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19世紀初め、20代の若い学者の兄弟が、ドイツ語圏に伝わるメルヒェンを広く蒐集してまとめた『グリム童話集』は、半世紀近い歳月、兄弟自身の手で改版が重ねられ、1857年、最後の第7版が刊行された。それは、国境を越え、時代を超え、今も生き続ける、他に類をみない新しい文芸の誕生であった。池田香代子の生命感溢れる翻訳による完訳決定版。第1巻には、「灰まみれ」「赤ずきん」「白雪姫」等、56話収録。〈全3巻〉
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Posted by ブクログ
ヨーロッパに伝わる古い童話なのに、語り口が完全に日本昔話なので違和感が凄い。 訳者は原語の砕けた口語体や、童話ならではの言い回しを表現するために日本の昔話的に訳したのだろうが、「昔話らしさ」以上に「日本」を感じてしまってダメだった。 内容は大分面白い。「悪魔の三本の黄金の毛」や「テーブルごはんだ...続きを読む」「漁師とかみさん」「手なし娘」「死神の名付け親」「杜松の木」「ツグミ髭の王様」など、物語としてかなり没入できる。 その一方で、なんだこりゃと思わされるものもいくつか。「コルベス様」「トゥルーデ婆さん」なんかは、物語というにはシンプル過ぎて面白さは半減だが、逆にインパクトはある。 本書一冊で56話とかなりの話数があるがボリュームはまちまちだ。そして特にムムと思わされるのは、ほとんど同じ話が幾つかある点だ。 例えば「七羽の鴉」、「12人兄弟」、「6羽の白鳥」は物語の構成がほぼ同じで、水増ししたようなものだ。 同様に「おやゆび小僧」と「おやゆび太郎の旅」はタイトルもストーリーも一緒。 他の話にも一部分同じ構成になっているような箇所がそこここと見当たるのは、元々が口伝で伝えられていたものだからだろう。 話が伝わるうちに伝言ゲームよろしく、離合集散し、脚色されたり編集されたものだと推察できる。 「レンズ豆を灰にバラまいて拾わせる」というシーンも複数回登場するが、これは無茶な要求を表す定型句なのだろう。現代日本ではレンズ豆も暖炉の灰も一般的でないためイメージはしにくいが、当時のヨーロッパではイメージをしやすい「あるある」ネタだったに違いない。 キリスト教以前の伝承に興味のある私としては、ところどころに「マリア様」や「神様」的なキリスト教的道徳観が差しはさまるのがどうも気になる。 グリム兄弟自体は最初は童謡を集めたわけだが、それを出版する際、初版以降、キリスト教的価値観を盛り込み、読みやすく編集してしまった。そのため、このようなチグハグが現れているものだと思われる。 やたらと悪い継母が登場する割に、悪い継父は登場しないし、母親自体が悪辣なケースもほぼ無い。これも後から編集したもののようである。 本書は上下巻セットで下巻があるので次に進むが、個人的にはキリスト教的価値観に合わせた編集をさしはさまなかったとされる原書に近い初版に興味が湧いた。
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グリム兄弟
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