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基督教系の女子学院で、級友に「あなたは感情が強いのよ。そして正直なのよ、いゝ人なのよ」と言われた著者。継母との間も円満にいった思春期の幸福な一時の後に、やがて「わがまゝな父、負けていないはゝ、短気でおこりっぽい弟、決して平和とはいえない」日常が来る。後年の幸田文の資質と文学の原形が鮮やかに描き取られた回想の記「草の花」に、「身近にあるすきま」ほかを併録。
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Posted by ブクログ
幸田文の文章にはほんとうに何度も頷かされるが、今回は特に「夜長ばなし」になるほどなあと思わされた。 ・「(映画と違い)物語は耳からはいって眼の底で立体化され、立体化された人物たちはまことに静かにじわっと心の奥へにじみこんでくるのです。話にはスローテムポの浸みこみかたがあっておもしろいものです。」 ...続きを読むこれはテレビと書物の違いでもあると思う。 ・父・露伴の、ながい源平物語を語る句には「春の夜」より「秋の夜」とする方が良いという添削と、その違いを娘にわからせようとする著者への「無理におとなの承知している感覚なんかを、子供に押しつけるな。...子供が自然に秋の夜というものを理解するときを静かに見きわめていて、そのときこちらも一緒になって秋の夜を楽しむなり哀しむなりしてやればいゝんだ。」という忠告。 一つ目で、ああそうか俳句の良し悪しというのはこういう風にして論じるのか…と、頭ではつかみにくい芸術の批評というものの一端が論理的に理解できたような気がした。 そして二つ目で、だからといって頭でっかちで芸術を語るのではなく、まず自身の感覚ありき、それに基づいて知識や考察を積み重ねていくのが正しい有り方だという当たり前と言えば当たり前の事を納得させられた。
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