【田紳有楽】
骨董屋の部屋を訪れた男が、自己流処世術を語り庭の池に飛び込むところから物語は始まる。
男は池に沈められている朝鮮生まれの抹茶茶碗の柿の蔕(ヘタ)。地下水脈を通って出歩いたり人に化けたりしている。
池の中には偽物陶器たちが埋められ、五十六億年後の弥勒説法の成仏永世を得るまでなんとかうまい
...続きを読むことやりたいなあなどと思っている。
志野筒型グイ呑みは色気漂う金魚のC子との間に生命を超えた情欲を持ち卵を産卵させ、
モンゴルから来た丼鉢の丹波は触手を出して空を飛んだり柿の蔕と出し抜きあったり。
こんな物資を所有する人間たちだってただもんじゃない。自称『永生の運命を担ってこの世に出生し、釈迦の遺命によって兜率天に住し、五十六億七千万年後に末法の日本国に下向して龍果樹の元で成道したのち、如来となって衆生に説法すべき役目を負った慈氏弥勒菩薩の化身であるが~~~』、なんて大仰なこと言っているがこの世では老人性掻痒症(そうようしょう)に悩まされる骨董屋、
時節に合わせて姿を変える人間体の地蔵観音、
骨董屋の庭で待ち合わせする妙見菩薩北斗尊星王と大黒天の化身、
彼らはそれぞれにそれなりに五十六億年後の釈迦説法を待つ。
…なに~?五十六億年後には太陽が膨れ上がりブラックホールに地球も月も呑みこまれるから説法どころじゃないって?!
こうなったら唄って踊ろう。
骨笛に銅鑼、鐘に槌。
丼鉢は飛び回り、柿の蔕は飲んだくれ。
ププー、プププー
デンデンデデン、ドドン
ペイーッ
オム マ ニバトメ ホム
ペイーッ ペイーッ
「田紳有楽 田紳有楽」
【空気頭】
冒頭で著者は二つの私小説手法について語る。
ひとつは『自分の考えや生活を一分一厘も歪めることなく写していって、それを手掛かりとして、自分にもよく分からなかった自己を他と識別するというやり方で、つまり本来から言えば完全な独言で、他人の同感を期待せぬものである』
もうひとつは『材料としては自分の生活生活を用いるが、それに一応の決着をつけ、気持ちの上でも区切りをつけたうえで、わかりいいよに嘘を加えて組立てて、「こういう気持ちでもいいと思うが、どうだろうか」と人に同感を求めるために書くやり方である。』
そして著者は「自分は今まで後者で書いてきたが、前者のやり方で書こうと思う」として、自分の生活や心情を語る。
身内の醜さには怒りを感じる。
自分の妄執、憤怒、他者への無関心を語る。
多くの兄弟を結核で亡くし、妻も同じ病で長いこと入退院を繰り返している。
病の妻との日々、妻へ愛着を感じながらも妻の死を楽しく空想する。
果たして自分たちも夫婦は二世なのか。
…そこまでは自分の現実的な過去をシビアな自己分析ていたのだが、その後は文体も内容も一変します。
自分は親族から受け継いだ静的乱脈に悩まされていました。
病の妻以外の女の躰と交わり、女の幻に追われたり、そしてその肉体から逃げ出したりします。
そんな時は自分の考えた人口気頭装置を取り出します。皮下注射に空気を入れ、針を眼球の奥から視神経交叉部へ、そして脳下垂体まで届かせ抽出液を挿入し脳内に空気を送るのです。(←この辺体がムズムズしてきたのでちゃんと読めなかったので違ってるかも/-。-;)
この人口気頭装置の元は、人糞研究から考えられました。
人糞に関する科学実験、利用法、漢方効果、病気療法、飲食法、一通り試しました。(←この辺もちゃんと読むと変な臭いを感じそうで表面だけ読み~~/-。-;)
或る時自分の意識が空中に飛び、自分の躰を見下ろす経験をしました。それは糞尿からも女体からも解放された時だったのです…。
…いやいや、『自分の考えや生活を一分一厘も歪めることなく』と言って語ったのが糞尿生活に眼球から空気頭治療法って、どうなってるんだこれ(@@)
性欲や糞尿飲食や手術の描写に「これだから医者が作家になるとコワいんだよ~~(´д`)」となりながらも本から目が離せない。
いったい自分は何を読んだのだろう。全く読書と言うのは自分をとんでもない所へ連れて行く。