
  • 崑崙の玉/漂流 井上靖歴史小説傑作選
    -
    中国の古代から人々が執心してやまない「玉」の産地として聞こえた、誰も知らない崑崙山を目指して黄河の源流へと遡っていく一行に襲いかかる苦難の行方を描いた「崑崙の玉」。著者の独擅場とも言うべき西域・中国もののみならず、戦乱の世において非運に倒れた武将たちの運命を見据えた戦国もの等も収録。透徹した視線と自在な筆致が冴える傑作短篇集。
  • 西行論
    4.0
    若年のある時、在俗の名門武士が不明の動機で出家遁世した。真言浄土の思想に動かされながら、同時代の捨て聖たちとは対照的な生きざまを辿り、詩歌を通じてしか、いっさいの思想を語らなかった――西行とは何ものであったか。豊潤な感性を強靱な論理で見事に展開する西行論。「僧形論」「武門論」「歌人論」の3部構成で西行の〈実像〉に鋭く迫る!
  • 坂口安吾と中上健次
    4.0
    闘う知性が読み解く、事件としての安吾と中上――日本の怠惰な知性の伝統の中で、「事件」として登場した坂口安吾と中上健次。二人は、近代文学の根源へ遡行しつつ、「自然主義」と「物語」の止揚を目指す。安吾は、自らを突き放すような他者性に文学の「ふるさと」を見出し、中上は、構造に還元することなく、歴史の現在性としての「路地」と格闘する。闘う知性としての安吾と中上を論じた、74年から95年までの批評を集成した、伊藤整文学賞受賞作。 ◎「文学」とは、どんな秩序にも属さず、たえず枠組を破ってしまう荒ぶる魂であった。文学をやっている人がすべてそうなのではない。むしろその反対である。文学という枠組を吹き飛ばすようなもの、それが「文学」だった。私と中上は文壇において暴風雨のような存在であった。そして、われわれがともに敬愛していたのが坂口安吾である。(中略)私は安吾を高く評価していた。しかし、小説家としてではない。私にとって、彼の作品は、哲学であり、歴史学であり、心理学あり……、それらすべてをふくむ何か、要するに、「文学」であった。<「著者から読者へ」より>
  • 桜の森の満開の下
    4.0
    なぜ、それが"物語・歴史"だったのだろうか――。おのれの胸にある磊塊を、全き孤独の奥底で果然と破砕し、みずからがみずから火をおこし、みずからの光を掲げる。人生的・文学的苦闘の中から、凛然として屹立する"大いなる野性"坂口安吾の"物語・歴史小説世界"。
  • 叫び声
    4.1
    新しい言葉の創造によって"時代"が鼓舞される作品、そういう作品を発表し続けて来た文学者・大江健三郎の20代後半の代表的長篇傑作『叫び声』。現代を生きる孤独な青春の"夢"と"挫折"を鋭く追求し、普遍の"青春の意味"と"青春の幻影"を描いた秀作。
  • 猿のこしかけ
    4.0
    「あれはいったい何だったろう」かと、淡いかなしみと共に想い出しつつ、いいものだと思う娘と父の深い係わりを描く「平ったい期間」。各々手応えのある人生を感じさせた「三人のじいさん」。ほかに「葉ざくら」「晩夏」「捨てた男のよさ」など。父・露伴が逝ってからの「十年の長短」を思いはかる著者が、再び父と暮らした日々や娘時代の忘れ難い思いをまとめた「猿のこしかけ」に、同時期の5篇を加えた珠玉の随筆集。
  • 七・錯乱の論理・二つの世界
    -
    常に世界に開かれている透徹したリアルな眼。文学・思想の至高を終生求めつづけた強靱な芸術家魂。ブリリアントな論理と秀抜この上ないレトリック。真の前衛・花田清輝の初期小説・「七」「悲劇について」、「復興期の精神」と比肩する初期エッセイ集「錯乱の論理」、「沙漠について」「動物・鉱物・植物」等の名篇を含む「二つの世界」を合わせて収録。
  • 上海・ミッシェルの口紅 林京子中国小説集
    4.0
    戦争の影迫る上海の街で、四人姉妹の3番目の「私」は、中国の風俗と生活の中で、思春期の扉をあけ成長してゆく。鮮烈な記憶をたどる7篇の連作小説「ミッシェルの口紅」と、戦後36年ぶりに中国を再訪した旅行の記「上海」。長崎で被爆して「原爆」の語り部となる決意をした著者が、幼時を過ごしたもう一つの文学の原点=中国。
  • 小説作法
    -
    瀬戸内寂聴、吉村昭、河野多惠子、津村節子、新田次郎ら錚々たる作家を輩出した同人誌『文学者』を主宰し、文壇の大御所として絶大な人気を博していた昭和二十年代後半、『文學界』に連載され、異例の反響を得た名著。人物の描き方から時間の処理法、題の付け方、あとがきの意義、執筆時に適した飲料まで。自身の作品を例に、懇切丁寧、裏の裏まで教え諭した究極の小説指南書。
  • 地獄変相奏鳴曲 第一楽章・第二楽章・第三楽章
    -
    第一楽章「白日の序曲」の初稿発表より40年の歳月を経て完成した「連環体長編小説」――全四楽章のうち、旧作の新訂版である第一楽章から第三楽章までを本書に収録。異姓同名の男女の織りなす四つの世界が、それぞれ独立した中篇小説でありながら、重層化され、ひとつの長篇小説となる。十五年戦争から、敗戦・占領下、そして現代にいたる、日本人の精神の変遷とその社会の姿を圧倒的な筆致で描破。
  • 地獄変相奏鳴曲 第四楽章
    -
    本第四楽章をもって、〈連環体長篇小説〉『地獄変相奏鳴曲』がついに完結。十五年戦争の時代をくぐり、敗戦・占領下の混乱、そして戦後の激動を生き抜いてきた、一組の老齢に達した夫婦が、周到な準備のもと、何ゆえ「情死」を選びとったのか? 互いに敬愛する男女の仲に根づく〈無神論的・唯物論的にして宗教的〉な境地とはいかなるものか? 日本人の現代および近未来の課題に果敢に挑戦した最終楽章「閉幕の思想」。
  • 自分の羽根
    5.0
    小学生の娘と羽根つきをした微笑ましいエピソードに続けて、「私の羽根でないものは、打たない」、私の感情に切実にふれることだけを書いていく、と瑞々しい文学への初心を明かす表題作を始め、暮らしと文学をテーマに綴られた90篇。多摩丘陵の“山の上”に移り住んだ40歳を挟んだ数年、充実期の作家が深い洞察力と温雅なユーモアをもって醸す人生の喜び。名作『夕べの雲』と表裏をなす第一随筆集。
  • スミヤキストQの冒険
    3.8
    そこは悪夢の島か、はたまたユートピアか。スミヤキ党員Qが工作のために潜り込んだ孤島の感化院の実態は、じつに常軌を逸したものだった。グロテスクな院長やドクトルに抗して、Qのドン・キホーテ的奮闘が始まる。乾いた風刺と奔放な比喩を駆使して、非日常の世界から日常の非条理を照射する。怖ろしくも愉しい長編小説。
  • 漱石人生論集
    -
    「小生は何をしても自分は自分流にするのが自分に対する義務であり且つ天と親とに対する義務だと思います。天と親がコンナ人間を生みつけた以上はコンナ人間で生きて居れと云う意味より外に解釈しようがない」(書簡より)屈指の漱石の読み手である出久根達郎が、厭世家ではあるが決して人生を悲観しない漱石の生き方の真髄を全集の中から選んで編集した、今に新しい人生論集。
  • 対談 文学の戦後
    -
    「戦後文学」をどう評価するか? 敗戦後34年を経て、詩誌「荒地」時代からの友人である典型的な戦中派の二人が、社会と文学の動向を縦横に論じ、戦後文学史に新たな視座を提示した、衝撃の対談集――詩誌「荒地」に拠って、戦後現代詩を主導してきた鮎川信夫。詩人として、また文学と思想の新たな理論を展開し、現代をリードしてきた吉本隆明。戦中派の巨人ふたりが、敗戦の衝撃から、身を以て戦後文学史を生きてきた34年を振り返り、社会と文学の動向を鋭く問う。第一次戦後派の限界、江藤淳批判、ソルジェニツィン『収容所群島』の現代史的問題、現代文学の変質など、白熱の議論を交わした対談集。「戦後文学」との別離を告げた記念碑的作品。
  • 高村光太郎
    4.0
    敗戦後の岩手の山中に、己を閉塞させた高村光太郎。彼の留学体験に、父・光雲への背反、西洋文化の了解不可能性を探り、閉塞の〈実体〉を解明する。著者の文学的出発の始めに衝きあたった巨大なる対象――その生涯、芸術、思想を論じ、高村光太郎の思想的破綻を自ら全戦争体験をかけ強靱な論理で刳り出す初期の代表的作家論。
  • 谷間/再びルイへ。
    -
    昭和20年、長崎の兵器工場学徒動員で、被爆。多くの死をくぐり抜け、少女は生き残った。結婚、出産、幼い命を育てるのは、恐怖との闘いであった。20数年後の離婚、それは個の崩壊であり、8月9日の闇なのか。80歳を越えて書いた小説「再びルイへ。」は、著者の歩んだ人生への回答、あるいは到達でもある。川端賞受賞作「三界の家」を含む、心うつ短篇小説集。
  • 珍饌会 露伴の食
    -
    博覧強記の文豪が描く、奇奇妙妙の「食」尽くし。露伴とその周辺の好事家たちをモデルに描く抱腹絶倒の戯曲「珍饌会」、河豚を愛した文人たちの漢詩を読み解く「桃花と河豚」、故事来歴から料理法まで網羅した「鱸」など随筆六篇を収録。稀代の碩学・露伴の「食」をめぐる蘊蓄と諧謔を味わう名篇集。南條竹則・編。
  • 沈黙のまわり 谷川俊太郎エッセイ選
    4.5
    1952年、第1詩集『二十億光年の孤独』で戦後詩界に登場した谷川俊太郎。三好達治はその出現を「ああこの若者は/冬のさなかに永らく待たれたものとして/突忽とはるかな国からやつてきた」と推賞した。本書は、若き日の著者の考え方の基礎を示す著書『世界へ!』『愛のパンセ』の中から、21篇のエッセイを収録。初めに沈黙があった。言葉はその後で来た。――谷川俊太郎の青春!
  • 月夜の記憶
    5.0
    人間の根柢へ、文学の原理へ、深まりゆく作家精神の軌跡! 死を賭して受けた胸部手術、病室から見た月、隣室の線香の匂い、そして人間の業……。終戦からほどない、21歳の夏の一夜を描いた表題作をはじめ、人間の生と死を見据え、事実に肉迫する吉村昭の文学の原点を鮮やかに示す随筆集。自らの戦争体験、肉親の死、文学修業時代と愛する文学作品、旅と酒について、そして家族のことなど、ときに厳しく、ときにユーモラスに綴る。
  • 包む 現代日本のエッセイ
    4.1
    季節と詩情が常に添う父・露伴の酒、その忘れられぬ興趣をなつかしむ「蜜柑の花まで」。命のもろさ、哀しさをさらりと綴る「鱸」、「紹介状」「包む」「結婚雑談」「歩く」「ち」「花」など、著者の細やかさと勁さが交錯する29篇。「何をお包みいたしましょう」。子供心にも浸みいったゆかしい言葉を思い出しつつ、包みきれない「わが心」を清々しく1冊に包む、珠玉のエッセイ集『包む』。
  • テクストから遠く離れて
    4.0
    ポストモダン思想とともに80年代以降、日本の文学理論を席巻した「テクスト論」批評。その淵源をバルト、デリダ、フーコーらの論にたどりつつ、大江健三郎、高橋源一郎、村上春樹、阿部和重ら、同時代作家による先端的な作品の読解を通して、小説の内部からテクスト論の限界を超える新たな方法論を開示した、著者の文芸批評の主著。批評のダイナミズムを伝える、桑原武夫学芸賞受賞作。 「わたしはただの読者として小説を読むということだけを心がけた。この本にもしほんの少しの新しさがあるとしたら、ただの読者が小説を読むという経験だけで、バルト、デリダ、フーコーといった『作者の死』の論者たちの説に、向き合っていることだ。」――加藤典洋
  • 天国が降ってくる
    4.6
    主人公・葦原真理男は、九州の没落した旧家の末裔。新聞社に勤める父親の転勤によりロシアに暮すが、高校受験のために単身で帰国。父の友人の若い大学助教授・中之島妙子の家に寄寓し、異国からの転校生として特異な日常が始まる。高速回転する真理男の精神は、やがて晩年の感覚を所有し、自己昇華をめざす。パロディを駆使し、自意識を追究した、島田文学の初期集大成。
  • 鞆ノ津茶会記
    3.0
    秀吉の暴威と隠者の酒宴。『黒い雨』に通底する最晩年の傑作――茶会の作法や規則なども全く知らないが、鞆ノ津の城内や安国寺の茶席で茶の湯の会が催される話を仮想した……秀吉の九州攻略から朝鮮出兵へと至る時期。作家の郷里・備後を舞台に、小早川隆景に恩顧を受けた、武将や僧侶が集まる宴で噂話に花が咲き、戦国末期の生々しい世相や日常が、色鮮やかに甦る。著者の想像力に圧倒される、最晩年の名作。 ※本書は、1989年1月福武文庫版『鞆ノ津茶会記』、1999年1月刊『井伏鱒二全集27』(筑摩書房)を底本としました。
  • ドグラ・マグラの世界/夢野久作 迷宮の住人
    5.0
    巻頭に置かれるのは、夢野久作が読書界から顧みられることのほとんどなかった1962年に鶴見俊輔が雑誌「思想の科学」に発表した「ドグラ・マグラの世界」である。この評論により、日本の戦後期には忘れられた存在となっていた夢野久作は「再発見」される。 「ドグラ・マグラの世界」の発表がきっかけとなり、鶴見と夢野久作の長男である杉山龍丸の交流が生ずる。やがて杉山龍丸の著書や杉山が編纂した夢野久作の日記などを資料としてじゅうぶんに咀嚼したうえで、鶴見は夢野久作論『夢野久作 迷宮の住人』が書き下ろされる 夢野久作について少年期の鶴見俊輔が出会った夢野久作の『犬神博士』の紹介から、『夢野久作 迷宮の住人』の第一部は始まる。そして『氷の涯』という日本軍のシベリア出兵をモチーフにした作品、さらに異色の長篇推理小説『ドグラ・マグラ』へ。そして、これらの作品が昭和初期の読者にどのように受けとめられたのかと問いが生まれる。 第二部では作家夢野久作の本名である杉山泰道の側からその生涯が辿られる。泰道の伝記的事実の多くは、さらにその長男杉山龍丸の著書によるが、伝記的事実と時代背景を結びつけて読み解くことで、より作品世界に深くわけ入ることができる。 第三部では、夢野作品受容の変遷が綴られる。江戸川乱歩ほか同時代の探偵作家たちにはやはり異形のものとして解されている。しかし年少の読者だった福永武彦や中井英夫たちには強烈な印象が残っていた。敗戦後、占領期に夢野久作が思いおこされることはなかったが、1960年を境にふたたび関心が寄せられるようになり、作品研究・分析が進む。そこで見えてきたものは、中央から遠い地方で、土地の日常言語を駆使して人間の根本問題に迫る、きわめて独創的な作家の姿であった。 本書により、夢野久作というきわめて独自性に満ちた作家に多角的に光が当てられ、読者にとってもそのイメージが鮮明となることが期待される。
  • 内省と遡行
    4.5
    1969年、漱石論で文芸評論家として出発した著者が、『日本近代文学の起源』を経て85年の『探究』連載を前に格闘した、哲学的評論「内省と遡行」と「言語・数・貨幣」。否定に否定を重ねながら、〈内部〉に留まることを徹底して〈内部〉を自壊に導き、〈外部〉へ出ることをめざした本書は思想家誕生の軌跡であり、「驚くべき戦争の記録」(浅田彰)でもある。極限まで思考する凄味に満ちた名著。
  • 内部の人間の犯罪 秋山駿評論集
    -
    「犯罪」とは――。都市の空虚なビル、そのコンクリートの壁の上に、簡単な1本の線で描かれる「人間」の形である。少年による「理由なき殺人」の嚆矢、小松川女高生殺人事件。犯人の少年の獄中書簡に強く心を衝たれた著者は、動機の周りを低回する世間の言説に抗し、爆発的な自己表現を求めた内部の「私」の犯罪であるとする文学の言葉を屹立させた。他、永山則夫、金嬉老など、犯罪を論じた評論17篇を精選。
  • 中原中也全訳詩集
    3.5
    季節(とき)が流れる、城寨(おしろ)が見える、無疵な魂(もの)なぞ何処にあらう? (『ランボオ詩集』幸福)早熟な詩才・中原中也が、死の直前に刊行した『ランボオ詩集』。唯一の全訳詩集として流布し、同時代を激しく揺るがせた。生前の三冊の訳詩集に未定稿を加え、全翻訳詩を収録。
  • 日本風景論
    -
    常に斬新な批評を展開する著者が“風景”と呼ぶ微妙な位相。村上春樹の小説を中心に「まさか」と「やれやれ」論、坂口安吾、田中角栄、北一輝に共通性を見る「新潟の三角形」、“ディスカバー・ジャパン”と国木田独歩、志賀重昂を対比する「武蔵野の消滅」ほか、三島由紀夫、深沢七郎、吉本ばなな、大島弓子等、時代をとりまく日本的文化現象に焦点をあてた独創の8篇。著者の批評の資質と方向を示す初期評論集。(講談社文庫)
  • 日本文化私観
    4.4
    戦前・戦中・戦後、昭和22年はじめまでの安吾全エッセイから坂口安吾の文学、人生観を最も深く、強く語ったもの、例えば「FARCEに就て」「牧野さんの死」「茶番に寄せて」「日本文化私観」「青春論」「堕落論」「恋愛論」等々、22篇収録。“精神の巨人”坂口安吾の反骨精神横溢する選エッセイ集。
  • 人間・歴史・風土 坂口安吾エッセイ選
    3.0
    自然の風土の中で生きる人間をとおして作られるのが真実の歴史であるとする安吾独得の歴史観を背景に、自ら現地に足を運び、卓抜した洞察力を働かせてものした歴史紀行の中から「天草四郎」「安吾・伊勢神宮にゆく」「飛騨・高山の抹殺」など10篇を収録。司馬遼太郎の「街道をゆく」や松本清張の「古代探究」などの紀行文学のさきがけとなった画期的エッセイ。
  • 白痴 青鬼の褌を洗う女
    4.6
    戯作者の精神を激しく新たに生き直し、俗世の贋の価値観に痛烈な風穴をあける坂口安吾の世界。「堕落論」と通底する「白痴」「青鬼の褌を洗う女」等を収録。奔放不羈な精神と鋭い透視に析出された"肉体"の共存――可能性を探る時代の補助線――感性の贅肉をとる力業。
  • 花の町/軍歌「戦友」
    4.0
    昭和16年、陸軍徴用員として従軍した著者は翌年2月シンガポールに入り、昭南タイムズ、昭南日本学園等に勤務。市内の一家族の動向を丹念に描いた長閑で滑稽で奇妙に平和な戦時中の異色作「花の町」をはじめ、「軍歌『戦友』」「昭南タイムズ発刊の頃」「シンガポールで見た藤田嗣治」「或る少女の戦時日記」「悪夢」など、この体験に関わる文業を集成、9篇収録。
  • 反文学論
    5.0
    抜群におもしろい文芸時評の白眉――1977年から78年にわたり、初期代表作となる『マルクスその可能性の中心』、『日本近代文学の起源』と並行して書かれた、著者唯一の文芸時評集。100人近い現役作家を俎上に載せた短い<時評>と<感想>に、この類稀な批評家のエッセンスが凝縮し、横溢する。転換期に立つ「近代文学」の終焉を明瞭化した記念碑にして、これから文学にかかわる者の、必読の書。 ◎「……この『反文学論』は、著者の批評活動すべてが圧縮されたものだと言える。読者は、本書に対して、まるで「柄谷行人」という映画の予告編をみているような印象をもつであろう。そのことを可能としているのは、ひとえに本書が「文芸時評」という制約を受けていることによるのだ。」<池田雄一「解説」より> ※本書は、1991年11月『反文学論』(講談社学術文庫)を底本としました。
  • 番茶菓子 現代日本のエッセイ
    3.7
    《時間は一度勝負だ。過ぎた時間は書き直せない》と覚悟した著者が、日常の暮らしでの人と人との出会いと記憶の断片を、掌篇小説の如き味わいの小品12章につづる。「花の小品」「きものの四季」「新年三題」「一日一題」ほか、作家・幸田文の凜とした資質のきらめく、珠玉の名文。
  • 光の曼陀羅 日本文学論
    -
    埴谷雄高、稲垣足穂、南方熊楠、江戸川乱歩、中井英夫ら、「死者たちのための文学」を紡ぐ表現者の連なりを描き出す第一部「宇宙的なるものの系譜」。折口信夫の謎めく作品『死者の書』と関連資料を綿密に読み込み、物語の核心と新たな折口像を刺戟的に呈示する第二部「光の曼陀羅」。『死者の書』を起点に、特異な文学者の稜線を照射する気宇壮大な評論集。大江健三郎賞、伊藤整文学賞受賞。
  • 日和山 佐伯一麦自選短篇集
    4.5
    新聞配達の早朝の町で、暗天に閉ざされた北欧の地で、染織家の妻と新たな暮らしを始めた仙台の高台の家で、そして、津波に耐えて残った小高い山の上で――「私」の実感をないがしろにしない作家のまなざしは常に、「人間が生きて行くこと」を見つめ続けた。高校時代の実質的な処女作から、東日本大震災後に書き下ろされた短篇まで、著者自ら選んだ9篇を収録。
  • ピアノの音
    -
    小高い丘の家に住まう晩年の夫婦の穏やかな生活。娘や息子たちは独立して家を去ったが、夫々家族を伴って“山の上”を訪れ、手紙や折々の到来物が心を通わせる。夜になれば、妻が弾くピアノに合わせ、私はハーモニカ……。自分の掌でなでさすった人生を書き綴る。師伊東静雄の言葉を小説作法の指針に書き続けてきた著者が、自らの家庭を素材に、明澄な文体で奏でる人生の嬉遊曲。
  • 風俗小説論
    4.0
    花袋『蒲団』を一刀両断。明晰な論理で描く日本近代リアリズム興亡史――「『破戒』から『蒲団』にいたる道は滅びにいたる大道であったと云えましょう」。日露戦争の直後に起こった文壇の新気運のなかで、その後の日本文学の流れを決定づける2作品が誕生した。日本の近代リアリズムはいかに発生し、崩壊したのか。自然主義から誕生した私小説が、日本文学史に与えた衝撃を鋭利な分析力で解明し、後々まで影響を与えた、古典的名著。
  • 風貌・姿勢 現代日本のエッセイ
    -
    文学に精進しつつ95歳の天寿をまっとうした作家が、その生涯に敬愛し、私淑した文士たちの風貌と姿勢を生き生きと描出する。鴎外、漱石、志賀直哉から小林秀雄、田中貢太郎、太宰治、中野重治ら30余名。講談社名著シリーズ版『風貌・姿勢』に拠る、作家・文士の風貌と個性を見事に活写した随筆集。
  • 抱擁家族
    3.9
    妻の情事をきっかけに、家庭の崩壊は始まった。たて直しを計る健気な夫は、なす術もなく悲喜劇を繰り返し、次第に自己を喪失する。不気味に音もなく解けて行く家庭の絆。現実に潜む危うさの暗示。時代を超え現代に迫る問題作、「抱擁家族」とは何か。<谷崎潤一郎賞受賞作品>
  • 本覚坊遺文
    4.3
    師千利休は何故太閤様より死を賜り、一言の申し開きもせず従容と死に赴いたのか? 弟子の本覚坊は、師の縁の人々を尋ね語らい、又冷え枯れた磧の道を行く師に夢の中でまみえる。本覚坊の手記の形で利休自刃の謎に迫り、狭い茶室で命を突きつけあう乱世の侘茶に、死をも貫徹する芸術精神を描く。文化勲章はじめ現世の名誉を得た晩年にあって、なお已み難い作家精神の耀きを示した名作。日本文学大賞受賞作。
  • 僕の昭和史
    3.5
    植民地朝鮮で過ごす幼少期が「僕」の昭和の始まり。受験失敗、厳しい陸軍の日々、敗戦、生活困難のなか書かれた文壇デビュー作「ガラスの靴」。芥川賞受賞の頃には復興も進み時代が大きく変わり始める。六〇年安保の年、アメリカ南部留学は敗戦国日本の戦後の意味を考える視座をもたらした。そして高度経済成長や学園紛争といった新たな変化。激動の昭和を個人的な実感に基く把握と冷静な筆致で綴った記念碑的名作。
  • 蜜のあわれ・われはうたえどもやぶれかぶれ
    4.0
    ある時は“コケティッシュ”な女、ある時は赤い三年子の金魚。犀星の理想の“女ひと”の結晶・変幻自在の金魚と老作家の会話で構築する艶やかな超現実主義的小説「蜜のあわれ」。凄絶なガン闘病記「われはうたえどもやぶれかぶれ」、自己の終焉をみつめた遺作詩「老いたるえびのうた」等、犀星の多面的文学世界全てを溶融した鮮やかな達成。生涯最高の活動期ともいうべき晩年の名作5篇を収録。
  • 木犀の日 古井由吉自選短篇集
    3.8
    〈都会とは恐ろしいところだ〉。5年間地方で暮らし、都会に戻った私は毎朝のラッシュに呆然とする。奇妙に保たれた〈秩序〉、神秘を鎮めた〈個と群れ〉の対比、生の深層を描出する「先導獣の話」のほか、表題作「木犀の日」、「椋鳥」「陽気な夜まわり」「夜はいま」「眉雨」「秋の日」「風邪の日」「髭の子」「背中ばかりが暮れ残る」の10篇。内向の世代の旗頭・古井由吉の傑作自選短篇集。
  • 桃の宿
    -
    阿川弘之「私の履歴書」を中心に、熟成した観察眼と達意の文章。今は亡き、交流のあった文士の先輩作家を語り、101歳の天寿を完うした土屋文明氏から、若くして台湾で散った向田邦子氏を思う。また、第3の新人として、共に同時代を過した吉行淳之介、遠藤周作両氏への別れを綴る名随筆集。
  • 森の宿
    -
    大学生時代、東京と郷里広島との往き返り、尾道を通るのはいつも眼の楽しみであった。船と海が好きだったせいもあるけれど、その頃私は志賀直哉の作品を耽読していて、汽車が尾道にかかると、「暗夜行路」に描かれている通りの風景が車窓にあらわれて来る。対岸は向島、島と本土の間が潮の流れのきつい河のような狭水路になっていて、釣舟がいる、渡しがいる……――<本文より> 愛してやまない鉄道・空・船の旅をめぐる名随筆
  • 夜明けの家
    4.0
    「老耄が人の自然なら、長年の死者が日々に生者となってもどるのも、老耄の自然ではないか。」――主人公の「私」が、未明の池の端での老人との出会いの記憶に、病、戦争、夢、近親者の死への想いを絡ませ、生死の境が緩む夜明けの幻想を語った表題作をはじめ、「祈りのように」「島の日」「不軽」「山の日」など「老い」を自覚した人間の脆さや哀しみと、深まる生への執着を「日常」の中に見据えた連作短篇集。
  • 陽気なクラウン・オフィス・ロウ
    4.0
    こよなく愛したC・ラムを巡る英国への旅。香り高き紀行文学――英国の名文家として知られ、今もなお読み継がれているチャールズ・ラム(1775~1834)をこよなく愛した著者が、ロンドンを中心に、ラムゆかりの地を訪れた旅行記。時代を超えた瞑想が、ラムへの深い想いを伝え、英国の食文化や店内の鮮やかな描写、華やかなる舞台、夫人とのなにげない散歩が、我々を旅へと誘ってくれる。豊かな時間の流れは、滞在記を香り高い「紀行文学」へ。 ◎「この『陽気なクラウン・オフィス・ロウ』では、作者がいわばロンドンの空気の中に丸ごと溶け込み、心ゆくまでロンドンという大都会の古びた湯船にゆったりと身を横たえ、ラムへの尽きぬ思いに浸っているということだろう。この滞在記にただよう一種沁み沁みとした哀感は、ここに由来する。」<井内雄四郎「解説」より>
  • 吉本隆明初期詩集
    4.5
    東京下町の少年時代、山形米沢の高工時代――「巡礼歌」「エリアンの手記と詩」など習作期の詩作と第1詩集「固有時との対話」第2詩集「転位のための十篇」を収める。敗戦後の混乱した社会に同化できない精神の違和と葛藤を示し、彷徨する自己の生存をかけた高い緊張度により支えられる自選初期詩集54篇。
  • 世をへだてて
    3.0
    六十四歳の晩秋のある日、いつものように散歩に出かけようとして妻に止められ、そのまま緊急入院。 突然襲った脳内出血で、作家は生死をさまよう。 父の一大事に力を合わせる家族、励ましを得た文学作品、医師や同室の人々を見つめる、ゆるがぬ視線。 病を経て知る生きるよろこびを明るくユーモラスに描く、著者の転換期を示す闘病記。 生誕100年記念刊行。 目次 夏の重荷 杖 北風と靴 大部屋の人たち Dデイ 作業療法室 同室の人 単行本あとがき 著者に代わって読者へ 解説 島田潤一郎 年譜
  • 『別れる理由』が気になって
    -
    1968年から1981年という長きにわたり文芸雑誌「群像」に連載され、1982年に全3巻で刊行されると野間文芸賞を受賞した、小島信夫の『別れる理由』。 長期におよんだ連載中、「筆者と編集長しか読まない」と揶揄されたことすらあったという大長篇小説に江藤淳『自由と禁忌』以来久々にスポットライトを当て、江藤淳を含む同時代の他の評者が掴まえそこねた作品世界の全貌を初めて明らかにする作品論が本書である。 現代日本文学の最高傑作、あるいは天下の奇書、どちらとも取れる『別れる理由』は平易な文体で描かれるが、やはり小説でしかなしえない異様な世界を形成している。 そのような作品がいかなる状況下で成立したのか、その作中に流れる時間はいかなるものなのか、作家小島信夫が執筆当時に考えていたことはいかなることなのか、……多彩な要素に満ちた大長篇小説小説にきっちりと寄り添うことで筆者坪内祐三が掴んだものに触れるとき、読者は批評的な読解の愉しみを知ることになるのである。
  • わたしの本はすぐに終る 吉本隆明詩集
    -
    戦後思想界の巨人・吉本隆明の本質は詩人だった。 吉本はまず私家版の詩集『固有時との対話』(1952年)、同じく私家版詩集『転位のための十篇』(1953年)で、まず詩人として歩みはじめる。その後、武井昭夫との共著『文学者の戦争責任』(1956年)に収められる戦前の左翼文学者の「転向」問題を扱う評論を発表しはじめることで、文壇や論壇でも知られるようになっていく。 その後も吉本隆明は文芸評論家や思想家としての仕事と並行して詩の創作をつづけ、抒情、論理、抽象、追憶、喜怒哀楽…読むものを惹きつけてやまぬ、まさに豊穣というほかない世界を作り上げたのだった。 本書は、著者自撰の『吉本隆明全集撰 1 全詩撰』(1986年)の後半部分(前半は文芸文庫既刊『吉本隆明初期詩集』に収録)を占める「定本詩集4」「定本詩集5」「新詩集」「新詩集以後」という1950年代半ばから80年代まで書き継がれた詩作群、70年代~80年代の雑誌連載をもとにした『記号の森の伝説歌』『言葉からの触手』という2冊の著作、90年代に雑誌掲載された「十七歳」と「わたしの本はすぐに終る」という2篇の詩で構成される。 講談社文芸文庫既刊の『吉本隆明初期詩集』と併せ、吉本隆明による詩の世界を集大成するものとなっている。
  • 明夫と良二
    4.4
    磊落な浪人生の兄と、気立ての優しい中学生の弟。男の子二人のおかしみに満ちたやりとりを見守る姉は、間もなく嫁いでゆく。自然に囲まれた丘の上の一軒家に暮らす作家一家の何気ない一瞬に焼き付けられた、はかなく移ろいゆく幸福なひととき--。著者没後10年。人生の喜び、そしてあわれを透徹したまなざしでとらえた家族小説の傑作、初文庫化
  • 往復書簡 『遠くからの声』『言葉の兆し』
    -
    1997年から1999年、オスロ・仙台と東京間で交わされた、『遠くからの声』。東日本大震災直後の喪失感の中で文学・人生・世紀末に思いを巡らせた『言葉の兆し』。
  • 悲しいだけ 欣求浄土
    4.7
    緊張した透明度の高い硬質な文体。鋭角的に切り抉られた精神の軌跡。人間の底深い生の根源を鋭く問い続ける藤枝静男の名篇「欣求浄土」「一家団欒」を含む『欣求浄土』、藤枝文学の極北と称賛された感動の名作、野間文芸賞受賞の『悲しいだけ』を併録。
  • 仮往生伝試文
    4.0
    寺の厠でとつぜん無常を悟りそのまま出奔した僧、初めての賭博で稼いだ金で遁世を果たした宮仕えの俗人―平安の極楽往生譚を生きた古人の日常から、中山競馬場へ、人間の営みは時空の切れ目なくつながっていく。生と死、虚と実、古(いにしえ)と現代(いま)。古典世界と現在の日常が、類い稀な文学言語の相を自在に往来し、日本文学の可動域を、限りなく押しひろげた文学史上の傑作。読売文学賞受賞。
  • 考えるよろこび
    4.0
    江藤文学への最高の入門書。『漱石とその時代』執筆当時に行った、若き著者の知性とユーモア溢れる講演録。表題作の他「転換期の指導者像」「英語と私」など、全6編――アメリカから帰国し、名作『漱石とその時代』を準備中の、1968年から69年にかけて行われた若き日の6つの講演。現代における真の「英知」とは何か……歴史を探り、人物を語り、表現の謎に迫り、大学や国際化の意味を問う。軽妙なユーモアと明快な論理、臨場感あふれる語り口で、読者を一気に江藤文学の核心へといざなう。多くの復刊待望の応え、甦った歴史的名講演集。 ※本書は、講談社文庫『考えるよろこび』(1974年9月)を底本としました。
  • 感触的昭和文壇史
    -
    言語的な数々の実験、あくなき芸術性追求、社会的不公正の告発、政治と文学の諸問題、卑小な自らの眼に映る事象の描写、経済成長を背景に叢生した新感覚……と昭和の文学における主潮流は移ろってきた。時代に翻弄される作家たちの姿を身近に見聞きし肌で感じつつ、文壇の主流と距離をおき自らの小説世界を追い求めた野口冨士男がその晩年身を削り書き継いだ、文字通り切れば血の出る生々しい文学史。
  • 狂人日記
    4.3
    狂気と正気の間を激しく揺れ動きつつ、自ら死を選ぶ男の凄絶なる魂の告白の書。醒めては幻視・幻聴に悩まされ、眠っては夢の重圧に押し潰され、赤裸にされた心は、それでも他者を求める。弟、母親、病院で出会った圭子――彼らとの関わりのなかで真実の優しさに目醒めながらも、男は孤絶を深めていく。現代人の彷徨う精神の行方を見据えた著者の、読売文学賞を受賞した最後の長篇小説。
  • 拳銃と十五の短篇
    4.8
    うわべは優雅な村人であった亡父の形見の6連発拳銃。母の心臓に、雷に打たれたようにある6つの小さい深い穴。さりげない筆致と深く暖かな語りのうちに、生きることへの声援をおくる三浦哲郎の鮮やかな短篇連作の世界。野間文芸賞受賞。
  • 恋ごころ 里見弴短篇集
    3.0
    14歳の夏休みに、養家の盛岡を訪れ、そこで知った親戚の少女に淡い恋心を抱いた思い出を語る表題作。家を出て、大阪での芸者との恋愛・結婚の経緯を清新に描いた「妻を買う経験」等、自伝とフィクションを綯い交ぜに、流暢な文体と精妙な会話で、人の心の機微を巧みに描いた名作5篇を収録。明治、大正、昭和の文芸界を悠々と生き抜いた「馬鹿正直」で「一徹」で「涙脆い」、白樺派最後の文士・里見弴の真骨頂。 人の生の営みの機微を描いた心温まる短篇集――“最後の文士”里見は、94歳の最期まで現役作家として活躍した。抒情的で穏やかな、哀愁を帯びた感動を与える私小説の世界。読売文学賞受賞の表題作他6篇。
  • 恋と日本文学と本居宣長・女の救はれ
    4.0
    『忠臣藏とは何か』『日本文学史早わかり』と並ぶ、丸谷才一の古典評論三部作。中国文学から振り返って、『源氏物語』『新古今和歌集』という日本の文学作品を検証した孤立無援の本居宣長の思考を蘇らせ、さらにはその視点で近代日本文学をも明確に論じる。女系家族的な考えから日本文学を俯瞰した「女の救はれ」を併録した『恋と女の日本文学』を発表時の題に戻し刊行。
  • 詩への小路 ドゥイノの悲歌
    3.0
    著者が愛読してきたライナー・マリア・リルケ「ドゥイノの悲歌」の訳をはじめ、長年にわたる詩をめぐる思索が結晶した名篇。登場するのは、マラルメ、ゲオルゲ、ヴァレリー、ソフォクレース、アイスキュロス、ダンテ、夏目漱石、ヘルダーリン、シラー、ボードレール、グリンメルスハウゼン、グリュウフィウス、ドロステ=ヒュルスホフ、ヘッベル、マイヤー、メーリケ、シュトルム、ケラー、クライスト、アル・ハラージー…
  • 春秋の花
    -
    妥協を許さぬ小説や批評の書き手で知られる大西巨人は幼少期より古今東西の詩文を愛好してきた。成長し老境に至るまで折りに触れ愛唱してきた断章は、柿本人麻呂、西行、正岡子規、石川啄木、与謝野晶子、斎藤茂吉、斎藤史、松尾芭蕉、西東三鬼、金子兜太、島崎藤村、三好達治、佐藤春夫、茨木のり子、森鴎外、夏目漱石、樋口一葉、有島武郎、中野重治、小林秀雄、吉本隆明、柄谷行人…と、万葉の世から現代まで幅広く、また意外性すら湛えて季節毎に丁寧に並べ置かれている。 文学を愛する者として人後に落ちない大西巨人が年月をかけ丹精して選んだ詩文の精髄がここにある。
  • 新古今の惑星群
    5.0
    正岡子規が称揚した『万葉集』の「写生」から『新古今集』の詩歌理念へ引き戻すことで、戦後日本文化の再建を目指して1975年に書下された『藤原俊成・藤原良経』。新字新仮名で刊行された同書を、塚本邦雄の信念=正字正仮名表記へもどして改題、さらなる深みと凄味を増し、新たな生命を吹き返した。新古今時代を支えた藤原俊成・藤原良経・藤原家隆・俊成卿女・宮内卿・寂蓮・慈円の7人を、渾身の力で論じ尽くした、歴史的名著。
  • 〈自由〉の条件
    -
    まず、自由についての思弁的、また社会学的な探究が進められる。やがて、現代社会における自由の本質的な困難が明らかになる。そこで、自由を自由たらしめている要因の原点まで遡ることで、〈自由〉が蘇生する可能性が示される。なんと、他者の存在こそが〈自由〉の本来的な構成要因なのである。つまり、〈自由〉とは、他者との共存、つまり〈公共性〉という問題へと展開されうるものなのである。
  • ソロモンの歌 一本の木
    4.0
    戦後日本の音楽批評をリードしてきた吉田秀和は、青春期に吉田一穂に私淑、中原中也との交遊や小林秀雄の影響を通してポエジーの精髄に触れた。音楽はもとより、文学や美術を論じた著作によって、豊饒なる批評精神を構築してきた著者が、幼児期から詩との出会いまでを綴り、その批評の原点を明かす表題作をはじめ珠玉の随想12篇を収録。巻末の荷風論は、日本近代の宿命を巡る鋭い洞察に満ちた文明論である。

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